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育児と仕事の「両立支援」はどうあるべき? 企業事例から学ぶ最新事情

2017.06.28

出産後も仕事を続ける女性は、年々増えています。 2009年まで40%前後だった第一子出産後の就業継続率は2010~14年で53%と半数超に (※)。一方で、子どもの預け先が確保できず復職できないケースや、 復職後も企業がどのように保育をサポートするべきかが重要な問題になっています。

そこでリクルートホールディングスでは、保育支援の充実を目指す企業の 人事/ダイバーシティ推進担当者を対象に、『ictionセミナー 今後の 両立支援はどうあるべきか~企業ができる保育/両立支援とは』を2017年5月29日 に開催しました。

東京では「2万人以上」が認可保育施設に落選

第一部は、ワーキングマザーを総合的に支援している 「株式会社マザーネット」の代表取締役社長・上田理恵子氏をお迎えし、 「保活コンサルの現場から~従業員は何に困っているのか」というテーマで お話いただきました。

上田さん自身も2児の母。仕事と子育ての両立に悩んだ経験から、 1994年に「『キャリアと家庭』両立をめざす会」を設立し、 当時から保活の相談や両立の悩み相談を受けていました。 2001年にマザーネットを設立。子どもの急病時にスタッフを自宅に派遣する サービスを日本初でスタートし、2013年には「保活コンシェルジュサービス」を始めています。

株式会社マザーネット代表取締役社長・上田理恵子氏

保活を取り巻く状況は、マザーネットがサポートしている中でも、 東京23区のみならず、地方政令都市でも厳しい現状があるようです。 「行政もとても頑張っています。定員も増やしているんですが、 それ以上に小さい子どもがいても働き続けたいというお母さんの増加率のほうが高いので、 このような状況が起きています」と上田さんは話します。

こうした厳しい「保活」の現状の中で、上田さんは「役所には出産前に行き、 納得いくまで何度も質問する」「認可外保育所は先着順なので、早めに見学に行って登録する」 「激戦区では、とにかく入れそうな園を第一志望にする」など、 毎年変化する状況をいち早くつかみ、早めに入れるところを確保することの 重要性にも触れていただきました。

仕事と育児の「両立」に悩む人が増える中で、企業からも悩み相談を受けることが多いと 上田さんは言います。人事からは「一斉に育休者が出そうだが、 どんな支援策から着手すればいいか」、現場のマネージャーからは 「育休や時短社員を他の人がカバーしているが、もう限界」といった声がよく寄せられるそうです。

保活コンシェルジュサービスや認可外保育所の利用補助など「早期復職支援」や、 ベビーシッター利用を補助するなどの「子どもの急病や残業に対応」、 ワーキングマザー自身の「キャリア形成支援」、「上司の意識改革」 のための研修を実施するなど、企業の年齢構成やフェイズによって導入すべき 制度は違うのかもしれません。

「女性活躍支援と保育支援は、両立だと思います。重要な仕事を任せる以上、 サポートする体制がないと働き続けられない。早期に復職し、 真剣に仕事と育児を両立する人への積極的な支援を、できることから一歩一歩進めてほしい」(上田氏)

ライフイベントに左右されず、自分らしいキャリアを

こうした「両立支援」を進めている企業も増えています。セミナーの第二部では 「両立支援を進める企業によるパネルディスカッション」として、楽天株式会社、SCSK株式会社、 株式会社リクルートホールディングスの3社が自社の取り組みを紹介し、 これからの「両立支援」について議論を行いました。

楽天株式会社は、「ライフイベントに左右されず、 自分らしいキャリアを築き社内で活躍するための支援がコンセプト」だと、 登壇したグローバル人事部の牛山典子氏は話します。 約5,500人の社員のうち約4割が女性。産休・育休を取得する従業員数も前年度比で 20%以上上昇しています。

楽天株式会社 グローバル人事部 牛山典子氏(左)

特徴的なのは男性の取得率の高さで、育休取得者のうちの約1割は男性だそう。 育休後の復職社員割合は95%以上で、社内託児所や社内搾乳室など施設面、 時短・時差勤務、病児ベビーシッター法人契約など制度面からも支援を行っています。

復職後子どもが3歳になるまで、保育料の"半額"を負担

SCSK株式会社は、約7,300人の社員(単体)のうち、女性比率は17.5%。 2006年当時は、女性社員の約7割が30代前半までに離転職している状況でしたが、 現在は4割弱が小学生以下の子どもを育てながら就業し、年間200人が育休取得、 ほぼ100%が復職しているといいます。

施策は大きく3つにわけられています。残業時間20時間以内、 100%の有給休暇取得を定着させる「スマートワーク・チャレンジ20」、 「仕事と育児の両立支援」、さらに当初は13名だった女性のライン職を100名 (現在は75名)にするという目標を掲げた「女性の活躍推進」の3つです。

