2024.10.10しごと
就職プロセス調査(2025年卒)「2024年10月1日時点 内定状況」
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しごと
株式会社リクルート
株式会社リクルート(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:北村 吉弘、以下リクルート)は、スタートアップ(※)への転職に関する動向をまとめましたので、ご報告いたします。
(※)定義やデータの抽出方法は、最終ページに記載
解説者:リクルート スタートアップ領域専任コンサルタント 新堂 尊康
日本の経済成長や雇用創出、社会課題の解決の担い手として、スタートアップへの期待が高まっています。政府はスタートアップの育成を「新しい資本主義」の実現に向けた重要施策と位置付けており、2022年には「スタートアップ育成5か年計画」を発表。5年にわたる官民による支援の全体像を示しました。2024年の「骨太の方針」にも、スタートアップへの支援の方向性が盛り込まれています。
アメリカでは新興の企業が経済成長をけん引していますが、日本での「ユニコーン企業」(企業価値10億ドル超の非上場企業)の創出スピードは遅く、世界に差をつけられています。こうした状況を受け、政府を挙げてスタートアップが速く、大きく育つ環境をつくろうとしていると考えられます。
「スタートアップ5か年計画」の柱の一つには、「人材」が挙げられています。起業人材の発掘・育成はもちろんですが、設立後のスタートアップに人材がなかなか集まらないことも、課題に挙げられています。
スタートアップへの労働移動は足元でどのような状況にあるか、『リクルートエージェント』でのスタートアップへの転職者数と、スタートアップの求人数を分析したグラフが以下です。
転職者数は2015年度を1とした際、2023年度は3.1倍と伸長しており、人材がスタートアップへ移りつつあることが分かります。一方、求人数は6.8倍でした。スタートアップの人材へのニーズに、転職者数が追い付いていない状況が表れています。
求職者がスタートアップへの転職をためらう背景には、企業風土や賃金、働き方などに関する不安があると指摘されていますが、スタートアップに抱かれがちなイメージと実情は異なります。
例えば若い世代ばかりが働くイメージを抱かれることが多いですが、実際にはスタートアップで働くミドル・シニア層も増えています。賃金の面では大企業に遜色ない報酬を支払う企業も多くなっており、柔軟な働き方を実現して優秀な人材を迎え、定着を図る企業も増えています。
スタートアップは未上場のため、IRなどの情報開示が乏しくなってしまう側面があります。求職者の不安を解消するためにも、スタートアップには自社に関する情報の透明化を図り、魅力を訴求することが重要と言えるでしょう。
スタートアップは大企業と比べて規模が小さく、急速な成長を目指すため、一人当たりの裁量が大きく、仕事の幅が広いのが特徴です。だからこそ、事業や会社の急成長に、自身がどんな役割を果たしているか実感しやすいのです。また、事業や制度が整い切らない状況であるがゆえに多様な仕事を任されることで、これまでになかった経験を積める機会も多く、成長機会を得やすいという魅力があります。
求職者の方々からのご相談を受けていると、「今勤める会社での自身の存在感について物足りなさを感じている」「今の経験やスキルでは、将来のキャリアが見通せない」といった声をよく聞きます。スタートアップは新しく、社会課題を解決し得るビジネスを展開する企業だからこそ、自らの仕事に対するやりがいも感じられます。こうした思いを抱える方々にとっては、スタートアップへのチャレンジが、不満や不安を解消するきっかけになるかもしれません。
『リクルートエージェント』でのスタートアップへの転職者数を年代別に見ると、2015年度と比べ、2023年度は40歳以上で7.1倍でした。一方、20~39歳では2.7倍と、ミドル・シニア層の方が若い世代よりも転職者数の伸びが顕著でした。
スタートアップは「経営陣、社員いずれも若く、ハードな働き方なのではないか」「大企業の職場の風土とは異なり、ついていけないのではないか」といったイメージを持たれることが多いですが、近年は従業員のワークライフバランスに配慮する企業が増えています。選考の過程でこうした実情を知ったミドル・シニア層の方々が、転職するケースが増えているのです。
また、社会課題の解決に向け、先端科学技術を用いたビジネスを展開する「ディープテック・スタートアップ」や大学発のスタートアップには、ミドル・シニア層の転職がとりわけ目立ちます。ミドル・シニア層のエンジニアが持つ先端技術についての豊富な知見・経験は、ディープテック・スタートアップが新技術を生み出し、ビジネスとして展開するために求められています。
『リクルートエージェント』でのスタートアップへの転職時に提示された年収帯別の割合について、2015年度と2023年度を比較したところ、400万円未満の割合が67.4%から41.5%へと、25.9pt減少していました。400万円以上の年収帯での転職者の割合は増加傾向にあり、400万円以上600万円未満で15.2pt増加。600万円以上800万円未満では、6.7pt増加していました。スタートアップへの転職時には、かつてと比べて提示される年収が高くなってきていると言えます。
背景には、スタートアップの資金調達が増加傾向にあることがあります。ベンチャーキャピタルなどからの「エクイティファイナンス」(株式などの発行に対する出資)のほか、金融機関からの「デットファイナンス」(借⼊、融資)など、資金調達手法も多様化しています。国などからの補助金が手厚くなっていることも、賃金アップに寄与しています。また、ビジネスが軌道に乗って売り上げが伸びるスタートアップも増えており、従業員の賃金に還元できている企業が増えていることも大きな要因です。
このほか、自社株を「ストックオプション」として従業員に提供する企業も多いです。会社が成長して株価が上がれば従業員の利益となるため、スタートアップで働く金銭的な魅力の一つになっています。
●金融機関→スタートアップの事業開発職(40代)
大手金融機関の関連会社で経営管理や事業企画を担っていた方は、農林水産業のDX支援を担うスタートアップの事業開発職に転職を果たしました。
転職先の企業については当初、スタートアップに限らず検討されていました。リリースしたばかりのプロダクトをごくわずかな従業員数で展開しているこの企業を紹介すると、従業員に大きな裁量が与えられ、経営陣と共に会社をこれからつくり上げていけることに魅力を感じて転職を決意されました。
採用企業側も、従業員の人数がまだ少ないため事業開発にとどまらない仕事を任せたいと考えていたところ、経営管理の経験者として資金管理も担える人材であったことから、採用を決めました。
■調査概要
調査方法:『リクルートエージェント』求人データ・転職者データの分析
調査対象:『リクルートエージェント』での求人、『リクルートエージェント』を利用し、転職した方
有効調査数:非公表
調査実施期間:2024年7~8月
調査機関:リクルート
■本リリースでのスタートアップの定義、抽出方法
経済産業省などの公表資料では、スタートアップの要件を「設立10年未満の非上場企業」としている。『リクルートエージェント』での分析にあたっては、「株式未公開」で、分析対象期間に「設立10年以内」だった企業を抽出。このうち、大企業の関連企業などを除外した企業を分析対象とした。
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