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CEOメッセージ

代表取締役社長 兼 CEO 峰岸 真澄

峰岸 真澄

代表取締役社長 兼 CEO

グループ経営理念の進化

リクルートグループは2018年、グループ全体の経営理念を再定義しました。最も上位の概念である基本理念には、「一人ひとりが輝く豊かな世界の実現」という創業以来の理想を掲げ、目指す世界観をビジョン、果たす役割をミッションと呼ぶことに決めました。また、これらの世界観を目指し役割を果たすにあたり、私たちが最も大切にする価値観をバリューズと呼び、「新しい価値の創造(WOW THE WORLD)」、「個の尊重(BET ON PASSION)」、「社会への貢献(PRIORITIZE SOCIALVALUE)」の3つを掲げています。

この理念の根底にあるのは、人間は一人ひとりの志や夢、欲求や情熱といった、いわば内発的な動機が解放されたときに最も大きな力を発揮するのだ、一人ひとりが輝くというは、その潜在性が開花した状態をいうのだ、という信念です。その信念がグループ経営の各要素のなかに組み込まれ、リクルートグループの「価値創造モデル」で詳細に示すとおり、すべてのステークホルダーのみなさまとの関わりを経て、社会的インパクトを生み出す好循環をつくり出します。

近年の社会の急激な変化、特に顧客ニーズの変化とそれに応えるための革新スピードには目を見張るものがあります。グローバル規模で事業展開をする企業として、そうした変化に的確に対応し顧客と社会の期待に応えていくためには、企業自体も常に変わり続け、進化し続けなければなりません。一方で、どのような理念に基づき、どのような価値を創造するグループなのか、という土台の部分については、変わってはならない経営哲学があってしかるべきです。今回再定義したグループ経営理念は、まさにその土台となるべきものを抽出した結果であると考えています。

競争優位性、機会とリスク

急激な技術革新に対応しビジネスに活かしている例として、人材領域における人工知能(AI)の活用があります。仕事を探す人々が求める情報は社会のあちこちに点在し、「自分が本当にやりたいこと」に応えてくれる情報に巡り会うのは、簡単なことではありません。情報の非対称性は、個人が本来持つ可能性や能力を開花させる上で課題となりうるものです。そして人工知能という最新の技術は、この課題を一気に解決する潜在能力を秘めています。具体的には、インターネットを活用し潜在的な情報も含めて広く収集し、かつ高度なアルゴリズムを用いることで集まったデータを個人のニーズに合わせてカスタマイズし、その人が真に求めている情報を優先的に示します。10年前は不可能だったこと、「まだ、ここにない、出会い。」の実現はこうした急速な技術革新を積極的に取り入れ、変化の先陣を切っていくことでしか成り立ちません。

一方で、リクルートグループが創業より大切にし、ビジネスのエンジンとして活用してきた「リボンモデル」は、テクノロジーを取り入れ進化しつつも、その根本的な論理は変わらないビジネスモデルであり、HRテクノロジー、メディア&ソリューション、そして人材派遣のすべての戦略ビジネスユニット(SBU:Strategic Business Unit)において価値と利益を生み出すコアとして機能し続けています。具体的には、私たちのクライアントである企業がもたらす情報と、ユーザーである個人のニーズを最適にマッチングすることにより、そうでなければ得られなかった満足を創出する。最終的には、不満や不便、不安といった「不」を解消し、社会に新しい機会を提供できる。この「リボンモデル」を進化させうるケーパビリティがリクルートグループの競争優位性であり、激変する外部環境を大きな機会として捉えていくことができる所以なのです。例えば、HR産業は、各プロセスやその効率性を大きく改善させられる余地が残された市場であると言われていますが、圧倒的な効率性や利便性を提供するためには、テクノロジーとの組み合わせで「リボンモデル」を進化させ、新たなニーズに対応していく必要があります。求人企業に関する口コミや給与情報などの膨大なオンラインデータを持つGlassdoorを2018年6月に当社が子会社化したのも、「リボンモデル」の進化の1つの形です。そして「リボンモデル」を進化させ続けるための原動力は、私たちが大切にしている3つの価値観にほかならないと考えています。

もちろんこうしたテクノロジーの急速な発展には、大きなリスクも伴います。個人情報の保護はもちろんのこと、サイバー攻撃などデータの保全に関する備えも万全でなければなりません。また、人工知能を用いたマッチングアルゴリズムにおいては、架空の求人情報、あるいは人権を何らかの形で侵害する可能性がある情報をいかにして排除するか、ということが持続的な事業運営と利益獲得のための鍵となります。こうした観点からリクルートグループにおいては、SBUごとにデータセキュリティの方針を厳格に定め、これを運営して体制を整えています。

