2024.11.13住まい
SUUMO住民実感調査 SUUMO住み続けたい街ランキング2024 関西版
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住まい
株式会社リクルート
株式会社リクルート(本社:東京都千代田区 代表取締役社長:北村 吉弘、以下リクルート)の住まい領域の調査研究機関である『SUUMOリサーチセンター』は、「SUUMOトレンド発表会2024」を2024年6月27日(木)に開催し、「断熱新時代」というトレンドワードを発表しましたのでご報告致します。住宅の性能への関心が高まる中、技術進化でアップデートされたエコ観点に加え、健康に過ごすという観点でも断熱性能が注目され、新たな広がりを見せています。
※発表資料はこちらをご参照ください。
https://www.recruit.co.jp/newsroom/pressrelease/assets/20240627_housing_02.pdf
ここ数年で、住宅の品質が大きく向上。家電や車のように、住宅の性能について関心を持つ人が増えています。
この住宅性能の中でも、大きく関心が高まっているのが「断熱性能」。 脱炭素社会の実現や、光熱費の削減など、これまでも注目されていましたが、 超高性能な家や、ひと部屋断熱など「断熱」の選択肢が広がっています。また、学校や公共施設では断熱ワークショップ等も行われ、身近な存在にもなりつつあります。
断熱の健康への影響を示す研究成果も明らかになり、健康意識の高まりとともに、「断熱」を重要視し、取り入れる動きが今、加速しています。
このような兆しを踏まえ、トレンドワードを「断熱新時代」と名付けました。
脱炭素社会実現のために、これまでも「省エネ住宅」の推進に向けたさまざまな取り組みが行われていますが、 日本の住宅の「省エネ性能」は、欧州の水準には到底及んでいません。
一方で、社会課題解決のための「省エネ」ではなく、 より生活者の関心事に近い「健康」「QOL向上」にも寄与することで注目が高まってきているのが「断熱性能」です。 法改正や手厚い補助事業、多様な選択肢など「断熱」を実現する手段も整ってきました。 2024年は「断熱新時代」に突入する元年とも言えます。
「断熱」に取り組む輪がこれから広がっていくと、 結果的に、脱炭素社会の実現につながるのではないでしょうか。
『SUUMO』副編集長 兼 『SUUMOリサーチセンター』研究員
笠松 美香
■注文住宅の重視条件で、「断熱性・気密性」は「耐震性」に次ぐ2位で毎年増加中
全国の注文住宅の建築者に、建築する際に重視した条件を聞いたところ、「断熱性・気密性に優れていること」が、「耐震性に優れていること」に次いで、2位となりました。また、「断熱性・気密性に優れていること」は、毎年数値を伸ばしています。
(出典:リクルート「2023年注文住宅動向・トレンド調査」より2023年の上位3位までと住宅性能に関する項目を抜粋)
■リフォーム検討者が重視する内容で「断熱」と「省エネ」選択率が上昇
リフォーム会社紹介サイト『ホームプロ』で、会社紹介希望者が重視したいと挙げている内容として、「断熱性の向上」と「省エネ性の向上」という項目を選択した割合は、2021年から右肩上がりに伸長しています。
■気候の変化で、旧来型の日本の家が限界に
兼好法師は、1300年代に執筆した「徒然草」において、夏の暑さを風通しでしのぐことを基本に置いた家造りを説きました。しかし、気象庁の発表によると、100年前にはまれだった35度以上の猛暑日が、2023年は東京都で過去最高の22日になるなど、現代では急増。旧来の家造りの思想が限界を迎えています。(出典:気象庁「大都市における猛暑日日数の長期変化傾向」)
■国土交通省の推計では、日本の既存住宅のうち、約9割が省エネ基準を満たしていない
国土交通省の推計によると、日本の既存住宅約5000万戸のうち、省エネ基準を満たす断熱性能を示す「断熱性能等級4以上」の物件は13%にとどまりました。つまり、約9割が省エネ基準を満たしておらず、夏は屋外から屋内に多くの熱が流入、冬は流出してしまうことを意味します。(出典:国土交通省調査によるストックの性能別分布を基に、住宅土地統計調査による改修件数及び事業者アンケート等による新築住宅の省エネ基準適合率を反映して国土交通省が推計(2019年度))
■電気料金は2024年7月請求分が過去最高水準に
化石燃料費用の高騰や政府による補助金の終了により、東京電力などの発表によると、2024年7月に請求される電気料金は、過去最高水準に。(出典:各電力会社のWebサイト)
住宅の断熱性能を上げるメリットは、これまで「熱を逃がさない構造だからこそ、少ないエネルギーで快適に過ごせること」や、「断熱性能の高い窓や建材で、結露やカビが発生しにくくなること」、「各空間における温度差が小さいことで、急激な温度変化による高齢者のヒートショックを予防できること」、「政府による補助事業など金銭面での優遇が受けられること」などが挙げられていました。
これからの断熱で、新たに着目すべきメリットや、断熱を取り巻く動向について、注目すべき4つのポイントをご紹介します。
