株式会社リクルートキャリア(本社:東京都千代田区、代表取締役社⾧:佐藤 学)は、全国の企業の人事担当者1,224(※)名に、「ジョブ型雇用」に関するアンケートを実施しました。本結果では「ジョブ型雇用」の認知率や具体的な中身についての認識、制度の導入状況、具体的に検討している人事施策などを紹介しています。調査期間は2020年9月26日~30日です。以下、結果の概要をご報告いたします。PDF版はこちらをご覧ください。20201203.pdf(2.1MB)概要ジョブ型雇用の認知率:「ジョブ型雇用」の認知率は「知っている」が54.2%、「知らなかった」が45.8%であった。従業員規模が大きいほど認知率は高い傾向であることが確認された。 ジョブ型雇用の導入状況:「ジョブ型雇用」導入は全体の12.3%。従業員規模が大きいほど導入率が高く、従業員5,000人以上で19.8%という状況。導入企業の約7割は1年半以内に「ジョブ型雇用」を導入。 ジョブ型雇用導入済・導入経験有企業と導入検討企業の比較:「ジョブ型雇用」で取り入れた内容や検討内容は、「仕事内容の定義(Job Description作成)」「組織ミッションや職責レベルに応じたグレード設定」「職種ごと採用」が代表的であった。 メンバーシップ型雇用のメリットと課題:「柔軟な配置」や「本人の特性にあわせた育成」をメリットに感じる。一方で、「育成に時間がかかる」「専門性がつきにくい」という課題感がある。 解説:HR統括編集長 藤井 薫「ジョブ型」「メンバーシップ型」の二元論を超えて。目的ありきの人事制度へ。一人一人の才能開花に向き合う、多様なHRM深化は、始まったばかり。新型コロナウイルス禍を契機に「ジョブ型雇用」の報道が過熱する中、実態はどうなのか? 1. ジョブ型雇用の認知率 「ジョブ型雇用」という言葉を「知っている(54.2%)」「知らなかった(45.8%)」。従業員規模が大きいほど認知率や議論促進が高い傾向。 「ジョブ型雇用」という言葉を知っている割合は半数を超える程度でした。従業員規模が大きいほど認知率は高く、従業員が「5,000人以上」の企業の場合は62.8%という結果でした。 ※ 従業員規模が分からないと回答した8名の内訳は割愛 「ジョブ型雇用」の具体的な内容について確認したところ、「仕事の内容の定義(Job Description作成)と適材適所の推進(31.4%)」「求められる組織ミッションや職責のレベルに応じてグレードを定め、その職務により人材をグレードで管理する(29.8%)」「総合職ではなく、職種ごとに採用する(27.7%)」が代表的な内容でした。また、「詳細は分からない(38.5%)」の選択率が最も高い結果でした。これは全体の45.8%が「ジョブ型雇用」という言葉を知らなかったという状況が影響していると考えられます。 新型コロナウイルス感染症の影響によって、「ジョブ型雇用」の議論が促進されたかどうかを確認しました。議論が進んだ(「かなり進んだ」「ある程度進んだ」の合計)という回答群は、全体では24.8%でした。従業員が5,000人以上の企業の場合は36.4%と全体平均よりも高く、「ジョブ型雇用」の認知率の状況と同様に、規模が大きいほど議論促進の割合が高い傾向となりました。 ※ 従業員規模が分からないと回答した8名の内訳は割愛 2. ジョブ型雇用の導入状況 ジョブ型雇用の導入は12.3%。従業員規模が大きいほど導入率が高い。導入企業の約7割は一年半以内にジョブ型雇用を導入。 「ジョブ型雇用」の導入状況は全体で12.3%でした。従業員規模別に見ると、従業員が「5,000人以上」が19.8%と全体に比べて7.5pt高い状況でした。一方で、「1,000人~4,999人」「300人~999人」「300人未満」での導入状況は全て全体平均より低く、従業員規模が小さいほど低い傾向でした。 ※ 従業員規模が分からないと回答した8名の内訳は割愛 導入企業と以前導入していた企業に絞り、「ジョブ型雇用」導入の時期について見ると、「2020年6月以降」(22.0%)、「2019年4月~2020年5月以前」(47.0%)という結果になりました。 調査実施時点(9月)で約7割が1年半以内に「ジョブ型雇用」を導入していることから、比較的最近になってから制度変更を実行している状況が見て取れます。 3. ジョブ型雇用を導入済・導入経験有企業と導入検討企業の比較 ジョブ型雇用で取り入れている内容や検討内容は、「仕事内容の定義(Job Description作成)」「組織ミッションや職責レベルに応じたグレード設定」「職種ごと採用」が代表的。 