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MSDのケース ― 企業の"多様性を活かすカルチャー"が生んだ「新しい育児休業」のカタチ

2018.04.13

人口に占める働く女性の割合において長らく課題とされていた30~40歳代の部分が顕著に落ち込む 「M字カーブ」と呼ばれる特徴が薄れてきていることが分かってきており、 働きながら育児をする女性は確実に増えていると言えます。 しかし、妊娠・出産後にひとたび育休を取得したとしても、 「育休からの復帰後も同じ働き方ができるだろうか」 「仕事と育児を両立できるだろうか」といった不安はどこまで払しょくできているのでしょうか。

製薬会社のMSDは、働く人の視点でダイバーシティ&インクルージョンを推進している企業のひとつです。 "Female Leaders""子育て&介護""障がい者支援""ボランティア"など、 社員主導で活動する会社横断的ネットワーク組織があるのも「MSDスタイル」。 社員らの視点で、誰もが働きがいのある企業風土、職場の実現に取り組んでおり、 経営陣が"スポンサー(相談・指南役)"としてその活動を支援しています。

成果主義が、より先進的でフレキシブルな働き方を実現する

子育て&介護分野のスポンサーとなっているのは、執行役員の梅田千史(うめだ・ちふみ)氏。 自身も2児の母であり、しかも出産のタイミングはキャリア上でのターニングポイントでもあったと 言います。

「最初の育児休業は会社統合時、2度目は、財務担当執行役員に就任する直前。 実は、昇進を打診されたときに社長に妊娠を打ち明けたのですが、 『おめでとう。まったく問題ないよ』と言ってくれました。こうした経験を、 ぜひ会社に浸透させたいと思っていました」

梅田千史氏(執行役員/急性期・病院製品(肝炎・感染症・麻酔)ビジネスユニット統括 兼 ワクチンビジネスユニット統括)

MSDでは「10カ年戦略」を策定しており、中長期ビジョンとその実現のために各部門・部署が何をすべきかという戦略が明確に示されています。これにより「本質的な成果主義」が運用できるようになります。"今、自分は何をすべきか"を各社員が自分ごととして理解できるまでディスカッションを重ねますし、実現に向けての進め方はできる限り各社員に権限委譲されます。社員が自由な発想で考え、行動するためには、働き方もできるだけ柔軟である必要があるのですが、MSDではこの成果主義のおかげで、裁量労働制、事業場外みなし労働制、事由を問わない・日数上限のない在宅勤務制度等の社員の自律性を重視した柔軟な働き方を存分に活用することができるのだと思います。

「その後、1,000名を超える営業部隊の統括を担当することになり、 より営業現場の近くで働き方の改善を徹底しました。 医薬情報担当者(MR)は全国転勤が当たり前の営業職なのですが、 当社は、本人の価値観やライフイベントに合わせて転勤の無い働き方を選べる「日本MSD」 という勤務地限定職の販促子会社も設立し、社員自身が、働き方と人生を自分らしく選ぶことの できる環境を整えています。なお、日本MSDにいったん転籍した後も、 本人の希望があればMSDに復籍することが可能です。」

このように働き方がフレキシブルになっていく中で、 2017年10月から始まったユニークな取り組みが"育児休業しながら少し仕事できる"という制度です。 たとえば、休業期間の終盤に"慣らし業務"のような形で、 少しずつでも業務との接触をつくる。そうすることで、 冒頭のような女性たちが抱く育休後の復職不安や両立不安を少しでも減らせるのでは。 そうした期待を持ってこの制度の構想が社内でスタートしました。

しかし、この構想は思わぬ形で実現します。2015年に営業職のある男性社員が 「育児休業を取得したいが、顧客に迷惑がかかるのでは...」と悩んでいた際に、 人事部門が育休取得を後押し。「休業中でも緊急の案件が生じた場合、 本人の意思と上長の承認に基づいて、少しだけ業務ができる」という対応が試験的に許可されたのです。

「男性社員にも育児休業を取得してほしかったのです。 この社員は第一子の育児だったので、非常に貴重な期間ですから。 もちろん育休期間は"育児に専念するための期間"なので、完全に休む社員がほとんどですが、 こうした現場の声に対応することも、多様性を認めるフレキシブルな MSDのカルチャーに合っていると考えています」(梅田千史氏)

育休は"家族とは""仕事とは"を再考する、素晴らしい期間

こうして整備が進んでいったこの制度を、試験運用期間に利用した男性社員がいます。 梅田真史(うめだ・まさふみ)さんは、2017年の7月末に第三子が生まれる際に、 この仕組みを利用しました。8月の1カ月は丸々休み、9月、10月は週1~2日、 自宅からテレビ会議に参加したり、資料づくりを行ったりしました。 気づきは非常に大きかったと言います。

「8月の休業中に1日だけ研修に参加したのですが、家で妻と子供とだけ話す生活をしていた私は、 いわゆるビジネスで使う言葉が全く出てこなかったのです。 "これは女性も復職が不安になるはずだ..."と身をもって理解しましたね。 9~10月は上司の承認のもと少しずつ仕事をしたおかげで、 復帰後の11~12月の業務へスムーズに入っていけました。非常に忙しい月だったので、 もし3カ月丸々休んでいたら、相当苦しかったと思います」

男性女性問わず「育休によって視野が広がるのでは」と梅田真史氏(経営戦略・コマーシャルエクセレンス部門 顧客エンゲージメント シニアスペシャリスト)

これまで、仕事中心の生活だったという真史氏。"順調なキャリアを歩めば、 自然と家族は幸せになるものだ"と考えていましたが、育休中にそれは間違いだったのかもしれない、 と気づかされたと言います。特に、4歳の長男の存在が大きかったそう。

「平日の仕事帰り後や週末だけではなく、普段の時間を一緒に過ごしたことで、 長男が自分のほうを向いてくれた。パパの価値を分かってくれたと思ったのです。 私にとって3カ月の育休は、"家族とは""仕事とは"を再考する、素晴らしい期間だったと思います」

こうした気づきは男性・女性問わず、仕事や人生に新しい目的を与えてくれるかもしれません。 こうした柔軟で多様な働き方の推進、多様な管理職の登用をさらに推し進めると、 前出の梅田千史氏は言います。

「社会全体としても、環境は少しずつ整ってきている。だからこそ、 一段上のキャリアを目指すときなのか、育児に専念してみたいのか、 自分がいま何を大事にしたいのかをしっかり見つめ直して、 それを会社や周囲に伝えてほしいのです。自分の思いを大事にして、言葉にしてほしい。 そうすることで助けも得られやすくなるし、多様な人が目的を持って 働ける社会に変えていけるのだと思います」


◆参考情報

MSD株式会社

働きがいのある職場づくり

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