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イクボス充実度1位の自治体では、何に取り組んでいる?北九州市内の企業、ダイバーシティ推進の最前線

2018.09.25

iction!が、女性の就業及び子育てとの両立支援に関する連携協定を結んでいる、北九州市。同市は、民間団体による自治体イクボス充実度ランキングや次世代育成環境ランキングで全国1位となるなど、働き方改革や仕事と育児の両立推進に力を入れています。では、この自治体に本拠地を置く企業では、女性活躍及びダイバーシティ推進をどのように捉えているのでしょうか。iction!×北九州市の取り組みをご活用いただいている企業から、2社の活動をご紹介します。

過度な配慮は女性も望んでいない お互いを理解し、多様性に対応できる風土醸成を

―安川電機は、経済産業省が主催する「新・ダイバーシティ経営企業100選(平成28年度)」に選ばれるなど、多様な人材の活躍に注力していますが、この取り組みにはどのような背景があるのでしょうか。

株式会社安川電機 人事総務部 人事労政部 人材多様性推進課 課長代理 山崎美和様

大前提となるのは、事業のグローバル化です。当社は北九州市に本社を構えておりますが、世界各地に拠点・グループ会社があり、海外の売上高構成比は7割。従業員も多様化しており、グループ全体でみると外国籍社員は5割弱にもなります。そのため、会社として社員の多様性を尊重し、一人ひとりがお互いの違いを受け入れ生かすことで、ビジネスにもイノベーションを起こしていこうと2014年下期から人材多様性推進をスタートさせました。その第一歩が"女性の活躍"だったのです。

当社における女性活躍の課題は、単に「仕事と育児の両立」というよりは、出産・子育てと並行して仕事の実績を積み、責任あるポジションを目指す人が少なかったこと。それを阻んでいたのは、マネジメント側の意識と、女性本人の意識、両方でした。

以前から女性の部下を抱える管理職は、「今は女性が出産後も仕事を続ける時代だ」と理解はしていたようですが、一部では「両立は大変だろう」と過度に配慮する意識が働いていました。その結果、キャリア志向だった女性が男性社員のサポートやアシスタントにまわってしまい、やりがいを失っていたのです。責任の大きな仕事をしたいという女性が、ライフイベントを経ても継続的に働きがいを感じられる環境をつくることが必要でした。

―iction!×北九州市で、企業に活用を促進している『カムバ!』『カムバ!ボス版』を導入されたのは、なぜですか。

以前から人事では、産前・産後の女性社員と面談を実施しておりましたが、その場では人事制度・手続きなどの説明が中心でした。しかし、先ほどのような課題を踏まえて、面談の場はキャリア相談に比重を置くことに。また、社員からは妊娠中・育休中の情報提供のニーズがあり、どのように拡充したら良いか検討していたところ、タイミングよく北九州市からご案内いただいたのが、『カムバ!』でした。

また、女性向けの『カムバ!』とあわせて、管理職向けのメルマガサービス『カムバ!ボス版』もあったため、当社の課題である女性と管理職のそれぞれにアプローチできるのが良いと感じ検討することにしました。

まずはダイバーシティ推進担当から使ってみたところ、『カムバ!ボス版』を利用した男性社員からは、「知らないことが多かった」という意見がありました。「妊娠何週目の女性が、どういう状態にあるのか」など、育児への携わり方が消極的だった世代の男性には、学びが多かったようですね。また、イクボスになっていくべきだという想いはありながらも、具体的にどう行動に移したら良いか分からない上司にとっては、今すぐアクションするためのヒントが詰まっていたようです。配慮すべきところと、女性に頑張ってほしいところの線引きがしやすくなったのではないでしょうか。

女性向けの『カムバ!』も、きめ細やかな情報が受け取れるため、何か困ったら女性社員が参考にしてもらえるツールとしてありがたいですね。また、妊娠中の女性にとっては、自分の上司が『カムバ!ボス版』を受け取っているからこそ、自分からは言い出しにくい妊婦の体調変化などが伝わっているのも安心材料になると思います。

―これまでの推進活動を踏まえて、女性活躍にとって何が大切だと思いますか。

弊社の女性活躍は、ダイバーシティ推進の一環でもあるからこそ、女性だからといって一括りにしてはいけないなと実感しています。理想とする働き方や人生観は一人ひとり違うもの。会社としてありたい姿を実現するのが前提ではあるものの、一人ひとりの多様性に注目して、柔軟に対応できるマネジメントが大切だと考えています。

そのためには、職場での普段からのコミュニケーションがより活性化され、それぞれの状況や志向を互いに理解できる環境をつくることが必要なのだと感じました。

また、これまで弊社は、女性への取り組みに注力し一定の理解が進んだため、今期以降は、介護との両立や障がい者雇用の促進、LGBTへの理解促進など、本当の意味でのダイバーシティへと推し進めていく方針です。まずはお互いを認め、理解していくところから。それを進めた先には、多様な人材の活躍を実現できると考えています。

企業概要

  • 株式会社安川電機
    主な事業内容:産業用ロボットをはじめとしたメカトロニクス製品の開発・製造

女性だけの店舗運営や、超短時間勤務にも挑戦!前向きに働き続けられる会社を目指して

―極東ファディが社員の仕事と子育ての両立を目指されている背景を教えてください。

極東ファディ株式会社 取締役 商品経営本部 副本部長 吉水 請子様

当社はコーヒーをはじめとした食品を販売している会社のため、お客様の多くは家庭で料理をされる方々。必然的に女性のお客様が大半です。そのため、同じ立場の女性の視点を活かしやすいのが特徴。女性の力を借りることは事業上もメリットが大きいため、以前から女性の総合職採用には力を入れていました。

