イベントレポート
2019年08月27日
株式会社リクルートジョブズ

HR Intelligence Forum Showcase Conference2019  アンカーキャスト戦略 ~ライフ×ワーク+共感~

賃金上昇や働き方改革など、昨今の人事課題の多くは、従来通りのやり方で推し進めることが難しい時代になっています。
もはや現場任せではなく、人事の課題を会社のアジェンダに昇華し、テクノロジーを活用しながら解決する時代へ――。
2019年7月8日に開催された「HR Intelligence Forum2019」では、企業の枠組みを越えて、課題解決の糸口やヒントとなる貴重な講演が行われました。


アンカーキャスト戦略 ~ライフ×ワーク+共感~
ヤマト運輸株式会社 宅急便オペレーション部 課長 羽場正信

ECの伸張で従来の成長モデルが破綻
2010年代初頭まで、ヤマト運輸は荷物を集めることで密度・生産性を高め、利益を増やす成長モデルで進んできましたが、①EC市場の増加、②労働人口の減少などの要因により成長トレンドに変化が発生。業務量が社員数の増加を上まわりはじめ、溢れた業務量に対しては外部パートナーの協力を頂きながら進めてきましたが、これまでのような荷物が増え、戦力が増え成長してきた流れが、荷物が増えても人が集まらず、外部パートナーの協力を仰ぐもののセールスドライバーのゆとりがなくなり労働環境が悪化する、という逆回転、負のスパイラルに陥っていました。
また、特徴的な変化として、営業所では今まで午前(配達)と午後(集荷)の二つの大きなピークの山があり、そのピークに合わせた最適な戦力配置を行うことで増加する荷物に対応していましたが、ECの伸張にともない、不在率と夜間配達ニーズの増加により夜間帯に"第3の山"が生まれました。この"第3の山"に対して、外部パートナーへの委託や夜間専門ドライバーの採用などによる対応を図りましたが追いつかず、結果的に、午前中から働くセールスドライバーが夜間のピークにも対応する「先発完投型」の勤務が増え、負のスパイラルがさらに進んでしまっていました。

セールスドライバーからバトンを受け継ぐ「アンカーキャスト」
最大の課題である夜間帯のニーズに対応するために、配達特化型のネットワークを構築してセールスドライバーに次ぐ第2の柱となるように考案したのが、「アンカーキャスト」です。
アンカーキャストの制度構築では、会社目線ではなく働き手の目線に立ちました。「安心して働けて、安定して稼げる仕事」として設計しており、具体的には、「月給制での安定収入」「営業ノルマの無い配達に特化した働き方」「原則残業なしの午後からの働き方」などが特徴です。午前から夕方までを担当するセールスドライバーからのバトンを受け継ぎ、配達サービスを最後まで担える人材として、2020年3月末までに全国で1万人の在籍を目標にしています。
アンカーキャスト戦略を進めるにあたっては3つのステップにて進めました。その中で大きな壁の一つが、最初のステップである社内の意識改革でした。本社が考え、進めていく取り組みは、ともすると地域の特性や実情と合わないものになってしまいます。そこでまず、現場の理解や共感を丁寧に得ていくことに注力しました。その中でも、①キーマン(現場責任者等)を巻き込むこと、②伝える人が替わっても伝えるべき内容が変化しないように理解しやすい共通言語を設定すること、③制度の試行により「体感」してもらうことを通じて、アンカーキャスト導入のメリットを理解・納得してもらいました。さらにステップ2としては、まずは社内の既存社員からアンカーキャストへの移行を実施。スピード感をもって、働き方の変化を実感する店を増やすことに注力しました。アンカーキャスト戦略を現場が理解し、納得してから、ステップ3として、初めて社外採用に踏み切りました。

新たなターゲット層に向け、新たなコンセプトで採用を展開
では、どんな方々をターゲットにして採用するのか?二つの視点からのマーケティングにより、新たな採用ターゲット層が見えてきました。マス・マーケティングの視点から見えたのは、「自分のライフスタイルを重視する若年層」、特に20代の女性が採用条件とマッチしやすいということでした。実際に採用を進めた結果としても、想定以上に若年層の応募が多く、かつ、定着率も高いことがわかりました。また、インサイド·マーケティングの視点から、「家事を分担する共働き夫婦」「親の介護に取り組む中高年層」といった多様なライフスタイルの方々に、柔軟な働き方を提供できていることが見えてきました。

これらの多様なライフスタイルに対する柔軟な働き方をキーとして、ポジティブなイメージで伝わっていくよう、採用において「午前の『自分の時間』と午後の『働きがい』の両立」を訴求コンセプトとして、今までのセールスドライバーとは違う求職者層をターゲットとして取り組みを開始しました。
採用にあたっては新たなターゲットを7つに分けて、それぞれの訴求テーマに沿った求人ツールを新たにつくり、また、ターゲットの興味を引くリアルイベントにも参加しました。さらに、実際に自分の夢と生活とを両立させているアンカーキャストの事例を動画で紹介するなどして、ターゲットの興味や関心を喚起しました。

次の100年も働きたいと思われる企業を目指して
こうした取り組みにより、2019年6月末には、アンカーキャスト在籍人数が6,000人を超えました。女性比率は約3割と、道路貨物運送業の平均である約2%を大きく上回っています。また、20代の比率も約2割と、業界平均の約9%を上回っており、新たなターゲット層の採用が進んでおります。
アンカーキャスト導入による効果としては、セールスドライバーから「早く帰れるようになり、子どもと食事をしたり家事を手伝ったりと家族から喜ばれている」「日中の時間帯に余裕が出てきて、お客さまと対話する時間が増えた」など、働き方が大きく変化したという声が上がっています。実際に残業時間は2017年3月を100とすると、2019年3月には65.3に減少。有給休暇の取得率は2017年3月の52.5%から2019年3月には81.5%に向上しています。また、女性のアンカーキャストも多く働いているので、女性のお客さまからは「夜間に女性が届けに来てくれるとうれしい」などと好評です。

ヤマトグループは2019年11月に創業100周年を迎えます。今後も、時代や働き手のニーズにあった採用戦略のスピード感を高めるために、リクルートジョブズさんなどのパートナーの知見を頂きながら、「採用」「育成」「定着」「登用」のサイクルをしっかり構築・循環させていきます。そして、採用マーケットでのブランド構築を通じて、次の100年も働きたいと思われる企業を目指していきます。

本件のPDFはこちらよりご覧ください。

HR Intelligence Forum Showcase Conference2019  アンカーキャスト戦略 ~ライフ×ワーク+共感~

本件に関するお問い合わせ先

https://www.recruit.co.jp/support/form/

(c) Recruit Co., Ltd.