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「介護と仕事のこれからを語ろう〜認知症を感じる〜」介護を理由に仕事をあきらめないために今からできること

‘17.Mar.31 Fri

文:徳 瑠里香

一人ひとりが多様な個性を活かし、より力を発揮することを目指す、リクルートのダイバーシティ推進プロジェクト「Be a DIVER!」。「多様性の海」に潜ることをコンセプトに、これまで男性の育児と仕事の両立、LGBT、働き方など多様なテーマについて、社内外のゲストによる講義と対話の場を形成することで、解決するヒントを探ってきました。

2016年2月24日に開催されたBe a DIVER! のテーマは「介護と仕事の両立」。インストラクターとして、「介護を文化へ」をテーマに対話する場「介護ラボしゅう」を主宰する介護福祉士の中浜崇之さん、超高齢社会・認知症を専門としたソーシャルデザインカンパニー・株式会社スマートエイジング代表取締役で、認知症をテーマに企業・行政との恊働プロジェクトなどの企画・運営を行うNPO法人認知症フレンドシップクラブ理事でもある徳田雄人さん、そして総合商社を定年退職後に若年性認知症が発症した生川幹雄さんをお招きしました。

参加した従業員はダイバーとなって、3名のインストラクターの話を聞き、「介護と仕事の両立において大切なこと」のヒントを探しに、多様性の海へと潜りました。さて、多様性の海の中でどんな気づきと出会ったのでしょうか。

※本レポートの内容はイベント開催時の2016年2 月24日に基づきます。

介護の仕事は、日々の生活を通じて利用者の夢を叶える仕事

−− まずは中浜さんより、介護業界全体のお話を伺います。

中浜崇之(以下、中浜) まず、「介護の仕事」についてお話します。介護の仕事は最近、「キツイ・汚い・給料安い・危険・休暇が取れない・結婚できない・子どもが作れない」"7K"だと言われています。でも実際はそんなことはありません。

私は、介護の仕事は利用者の「夢を叶える仕事」だと思っています。孫とディズニーランドに行きたい、外食をしたいなど、高齢の利用者の方は、いくつになっても、病気になっても「やりたい」という気持ちを持っています。その夢を叶えるために、私たちは生活を組み立てるお手伝いをしているのです。

そのために必要な能力は、体力だけでなくクリエイティビティです。もしかしたら今日が最後の食事になるかもしれない。その食事を楽しんでもらえるために何ができるかを日々考えながら実行しています。

認知症、後期高齢者の増加...。私も介護で仕事を辞めないといけなくなる!?

中浜 「介護にまつわる社会問題」としてよく言われるのは「2025年問題」です。2025年に団塊の世代が75歳つまり後期高齢者になり、現在1500万人ほどの後期高齢者人口が、約2200万人にまで膨れ上がると言われています。介護保険の財源確保が難しく、今利用できる介護サービスが、人材不足も重なって機能しなくなってしまう可能性が高まっています。

次に「認知症高齢者の増加」も問題です。2012年の時点で462万人、65歳の6人に1人が認知症を発症していると言われていますが、2025年には700万人を超えると予測されています。認知症増加に伴い、現在年間1万人いるとされる「行方不明高齢者」も増えていくでしょう。

そして「介護離職の増加」も深刻です。親の介護を理由に離職をする人は年間約10万人もいると言われています。また、親だけでなく、祖父母の介護を孫がする「ヤングケアラー」も問題になっています。

家族で話し合い、サービスも利用し、一人で頑張らない

中浜 「家族介護への予防策」として、いくつかみなさんに知っておいてほしいことがあります。まず、介護は突然やってきます。ある日突然、明日かもしれません。だから、準備と心構えが必要なのです。

子育てとは違い、介護は相談相手を周りに見つけにくく、準備期間はなく、かつ終わりが見えません。365日24時間続くので、精神的なストレスを抱えてしまうこともあります。介護をする上でお金はどうするか、要介護者がどんな生活をしたいかなど、事前に家族で話し合うことをおすすめします。

また、要介護者の老いを受け入れられないご家族もいますが、適切な介護をするためにも老いを受け入れていくことも大切です。認知症についても正しい知識を持ってほしいです。"認知症になったら人生の終わり"というのは昔の話で、認知症になっても、できることはたくさんあります。