特に両立支援制度としては、通算3年間を6回まで分割して取得できる育児休業、 復職後子どもが3歳になるまで保育料の半額を補助、さらに本人もしくは親の転居により フルタイム勤務が可能になる場合の転居費用補助(50万円まで)など、 ユニークで多様なサポートが準備されています。

さらにスムーズな復職を叶えるために、産休・育休前、そして職場復帰の際に、 仕事と育児の両立を実践するための面談やセミナーを行う「職場復帰支援プログラム」も整備。 同社人事企画部・ダイバーシティ推進課の酒井裕美氏は、 「これらはすべて育児をしながら安心して働き続けられる職場環境を整備することを目的に 導入しています」と話します。

SCSK株式会社人事企画部・ダイバーシティ推進課 酒井裕美氏

両立支援には"保育確保の安心提供"を

リクルートグループは経営理念である「個の尊重」の実現に向けて、 男女の性差なく従業員一人ひとりが能力を余すことなく発揮できることが重要であると考え、 2006年からダイバーシティ推進の取り組みをスタート。2008年には育児との両立支援として、 事業所内保育園「And's(アンズ)」を設置したり、在宅勤務制度、 ベビーシッター法人契約を整備したりしました。さらに2015年からは、 男女関わらず個のさらなる成長と、それによる新しい価値の創造を目指し、 本格的なワークスタイルイノベーションに着手しています。

たとえばリモートワークの導入。現在はリクルートグループ約3000人が利用しています。 また、キッズスペース付きのサテライトオフィスの設置。リモートワークを進めるうえで、 子どものそばで安心・集中して働ける環境のニーズが高まり、2016年10月に試験的に設置しました。 両立支援においては、こうした保育確保の安心提供が重要ではないかと思い、試験導入を行いました。

さらに最近のポイントとしては、"マネジメント層を始めとする社員に、 ダイバーシティ&インクルージョンを理解してもらうことが大事"ということで、 育児をしながら働くを体験する「育ボスブートキャンプ」という取り組みを、 リクルートマーケティングパートナーズで行なっています。育児経験のない管理職が、 社内のワーキングマザーの家で4日間の育児体験インターンを行うプログラムです。

さらに、リクルートグループの一部企業では、男性従業員の5日間の育児休暇取得を 必須化しています。「なぜ男性も育児休暇が大事なのか。パパが育児を体験することの意義、 実際に取得した社員の声の紹介など、啓発のためのイベントや社内メールマガジンの 配信も行っており、結果として男性の育児休暇・休職の取得率は、 2016年度は4.3%であったところから、2017年度は12.4%まで高まっています」 とサステナビリティ推進室室長の伊藤綾氏は話します。

株式会社リクルートホールディングス・サステナビリティ推進室室長 伊藤綾氏

会場からも質問が寄せられ、熱のこもったパネルディスカッションに

3社のパネルディスカッションでは、各社の特徴的な制度・ 施設について具体的な質疑が交わされました。

楽天について「新しい」という声が出ていたのは搾乳室。 この設備には、会社の"復職してほしい"というスタンスが表れていると牛山氏は言います。 「搾乳室があって、冷凍庫がある。これだけで、社員の満足度や安心感が醸成されました。 育児休暇を1年にしようかな、半年にしようかな、というときに、会社に搾乳室があるなら 半年にしようかな、という社員も増えています。」

一方で、ハード面の設置ではなく金銭面の補助がメインとなっているSCSKは、 社員へのきめ細かなリサーチを元に、現在の制度を作ったといいます。 "もし事業所内保育所ができた場合、どんな条件で利用したいと思うか" という事前のアンケートでは、99%が"自宅付近の保育所に預けたい" という回答だったそうです。「弊社の場合は通勤時間が平均50分。 車での通勤も認めていませんので、子どもを連れてくるのが大変。 そのため、自宅付近の希望が多かった。そうしたらできる補助は金銭的な補助だということで、 3歳までの保育所が高額な時期は半額の補助をして、その代わり"早く復職してね" というメッセージを添えてこの制度を導入しました」(酒井氏)

リクルートグループで注目度の高かった取り組みは「育ボスブートキャンプ」。 育児経験のないマネージャーが、実際のワーキングマザーの家庭に入ると、 その忙しさの"驚きと受容"から始まるといいます。 「回を重ねると"育児と仕事の両立はハンデだ、という捉え方は間違っていた。 マルチタスク能力の高さに気付いた"といったメンバーの強みの発見になっていく。 マネジメントの概念やダイバーシティ推進が大事ということを概念的に理解しているだけでなく、 どんなマネジメントをすれば良いかという直観的理解が求められているの ではないかと思っています」(伊藤氏)

その他、「育児期間をどのように設定しているのか」「昇進や昇格への影響について」 「企業内保育所の募集方法」などの質問が寄せられ、改めて、多くの企業にとって 「両立支援」は関心の高いテーマであることが伺えました。


※国立社会保障・人口問題研究所 第15回出生動向基本調査(2016年発表)より

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