withコロナの時代。私たちが働くうえで大切にしたいマインドセット

withコロナの時代。私たちが働くうえで大切にしたいマインドセット

文:森田 大理

新型コロナウイルスの感染拡大が社会を一変させている。従来の常識や当たり前が通用しない今、私たちはどうこの社会と向き合うべきか。過去のインタビューからそのマインドセットのヒントを紹介する

世界中で新型コロナウイルスの感染拡大に伴う厳戒態勢が続いている。日本でも、2020年4月7日に初となる緊急事態宣言が発出。感染防止策として、人との物理的な距離を取って接触を減らすソーシャルディスタンスの実践が強く求められ、医療や生活の維持に必要な業種を除いて、不要不急の外出は自粛されるようになった。5月25日に緊急事態宣言は全面解除されたが、油断のできない状況であることに変わりはない。

こうした動きの中で、私たちの働き方も急速に変化している。オフィスに出社できない。お客様に会えない。家族が隣にいる環境で仕事をする...。みんなが安全な環境で社会活動を続けるには、私たち一人ひとりがどう働くと良いのだろう。そのヒントになる考え方や価値観を、これまでのMeet Recruitのインタビューから厳選してお届けする。

(※数字、各種情報はいずれも取材当時のものです)

根拠のない安心を捨てよう(北極冒険家・荻田泰永さん)

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緊急事態宣言下で一人ひとりが正しく判断・行動をするためには何が必要なのだろう。そのヒントにつながる話題を展開してくれたのが、北極冒険家の荻田康永さん。このまま前進するべきか、それとも道を戻って別のルートを進むべきか。冒険中、命にかかわる究極の選択を何度もおこなってきた荻田さんは、経験によって判断を間違えてしまう危険性を語っている。

"ただの偶然でしかない成功体験は、言わば、悪しき前例です。もし、今後の冒険で同じような状況に陥ったとき『あのときと同じように、今回も大丈夫』と判断を下す根拠になってしまう。そのとき成功する確証はありません"

過去の成功体験が、常に通用するとは限らない。それはコロナによって一変したビジネス環境下で、従来通りのやり方を続ける行為がかえって危険を招くことにも共通するだろう。また荻田さんは、危機的な状況にあるほど願望が強くなり、目の前の事実を歪曲しはじめる現象についても言及する。

"例えば、何も確証がないのに『明日はきっと晴れるはず。晴れれば遅れを取り戻せる』と、架空の希望的な戦略ばかりを考え始めてしまうのです。前提が仮定ですから、戦略としては機能しません。しかし、願望が強くなると、それがまるで論理的な思考回路のように感じてしまうのです"

北極ほどとは言えないかもしれないが、今の私たちが平時とは大きく異なる環境にいるのは事実だ。過去の成功は一旦捨て、楽観的な憶測も控え、目の前の事実をもとに冷静に判断する力が求められているのかもしれない。

過去のインタビュー記事はこちら
偶然の成功は「悪しき前例」となる。北極冒険家がゴール直前でも道を戻る理由

仕事のルールを主体的に捉えよう(法律家・水野祐さん×リクルート山﨑牧子)

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働き方を変える動きも急速に進んでいる。しかし、物理的な制約のある仕事が働き方を変えられないのは仕方がないにしても、柔軟な働き方がしやすいオフィスワークでさえ企業の慣習やルールが壁となっているケースが少なくない。

こうした状況に置かれている人に紹介したいのが、法律家・水野祐さんとリクルートM&A法務部の山﨑牧子(取材当時)との対談記事。水野さんは、ルールを主体的に捉えて乗り越えて行く「リーガルデザインマインド」に関する話の中でこう語っている。

"「ルール」とは既存の何かを縛るものであると捉えている方が多い。でも、その逆なんですよ"

ルールを上手に使いこなせれば、変化の足枷ではなく、組織や社会をより良くしていけるものになる。そのための具体的な動き方についても水野さんは以下のように提言している。

"私はよく「法務部と共犯関係を結べ」というアドバイスをします。大企業であれば社内にひとりは「ちょっと変わった法務パーソン」がいるんですよ。守りに徹する人ではなく、実現にむけ頭をひねってくれる法務パーソンを味方につける。プロジェクトの素案ができあがってから相談するのではなく、初期から伴走してもらう"

