牧野先生のリクルート企業留学日記。“卒業文化”に触れてキャリア観が変わった!

牧野先生のリクルート企業留学日記。“卒業文化”に触れてキャリア観が変わった!

2023年4月から1年間、静岡県の公立高校の教職を離れて株式会社リクルートに企業留学をしていた牧野雄貴さん。社内でも「牧野先生」の愛称で親しまれていました。教育現場、保護者向けの進路指導、キャリア教育の情報提供誌『キャリアガイダンス』編集部で過ごした1年間の、リクルートでの異文化体験や驚きと発見について聞きました。

1. 静岡県の公立高校からリクルートに企業留学?!

リクルート九段下オフィスで、リクルートでの1年間の企業留学を振り返る牧野雄貴さん
リクルート九段下オフィスで、リクルートでの1年間の企業留学を振り返る牧野雄貴さん

校長からの突然の呼び出し。思いがけずリクルートでの企業留学がスタート

― 静岡県の公立高校の教員である牧野先生がリクルートにいらしたのは、静岡県の研修制度がきっかけですよね。改めて、制度の目的・背景をお伺いしてもよろしいでしょうか。

牧野雄貴さん(以下牧野):静岡県では、農業・工業・商業の産業教育に携わる高校の教員(現在は普通科教諭も対象)、小中学校や特別支援学校の教員が半年から1年間、民間企業で職務にあたる“企業留学”制度があります。半年~1年間、民間企業研修生として業務を遂行するなかで、最新技術や組織運営、人材育成のノウハウなどを学ぶ、という制度です。参加者は、経験を通じて、自身の能力向上や意識改革だけでなく、得た知識や経験を児童生徒や学校組織へ還元することが求められています。

― 今回の企業留学には、自らのご希望で参加されたのでしょうか?

牧野:いえ。僕の場合は、ある日校長から呼び出されまして(笑)。「来年度1年間民間企業へ研修に行かないか?」と、声をかけていただきました。せっかくの機会なので、と参加を決めた後に、研修先は東京のリクルートという話を聞きました。自分では静岡県内のどこかの企業でお世話になると思っていたので、全く予想外の展開でしたが、基本的にはイレギュラーなことが好きなので、「いいですね」と。話が進むのは早かったですね。

2. リクルートの働き方、企業文化に驚愕

リクルートでの1年間の企業留学を終えた牧野雄貴さんがリクルートの企業文化を語る
リクルートでの1年間の企業留学を終えた牧野雄貴さんがリクルートの企業文化を語る

学校とは何もかもが違う! フリーアドレス、リモートワーク、ペーパーレス…1番の驚きは、職場環境

― そうして4月からの企業留学がスタートするわけですが、着任後の第一印象はいかがでしたか?

牧野:やはり職場環境ですね。「学校と企業はこんなにも違うのか!」と。リクルートは、固定席を持たないフリーアドレス制を採用していて、会社に行かずともどこでも仕事ができるリモートワークも盛んに行われています。初出社の時、会社にきても部署ごとの席のエリア制のようなものもなかったため、一緒に働くメンバーが誰か分からないことには正直戸惑いました。また、会社に集まらなくてもオンラインで業務が滞りなく進んでいくのが、慣れるまではなんだか不思議な感覚でしたね。

― 確かに、基本は生徒さんと対面で向き合う学校との職場環境の違いはだいぶありそうですね。働き方もやはり大きく異なるのでしょうか?

牧野:オンライン会議やチャットツールなどWeb上で完結する業務の多さにも驚きました。例えば、学校では紙の回覧文書で行っているような情報共有もチャットのメッセージとスタンプで確認が完了します。つまり、ペーパーレス化が進んでいるんですよね。比べるとまだまだ、学校にはアナログな部分が多いんだなという気づきがありました。

新鮮だったのは、上下関係のないフラットな関係性と新しいことを実現するスピード感

― 職場環境以外ではいかがでしたか? 第一印象でインパクトを感じたことなどはありましたか。

牧野:働くスタンスとしては、まず皆さんフラットですよね。何か気になることがあれば上下関係や年功序列を気にせずに、アジェンダを設定せず気軽な「よもやまミーティング」という呼びかけで誰とでもざっくばらんに話ができる。学校では突然校長室に行って「よもやましてください!」ということは、ありませんから(笑)。

