【*新設計版】兼業・副業に関する動向調査(2020)概要版 働く個人の9.8%が兼業・副業を実施中 兼業・副業制度あり企業の72.7%が過去3年以内に制度を導入

株式会社リクルートキャリア(本社:東京都千代田区、代表取締役社⾧:佐藤 学)は兼業・副業に関する動向について、働く個人および企業の人事担当者それぞれに調査を実施しました。働く個人の兼業・副業の実施状況や、企業の兼業・副業制度の状況および社外の兼業・副業人材の受け入れなど、調査結果の概要をご報告いたします。多様な働き方にご関心のある方や、兼業・副業制度を通じた人材活用を目指す方のご参考になれば幸いです。なお別途、本調査の詳細なデータを掲載したレポートをご報告する予定です。

*兼業・副業をテーマに2020年度より調査設計を新たにして実施した調査となります。2017年~2019年に実施しました「兼業・副業に対する個人の意識調査」および「兼業・副業に対する企業の意識調査」とは、調査結果を単純比較できるものではない点、ご留意ください。

本件の詳細はこちらをご覧ください。
20210225_02.pdf(2.0MB)

概要

  1. 働く個人の兼業・副業の実施状況(個人向け調査)
    調査時点で兼業・副業を実施している人は9.8%。これまで兼業・副業の経験はないが今後実施してみたいと回答した人は41.8%。特に20代や30代の若手層で兼業・副業の実施率や実施意向が高い。
  2. 「ふるさと副業」への興味と理由(個人向け調査)
    兼業・副業実施中および実施意向がある人たちの76.6%が異なる地域での兼業・副業に興味あり。兼業・副業自体への興味に加えて、地方創生や自分と関わりがある地域の貢献に一定の関心がある。

  3. 兼業・副業を認める人事制度(人事担当者向け調査)
    従業員のモチベーション向上や定着率向上などで兼業・副業制度の効果を実感。制度あり企業の72.7%は過去3年以内に制度を導入。

  4. 社外の兼業・副業人材の受け入れ(人事担当者向け調査)
    人手不足解消や社内にはないスキル・知識の獲得などを目的に社外の兼業・副業人材を受け入れ。受け入れを行っている企業の67.0%が過去3年以内に受け入れを開始。

  5. 解説(リクルートキャリア事業推進室/『サンカク』責任者 古賀 敏幹)
    働く個人も、企業も、兼業・副業に対する考え方が変化。人材やスキルが企業の壁を越えて活用でき、より多くの企業の事業成長を実現させるような仕組み・環境を整えていくことがより一層重要になる。

調査概要

個人向け調査

  • 事前調査の回答者10,000人のうち、「会社員(正社員)」と回答した7,937人の集計結果を掲載しております。また、本調査集計対象の1,456人は、兼業・副業の実施状況および所属企業の従業員規模で割付を行っています。
  • 本調査における「兼業・副業」は、他企業や他者から業務依頼を受け、報酬として金銭を受け取るものを指します。株式運用・FX・不動産投資・家賃収入・オークションやフリーマーケットでの販売などは除きます。

人事担当者向け調査

  • 本調査集計対象の1,660人は、兼業・副業制度の導入状況/兼業・副業人材の受け入れ状況と、所属企業の従業員規模で割付を行っています。
  • 「社外の兼業・副業人材の受け入れ状況」の説明で用いている「社外の『兼業・副業で働く人』」とは、回答者の企業の従業員ではなく、主たる勤務先が他にある人を指します。
    ※なお、受け入れ時の雇用形態(社員や業務委託など)は問うていません。

調査結果の注意点

%を表⽰する際に⼩数点第2位で四捨五⼊しているため、単⼀回答の合計値が100%に⼀致しない場合があります。
差分の算出には小数点第2位を四捨五入する前の数値を用いており、表示されている%で差分を算出した際、数値が一致しない場合があります。

1.働く個人の兼業・副業の実施状況(個人向け調査)

9.8%の人が兼業・副業を実施中。20代・30代の若手層で兼業・副業に高い関心。

企業に勤める正社員で、調査時点(2020年12月)で兼業・副業を実施している人は全体の9.8%でした。兼業・副業経験者で、調査時点では実施していないものの再開意向がある人と合わせると、全体の15.0%が兼業・副業に携わっているという状況でした。また、全体の41.8%の人が、これまで兼業・副業の経験はないが今後実施してみたいと回答しており、兼業・副業の実施意向があることが分かりました。

年代別に兼業・副業の実施状況をみると、最も兼業・副業の実施率が高いのは20代後半(25~29歳)の21.0%でした。次に、これまで兼業・副業の経験はないが実施意向がある人は30代前半(30~34歳)で最も高く50.3%、およそ半数の人が兼業・副業に興味があることが分かります。兼業・副業の実施状況と実施意向は年代が下がるにつれてそれらの割合が高くなる傾向にあり、特に20代・30代といった若手層の兼業・副業への関心の高さがうかがえます。