「どうせルールだから」とはじめから諦めていないだろうか。今私たちが身につけるべきは、既存のルールを前向きに捉え、直面している課題にあわせて味方につけるマインドだと言えるのではないだろうか。

過去のインタビュー記事はこちら
新しい価値作りのために「ルール」を主体的に捉える 法律家 水野祐・リクルート山﨑牧子

在宅勤務でつまずくかもしれないことを知っておこう(エバーセンス)

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不要不急の外出自粛が叫ばれるようになって一気に推進された日本のテレワークだが、株式会社エバーセンスはそれ以前の2013年からテレワークを実施していた企業だ。同社ではかつて、「社員がご機嫌に働くため」に社員全員で在宅勤務にチャレンジ。その過程からは、今まさにテレワークをはじめたばかりの企業が、これから直面するだろう課題が学べるかもしれない。

"直接顔を合わせることが減る分、コミュニケーション上の不便が多少発生する心配はありましたが、「Slack」や「Googleハングアウト」などのコミュニケーションツールを導入すれば、大きな問題にはならないだろうと考えていました"

コミュニケーションやマネジメントの問題は、ツールを駆使すれば解決できたと同社代表の牧野哲也さんは語る。当初は通勤電車に乗る必要もなく極めて効率的な働き方だったと思っていたそうだ。ところが、大きなトラブルもなく滞りなく業務が進んでいくのに、社員の仕事への満足度が下がり、業績も伸び悩んでしまう。

"チームとしての一体感が薄く、良いプロダクトをつくるための議論が発生しにくい環境になっていたことだと思います。決して仲が悪いわけではなかったのですが、効率を優先するあまりに意見の衝突を避けがちになり、小さな気づきや細かい意見を言うことが減り、無難なアイデアしか出なくなってしまった"

この経験からエバーセンスでは、テレワークの代わりにメンバー同士の相互理解を深めるための創意工夫にシフト。テレワークは緊急時の選択肢として残し、メリット・デメリットの両面を意識して活用してきたという。

もちろん、現在の状況では選択肢も限られている。しかし、働き方の特性を理解してどう工夫をするかが、ソーシャルディスタンスな働き方を続けるうえでの鍵になりそうだ。

過去のインタビュー記事はこちら
「自由な働き方」より「選択肢のある働き方」を。エバーセンスがたどりついた、働き方改革の本質

情報を誠実に伝えよう(JAXA)

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2001年の同時多発テロ事件。2011年の東日本大震災。21世紀の20年をさかのぼってみても、私たちは何度か社会を揺るがす大きな危機を経験している。しかし、こうした出来事が訪れる度に突き付けられるのが情報発信の難しさだ。

氾濫する情報が人を惑わせ、なにかと過敏になりがちなこの時代。相手に意図を正しく理解をしてもらうためのヒントとして紹介したいのが、2018年にお話を伺った宇宙航空研究開発機構、通称JAXAの広報活動だ。

JAXAの国民の知名度は89%(取材当時)と驚異的な数字を誇るが、実は2004年時点では23%ほどしかなかった。これほどまでの認知度向上は、広報が大小様々な活動を地道に発信し続けてきた努力の賜物だろう。

プレスリリース、記者会見、説明会・勉強会などの合計は年間300(取材当時)にも及ぶが、なぜそこまでするのかと言えば、「我々には説明責任がある」という広報の考え方に基づいての活動だと広報部長(取材当時)の庄司義和さんは言う。

"(国費から)1,500億円をいただいているからには、良いことも悪いことも伝えていかなくてはいけない。だからこそ、透明性、即時性、双方向性には、非常に重きを置いています"

これは独立行政法人であるJAXAだけでなく、企業にも言えること。今の時代、企業の一挙手一投足が批判に晒されるリスクを抱えている。だからこそ、発信する情報に対しても、情報を受け取る相手に対しても、いつも以上の誠実さを持って臨みたい。

過去のインタビュー記事はこちら
今の時代に不可欠。手間と努力で「情報を誠実に伝える」 JAXAの姿勢に学ぶこと

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