サービスが抱える課題を分析し、
価値を届け続けるプロセスを生み出す。
攻めを支える「守りのプロフェッショナル」。

ITサービスマネジメントユニット
ITサービスマネジメント2部
マリッジ&ファミリー・自動車領域サービスマネジメントグループ
兼 まなび領域サービスマネジメントグループ
永峰 翔 Sho Nagamine
エンジニアリングとマネジメント、
双方のスキルを高められる環境。
リクルートに入社するまでの経緯について教えてください。
新卒でSIerに就職し、事業会社への転職を経て、リクルートに入社しました。
1社目のSIerでは、データセンター配属のインフラエンジニアとして、8年ほどキャリアを積みました。システムのインフラ保守をフルアウトソーシングで請け負っていたのですが、SIerの仕事はどうしても「対情報システム部門」になりがちで、エンドユーザーの顔が見えにくいと感じるようになりました。自身のITスキルを磨きながら、エンドユーザーの声を聞き、課題解決に関わりたい。その思いから、事業会社へ転職しました。
転職した2社目は、自動車関連のITサービスに特化した企業でした。エンジニアとマネージャーを兼任し働いていたのですが、30歳が近づいてきたことを期に、今後のキャリアに悩むように。「エンジニアかマネージャー」どちらに重きを置いて進むか考えたのですが、自身でエンジニアリングを極めていく方向よりはマネジメントを追求し、組織を動かすことで、個人では実現できないような成果を出せる人材を目指したほうがキャリアの幅が広がるのではないかと考えました。そんなとき、リクルートのことを知ったのです。
リクルートは「マネジメントや人材育成に強い会社」というイメージがありました。加えて、サービス運営においてユーザーへの価値を最大化するために、ITの活用を進めていく方針であることを知り、「リクルートならこれまで培ってきたエンジニアリングスキルも活かしつつ、マネジメントスキルを高められるのでは」と考え、転職を決意しました。
入社当時はインフラエンジニアとして、プライベートクラウド基盤におけるインフラ構築や要件定義、ディレクションなどに携わっていましたが、その後ITサービスマネジメント専門組織(以下、ITSMユニット)が立ち上がり、2015年からITサービスマネジメントを担当しています。

「守りのプロフェッショナル」として、
サービス運営全体に貢献できるやりがい。
ITサービスマネジメントの仕事内容とミッションについて教えてください。
ITサービスマネジメントの役割は「サービスにおいて、安定的な価値提供を維持する」ことです。
事業運営には「新たな価値を創造すること」と「創造した価値を維持すること」の、2つの役割があります。ITサービスマネジメントの役割は後者に位置づけられており、ユーザーに価値を届け続けビジネスを継続して成長させるための仕組みづくりや、そのための活動を担うものです。サービスレベルを向上させるための活動推進や運営状況のモニタリング、問題が発生した場合は改善施策の検討などを、開発組織やビジネスサイドを巻き込みながら推進していく。いわば「守りの組織」です。
私が所属するITSMユニットは複数の事業領域を横断してサポートする形になっており、その中で私は『カーセンサー』などの自動車領域、『ゼクシィ』などのマリッジ&ファミリー領域、『スタディサプリ』などのまなび領域を担当しています。
ITサービスマネジメントの仕事内容は「プロアクティブ(能動的)な活動」と「リアクティブ(受動的)な活動」の2つに大きく分かれています。
プロアクティブな活動は、将来的にリスクになるような要素を先回りして取り除きながら、サービスを継続させていく活動を指します。サービスが安心安全に、そして快適に使われているかモニタリングを通じて判断し、必要に応じて関係組織に状況をフィードバックし改善の検討を促します。リリース時はサービスレベルを満たしていたものでも、成長と共にアクセス数や扱うデータ量が増大しパフォーマンスが低下する場合もあるので、定期的なモニタリングも欠かせません。
実際に障害が発生した際の対応は、リアクティブな活動にあたります。障害発生時の事業影響を最小化し、いち早く通常の状態に戻すことがITサービスマネジメントのミッションであり、その際はPMOとして関係組織に介在して“交通整理”を行います。発生原因の特定や応急処置を開発組織が主体となって行う一方でユーザー対応や根本原因の解決、再発防止策の検討といったタスクを管理し、潜在的なリスクを取り除いていくのです。
再発防止に向けては、ビジネスサイドやリスクマネジメントなどの部門とも連携し、技術的な見地だけでなく事業運営上のルールやプロセスの見直しも含めて対策を検討します。再発防止策がきちんと遂行されたのか管理することも、私たちの仕事です。
一般的な企業のITサービスマネジメントはインフラ寄りの仕事が多い印象がありますが、リクルートではアプリやインフラといった領域で分けることなく、サービス全体がスコープとなります。新規サービス立ち上げ時には非機能要件の策定にも携わるなど、上流工程の部分から「守り」のプロフェッショナルとして入り込めるところにも魅力を感じています。
リスク低減の枠組みを提案し、障害を未然に防止。
障害発生後も本質的な課題特定・改善に着手。
「プロアクティブな活動」や「リアクティブな活動」について、具体的にどのようなお仕事を担当されたのでしょうか?
我々のチームから提言し、装着したプロアクティブな活動のひとつに、サービス提供状況の定期的なモニタリングがあります。サービスレベルを満たしているか否かをログから可視化し、毎月の会議で開発組織にフィードバックする取り組みを、1年半ほど前から継続的に続けています。
きっかけは、あるサービスで機能追加をした際リリース直後にレスポンスが急激に低下したことでした。ユーザーからのアクセスに耐えきれず、リクエストに対してエラーを返すようになってしまったのです。
私たちは「なぜ事前にアクセス負荷を想定した検証ができなかったのか?」という課題に向き合い、開発・インフラチームの協力を得ながら、当時の状況をグラフによって可視化。ボトルネックになっていた箇所を明らかにしました。
そして、その結果を踏まえ「この程度のアクセス負荷に耐えうること」といったサービスレベル目標をあらかじめ定めること、これに対する事前の検証やリリースを可能にする枠組みを作ることを、開発組織に提案したのです。現在はモニタリングに加え、新規機能の追加時にはサービスレベル目標を考慮した開発が行われており、障害件数が減少に転じるなど改善が見られています。
一方、リアクティブな働きとして、大規模な障害をきっかけにリスクマネジメント体制の強化に着手する、といったケースもあります。
あるサービスで、有料会員のユーザーに正しくコンテンツが配信できないトラブルなど、事業影響の大きな障害が頻発したことがありました。これを問題視したプロダクトチームから、我々ITSMユニットへ「守りの体制を強化したいので、課題の洗い出しや改善を頼めないか」という相談があったのです。
これを受け、まずは運営チームのドキュメントやチャットツールを分析、課題について仮説を立てた上で、ヒアリングを通じて現状把握に努めました。
このとき課題を取りこぼさないために、ヒアリングは開発関係者だけに閉じず、ビジネスサイドやリスクマネジメントなどの部門まで広範囲に行うことにしました。つまり、普段から交流のある部署だけでなく、関係性の薄い部署の方々にも接触する必要があった、ということです。
どうしても、課題分析に来た我々のような役割の社員は、関係者からしてみれば「他部署から急にやって来た人」だと思われがちです。そこで意識したのが「外の人」としてヒアリングをするのではなく、「自分たちは何のために来たのか」を丁寧に説明して、同じ方向を向いている「仲間」だと認識してもらうこと。関係性を構築してその後の検討に加わる「仲間」を増やしていったことが、このプロジェクトを成功に導いたポイントだと思います。
愚直に事実を分析した結果、今回の障害において被害の拡大を招いた原因として、障害発生時における業務影響度の判断やエスカレーションといった「エンジニアリング以外の要素」によるところが大きいと判断しました。その後、マネージャー陣などの上位レイヤーと課題を共有しながら改善に向けた議論を進め、半年をかけて体制を強化していきました。
私たちの仕事はサービスを安定して運用することですが、対処するものは必ずしも「技術的な課題」とは限りません。コミュニケーションフローや運用体制など、様々な方法からサービス価値の維持に努めているのです。エンジニアリング以外にも視点を広げて、真の課題を見つけに行く経験を積む中で、自らの課題解決力も高まっていると感じますね。