最も重要なのは、介護においては頑張らない、無理をしないことです。介護が必要になったらまず、役所や地域包括支援センターの相談窓口に行ってください。どんなサービスやサポートがあるのかを知ることができます。

介護を家族全員で、サービスなども上手く利用して、決して一人で頑張らないこと。これは介護を継続し、仕事をあきらめないことにもつながります。介護が理由で仕事を辞める、何かをあきらめるという決断をすぐにしないでください。家族で話し合って、プロに任せられることは任せることで、きっと解決策がみつかるはずです。

高齢者の4人に1人が認知症の時代、どう向き合っていくか

−− 続いて、株式会社スマートエイジングの徳田さんよりお話を伺います。

徳田雄人(以下、徳田) 日本全国の認知症の方は現在462万人、認知症予備軍が400万人と言われているので、高齢者の4人に1人が認知症、あるいはその予備軍とされています。

認知症とは病名ではなく、なんらかの不調で生活に支障が出てくる状態を差します。たとえば、銀行のATMでお金をおろすことができない、レジで精算を忘れてしまったというような症状です。

高齢化社会において認知症の方が増えていくのは当たり前の現象なので、長期的な視点で、企業・個人としてこれからどう向き合っていくのかを考えていく必要があります。

認知症は、誰もがなりうる。決して恐れることはない

徳田 認知症というと重度の方をイメージして、すぐに介護が必要だと思われるかもしれませんが、そうではありません。ここからは若年性の認知症の当事者である生川さんと、NPO法人認知症フレンドシップクラブで生川さんと関わるケアマネージャーの松本礼子さんも交えて話をしていきます。

徳田 総合商社を退職後、生川さんが認知症だとわかったきっかけは何ですか?

生川 退職後に暇になったので、体力を維持するために毎日1、2時間ほど家の周りの決まったコースを歩いていたんです。ある日、その途中で自分がどこにいるかわからなくなってしまった。もともと通っていた病院の先生に相談したら、専門医を紹介してくださって、「若年性認知症」と診断されたんです。

徳田 認知症といっても、生川さんは受け答えもしっかりしていますし、身体も丈夫で、施設やデイサービスへ行くイメージができません。

生川 僕も今の状態で介護を受けたいとは思わない。主体的に自分の意思で動くことができなくなって、逆に症状が進行するんじゃないかと思っています。だからフレンドシップクラブで活動をしています。

松本 介護保険サービスの中では、映画に行きたい、お墓参りに行きたいという認知症の方の願いを叶えることができません。フレンドシップクラブはその枠外で活動をしているのですが、生川さんとは「本人会議」と名付けて、一緒に自分らしく過ごすためのプラン会議を開きました。今は6人の認知症の方が毎週集まり、会議を開いていますが、そこから「認知症になった僕たちから、これからなる可能性のある人に伝えたいこと」というテーマの講座も生まれました。

生川 最近は月3〜4回ほど、その講座の依頼があります。皆さん、認知症に対して悪いイメージを持っているんですけれど、一種の老化の表れですから決して恐れることはない。誰にでも認知症になる可能性があるけれど、老いる中でごく自然なことだから、隠さずそれなりの対応をすればいい。これからの人生を楽しむために、認知症と共にどう生きていくかを考えていけばいいんです。

徳田 介護が必要になる前に、どういうことに気をつけておけばよいのでしょうか?

生川 私の経験として、早期発見ができれば、ある程度生活のクオリティが維持できると思います。親御さんがたとえば、何回も同じことを言う、買い物で小銭が数えられなくなるといった傾向にあったら認知症かもしれません。周りの方が些細な変化に気づいて、早い段階で対応をすれば、認知症を発症した本人の残りの人生も楽しいものになると思います。

以上のインスピレーショントークで得た気づきを持ち寄り、参加した従業員はダイバーとなって、"多様性の海"へと潜っていきます。ダイバーたちは「介護と仕事の両立において大切なこと」をテーマに話し合い、そしてそれぞれ「両立のイメージを明確化する」「家族と会話する」「ロールモデルを見つける」など新たな視点を得て、陸に上がりました。

「Be a DIVER!」は、一人ひとりの個性、ライフステージ、考え方が相互に刺激し合い多様性が輝く、ワクワクする場づくりを推進していきます。

ダイバーシティはみんなのもの。世界はまだ見ぬ可能性にあふれています。

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