― リクルートは、希望部署への異動申請ができる「キャリアウェブ制度」があったり、さまざまな領域間での異動があったりするので、人材の流動性が高いんですよね。年次が若くてもその領域でベテランの従業員もいれば、逆に年次が上であっても他の領域から異動したばかりの従業員もいる…そういった環境なので、上下関係に関してフラットになりやすいのかも知れませんね。その他に、学校での経験とのギャップを感じられたことはありましたか?

牧野:やりたいことに向かって実現するスピードの速さ。それは、本当にすごいな、と驚いたことのひとつです。学校の場合は、保護者の同意をはじめ確認を取る工程が多かったり、過去の実績がないと決断が難しかったり…理由はさまざまですが、変化に対して慎重にならざるを得ないという一面があります。だからこそ、今回の企業留学を通じてリクルートで学んだ業務の進め方や効率化の方法を持ち帰って、今後に活かしていきたいなと思っています。

3. “卒業”という企業文化に変化したキャリア観

1年間の企業留学中に携わっていた『キャリアガイダンス』
1年間の企業留学中に携わっていた『キャリアガイダンス』

“お客さん”ではなく“仲間”として働くなかで見つけたリクルートらしさ

― 『キャリアガイダンス』編集部では、編集メンバーの一員として、高校生の教育にあたる教員・保護者向けの本誌の作成業務や、高校生向けの参加型アントレプレナーシッププログラム『高校生Ring』の事務局運営まで幅広い業務に携わっていた牧野さん。組織の一員として働くなかで、印象的だったことはありましたか?

牧野:この1年間“お客さん”ではなく“仲間”として受け入れてもらえて、私自身とてもやりがいを感じることができました。

日々の業務では、リクルートの皆さんが前向きに仕事に取り組む姿勢にいつも刺激を受けていました。例えば、会議中は誰かが投げた意見に対して、チャットツール上でポンポン言葉が飛び交います。その時に否定から入るのではなくて、必ず「いいね」「そうだね」という共感から入ることが圧倒的に多いんです。共感を大切にしている文化があるからこそ、ひとつのアイデアから話が膨らんで、また新しいもの・違うものが出来上がっていく。それが、すごく面白い“リクルートらしさ”なんじゃないかな、と思いましたね。

キャリア形成に正解はない。だからこそ、多くの考え方に触れることが大切

― 1年間の企業留学のなかで、牧野さんご自身の心境の変化などはありましたでしょうか?

牧野:印象深かったのは、リクルートの“卒業”の文化です。着任してみて、リクルートではメンバーが退職することを“卒業”と呼ぶことを知りました。卒業する側は「新しいことをしたい」「こういう自分になりたい」というポジティブな気持ちを持って新天地に向かい、送り出す側はそれを「頑張れ!」「いってらっしゃい」と応援して新たな門出を祝います。これは、学校における“卒業”ととてもよく似ています。

これまで、自分のなかでは、退職するということにマイナスのイメージを持っていました。辞める側には「申し訳ない」という気持ちがあって、送り出す側は「辞められたら困る」という思いを持つんじゃないか、というネガティブなイメージです。でも、リクルートの皆さんが退職という選択肢を“卒業”と呼び、ポジティブに受け止める姿を見て、自分では意識していなかったけれど、心のどこかに「同じ場所で長く働くことが良いことだ」という固定観念を持っていたことに気が付きました。

多様な生き方があるなかで、キャリア形成の方法も決してひとつではない。もちろん、同じ企業や職種でキャリアを積んでいくことと、違う企業や職種でキャリアチェンジを重ねること、どちらが良いという正解があるものではありません。だからこそ、多くの考え方に触れることで未来への選択肢の幅を広げていくことが大切なのだと思います。

4. 再び生徒と向き合う日常へ。「牧野先生」が今、思うこと

Follow your Heart

生徒たちには「自分はどう思うのか?」「自分はどうしたいのか?」をちゃんと大事にして欲しい

― 冒頭で、企業留学では、自身の能力向上や意識改革、そして得た知識や経験を児童生徒や学校組織へ還元することが求められていると伺いました。リクルートの経験で感じられた「キャリア観の変化」を、生徒たちにどのように伝えますか?

