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「NHK × Be a DIVER! 〜LGBTについて考えよう〜」(前編) 無意識の偏見に気づく、それが最初の一歩になる

‘17.Mar.31 Fri

文:徳 瑠里香

一人ひとりが多様な個性を活かし、より力を発揮することを目指す、リクルートのダイバーシティ推進プロジェクト「Be a DIVER!」。「多様性の海」に潜ることをコンセプトに、これまで男性の育児と仕事の両立、働き方、介護などの多様なテーマについて、社内外のゲストによる講義と対話の場を形成することで、解決のヒントを探ってきました。

今回のテーマは「LGBT※1」。日本放送協会(NHK)「ハートネットTV」製作陣をはじめ、LGBTの課題解決に取り組む4名をゲストに招き、LGBTについて深く知るとともに、リクルートとして何ができるかを考えました。

前編では、「ハートネットTV」でLGBTを取材してきたNHKディレクターの大麻俊樹さんと、世界90ヵ国でさまざまな人権問題について調査する国際人権NGOヒューマン・ライツ・ウォッチの吉岡利代さんに伺った話をお届けします。

※本レポートの内容はイベント開催時の2016年5月26日に基づきます。

気づかなかった、自分の中にある無意識の「偏見」

大麻俊樹(以下、大麻) Eテレ「ハートネットTV」で毎週月曜日にお送りしている「ブレイクスルー」にて、トランスジェンダー※2であるさつきさんを主人公にした番組を放送しました※3。さつきさんは男性として生まれ、手術によって女性になった方です。

ハートネットTVは、生きづらさを抱えて生きてきた人たちが、その壁を乗り越えていくことは普遍的なことだという前提に立っています。さつきさんが人生の中でどんな壁や困難にぶち当たったかを紐解いていき、彼女がそれをどう乗り越え、どういうスタンスをとってきたかを番組で紹介しました。

-- 大麻さんはなぜLGBTをテーマに取材をしようと思ったのですか?

大麻 そもそものきっかけは、パラリンピックの陸上競技の取材時に感じたことでした。「ブレイクスルー」でナレーターを務める、俳優の風間俊介さんとドーハへ取材に行ったのですが、そこに風間さんの高校生の同級生がいたんです。彼女は、高校時代は障がいがなく、卒業後に事故で脚を切断し、日本代表に選ばれました。風間さんは選手名簿を隈無くチェックしてインタビューの準備をしていたのに、彼女に気づかなかったんです。

そのことに風間さんも私もショックを受けました。「自分に偏見はない」と思っていたけれど、やはり心のどこかで「自分とは別世界のものだ」と思っていたのではないか、と。

パラリンピックが盛り上がっているから、なんとなくわかった気になっているだけで、自分事として考えられていなかった。それに気づいたときに、これまであまり注目されていなかった言葉が流行り、概念が出来始めたときこそ危ないと思ったんです。そういうテーマをあらためて取材して掘り下げていきたい、その思いがLGBTに結びつきました。

「彼ら」ではなく「私たち」の問題であるLGBT

大麻 最近、LGBTをテーマにした番組などもよく目にするようになったのですが、「セクシャル・マイノリティの人たちが過ごしやすくするためにはどうするか」というスタンスが多い印象です。「彼ら」であって「私たち」ではない。LGBTとそれ以外で世界が分かれているわけではないし、LGBTは一つの属性でしかないのに、ムーブメントになるとその感覚が薄れていく。そこに危機感を持って、取材を進めました。

取材中に僕はLGBTの反対語として「ストレート」という言葉を使ったのですが、さつきさんはそれを嫌がりました。差別的な言葉ではないんですが、この時もLGBTを全体としてまとめることはできない、と感じました。目の前の人に対してどう向き合っていくか、人間関係を築いていくしかないと思います。「LGBT」という言葉がこれだけ普及している今こそ、その重要性が増していると僕は思います。

世界80ヵ国で同性愛は違法。それでも、少しずつ前進しつつある

― 続いて、国際人権NGOヒューマン・ライツ・ウォッチの吉岡さんに「世界の潮流と企業の取り組み」についてお話を伺います。

吉岡利代(以下、吉岡) 世界では約80ヵ国以上で同性愛が違法という、ネガティブな流れがまだ続いています。ただポジティブな流れもあり、北米や南米、ヨーロッパを中心に20ヵ国以上で同性愛が合法となっています。アメリカでも同性婚がすべての州で合法化され、2016年5月にはオバマ大統領がすべての公立の中学校で、生徒は自分が認識する性のトイレを使ってもいいとすることを義務づけました。国連でも2011年頃から議論が盛り上がり、ユネスコもパリでLGBTの子どもに対するいじめをテーマにした国際会議を開きました。

日本は同性愛が違法ではありませんが、差別を禁止する法律はありません。同性パートナーに対する法的な保証も足りてないのが現状です。2015年には渋谷区と世田谷区で同性パートナーシップ条例が通り、同性パートナー同士でもある程度の権利が認められるようになりつつあります。セクシュアル・マイノリティへの理解を深めるイベント「東京レインボープライド2016」にも70,500人が参加し、社会的な関心は高まってきていると思います。

ただ、これからの課題はたくさんあります。一つはトランスジェンダーの権利です。性別を法的に変更するには、手術をしなければならないなどとても厳しいルールがあります。性別を変えるための条件自体が人権侵害になっているので、変えていかなければなりません。

企業の指標となる「P・R・I・D・E」とは?

企業での取り組みとしては、日本でもLGBTの指標づくりが進んでいます。任意団体「work with Pride」が中心となってさまざまな企業の協力を得ながら、日本初の企業によるLGBT取り組み指標「PRIDE指標」※4というものを固めました。

Pは「Policy:行動宣言」です。会社として性的マイノリティに関する方針を明文化し、インターネットなどで社内・社外に広く公開していますか、ということです。

Rは「Representation:当事者コミュニティ」。当事者・アライ(支援者)に限らず、従業員全員が性的マイノリティに対して意見を言える機会を提供しているか。また、アライを増やす、顕在化するための取り組みがあるかです。

Iは 「Inspiration:啓発活動」です。過去3年以内に、従業員に対して性的マイノリティへの理解を促進するための取り組み、たとえば研修を開くなど、社内発信などを行っていますか、ということです。

Dは「Development:人事制度やプログラム」です。休暇・休職、慶弔関連、 赴任などの人事制度プログラムを同性婚あるいは同性パートナーシップを結んだ従業員およびその家族にも適応していますか、という問いです。

Eは「Engagement/Empowerment:社会貢献・渉外活動」です。過去1年以内に性的マイノリティへの社会理解を促進するための社会貢献活動や渉外活動を行いましたか、というものです。

以上の5つが指標となります。他にも最近、企業におけるセクハラに対応する義務として、性的マイノリティの方も含まれるということが明文化されることになりました。このように、世界でも日本でも、少しずつですが前進はしているというのが今の流れになります。



後編に続く




※1 レズビアン(L)、ゲイ(G)、バイセクシュアル(B)、トランスジェンダー(T)の略で、法律や社会が割り当てた性別にとらわれない性別のあり方をしている人たちの総称のこと。

※2 身体の性と心の性が一致しない人たちの総称。

※3 「ブレイクスルーFile.53 生きづらいなら変えちゃえば? トランスジェンダー・さつき」のこと。放送はすでに終了しています。

※4 PRIDE指標に関して、詳しくはwork with Pride のHPをご参照ください。
http://www.workwithpride.jp/pride.html

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