キャリアアドバイザーの転職事例コラム
~柔軟性×行動量で突破口を開いたSさん~

2020.7.21

リクルートキャリアの転職支援サービス『リクルートエージェント』のキャリアアドバイザーが、持ち回りで転職事例をご紹介します。

キャリアアドバイザーの転職事例コラム01のビジュアル
キャリアアドバイザーの転職事例コラム01のビジュアル

新型コロナウイルス感染症の影響により先行きが見えない日々が続くなか、「転職したいけれど、一歩を踏み出せない」という方もいらっしゃるのではないでしょうか。

このコラムでは、この状況下でさまざまな不安を抱きつつも懸命に転職活動を行い、転職を実現させた方の事例をお伝えします。その姿勢や活動プロセスに見られる「転職実現のポイント」を、ぜひ参考にしてみてください。

今回の事例を紹介するキャリアアドバイザー

キャリアアドバイザー池田龍太郎

池田 龍太郎

コンシューマーサービス業界を中心に、業界横断でマーケ・事業企画・経営企画職の転職支援を担当。日常消費財業界や、店舗型サービスに精通する。

転職活動を支援する上で大切にしていること

私自身、異業界からの転職を経験しています。固定観念や経験値だけではなく、求職者の皆さまの想いやビジョンの実現に近づける転職のサポートを心がけています。

転職を実現した方

Sさん/50代前半/女性
大手流通企業の新規事業部門マネジャー 
→ 大手メーカーの広報部門マネジャー
年収の変化:前職の年収額を維持
転職の軸:自分の経験・スキルを必要としてくれる企業

Contents

早期退職制度で3月末に離職。「早く次を見つけたい!」

「離職期間が長引くと、人材としての市場価値が落ちていき、転職が難しくなるんじゃないでしょうか。だから、このまま転職活動を続けます。」

今年3月末、新型コロナウイルス感染症の感染拡大が懸念される中、Sさんはこう宣言しました。

Sさんは今年の3月末まで、大手流通企業で新規事業部門のマネジャーを務めていた方。昨年末から転職活動を開始しました。

新規事業プロジェクトに意欲を燃やしていたSさんでしたが、会社の方針が変わり、新規事業から撤退することに。やりがいを見いだせなくなっていたところへ早期退職の募集が始まり、3月末での退職を決意したのです。

4月から心機一転、新しい会社で働くつもりでしたが、転職活動のさなかに新型コロナウイルス感染症の発生という予期せぬ事態に見舞われてしまいました。

残念ながら、離職期間が長引くと採用選考でマイナス評価につながるケースもあるのは事実。Sさんは離職期間を長引かせないようにするため、早期の内定獲得を目指して転職活動を続けました。

Sさんにとってもうひとつの不安は、「50代前半という年齢で迎えてくれる企業があるのか」ということ。そこで、Sさんは前職の「新規事業開発」には固執せず、「自分の経験・スキルを必要としてくれる会社なら幅広く検討したい」と、柔軟な姿勢で臨みました。

新型コロナウイルス禍で選考が停滞。連絡が途絶える企業も……

Sさんは流通企業で新規事情開発を手がける前には、複数の業界で営業、マーケティング、広報など、幅広い職種を経験していました。

そこで、私はSさんの経験が活かせるポジションを探し、事業企画、事業開発、広報、マーケティング戦略、コーポレートブランディングなどの求人をご紹介。Sさんはすべてに応募しました。

しかし、4月の緊急事態宣言下で企業活動が混乱をきたし、採用選考も停滞するように。通常、書類選考の結果は3日~1週間程度で出るのですが、途中で連絡が途絶える企業、結論を先送りにする企業も多数ありました。

経済活動が停滞すれば、景気悪化も予測されます。「企業は採用に慎重になるのではないか。選考の目がシビアになるのではないか」――Sさんはそんな不安も抱きました。

そんな不安を乗り越えるためにSさんがしたことは、「行動を止めない」ということです。

書類選考に落ちても、応募先企業からの連絡が途絶えても、めげずに活動を続けました。希望条件を絞り込むことなく、可能性を広げるため、少しでも自身のキャリアに合えば積極的に応募しました。

ただ多数応募しただけではありません。Sさんはキャリアアドバイザーである私に積極的にアドバイスを求めました。職務経歴書の書き方、面接の受け答えの仕方など、気になることがあればすぐに私に質問。私がノウハウをご提供すると、すぐに吸収し、実行されました。

面接はすべてオンライン。印象アップのコツをアドバイス

応募した求人のうち、書類選考を通過したのは1割程度です。面接に臨むにあたり、Sさんは、いかに自分がその企業に貢献できるか、具体的なプレゼンも準備しました。

緊急事態宣言下のこの時期、面接はすべてオンラインで行われていました。そこで私からは、オンライン面接ならではの対策をアドバイスしました。

オンライン面接には、慣れないうちは「人物像が伝わりにくい」というデメリットがあります。そこで、モニター越しでも好印象を持ってもらえるように、「背景は白」「意識して表情を豊かにする」「ジェスチャーを入れる」「声に抑揚をつける」などのコツをお伝えしました。

結果、Sさんは、ある大手メーカーに広報部門の課長クラスのポジションで採用されました。転職活動で苦戦続きだったこともあり、年収ダウンを覚悟されていましたが、前職年収額をそのまま維持することができました。

キャリアアドバイザーが振り返る、Sさんの転職実現のポイント

転職活動に臨む求職者の皆さまの参考になりそうな、Sさんの行動や考え方をご紹介します

「強み」が伝わるように、職務経歴書をブラッシュアップ

Sさんはこれまで、複数の会社で営業、マーケティング、広報、新規事業開発など、幅広い職種を経験していました。そのため、最初にお会いしたときに見た職務経歴書はボリュームが多すぎて、「何でもできそうだけど、逆に何が強みなのかがよくわからない」という状態でした。

そこで、経歴の詳細については面接で伝えることを前提に、職務経歴書はポイントを絞ってシンプルに、見やすく記述するようにアドバイスをしました。

このとき、複数の経歴のうち、「何を強みに勝負するか」についても相談。ご本人の志向や市場のニーズなどを考慮し、「広報」×「新規事業開発」の経験を掛け合わせた「コーポレートブランディング」のスキルをメインに打ち出すことにしました。

Sさんを採用した大手メーカーは、今後の海外展開を視野に入れ、コーポレートブランディングのプロジェクトマネジメントを担える人材を求めていました。まさに、職務経歴書上で「強み」としてアピールしたポイントが目に留まり、評価されたというわけです。

柔軟性×行動量

新型コロナウイルス禍という逆風を受けながらも転職を実現できた最も大きな要因は、Sさんの「柔軟性」×「行動量」にあると思います。

50年以上の人生を歩まれていると、ご自身の確固たるこだわりもお持ちだと思います。しかし、それに縛られて転職先の希望条件を絞り込みすぎた結果、身動きがとれなくなる方は少なくありません。

条件を絞ることで、選択肢は限られます。その中で不採用が続くと、自信を喪失し、自分を追い詰めてしまうことにもなります。

その点、Sさんは柔軟な姿勢で、可能性があるほとんどの求人にチャレンジされました。そのように行動量を増やせば、さまざまな企業を見ることができ、そこから新たな気付きも得られます。例えば、「自分にとって優先順位が高いのは○○だと思っていたが、実は△△だった」など、自分の考えや価値観を整理していくことができるのです。

面接を受けるたびに内省し、気づきがあれば次の行動につなげる。行動量が増えれば、チャンスもつかみやすくなる――Sさんは、そう実感させてくださった方でした。