牧野:リクルートでの1年間を経て、自分のキャリア観・人生観が変わったのと同時に、ひとつの考え方に固執せずに視野を広く持つ感覚こそが、今教育現場に求められていることなのではないか、そんなふうに教員としての自分を振り返り見つめ直す、いいきっかけになりました。

それこそリクルートが掲げる「Follow your Heart」ということかもしれませんね。自分の心に従って、一度しかない自分の人生を、自分の意思で選び、自分らしく生きられるように、という願いを込められたステートメント。「自分がどう考えて、どうしたいのか? という心の声をちゃんと大事にして欲しい」ということを、この1年の経験から生徒たちに伝えられるかなと思っています。断片的な出来事があって考え方が変わったということではなく、日常を過ごすなかでこういったリクルートが持つビジョンや文化を肌で感じられたこと、自分のなかに考え方が沁み込んだことが、今後の自分にとって一番の財産になると思います。

― この企業留学での経験から、生徒との向き合い方に対する思いが変わったところもあるのでしょうか。

牧野:以前から意識していたことではありますが、「もっと生徒に寄り添った指導をしたい」という思いは強くなりましたね。というのも、『高校生Ring』の事務局を担当した時に、リクルートの皆さんが、「エネルギーをもらえた」と高校生たちが頑張る姿を、キラキラした目で見つめていたんですよね。日頃、当たり前のように接していた高校生たちに対して、改めて生徒たちが持つ無限の可能性や輝きを感じました。

今回の経験から生徒たちに言えることは、一歩踏み出すことの大切さですね。自分も今回校長から声をかけられた時に「行かない」という選択をしていたら、リクルートで学ぶ機会や今のような気持ちは持てていなかった。「失敗するのは悪いことじゃないから、いろんなことにチャレンジしたらいいよ」ということは、自分の経験として生徒たちに伝えていきたいです。

リクルートに期待することは、学ぶことをあきらめそうになる生徒たちに手を差し伸べるサービス

― 最後に、少し視点を変えて…。学校とリクルートどちらの現場も知る牧野さんが、今、教育現場が抱える課題解決のために、今後のリクルートに期待することがあれば、ぜひ聞かせてください。

牧野:学ぶ意欲を手放しそうになっている生徒や、子どもに学ばせたいという意識が持てなくなっている保護者に、学びの大切さや自己を磨くことの大切さをどのようにして伝えていくべきなのか。これは、教育現場でも大きな課題となっています。

例えば、学校には、さまざまな問題を抱えた生徒たちもいます。不登校の背景や家庭環境など、なかなか表には出せないナイーブな問題を抱えている子どもたちにとっては、学校に通い卒業することが簡単ではなかったりします。また、それまでに積み重ねてきた学力の差や学習意欲も千差万別。一人ひとりの子どもたちと目線を合わせながら進路をサポートしていくためには、今はまだない、新しい学び方、学ぶための手法も必要です。

リクルートが提供する『スタディサプリ』は、一人ひとりに寄り添った学びの個別最適化を促すツールとして非常に良い教材だと思います。ですが、活用するためには生徒の学ぶ意欲と、教員をはじめ周囲の推進力も求められるという一面があります。自分から学ぶこと・学ばせることをあきらめて後ろ向きになっている子どもや保護者にも手を差し伸べられるようなサービスがあれば、日本の教育の未来が変わるかもしれない。全ての人に学びを届けられるリクルートであり続けて欲しいと思います。

リクルートでの1年間の企業留学を終えた牧野雄貴さん

登壇者プロフィール

※プロフィールは取材当時のものです

牧野雄貴(まきの・ゆうき)
静岡県公立高校 教諭

2009年3月に大学院を卒業後、民間企業に就職。働きながら大学の通信教育で商業科の教員免許を取得し、2016年より教員職に従事。静岡県公立高校の教員として、簿記・マーケティング・情報処理などの商業科目を教える

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