綿密なコミュニケーションを通じて、
「攻め」と「守り」が両立する体制を整える。
「守りの組織」として、普段からどのようなことを意識していますか。
「攻め」と「守り」の双方をきちんとテーブルに乗せた上で、事業責任者が優先度を判断できる状態を作ることが、ITサービスマネジメントの責務であると考えています。
リクルートは社会のあらゆる変化に柔軟に対応し、進化し続けることが重要だと考えており、どちらかといえば「攻め」の志向を持つ会社です。新たにものを作るような「攻め」の優先度が高まれば、維持に必要な「守り」は相対的に後回しとなることが多いもの。
そうしたなかでITSMユニットは、サービス価値の維持を目的とした「守り」を司る専門組織として立ち上げられた、という経緯があります。いわばサービスの番人として「守り」の重要性を発信し続け、中長期でサービスを維持するために必要なことを常に意識して臨んでいます。
実際に「守り」の提案をしていく際は、リクルート本来の良さを殺してしまわないよう、特に気を配っています。現場はスピード感を持って自律的に動いていますので、その動きを変えかねない外からの「守り」の提案は、丁寧なコミュニケーションの上でなされるべきだと思っています。
そんな時は各組織のマネージャーとしっかり目線を合わせ、現場に対してどうメッセージを出せば協力を得やすいのか、コミュニケーション設計を組み立てながら進めていきます。
そして「攻め」のために必要な「守り」の重要性や妥当性を理解してもらえれば、その後の展開がスピーディに進むのも、リクルートのボトムアップ文化ならでは。パワフルな社員ばかりなので、その点はとても心強いです。
多種多様なサービスで専門性を磨き、
国内外の関連会社に「守り」の価値を提供したい。
リクルートで働く魅力と、今後の目標について教えてください。
リクルートは多方面にビジネスを展開しているので、事業によって文化や性格が異なります。同じ会社の中で仕事をしているのに、まるで転職したかのように違った経験ができるのです。
このリクルートの特徴は、スキルを高める機会の多さにダイレクトに繋がっていると感じています。多様なサービスに携わることは「守り」のアプローチに幅が生まれ、専門性を磨くことに繋がるからです。私は一部サービスの情報セキュリティ責任者の顔も持っており、サービスマネジメントとセキュリティという2軸で専門性を磨いています。これからも様々なサービスに関与しながら、自身のスキルを高めていきたいですね。
ITSMユニットはリクルートの事業に対して横断で展開しているのですが、まだ十分に関与できていないサービスも多々あります。今後の目標としては、ITサービスマネジメントとして、国内外含めリクルートグループ全体にさらに貢献していけたらと考えています。
特に海外の関連会社については、まだまだ改善の余地がある。これまで以上に文化が異なる環境になりますので、これまで培った経験と現地でのキャッチアップを織りまぜながら、新たな価値貢献の形を模索できればと思います。

※記載内容は取材当時のものです。