株式会社リクルートキャリア(本社:東京都千代田区、代表取締役社⾧:佐藤 学)は、全国の20~60代の新型コロナウイルス禍でテレワークをするようになった就業者(※)2,272名に、仕事に関するアンケートを実施しました。調査期間の2020年9月26日~28日時点でもテレワークを実施している2,213名について考察いたしましたので、結果の概要をご報告いたします。新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、テレワークを実施する企業は増えると考えられます。昨年の急速なテレワークの広がりに際し起きていた課題に改めて目を向け、この困難な状況を乗り越えるための参考になれば幸いです。※2020年1月以降にテレワークを実施した人(公務員、パート・アルバイトを除く)PDF版はこちらをご覧ください。20210122_02.pdf(1.5MB)概要テレワーク時の仕事上のストレス状況全体の59.6%がテレワーク前にはなかった仕事上のストレスを実感。そのうち67.7%はいまだにストレスが解消されていない。年代が上がるほどストレス解消ができていない割合が高い(20代:58.9%、30代:64.6%、40代:67.8%、50~60代:83.6%)。 仕事中の「雑談」の有無でストレス解消に違い仕事中に「雑談」がある人とない人を比較すると、「雑談」がない人はストレスが解消できていない割合が大きく、両者のストレスの解消具合には14.1ptの差。 テレワーク時の「雑談」の機会50~60代は「雑談」が「全くない」と回答した割合が44.2%と、他の年代に比べて高い。「雑談」の機会については、「チャットなどでの業務外の会話」や「会議開始前の世間話のような会話」において、50~60代と他の年代で差。 解説:HR統括編集長 藤井 薫テレワークの浸透に伴う、働く個人のストレスの固着化。解消のカギは、働く個人の存在性に働きかける「雑談」。「できるかどうか」でなく「いまここにいてくれて有難う」というメッセージの交換。「雑談」は、相手への効用性を求める前に、存在性を認め合い、心理的安全を育む行為とも言える。 1.テレワーク時の仕事上のストレス状況 回答者の59.6%がテレワーク前にはないストレスを実感。そのうち67.7%はいまだにストレスが解消されていない状況。 新型コロナウイルス感染症の影響によってテレワークを経験した人の59.6%が、テレワーク前の出勤をしていた時にはない仕事上のストレスを感じていました。さらに、ストレスを感じたと回答した人に、そのストレスは解消できたかどうかを確認したところ、67.7%はいまだにそのストレスが解消されていない状況であることが分かりました(調査時点9月)。 上記と同様に、テレワーク時のストレス実感と、ストレス解消状況を年代別に確認しました。まず、ストレス実感ですが、こちらは年代別の大きな差異は見受けられませんでした。20代から60代の全ての年代で、ストレスを実感した人の割合がおおむね60%前後の割合でした。 次に、ストレス解消状況ですが、こちらは年代が上がるほど、いまだにストレスが解消できていない割合が高いことが分かりました。例えば20代では、ストレスが解消できていないという人の割合が58.9%となっており、逆に41.1%の人はストレスが解消できたと回答しています。一方で50代~60代は、83.6%の人がいまだにストレスが解消できておらず、ストレス解消ができているのは16.4%という状況です。 こういったストレスの原因の一つには、テレワークによって仕事の進め方が変化したことが考えられます。従来はお互いが顔を合わせることで発生していたコミュニケーションや協働が、テレワークという働き方の導入によって分断されている可能性があります。実際に、本調査のデータを用いてモチベーションに影響する仕事の5要素を調べたところ、仕事の「全体像の把握」や「重要性の実感」、「他者からのフィードバック」という要素が棄損されていることが分かりました。こちらについての詳細は以下をご参照ください。 [2020年12月22日プレスリリース] 新型コロナウイルス禍における働く個人の意識調査 「働くモチベーション」はテレワーク実施前後で変化した? 以下では仕事の進め方以外の要素に着目して、ストレスへの影響について解説します。 2.仕事中の「雑談」の有無でストレス解消に違い 「雑談」がある人とない人では、ストレス解消の状況が14.1ptの差 テレワークによってストレスを感じた人を、仕事中に「雑談」がある回答群と「雑談」がない回答群に分けたところ、ストレスの解消具合に差異があることが分かりました。先述した通り、いまだにストレスが解消できていない割合は67.7%でしたが、「雑談」がある人の場合はこの値が63.2%であるのに対して、「雑談」がない人は77.3%であり、両者には14.1ptの差があります。テレワークによって感じるストレス状況は、仕事中の「雑談」がない人の方がより深刻である様子がうかがえます。 3.テレワーク時の「雑談」の機会 50~60代は「雑談」が「全くない」割合が44.2%と高い テレワーク時に、どのような「雑談」をしているかを確認したものを以下グラフに示しています。「全くない」を選択した人は仕事中に「雑談」がないことを意味していて、それ以外の何らかの選択肢を選んだ人は、仕事中に「雑談」があることを意味します。 年代別に見ると、50~60代は他の年代に比べて「雑談」に関する選択率が低く、「全くない」の選択率が44.2%と高いことが分かります。