より進化するためのガバナンス体制

私たちが取り組んだ変革に、経営体制の変更があります。私たちは2016年4月より、リクルートホールディングス内に3つのSBUを設置して各事業を運営してきましたが、世界のテクノロジーの変化を先取りし、継続的かつ迅速に事業ポートフォリオを改善していくため、2018年4月から各SBU内に統括会社を設置し、それぞれを自律自転させるガバナンス体制へと移行しました。一方、リクルートホールディングスは持株会社機能への集中と強化を図り、適切なグループガバナンス体制、モニタリング体制及び財務データの集積管理環境を整備しています。各SBUがそれぞれの統括機能の強化を通じて事業戦略を推進することが、事業価値拡大の観点からも最適と考え、当社グループの組織再編に至りました。

ホールディングス及び各SBUにおいては、財務的なガバナンスもさることながら、コンプライアンスやダイバーシティ&インクルージョンも含めたサステナビリティ全般を含む非財務的なガバナンスについても、その方針と実施体制を強化しています。企業活動の根幹となるコンプライアンスにおいては、倫理綱領をはじめとした社内規程の遵守を徹底しています。さまざまなチャレンジにより持続的に産業・社会に価値を提供し続けると同時に、社会の一員として常に高い倫理観・価値観に基づいた行動をとり、社会の期待に応え続けていくことが企業として必要だと考えています。

また、すべてのSBUにおいて、多様な従業員が個を活かして働く環境を整えること、つまりダイバーシティ推進が競争優位性の獲得に不可欠な要素です。女性の両立・活躍支援はもとより、育児や介護などにより時間の制約があるみなさんや、LGBTQをはじめとする性的マイノリティのみなさんなど、多様な個が受容され活かされる環境を構築する仕組みを整えています。当社でも、例えば取締役会に多様な国籍・バックグラウンドを持つ人材を招聘しさまざまな視点を経営に取り入れるなど、未来に向けた取り組みを加速させています。

2018年3月期の振り返りと今後の展望

理念を実現するためのステップとして、HR産業の領域で「グローバルNo.1」になるというターゲットを掲げました。

2018年3月期の連結業績は、売上収益、EBITDAともに過去最高を更新し、連結売上収益に占める海外比率は、Indeedの成長、そして子会社化した人材派遣事業を営む会社の業績が寄与したことにより、前年同期の43%から46%となりました。HR産業の領域でグローバルNo.1になるということは通過点であって、HR産業のなかで企業も個人も飛躍的に利便性の高いサービスを提供していくことが何よりも重要だと思っています。

今後に向けた取り組みも着々と進めており、テクノロジーによるイノベーション創出をさらに加速するため、国内グループのデータサイエンティスト数を拡大しています。また、米国シリコンバレーにある、データマネジメントと人工知能の世界的権威であるAlon Halevy氏が率いるAI研究所でも、日々理念の実現に向けて研究に取り組んでいます。

~ステークホルダーのみなさまへ~

先述のとおり、2018年3月期は、売上収益、EBITDA、そして経営指標とする調整後EPSともに上場以来、過去最高の業績でした。2018年4月より新たな経営体制をスタートさせ、各事業は各々の統括会社のもとで事業戦略を推進することで、さらなる企業価値の向上を実現していきます。また、リクルートグループ全体として、法令遵守の体制やリスク管理能力の向上に向けた取り組みもこれまで以上に進めていきます。

リクルートグループは、従業員一人ひとりが「不」の解消に真摯に向き合い、ステークホルダーのみなさまとともに新しい価値の創造を続けてきました。そして、「価値創造モデル」でも示しているように、事業を通じたアウトプットが社会課題解決に直結するだけでなく、国連総会で採択された持続可能な開発目標(SDGs*1)達成にも寄与できると考えています。特に、情報の非対称性をなくす「リボンモデル」によって「10.人や国の不平等をなくそう」をトリガーにし、「5.ジェンダー平等を実現しよう」、「4.質の高い教育をみんなに」、「8.働きがいも経済成長も」、「1.貧困をなくそう」をドミノ倒しのように関連性を持たせながら実現するとともに、そのプロセスのなかでステークホルダーのみなさまからのフィードバックを経営に取り入れ、このモデルを持続的に循環させていきます。私たちはこれからも、世界の課題解決に向けたイノベーションによる新しい価値の創造に、私たちらしさを持って果敢に取り組んでいきます。

*1 2015年9月の国連サミットで採択された「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略称で、国連加盟193か国が2016年~2030年の15年間で達成するために掲げた目標です。