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コミュニティで広がる新しい刺激と成長の機会

イノベーション , 多様性

文:江口晋太朗

SNSが浸透し、誰もが自由にコミュニケーションが取れる時代になったいま、オンランですべてが完結できるかとおもいがちです。しかし、実際にはリアルに会ったり、話したり、ときに作業やワークショップを共に開催することが注目されているように感じます。リアルの場の通じたコミュニティは、新しい出会いや成長の機会を促します。リアルの場でしか経験できないことに、新たな価値を見出そうとする人が増えてきたと言えるかもしれません。

コミュニティづくりの新しいトレンド

リクルートが2014年末に発表した「トレンド発表会」でも、コミュニティに関する新しいトレンドがいくつか発表されましたが、近年、社内の集まりや社外の人たちとのつながりを作るイベント、友人や知人を集めてパーティを開催する人が増えてきました。例えば、発表したトレンドとして、「部ランチ」と「リノベパーティ」があります。「部ランチ」は、社内のコミュニケーションを図る一環として、夜ではなく昼間に部署内の交流を促す懇親会をおこなうことです。この動きが増加している背景には、近年の子育て世代の就労率とともに、夜に開催される集まりへの参加が難しいということが挙げられます。

2つ目の「リノベパーティ」は、リノベーションを友人たちと楽しむというトレンドです。リノベーション自体は2000年代初めから注目されていますが、プロが仕上げたかっこいいデザインではなく、作るプロセスを自分たちで楽しもうというトレンドがあります。また、一人ではなく一緒に友達と作るというプロセスを共有することで体験を共有し、連帯感を生み出しています。自分たちで作り、プロセスを共有することでものに対して愛着がわくようになり、機能面だけの「モノ」から、独自の体験や思い出を帯びた「コト」を重要視する流れと言えるのかもしれません。

他にも、各地で起きているコミュニティ作りのさまざまな事例について紹介します。

数年前から注目されている早朝のカフェやレストランを活用した朝会や読書会はいまでは一般的な取り組みとして、各地で定期的に開催されています。参加の理由もさまざまで、知識やスキルを身につけたい人から、社外の人との新しいつながりを作りたい、といったものなどさまざまです。

同じ趣味や嗜好をもった人同士や友人の紹介で出会うことで話も弾みやすく、定期的にイベントに参加することでコミュニティが生まれ、そこから新しいプロジェクトが生まれることもしばしば起きています。最近では、コワーキングスペースでも開催されており、会社員からフリーランス、起業家などさまざまな人たちとつながることが出来る場となってきています。

社外の人たちと協働して何かを作り出すきっかけとして、企業でハッカソンを開催する例も増えてきました。ハッカソンとは、ハックとマラソンを掛けあわせた造語で、週末などの時間を利用して、あるテーマをもとにその場で即席のチームを構成してアイデアを生み出し、開発までおこなう短期集中型のサービス開発イベントです。その場でチームを構成しコミュニケーションをしながらサービスを作るため、ハッカソンが終わった後には同じ時間と体験を共有したことで、仲間意識も芽生えます。もちろん、アウトプットのクオリティを競うこともありますが、それだけではなくハッカソンを通じたさまざまな人との出会い、互いに刺激しあう関係は、その後の参加者の仕事にも良い影響を与えるコミュニティとなっています。

こうしたコミュニティやコミュニケーションのあり方の変化は、企業や社内外だけで起きているわけではありません。

最近では、朝の時間を有効活用し、出社前に音楽やダンスなどのエンターテインメントを楽しむ「早朝フェス」が行われています。開催される理由としては、憂鬱になりがちな朝を、身体を動かすアクティビティを通じてリフレッシュし、一日を楽しく過ごそうとする点があります。さらに、一人ではなく複数人で参加するイベントのため、例えば一人でランニングをするのとは違った開放感や連帯感が生まれてきます。早朝に出会う仲間と一緒に身体を動かし、それぞれが仕事場へと向かう。そんな新しいコミュニティとして、早朝フェスは密かな人気を呼んでいます。

ネットではなく、リアルで集うことの重要性

近年、音楽業界ではCDの売上は下がってきているなか、反対にライブの売上が上がってきており、音楽をただ聞くだけではなく、音楽体験全体を通じた楽しみが広がってきています。さきほどご紹介した事例もそのすべてが、ネット上ではなくリアルの場で集い、身体を使ったり共同作業を行いしながら共有体験を作り出す取り組みでした。

そこで参加者に聞いた、同じ空間、同じ時間を共有し過ごしてよかったところを、4つのポイントにまとめました。

1.身体性

デジタル上の情報だけではわからない、相手の仕草や会話の空気感といったノンバーバル(非言語)コミュニケーションを通じたやりとりをすることで、相手のことをよく知る事が出来るようになります。互いに身体を使って何かを表現したり、相手に伝わるようにコミュニケーションしたりすることで相手と親密な関係を築きやすく、友人や会社の同僚との仲も深まりやすくなります。

