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独自の美意識で未来と世界を洞察し続けるコンサルタント 山口周さんのリクルート考

Recruit , イノベーション , グローバル , マーケティング , 事業推進 , 多様性 , リクルート考

波待ちせず飛び込む勇気がDNAに 次世代ビジネスを制して欲しい

リクルートグループは社会からどう見えているのか。私たちへの期待や要望をありのままに語っていただきました。

リクルートグループ報『かもめ』2019年3月号からの転載記事です

時代が大きく変わる瞬間 機会を捉えるセンス

新卒で入った会社は電通でした。あるウイスキーのCMに憧れていて、CMを作るという仕事があるんだと衝撃を受けました。もちろん『SUUMO(当時住宅情報)』や『エイビーロード』などメディアのユーザーとして随分お世話になりましたし、電通時代は、同じ広告業界の企業として常に新しい仕掛けをしているリクルートの動きを意識していました。

コンサルティング会社に転職してからは、同僚にOBOGの方がたくさんいました。ビジネスを面白がってやっている方が多いし、地頭が良くて元気のいい人が多いという印象でした。

1995年前後でインターネットが出てきた時点でいうと、脅威でもありチャンスでもあった。メディア産業やマスコミ産業に携わっていたほとんどの企業は、インターネットが出てきたことで広告料のテーブルも変わり効果が可視化されるようになったりと、マイナスのインパクトを被ってると思うんです。電通なんかもそうだったと思います。

当時僕は、まだ出版業や輸入ゲーム販売などもしていたソフトバンクの営業担当でした。孫社長が「アメリカでヤフーという会社が出てきた」と未来のビジネスアイデアについて熱く語ってくれました。

しかし当時の電通でも多くの企業同様に、インターネットを脅威として捉え、既存のビジネスをいかに守るかという議論のほうが多かったように感じました。自分たちが積み上げてきたビジネスに対するノスタルジーからか、領域を荒らすものとして捉え、脅威に感じやすいのが日本人の癖なのかもしれません。

失敗でチューニングする 加点法の発想が未知を拓く

一方、リクルートはこの波をとらえて大きく変化した。紙の事業に固執しすぎず、うまくインターネットというものを活用して情報プラットフォーム企業への歩みを進めましたね。『MIX JUICE』というポータルブランドを立ち上げたと思ったら、すぐに各メディアのブランドを掲げたバーティカルサイトに変更したり。

リクルートはトライ&エラーを続けながら、変化の波のいわば一番先端にサーフィンで波乗りするようにしてやってきた。トライのなかにエラーがあったからこそ、さまざまな知識や経験値が蓄積され、フロントランナーで居続けられるのではないかなと思います。

トレンドになってから始めようと波待ちをしている企業は多いですが、結局ファーストムーバーに市場は占有されてしまう。日本の書店もEコマースへの切り替えに時間をかけているうちに、結局海外企業に市場そのものを脅かされるような状況になってしまった。リクルート的なマインドセットが、今求められているのではないかと感じています。

国内とグローバルの戦い方の違い グローバルニッチの横展開

リクルートも急激にグローバル化されているので、国内とグローバルでの戦い方の違いを実感されていると思います。日本は人口がそれなりにいます。国内で最大公約数の需要を獲得すると、ある程度ビジネスになるという勝ちパターンから抜けられない企業が多い。

グローバルにも同様の目線を持ち込んで、50%の人が使う可能性があるサービスを考えようとしてしまう。グローバルでの勝ち方が違うことに気付かないのです。50%のシェアが取れるターゲットの広い、何となくぼんやりしたものを作っても、他国のマーケットでは競合も多いし、売れないわけです。

逆に、国内ではたった5%のシェアしかないけれど、めちゃめちゃ刺さるテイストのもの、差別化された尖ったサービスができると、それが各国の5%の市場に刺さり、結果大きな市場になっていくということがいろいろなところで起こっています。

一番典型的なのはイタリアやフランスのラグジュアリーブランドですね。エルメスってたぶん市場の1%ぐらいしか買える人がいないと思うのですが、先進国の人たちのトップ1%に好まれたために、グローバルで展開しビジネスとして大きく成長した。妊婦向けのスーツなどもグローバル展開することでひとつの市場になった例。

日本では、南部鉄瓶やセイコーの機械時計とクオーツのハイブリッド型時計なども成功例として挙げられます。日本国内では市場が小さすぎて開発停止寸前だった時計が、ドイツの環境意識と技術に対する敏感さから火がついて世界中で大ヒットし、日本に逆輸入する形で広まりました。

こういったグローバルに向けたニッチ市場を見つけていくためには、単に組織を多様化するだけではダメです。視野を広げ世の中の課題に対して、何か憤る感覚のようなものを大切にすること。それこそがビジネスチャンスにつながります。Airbnb もカンファレンスの時にホテル価格が急騰して、一般旅行者が泊まれないという憤りのようなものがスタートでしたね。

これまで世の中の情報格差を解消してきたリクルートの情報ビジネスを、さらに他の手段も含めて、世の中を驚かせていきたいという気持ちを大切にしながら、新たなチャンスを見つけていって欲しいと思います。リクルートの人たちであれば、それをビジネスにつなげていくことが得意なのではないかと思うので、多様性をベースに、自分たちの感覚を大切にしてチャレンジしてもらえるといいんじゃないかなと思います。

プロフィール/敬称略

※プロフィールは取材当時のものです

山口 周(やまぐち・しゅう)

コーン・フェリー・ヘイグループ株式会社 シニア・クライアント・パートナー

1992年慶應義塾大学文学部哲学科卒業、同大学院文学研究科美学美術史学専攻博士課程修了。電通、ボストン・コンサルティング・グループ等を経て、組織開発・人材育成を専門とするコーン・フェリー・ヘイグループに参画。現在、同社のシニア・クライアント・パートナー。専門はイノベーション、組織開発、人材/リーダー育成。株式会社モバイルファクトリー社外取締役。一橋大学経営管理研究科非常勤講師。『外資系コンサルが教える 読書を仕事につなげる技術』(KADOKAWA刊)、『知的戦闘力を高める 独学の技法』(ダイヤモンド社刊)など、著書多数。妻と3人の子どもたちとともに神奈川県葉山町に在住し、ボディボードを楽しむ。

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