WHO(世界保健機関)は、2018年11月、健康被害から居住者を守るための室温として、全世代に冬季で18度以上を強く勧告しました。また、寒い季節がある地域の住宅では新築時や改築時の断熱材設置を条件付きで勧告、夏季の室内での熱中症対策も条件付きで勧告しました。高齢者だけでなく、全世代で、室温やその急激な変化が、体のストレスになっています。
一方で、改修工事で断熱性能を上げれば、健康面のメリットがあることも分かっています。慶應義塾大学名誉教授の伊香賀 俊治先生らの調査によると、断熱改修前後で起床時の血圧を3.1mmHg低下することができ、厚生労働省の掲げる目標4mmHgの75%を達成できることになります。
参照URL:https://suumo.jp/journal/2024/01/15/199724/
断熱性能の高い住宅に住む選択肢は、増えてきています。
・断熱性能が高く、冷暖房費が安く済む賃貸物件が登場
冬の平均気温が氷点下の北海道ニセコ町で冷暖房費が月額6,000円程度に抑えられる賃貸物件が存在します(当エリアの一般的な木造戸建ての平均額は月額3万〜4万円)。
・戸建てでもできる「性能向上リノベ」や一部だけのリノベ
戸建てのリノベは、マンションに比べ難しいとされていましたが、工法や建材の進化により高い性能向上ができるように。
生活の中心になるゾーンだけ断熱を行う「ゾーン断熱リノベ」や「部分断熱リノベ」を選択する人も増えています。
・大型マンションや団地でも管理組合が断熱改修を実施
神奈川県横浜市の竹山団地では、建物全体の外断熱と窓のサッシ交換でペアガラスを入れる工事を行いました。リフォーム後、住民からは「冬場の室温が3度も上がった」「各部屋に3台あったエアコンを今は1台だけ使い、扉を全開。家中ほぼ同じ温度です」という声が上がりました。
・主要ハウスメーカーなどは2025年までのZEH普及目標を達成
「ZEH支援事業」の普及に取り組む「ZEHビルダー」登録事業者において、各社が設定された普及目標を前倒しで達成済み。各社で取り組みが進んでいます。
・技術の高いスーパー工務店も各地で活躍中
地元限定で活躍する工務店の中には、勉強会などを開き高断熱性能の技術獲得に熱心な会社も多数あります。
総務省の発表によると、2023年の全国の熱中症救急搬送者数は、調査開始以来過去最多に迫る91,467人に上り、その4.7%が教育機関(小学校・中学校など)で起きています。(出典:総務省「令和5年(5月から9月)の熱中症による救急搬送状況」)
一方、教室に断熱性能を高める改修をすれば、集中力欠如や体調不良の訴えが少なくなり、学習環境が良くなることが分かっています。2007年~2010年に愛媛県内の公立小学校8校・約600人を対象とした調査によると、夏季の教室の体感温度が高い学校ほど、体調不良の訴えや、集中力欠如の発生率が上がりましたが、断熱改修など徹底した環境改善を行えば、これらの数値は改善しました。(出典:教室環境の質が児童の体調と集中力に与える影響に関する実態調査 (柳井 悠希、伊香賀 俊治、川久保 俊))
参照URL:https://suumo.jp/journal/2024/06/24/203176/
学校の断熱改修前後における冷房時の温度変化
上の画像は、いずれも冷房1台を稼働。天井に断熱工事を施せば、同じ冷房器具でも教室全体の温度を下げられる。 画像提供:Maelab前真之サスティナブル建築デザイン研究室
参照URL: https://suumo.jp/journal/2024/06/21/203116/
また、学校の断熱改修の必要性は全国で認識されつつあります。NPOや地元工務店らのサポート、クラウドファンディングによる支援などにより、ワークショップ形式の断熱改修DIYイベントが行われています。実施後は、夏場の冷房の効きが良くなったり、冬場の灯油ストーブの燃料が少なくて済んだりなど体感できる効果が出ています。長野県の上田染谷丘高校では築50年超の校舎を生徒会中心に断熱DIYしました。主な実施内容は、内窓設置や壁面への断熱材設置・屋上への断熱材充填など。 SDGs観点の学びの機会にもなっています。
参照URL:https://suumo.jp/journal/2024/06/25/203198/
日本では住宅への投資額に対し、資産額が非常に低くなっています。その原因の一つは、建物への評価が低いことです。35年ローンを組む投資に見合わない資産となってしまう現行の仕組みには課題があり、国土交通省は「投資額累計に対し資産額が500兆円程度下回る」と報告しています。(出典:国土交通省「中古住宅市場活性化ラウンドテーブル平成25年度報告書(案)」)
鳥取県では、冬季死亡率の高さを課題視し、省エネ住宅の普及を目指してきました。県が進める新しい中古住宅の評価法では、耐震性などと並び、省エネ基準など、基準を満たした新築時の性能や改修などの投資に応じて建物の評価額を上げます。2024年4月より開始しています。(出典:鳥取県「とっとり住宅性能等評価指針(案)説明会」)
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