2.共感性

共通したテーマや趣味の合う相手と一緒に同じ空間を過ごすことで、相手に対する信頼や相手から受ける考えに影響をされるようになる、という声も多く聞かれました。相手のことをよく知り、逆に自分のことを知ってもらう一つの場として有効といえます。

3.一過性

3つ目は、一過性に関する声です。リアルの空間はその場限りの出来事で、同じ場を作ることはできません。これは、デジタル上でコピペができる情報とは違い、リアルの場がもつ大きな要素であり、一過性があるからこそ記憶に残る思い出となります。さらに、その場を共有した人間だけにわかる「体験」も、一過性があるからこそ生まれます。お祭りなどが開催された事実は後々把握出来ますが、それに参加し、体感したからこそ生まれる「体験」は、後になって味わう事はできません。

4.関与性

誰かと共同作業することで、自分自身もコミュニティ参加している帰属意識が生まれ、かつ他者に対して何かを貢献したり、自身の考えを盛り込んだりすることができます。自分が発したアイデアがアウトプットに反映されることでつながりの意識が生まれやすくなります。

リアルの場を通じたコミュニティやコミュニケーションは、これら4つの要素を含んでおり、ネットでは得られないリアルの場ならではと言えます。また、イベントも一回で終わるのではなく、継続して定期的に開催することによって、馴染みのメンバーと新規のメンバーが入れ替わりながら、一つのコミュニティとしてさまざまな人たちとつながれる価値あるものになっていきます。

オンラインではできない社内とのつながり、社外とのつながり、誰かと何かを共有し、共通体験をすることができるリアルの場を通じて、さまざまな人とつながりをもてるコミュニティづくりが、求められることが増えてきた、と言えるでしょう。

コミュニティづくりに必要なファシリテーターの能力

さまざまなイベントや企画が増えてきているからこそ、企画や主催に携わる人には、コンテンツ作りや円滑な運営のためのファシリテーションが求められてきます。

こうしたイベントは、ただ人を呼ぶだけでは意味がありません。その場には何かしらの目的があり、その目的を達成するための共同作業やコミュニケーションが必要で、さらにそのやりとりが円滑にできるかどうか、で共有体験の価値も変わってきます。事前準備やテーマ設定、どういう手順で作業するかといった設計をおこなう必要があります。

しかし、ファシリテーションと言っても何か難しいものがあるわけではありません。これは、例えるなら友人のバースデイパーティを企画することに近いものがあります。どのお店にして、どんな料理にして、どんなプレゼントにして、どのようにメンバーを集めて、どう説明し、どのタイミングでバースデイケーキを出すか、ということを考えることだと想像すると分かりやすいかもしれません。いかに参加したことに価値があると思ってもらえるものにするか。参加した人たちそれぞれに喜んでもらえるための、準備から終わりまでを丁寧に考えることと言えます。

コミュニティを通じて仕事の刺激と成長の機会に

ネット上ではSNS等のコミュニケーションツールを通じて相手の気持ちを分かった気になりがちですが、意外とそうでもなかったりします。相手のことを深く知り、理解するためにも「同じ釜の飯を食う」ような同じ空間と時間を共有することで、つながりや親密さを生み出すことができるのです。こうしたリアルのイベントや場に参加することにも意味はありますが、せっかくなら実際に自分自身で企画してみることをおすすめします。

人が集うコミュニティや相手と円滑にコミュニケーションする場を考えることは、人を考えることと似ています。その根底には、どうすれば相手やその周囲の人たちが満足するか、喜ぶかということを考えることをがあります。さらに、そうした学びの意識をもって他の人が参加するイベントに参加することで、どんなふうにイベントを企画しているか、という設計の思想について学ぶこともできます。

また、ファシリテーターの要素は、仕事に置き換えればリーダーシップにつながる能力であり、円滑なコミュニケーションの場を醸成する能力として機能します。つまり、コミュニティづくりを通して、自分自身にとっても成長の機会を作ることができるのです。

さらに、仕事の現場だけではなく、オフの時間に他の分野の人たちとつながることができるのもコミュニティの良いところです。互いに刺激し合える友人関係を構築することで、自分自身を成長させたり、自身のあり方を見つめなおしたり、生きがいを見出したりすることもできます。仕事においてもプライベートにおいても、コミュニティ作りの経験はプラスに大きく働くと言えるでしょう。

なにも、はじめから大げさなものをおこなう必要はありません。まずは数人規模でいいので自分自身で企画して周囲の友人を誘い、自分自身の旗を立てたコミュニティを作ってみましょう。小さな場を作る経験から得られる失敗・成功が、新しい成長の機会となることは間違いありません。

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