リクルート、「定年前後の転職者」の採用・受け入れ実態調査を実施

2019年03月27日
株式会社リクルート
その他

株式会社リクルートホールディングスの中間持ち株会社である株式会社リクルート(本社:東京都千代田区 代表取締役社長:北村吉弘)内の組織、人と組織に関する研究機関「リクルートワークス研究所」と多様性のある社会を目指すプロジェクト「iction!」の運営母体であるHR研究機構は、 定年前後( 55歳~64歳)の転職者について企業の採用・受け入れの実態および意識調査を行い、分析しました。

調査結果のポイント

採用担当者

  • 定年前後(55歳~64歳)の転職者(以下"定年前後の転職者")を採用したことがある人のうち、約6割が今後も採用意向あり
    -企業規模が大きくなるにつれて、 "定年前後の転職者"への採用意向は高まる傾向
  • 採用意向がある企業は、"定年前後の転職者"が与える周囲のメンバーへの影響を評価
    -「新しい知識や物の見方を得られた」「周囲のメンバーへのスキルアップに繋がっている」などの項目が高い結果に

職場の同僚・上司

  • 「"定年前後の転職者"を受け入れたい」と回答した人は約3割
  • "定年前後の転職者"の受け入れは「自社の経営姿勢への好印象」「同僚・上司への良い刺激」に繋がる
    -積極的な受け入れは、従業員の会社に対するロイヤリティ向上に繋がっている可能性も

転職者本人

  • "定年前後の転職者"の約6割が転職に「満足」、また約半数が未経験職へ転職
    -未経験職種への転職者も半数以上が就職に満足と回答

本調査の解説と分析

大久保幸夫 リクルートワークス研究所所長大久保 幸夫
リクルートワークス研究所 所長

高齢者を企業の戦力として活かす時代に

少子高齢化社会、若年層の就業人口が減少するなかで、これからの時代は高齢者の労働力ニーズは一層高まる環境にあります。実際に、厚生労働省が今年公表した就業者の長期推計では、2040年には働き手の5人に1人が65歳以上になると予測されています。

今後、団塊ジュニア世代の大量退職などが迫るなか、企業における高齢者の活用は、待ったなしの状態にあります。定年延長などもあり、内部の高齢者活用は進みつつありますが、同時に、安心材料ができたことにより、準備をしないまま定年を迎える方の増加にも繋がっています。高齢者の活用において、外部から採用して受け入れるケースはまだ多くありません。そこで今回、定年前後の転職にフォーカスをあて、その実態を調査しました。

定年前後の人材を受け入れるメリットとは

今回の調査では、定年前後の人材を採用した経験がある企業の約6割が、今後の採用に前向きであるという結果が出ました。転職者が上手く職場になじめている、活躍できている企業では、受け入れるにあたってのノウハウが定着し環境が整っているため、採用に積極的であるという好循環が生まれていると考えます。

採用意向がある企業では受け入れにあたって「周囲とのコミュニケーション状況をケアしている」「転職者本人と定期的に話す機会を作っている」といった点を大事にしています。この年代の転職に限らず、一般的に転職する場合、これまで勤めてきた企業の組織文化や慣習と異なるため戸惑うことが多いのが現状です。転職先で、その会社の文化や仕事の進め方になじむための支援があるかどうかが、転職者が職場に適応できるか、ひいては転職者自身のスキルを発揮し活躍できるかの、重要な分かれ目となります。

また、受け入れ意向がある同僚・上司が感じるメリットとして、「会社の姿勢に良い印象を受けた」や「自社の経営にとって良い影響があると思う」といった、自社の経営に対する回答が多く集まったのは想定外の結果でしたが、とても良い傾向だと考えております。活躍している定年前後の方の姿そのものが、40代~50代前半の方のいいロールモデルとなり、結果として企業の活性化にも結び付くことでしょう。

未経験職種に転職をした方の半数が、転職に満足しているのも興味深い結果です。人はいくつになっても新しいことを知り、経験することを楽しいと感じますので、定年前後において転職された方においても、転職先の満足感に繋がったのではないかと考えられます。

最後に

企業のあるべき姿は「社会の姿を投影した組織」と捉えています。今後、少子高齢化がさらに進む日本で、定年前後の人々が企業で活躍すること。これこそが、社会の姿を投影した自然な形であり、企業が成長するために必要不可欠な取り組みと考えます。

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