しかし、2016年当時、社内を見渡してみると女性の店長は1人もいなかったのです。女性の採用には力を入れていましたし、面接で話したときはとても優秀な印象を受けた女性たちばかりだったのに、なぜだか育っていなかった。育休など制度面の整備だけでは上手くいかない現実が見えてきたんです。

―女性店長がいない原因は、何だったのでしょうか。

原因はひとつではなく、会社の風土や働き方や女性自身の意識が複雑に絡み合っていました。たとえば、女性総合職にアンケートをとってみたところ、大部分が「私には店長の仕事は無理だろう」と回答。育児との両立はおろか、目指すことすら難しいと自信を失くしているようでした。

また、もともと卸売からはじまった会社の気質もあり、いわゆる体育会男性的なマネジメントも原因だったんです。そこで当社では、「女性をはじめとした多様なリーダーをどう育成していくのか」というテーマで次世代育成計画を策定。プロジェクトがスタートしました。

―具体的にはどのような取り組みを行っていたのですか。

まずは女性へのアプローチとして、女性総合職を集めて働き方やキャリアについての勉強会の場を設けました。多くの社員は地域に点在する店舗運営に携わっているため、身近に自分と同じ立場の女性がおらず、孤立しがちです。そこで、横の繋がりを強めることで気軽に相談しあえるような関係性をつくり、ボトムアップで意識改革をしていくことを目指しました。

これと並行して、プロジェクトの象徴となるような中核メンバーを選出。「Female Store Project」と称して、女性だけで店舗運営するモデル店の立ち上げを目指していきました。選抜メンバーで女性ならではのサービスを考えたところ、出てきたアイデアが"手書きの店頭POP"。スタッフの感性や温もりが伝わるこのアイデアは、ほんの些細なことかもしれませんが、お客様にも好評で今や全店にも広まりました。このように、はじめは小さな成功体験を積むことを重視。自信をなくしてしまった女性たちの「セルフイメージの回復」が必要だと考えたのです。

―上司のマネジメントや会社の風土にはどうアプローチしたのでしょう。

きっかけは、北九州市×リクルート主催のセミナーで語られていた「時短JOB」です。女性活躍のヒントを探していたときに、既存の業務を整理・分解して超短時間勤務として切り出す方法を聞き、これは当社でも活かせそうだと感じたんです。
ところが、マネジメント側の店長たちは「本当にできるのか?」と半身半疑でした。「アルバイト・パートスタッフが望んでいないのではないか」「マネジメントが難しいんじゃないか」という固定概念があったのだと思います。そこで、リクルートさんに相談して、店長研修の一環で超短時間勤務の有用性を講演いただくことに。「朝3時間だけ働きたいシニアもいれば、子育て中の専業主婦がまずは短時間から働きたいというニーズもある」と事例を紹介していただき、世の中の変化を外部の専門家が話してくれたことで、みんなの意識が変わり始めたように思います。

―取り組みを重ねた結果、どのような変化が起きていますか。

既に、シニア世代をターゲットとした超短時間勤務の採用がはじまっています。この採用は新しい働き手を獲得できただけでなく、実は女性総合職にとっても大きなメリットがあるものでした。たとえば、女性社員は夜にひとりで閉店作業をすることに、防犯上の不安を抱えています。そのため、短時間勤務のスタッフが閉店作業やカフェの仕込み作業など、一時的に人手が必要な時間帯・業務を担うことで、フルタイムの女性にとっても働きやすい職場にできていますね。

こうした取り組みによって、2016年から2年間で当社の女性活躍は飛躍的に進化。18年3月にはついに新たな女性店長が誕生し、内勤の社員のなかでも女性バイヤーが配属されるなど、女性がポジティブにキャリアを積み上げていくことを選択しはじめています。

―自社での活動を踏まえて、女性活躍の推進には何が必要だと思いますか。

今回、iction! ×北九州市が推進する「時短JOB」からヒントが得られたように、私は常に外部企業の先進事例を参考にしています。その経験から言えば、当社のような中小企業は、もっと先進事例に触れた方が良いですし、その事例を"自分事"として翻訳する力が必要なのではないでしょうか。

女性活躍の波が世の中に広まりつつあるとはいえ、良く取り上げられるのはどうしても大手企業の話が多いですから、自分たちとは少し遠い世界の出来事と感じてしまいがちです。自社が抱えている課題をきちんと自覚した上で、他社の事例をどう応用しようかという発想でいれば、多様な人材が活躍できる会社へと進化するスピードを上げられるのだと感じています。だからこそ、行政やリクルートのみなさんとも、私たち中小企業の実態にあわせた取り組みを一緒に進められたら良いですね。

企業概要

  • 極東ファディ株式会社
    主な事業内容:コーヒー焙煎卸売・小売、業務用食品の卸売・小売、酒類卸売・小売。※九州・山口県内に小売店「CAFE FADIE'S」を27店舗展開

iction!プロジェクトとは?

iction!は「はたらく育児」を応援するプロジェクトです。企業や自治体と一緒に「しごとも子育てもしやすい世界」をつくるお手伝いをしています。