「ジョブ型雇用」の「導入済企業と導入経験有企業(n=164)」と「導入検討企業(n=288)」について「ジョブ型雇用」で取り入れている(検討している)内容や理由・職種を確認しました。 導入済・導入経験有企業が「ジョブ型雇用」で取り入れている内容は、「仕事の内容の定義(Job Description作成)と適材適所の推進」「求められる組織ミッションや職責のレベルに応じてグレードを定め、その職務により人材をグレードで管理する」がともに64.0%で、「総合職ではなく、職種ごとに採用する」(47.6%)が続きました。選択率は異なりますが、導入検討企業でも同様の傾向が確認されました。ほぼ全ての内容で導入済・導入経験有企業の選択率が高く、最も選択率の差が大きかったのは「異動は社内公募中心で行う」の13.9ptでした。 導入済・導入経験有企業が「ジョブ型雇用」を取り入れている理由としては、「特定領域の人材(デジタル人材など)を雇用するため職種別報酬の導入が必要になったため」(54.3%)、「労働時間削減のため(業務効率化)」(51.2%)、「新型コロナウイルスの影響により、テレワークなどに対応し業務内容の明確化が必要になったため」(46.3%)が代表的でした。 一方で、導入検討企業の場合は、「専門職としてキャリアを積みたい人材を採用するため」(49.3%)、「特定領域の人材(デジタル人材など)を雇用するため職種別報酬の導入が必要になったため」(46.5%)、「労働時間削減のため(業務効率化)」(41.0%)という結果でした。「専門職としてキャリアを積みたい人材を採用するため」(49.3%)と「特定の専門性を持つ新卒学生を採用するため(AI研究実績や、資格取得者など)」(36.5%)という採用に関する理由は、導入検討企業の方が高い選択率となりました。 4. メンバーシップ型雇用のメリットと課題 「柔軟な配置」や「本人の特性にあわせた育成」がメリット。一方で、「育成に時間がかかる」「専門性がつきにくい」という課題感がある。 本アンケート調査では回答者全員に「メンバーシップ型雇用」のメリットと課題について確認しました。 「メンバーシップ型雇用」のメリットでは、「職種を限定しないため、柔軟に配置ができる」(45.0%)、「ジョブローテーションが可能で、本人の特性にあわせて育成できる」(39.0%)、「勤務地を限定しないため、柔軟に配置ができる」(35.4%)の選択率が高い結果となりました。 一方、「メンバーシップ型雇用」で課題に感じている内容は、選択率が高い順に「育成に時間がかかる」(35.5%)、「専門性がつきにくい」(33.6%)、「勤務地を変えてもらうときに退職リスクがある」(31.2%)という結果になりました。 (参考データ) 5. 解説(HR統括編集長 藤井 薫) 「ジョブ型」「メンバーシップ型」の二元論を超えて。目的ありきの人事制度へ。一人一人の才能開花に向き合う、多様なHRM深化は、始まったばかり。 新型コロナウイルス禍を契機に、「ジョブ型雇用」の報道が過熱しています。名だたる大手企業の相次ぐ導入や、テレワークで顕在化した人材管理の課題なども手伝って、「ジョブ型雇用が不可避」といった言説が広がりつつあります。中には「全ての企業が、日本型の『メンバーシップ型雇用』を捨て去り、いち早く『ジョブ型雇用』に転換すべき」という乱暴なものもあり、ある種、「ジョブ型雇用」の狂騒曲が鳴り響いている事態となっています。 果たして、実態はどうなのでしょうか? 全国の企業の人事担当者1,224人に聞いた、「ジョブ型雇用」の現在地。その回答結果の深部からは、「ジョブ型かメンバーシップ型か」、といった二元論にとらわれず、事業の必然性と課題に向き合い始めた企業人事の立ち姿が見えてきました。 まずは、量的な実態です。「ジョブ型雇用」の認知率は54.2%、導入率は12.3%。従業員規模が大きいほど割合は高まります(従業員規模5,000人以上:認知率62.8%、導入率19.8%)が、過熱する報道ほどには、「ジョブ型雇用」は、企業には浸透していないことが見て取れます。 「ジョブ型雇用」を、知ってはいるけれど、「導入はしておらず、検討もしていない」という企業も一定数あります(34.7%)。