※「兼業・副業実施中+再開予定」は、2020年12月現在「兼業・副業実施中」と「今後の実施意向あり/過去に兼業・副業経験 あり」の合計。「兼業・副業実施意向なし」は「今後の実施意向なし/過去に兼業・副業経験あり」と「今後の実施意向なし/ 過去に兼業・副業経験なし」の合計。

本調査では、「兼業・副業を実施中+再開予定の人」と、「兼業・副業を実施してみたい人」それぞれについて、「兼業・副業のきっかけ」や「兼業・副業の効果実感/期待する効果」について確認しました。

「兼業・副業のきっかけ」は、両者ともに「自分のキャリアを見つめ直した」という項目の選択率が高く、一定の人が兼業・副業を自身のキャリア形成に活用しようと考えていることが分かります。また、両者の差分が最も大きかったのは「すでに兼業・副業をしている人が身近にいた」という項目でした。兼業・副業を実施している人は本項目の選択率が31.0%と最も高く、身近な実例が兼業・副業のきっかけになっているようです。

「兼業・副業の効果実感/期待する効果」は、両者に同様の回答傾向がみられました。「本業からの収入に追加して副収入が得られた(得たい)」という項目の選択率が最も高く、効率的な仕事の進め方・柔軟な発想・新しい知識やスキルの獲得といった項目がそれに続きました。

2.「ふるさと副業」への興味と理由(個人向け調査)

「兼業・副業実施中+実施意向あり」の人たちの76.6%が異なる地域での兼業・副業に興味。 地方創生や地域貢献に一定の関心。

昨今、都市圏で働く人が地方企業の副業を実施する事例が増えています。当社ではこのような副業の在り方を「ふるさと副業」と称し、新しい働き方のきざしとして注目しています。本調査においては、「ふるさと副業」を「回答者自身の住まいとは異なる地域での兼業・副業」ととらえて、興味や理由を確認しました(テレワークを利用して現地に赴かない働き方も含みます)。「兼業・副業実施中+実施意向あり」の人たちの76.6%が、このような兼業・副業に興味があると回答しました。また、「兼業・副業の実施意向なし」の人たちの34.4%は興味があるという結果でした。兼業・副業の実施意向がない人であっても、一定数はテレワークなどを活用した地方企業での兼業・副業に関心がある様子がうかがえます。

※「ふるさと」とは、出身地でなくても、学校があった・旅行で訪れた・応援したい企業や人がいるなど何らかの理由で想起する回答者自身の住まいとは異なる地域のことを指しています。

「ふるさと副業」に興味がある理由としては、「兼業・副業実施中+実施意向あり」の人たちは、「兼業・副業自体に興味があるから」の選択率が68.3%と最も高く、「自分に関わりのある地域に貢献したいから」(27.8%)、「地域問わず、地方創生に興味があるから」(27.3%)という結果でした。

一方で、「兼業・副業実施意向なし」の人たちでは、「兼業・副業自体に興味があるから」の選択率が61.1%と最も高く、「地域問わず、地方創生に興味があるから」(33.3%)、「自分に関わりのある地域に貢献したいから」(15.1%)という理由が続きました。

3. 兼業・副業を認める人事制度(人事担当者向け調査)

従業員のモチベーションや定着率向上に効果を実感。72.7%が過去3年以内に制度を導入。

企業の人事担当者向け調査では、兼業・副業を認める人事制度の目的と効果・期待を質問しました。「兼業・副業の人事制度がある」と回答した人と、「兼業・副業の人事制度の導入を検討中」と回答した人を比較する形で図示しています。兼業・副業を認める人事制度の目的としては、両者ともに従業員のモチベーションや定着率の向上、収入増、能力開発といった目的の選択率が高い状況を示しています。

兼業・副業の人事制度の効果としては、「従業員のモチベーションが向上した」「従業員の収入増につながった」「従業員の定着率の向上、継続雇用につながった」といった項目の選択率が高いことが分かりました。兼業・副業の人事制度導入を検討中の回答群が、期待する効果もおおむね同様の傾向を示しています。

*「兼業・副業の人事制度がある」の選択率が高い順に掲載

「兼業・副業の人事制度がある」と回答した人事担当者に人事制度の導入時期を確認したところ、「1年以内」および「3年以内」の回答が全体の72.7%を占めています。兼業・副業を認める人事制度の導入が、ここ数年で促進されている実態が分かります。また、従業員の兼業・副業経験の本業への還元状況は53.0%が還元できている(「本業に還元できていると思う」と「どちらかというと本業に還元できていると思う」の合計)という結果でした。

