在宅勤務下でも偶発的コミュニケーションを生む
オンラインコミュニティの可能性

2020.9.29

オフィスであれば、あちこちで見かける「ちょっといいですか」の相談。在宅勤務の広がりは働く選択肢が増えた一方で、長く続くにつれて「孤独を感じる」「イノベーションが生まれにくい」といった声も多くなり、人と人との偶発的コミュニケーションが生まれにくいことが課題になっています。

リクルートキャリアの転職支援サービス『リクルートエージェント』の事業部内では、在宅勤務が主の状況下でも、ビジネスチャットツール上に作成した社内のとある「コミュニティ」が、入社年次・職種・部署を越えた偶発的な従業員同士の交流に役立ちました。今回は社内コミュニティを運営している顧客ロイヤルティ推進部の岡田が、「ナナメの人間関係」と「アイデアの種」を生むコミュニティ活用の可能性についてご紹介します。

今回の事例を紹介する担当者

岡田 菜子

岡田 菜子

エージェント事業本部 顧客ロイヤルティ推進部
企画グループ

2012年に中途入社。約6年間人材紹介の法人営業を経験したのち、現在はエージェント事業本部の組織活性を担当。社内メルマガの編集や、業務外の経験を従業員の成長機会とする研修「AGENT COLLEGE」などの企画に携わる。

コミュニティとは?

「コミュニティ」という言葉に聞き慣れない人もいるかもしれませんが、「目的・理念などの『関心軸』を共有する人の集まり」のことです。(※)今回の事例である社内コミュニティ『イッポ×イッポ』は、「誰かの一歩を支援したい人×一歩を踏み出したい人が生み出すコミュニティ」をコンセプトに、全国の従業員同士がつながり、学びや機会をシェアし合うために作りました。ビジネスチャットツールを使って情報共有しながら、Web会議システムでイベントや勉強会を開催しています。

社内コミュニティから生まれるもの

コミュニティ運営では、まず理念や目的の設定が重要だと考えます。なぜなら、共通の目的に向かう同士だからこそ、部署や肩書を越えて自由に発言する土壌を作れるからです。コミュニティが機能するために重要なのは、管理者や特定の誰かだけでなく、参加メンバー一人ひとりが自発的に気軽に発言できる、心理的な安全性を担保することだと思います。心理的な安全性が保たれることで、些細なことでもチャットでつぶやけるようになり、その結果、オンラインでも偶発的コミュニケーションが生まれるわけです。さらに、こうした偶発的なコミュニケーションは、「ナナメの人間関係」と「アイデアの種」という二つの副次的な好影響をもたらしてくれました。

ナナメの人間関係

『リクルートエージェント』だけでも約3,000人と関わる人数が多くなり、「知らない人が多くなって、誰に聞いたらいいのか分からない」といった声が在宅勤務導入以前から上がっていました。在宅勤務下ではなおさら、自部署以外の人との関わりが減りがちです。

『イッポ×イッポ』ではオンラインでも知らない従業員同士がつながって、緩やかなナナメの関係が生まれています。例えば、自己紹介から共通の趣味がある人が仲良くなったり、参加メンバーからの声かけで初対面の従業員同士でのオンライン交流会が開かれたりしています。

アイデアの種

例えば、緊急事態宣言後は、「オンラインで顧客や社内と関係性を構築するノウハウを知りたい」というニーズが高まりました。誰かが困りごとをシェアすることで、それを解決しようとするアイデアや工夫が生まれ、いろんな部署に展開されていきました。他には「テレワークでの働き方を社会に広めていく」「キャリア教育を考える」「グローバルな働き方を推進する」など、同じ想いを持つ人同士での部署横断プロジェクトの発足にもつながっています。

イノベーションは、「誰かの知見」と「誰かの知見」が掛け合わさって生まれるなどと言われていますが、コミュニティの中でも同じテーマに興味を持つ人が自然と集まって、情報交換をしています。コミュニティの中に、さらに小さなコミュニティがいくつも生まれていくようなイメージです。

新型コロナウイルス感染症の影響下では働き方に不安を感じている従業員も少なくなく、「こんな時だからこそいろんな人とつながりたい」という気持ちを強く感じているのではないでしょうか。

私の経験でも、『イッポイッポ』の参加者から「他部署の人や取り組みを知るだけでもモチベーションになる」「今、このコミュニティがあってよかった」という声がいくつも上がりました。社内コミュニティで大事なことは目標数値やルールで縛ることではなく、コンセプトはしっかりと作りこんだ上で、参加メンバーを信頼することなのではないかと思っています。そうすればきっとその会社や組織の「らしさ」があらわれる、素敵な場になるのではないでしょうか。

社内コミュニティの設置を検討している、あるいは既存コミュニティを活性化させたいと思っている方に、少しでも参考になれば幸いです。

※参考文献:小島英揮『ビジネスも人生もグロースさせる コミュニティマーケティング』(日本実業出版社)、2019年3月