その背景には、「やりたいけれど(体制整備の関係で)導入・検討はしていない」、「事業戦略に適合していないので、あえて導入・検討はしない」という、人事担当者の冷静な判断もあるかもしれません。 次に、質的な実態です。「ジョブ型雇用」導入企業(n=164)に聞いた、取り入れている内容と理由です。導入内容の上位3つは、「仕事内容の定義と適材適所の推進」「組織ミッションや職務グレード管理」「職種別採用」。導入理由の上位3つは、「特定領域の人材(デジタル人材など)採用のため職種別報酬の導入」、「労働時間削減 (業務効率化)」、「テレワーク対応で業務内容の明確化」でした。 こちらを見ただけでも、職務・役割の明確性、配置転換・異動の最適化、専門人材の採用力の向上、報酬制度の改定、業務生産性の向上など、さまざまな人事施策や制度変更の狙いが見て取れます。いずれも、各社各様の事業戦略に即した人事課題に向き合った結果なので、今後も、一口に「ジョブ型雇用」では括れないほど、各社各様の多様な「〇〇型雇用」の導入が進んでいくと思われます。 最後に、気になる点を一点。「メンバーシップ型雇用」のメリットと課題について聞いた回答上位は、メリットでは、「職種を限定しないため、柔軟に配置ができる」、「ジョブローテーションが可能で、本人の特性にあわせて育成できる」「勤務地を限定しないため、柔軟に配置ができる」となり、一方課題では、「育成に時間がかかる」「専門性がつきにくい」が上位となりました。これは、企業が個人から働き方やキャリア形成の選択権を奪いつつ、専門性の課題を嘆く自縄自縛の構造に見えます。企業寿命と職業寿命の逆転で、今や、働き方を選ぶ主権は、個人に移行しています。もし働く本人の納得感がないまま、企業が個人のキャリア形成機会を奪うなら、本来の字義が持つ本人の職業人生に寄り添う「メンバーシップ型雇用」は、画餅に帰すでしょう。 一方、「ジョブ型雇用」の導入には、職務の言語化や更新、人材評価にかかる負担が増えます。例えばエンジニアのような、特定領域の人材に最適な人事制度を導入したいといった明確な経営戦略があり、時間をかけてでも雇用制度を改革するという強い意思があって初めて、「ジョブ型雇用」に踏み切ることができます。「ジョブ型雇用」の効用と限界を良く知り、自社の戦略と人事体制に適合した上での判断も重要です。 いずれにしても、新型コロナウイルス禍で始まった「ジョブ型雇用」狂騒曲も、実態は、企業の事業戦略に即した切実な人事施策の試行錯誤の中で、本質的な深化の時を迎えています。雇用の起点を、まず仕事ありきに置くか、人に置くか。職務・役割を明確にするか、年功で曖昧にするか。賃金・評価を、職務・職能・役割のどれを重視するものにするか。働き方・キャリア形成の選択権を会社が持つか、働き手が持つか。専門職採用を主とするか、総合職採用を主とするか、、、、、、。これら組み合わせは、無限のマルチパターンを生みます。 今回、コロナ禍で高まる「ジョブ型雇用」の議論は、改めて、自社の経営戦略の観点から、必然となる雇用制度、人材マネジメントの在り方を再定義する好機となると思います。「ジョブ型」「メンバーシップ型」という二元論を超えて、名称にとらわれずに、企業の戦略と一人一人の才能開花を高次で重ねる。そんな本質的な人材マネジメントの深化は、今始まったばかりです。 ジョブ型、メンバーシップ型、ロール型雇用の異同 ※出典 『リクルートワークス研究所』主任研究員 中村天江「働くの論点『ジョブ型雇用の種類と、日本企業が進むべき道』」(2020年10月20日) 藤井 薫(ふじい・かおる) 株式会社リクルートキャリアHR*統括編集長 プロフィール(略歴)1988年、リクルート(現 株式会社リクルートホールディングス)に入社。以来、人と組織、テクノロジーと事業、今と未来の編集に従事。『B-ing』、『TECH B-ing』、『Digital B-ing(現『リクナビNEXT』)』、『Works』、『Tech総研』の編集、商品企画を担当。TECH B-ing編集長、Tech総研編集長、アントレ編集長・ゼネラルマネジヤーを歴任。 2016年、リクナビNEXT編集長に就任(現職)、2019年にはHR統括編集長を兼任(現職)。*HR=Human Resources(人的資源・人材) 調査概要 実施期間:2020年9月26日(土)~2020年9月30日(水) 調査対象:企業に勤める正社員かつ職種が人事である人 回答者数:1,224 人 調査方式:インターネット調査 PDF版はこちらをご覧ください。20201203.pdf(2.1MB)