4. 社外の兼業・副業人材の受け入れ(人事担当者向け調査)

人手不足解消や社内にはないスキル・知識の獲得が目的。「すでに受け入れを行っている」とした回答のうち67.0%が過去3年以内に社外の兼業・副業人材の受け入れを開始。

兼業・副業で働く人が増加することと相まって、企業がそのような人材を社外から受け入れて活用する事例が増えています。本調査では、社外の「兼業・副業で働く人」を受け入れる目的について、「すでに受け入れている」と回答した人と、「受け入れを検討中」と回答した人それぞれに質問を行いました。

受け入れの目的としては、両者ともに「人手不足を解消するため」という項目の選択率が最も高く、「社内人材にはない知識やスキルを持った人材を確保するため」「イノベーションの創発や新事業開発につなげるため」「多様な働き方を促進するため」といった項目がそれに続きました。

*「社外の兼業・副業人材を受け入れている」の選択率が高い順に掲載

受け入れの目的と同様に、受け入れて感じる効果(受け入れに期待する効果)を確認しました。「すでに受け入れている」と回答した人と、「受け入れを検討中」と回答した人双方が同じ傾向を示しており、「社内人材にはない知識やスキルを持った人材を確保することができた」「人手不足を解消することができた」などが選択率上位の回答でした。また、「多様な働き方が促進された」という回答の選択率も比較的高く、社外人材を活用した自社の働き方の変化に対する効果実感や期待が高いことがうかがえます。

最後に「すでに受け入れている」と回答した人事担当者に、社外の兼業・副業人材の受け入れ開始時期を確認したところ、「1年以内」および「3年以内」の回答が全体の67.0%を占めていることが分かりました。これはP.11の兼業・副業を認める人事制度の導入状況と同様の状況を示しており、企業の兼業・副業制度の拡充とともに兼業・副業人材の活用が進んできていると言えるでしょう。

5. 解説(リクルートキャリア事業推進室/『サンカク』責任者 古賀 敏幹)

キャリアアップや成長機会としての兼業・副業への関心の高さ

副業の実施率が高い20代後半~30代前半の副業に取り組む理由を見てみると、他の年代よりも「自分自身のキャリアに役立つ経験を積むため」という理由を選択する割合が高くなっています。改めて若い世代においてキャリアアップや成長機会としての兼業・副業に関心が高まっていると言えます。この背景としては、本業で一定の経験を積んだ後にさらなる成長の機会を社外にも求める方が多いのではないかと考えられます。

ふるさと副業への関心の高さ

2020年の当社のキャリアトピックとして提言した「ふるさと副業」について、今回の調査では約7割の方が興味ありと回答しました。改めてUIターンなど移住に限らず、都市部で暮らしながら地元やふるさとに貢献できる機会に対してのニーズの高さが分かったとともに、リモートワークの普及にともない、ビジネスパーソンにとって、場所に縛られない働き方が広く浸透していると言える結果になったと思われます。

社員の兼業・副業を認める企業では効果への期待がみられる

兼業・副業制度の導入に関しては、少し前までには「従業員の離職リスク」が懸念としてよく挙げられていましたが、今回の調査では逆に「従業員の定着率の向上」や「従業員のモチベーション向上」といった効果を期待して制度を導入するといった回答が多く見られたのも大きな変化と言えます。

会社を超えて成長企業に参画できる当社のサービス、『サンカク』は、働く個人の「社外でも活躍できる人材になりたい」というニーズ(≒エンプロイアビリティへの意識の高まり)に応えるためにサービス運営をしていますが、今回の調査では、そういった働く個人(従業員)のニーズに呼応して、企業側も「エンプロイメンタビリティを高める意識」が高まってきているような傾向が見られたのは非常に良い傾向だと考えます。

副業者の受け入れを開始する企業も増え始めている

今回の調査では、「自社の従業員に対して兼業・副業を認めているか」だけでなく、「自社でも社外の兼業・副業人材を受け入れているか」の確認を行いました。

「実際に受け入れている」と回答した企業の半数以上が「過去3年以内に受け入れを開始した」と回答しており、副業解禁の流れで副業に従事する個人の増加に対して、副業者を受け入れる企業も増え始め、企業の壁を越えた人材活用・交流が促進される可能性を感じました。受け入れ企業側の期待としても「人手不足の解消」や「社内にはない知識やスキルを持った人材の獲得」といった理由を挙げる企業が多く、そのニーズに応え、人材やスキルが企業の壁を越えて活用でき、より多くの企業の事業成長を実現させるような仕組み・環境を整えていくことが、より一層求められていくでしょう。

本件の詳細はこちらをご覧ください。
20210225_02.pdf(2.0MB)