50~60代の人が特にストレス解消できていない状況は既に述べましたが、仕事中の「雑談」の有無が影響していることが推測できます。 また、「雑談」の機会については、「チャットなどでの業務外の会話」や「会議開始前の世間話のような会話」において、50~60代と他の年代で選択率に差が出る結果となりました。 ■ テレワークのストレス解消に関するフリーコメント 週1で打ち合わせや会議を行い、担当メンバー全体で情報を共有する(東京都/37歳) 上司に相談し、なるべくコミュニケーションをとるよう働きかけてくれた(千葉県/43歳) 自分でペースを整えた。テレワークが強制では無くなったので、本人の裁量で出勤できるようになった(三重県/43歳) 伝え方をいろいろ試して適切な方法を見つけた(埼玉県/44歳) 雑談に関する問題意識を共有し、雑談の意義を共有し、雑談するようにした。運動不足については、身体を動かす時間を決めて体操や運動をするようにした(愛知県/44歳) 頻繁に周りに連絡をとるようにした(東京都/44歳) 人と話すことを意識する(神奈川県/30歳) 出社ができるようになり人と直にあって仕事ができるため(千葉県/34歳) いままで以上に細部の連携を頻繁に行う(東京都/39歳) 業務と進捗率の見える化をオンライン上で図った(千葉県/40歳) 子どもの学校が再開し昼間に子どもを預けられるようになった(愛知県/42歳) 言葉を尽くして説明する。出社したときによく話す(東京都/49歳) 時間帯を少しずらして合わせることで解決できている。お昼と夕方に連絡を取り合うことで解消されている(兵庫県/66歳) チャットの導入などで大きく改善されたと思われる。ちょっとだけ聞くという行為がしやすくなった。また、電話を活発に使用しても良い雰囲気も出来上がったことも一因として考えられる。いろいろな点で皆が慣れてきている(千葉県/28歳) だんだんと慣れてきて、情報を上手く交換することができたから(静岡県/41歳) 4. 解説:HR統括編集長 藤井 薫 テレワークの浸透に伴う、働く個人のストレスの固着化。解消のカギは、働く個人の存在性に働きかける「雑談」。 コロナ禍によるテレワークの浸透で、働き手のストレスは、どう変化しているのか? テレワーク経験者の約6割が、【テレワーク前にはなかった仕事上のストレスを実感】。 そのうちの約7割が、【いまだ仕事上のストレスが解消されていない】という実態。 テレワーク経験者の声からは、テレワークの浸透に伴って、仕事上のストレスに苛(さいなまれ)、いまだそのストレスを解消できていない働き手が多く存在する実態が明らかになりました。中でも、年代が上がるほど、ストレス解消ができてない割合が高まる実態も見逃せません(50〜60代に至っては83.6%)。 この実態は、日本のテレワーク浸透への大きな課題を投げかけています。と同時に、全世代でも見られるストレスの長期化・固着化が、今後の企業業績や職場の活力に暗い影を落とすことが懸念されます。 こうした働く個人のストレスの長期化・固着化を、どう解消していけば良いのか? 仕事中に「雑談」がある人とない人では、ストレスの状況が14.1ptの差。 調査からは、仕事中の「雑談」がストレス解消のカギになる可能性が見えてきました。 チャットでの業務外の話、会議前の世間話......。テレワーク時に、こうした「雑談」を実践している年代(20〜40代)と、全く「雑談」がない年代(50〜60代)の回答差からも、「雑談」がストレス解消のひとつのカギであることが推察されます。 「雑談」は一人ではできない。「雑談」は、相手に成果を求めない。ここに「雑談」の本質があります。 「できるかどうか」でなく「いまここにいてくれて有難う」というメッセージの交換。「雑談」は、相手への効用性を求める前に、存在性を認め合い、心理的安全を育む行為とも言えます。 昨今のテレワークの浸透によるジョブ型雇用議論の高まり。その背景にある生産性向上欲求や明確な評価マネジメントへの希求は、組織の二つの駆動原理のうちの"存在性より効用性"を重視する圧力を高めます。そうした動きが、働く個人へのストレスを高める遠因になっているのではないでしょうか。 相手の存在に無意識に感謝し合う「雑談」は、行き過ぎた効用主義に陥りやすいテレワークで働く個人から、過剰なストレスを解放する大切な職場コミュニケーションなのかもしれません。 意識して無意識の「雑談」をする。結果、ストレスが解消し、生産性が上がる。テレワーク時代こそ、合理と情理の両利きのコミュニケーションが求められます。 藤井 薫(ふじい・かおる)株式会社リクルートキャリアHR*統括編集長 プロフィール(略歴)1988年、リクルート(現 株式会社リクルートホールディングス)に入社。以来、人と組織、テクノロジーと事業、今と未来の編集に従事。『B-ing』、『TECH B-ing』、『Digital B-ing(現『リクナビNEXT』)、『Works』、『Tech総研』の編集、商品企画を担当。TECH B-ing編集長、Tech総研編集長、アントレ編集長・ゼネラルマネジャーを歴任。 2016年、リクナビNEXT編集長に就任(現職)、2019年にはHR統括編集長を兼任(現職)。*HR=Human Resources(人的資源・人材) 調査概要 実施期間2020年9月26日(土)~2020年9月28日(月) 調査対象企業に勤める正規の従業員で2020年1月以降にテレワークを実施した人 回答数2,272 名 調査方式インターネット調査 PDF版はこちらをご覧ください。20210122_02.pdf(1.5MB)