2024.10.08旅行
旅行情報誌『じゃらん』および『じゃらんムックシリーズ』休刊のお知らせ
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株式会社リクルート
株式会社リクルート(本社:東京都千代田区 代表取締役社長:北村 吉弘、以下リクルート)の観光に関する調査・研究、地域振興機関『じゃらんリサーチセンター』(センター長:沢登 次彦、以下JRC)は、公益財団法人東京観光財団(以下 TCVB)と東京都台東区(以下台東区)とオーバーツーリズムに関する共同研究を実施しましたのでその研究成果をお知らせします。
日本政府が国策として掲げている観光立国の推進において、観光資源の保全、観光振興の両立および、地域住民にも配慮した観光地域づくりは重要な課題の一つと言われております。 2009年~2019年の10年間で、世界の旅行者は約1.6倍(※1)に、訪日外国人は約4.6倍(※2)に増えました。加えて、コロナ禍後の旅行需要の急速な回復により、再び「オーバーツーリズム」という言葉が注目を集めています。「観光地やその観光地に暮らす住民の生活の質、および/あるいは訪れる旅行者の体験の質に対して、観光が過度に与えるネガティブな影響」がオーバーツーリズムの一般的な定義ですが、具体的にどのような状態であればオーバーツーリズム状態と言えるのか、定義や指標はいまだ明らかになっておりません。また、オーバーツーリズムの問題が表面化した際の対策に加え、顕在化する前段階における未然防止策の検討も重要です。そこでJRCはTCVB、台東区と協業し、観光産業の発展・成長と持続可能な観光地域づくりの両立を目指し、オーバーツーリズムの問題が発生するメカニズムや地域特性、旅行者行動意識等を検証することで、観光地がオーバーツーリズム対策の優先順位を検討するための観点や考え方を整理致しました。
※1…世界観光機関(UN Tourism)調べ ※2…日本政府観光局(JNTO)調べ
本研究では、地域がどのような状態にあることがオーバーツーリズムだと判断するべきかを明らかにするため、定性・定量双方のデータを用いた以下を実施しました。
1. オーバーツーリズム発生パターンの分類・整理
オーバーツーリズムとして取り上げられる問題を、定義や地域性、住民感情等の観点から分類し、パターンに応じて観光地が取るべき対策の方向性を整理しました。
2. 海外/国内の複数都市間での比較検証
オーバーツーリズムを考える上で最も重要となる「住民の感情」について、どのような事象が発生すると住民が観光に対してネガティブな印象を抱くきっかけとなるか、仮説を立てた上で、海外および国内の複数都市と比較しながら検証を行いました。
3. 台東区における検証
1および2で整理した分類や考え方を、具体的な地域に当てはめ、よりミクロの観点で考察するため、東京を代表する観光エリアの一つである浅草を中心に、住民・旅行者双方の視点から台東区の状況を検証しました。
オーバーツーリズムはさまざまな要因が複合的に関係するため観光セクターだけでは解決できないことや、発生する地域の特性によって懸念される課題が大きく異なること、対策の重要性や優先順位が住民感情に大きく左右されることなどから、地域が「オーバーツーリズムであるか、どうか」を判断することはさほど重要ではなく、地域で発生している課題の一つ一つについてさまざまなデータを比較し、住民とコミュニケーションを図りながら丁寧に根本要因を特定していく必要があることが分かりました。 今回検証を行った台東区では、区民アンケートの結果などから 「オーバーツーリズム」の状態ではないと推察するものの、観光客の増加に伴う問題自体は発生しているため、旅行者のマナー・トラブルや生活環境悪化等の点について、今まで以上に住民の声が届く環境を整えていく必要がある、という見解に至りました。
▼検証結果の概要
本研究の詳細な調査・検証方法および各結果につきましては、報告書をご参照ください。
https://jrc.jalan.net/wp-content/uploads/2024/03/overtourism-report_release.pdf
今回の検証を通して、「オーバーツーリズム」という言葉が注目されることにより、いかにも「観光客(観光産業)」と「地域住民」が対立しているように見えてしまいますが、観光客の増加に伴い発生する諸問題は観光を推進している行政や観光協会、DMO、地域で事業を営む事業者、私たちのような民間企業まで、多くのステークホルダーが連携して解決していく必要があります。今までは、観光客がどこからどれぐらい来て、どのように行動するのか、という観点ばかりに注目されてきましたが、これからは観光の推進と暮らしのデザインを両立していくことが求められます。そのためには、住民の方が地域に対してどのような誇りや愛着を持っていて、日々どのように暮らし、何に困っているのか、具体的に把握することが必要です。また、観光客をコントロールして混雑の抑制・緩和や分散を行う取り組みは重要ですが、観光客の気持ちや行動を変えるのは簡単なことではありません。一方、地域や住民の観光に対する考え方を変えることはできると思います。そのためには、今一度私たちが観光産業の未来に希望を持つことと、住民の声を拾う環境をつくり信頼関係を構築し続けることが重要です。課題は多いですが、本研究が解決策検討のヒントになれば幸いです。
株式会社リクルート
じゃらんリサーチセンター研究員
長野 瑞樹(ながの みずき)
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