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月経困難症とは?ひどい生理痛の症状はもしかしたら隠れた病気のサインかも~20・30代の働く女性が知っておきたい【生理痛】の原因と対処法 Vol.2~

月経困難症とは?ひどい生理痛の症状はもしかしたら隠れた病気のサインかも~20・30代の働く女性が知っておきたい【生理痛】の原因と対処法 Vol.2~

女性がカラダの不調と向き合いながら働くための知識やケアなどについての専門家のアドバイスをお伝えする「働く女性が知っておきたい<カラダの不調と向き合うコツ>」シリーズ。生理や生理痛について知っておきたい基礎知識や、痛み止め(鎮痛薬)、セルフケアによる生理痛への対処法について教えていただいた【Vol.1】に続き、【Vol.2】では市販薬やセルフケアではどうにもならない生理痛に悩む女性にぜひ読んでいただきたい「月経困難症」について産婦人科専門医の関口 真紀先生にお話しを伺いました。

※この記事の内容は、リリース当時(2024年3月現在)のものです。最新の情報については、公的機関のサイトなどをご確認ください。



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月経の度につらい痛みをガマンしていませんか。日常生活に支障をきたすほどのひどい生理痛の場合は、「月経困難症(げっけいこんなんしょう、月経=生理)」といって治療が必要になります。


月経困難症とは? 機能性月経困難症と器質性月経困難症の特徴と治療方法

月経困難症には二つのタイプがあり、診察で原因となる病気が見つからない場合を「機能性月経困難症」、子宮筋腫や子宮内膜症、子宮腺筋症などの病気が見つかる場合を「器質性月経困難症」と言います。


(図表1) 月経困難症の特徴月経困難症の特徴


機能性月経困難症の特徴と治療方法

10代後半から20代後半に多い機能性月経困難症は、身体の成長や妊娠・出産によって症状が軽くなる場合が多いのですが、日常生活に支障が出ている場合には治療が必要です。症状としては、生理の1~2日目に強い痛みが起こり、それに対し薬での治療を行ったり、不安を軽減するための治療を行います。

(図表2)「機能性月経困難症」の治療法 「機能性月経困難症」の治療法


痛みは、NSAIDs(非ステロイド抗炎症薬)などの鎮痛薬で和らげます。また必要に応じて漢方薬や抗けいれん剤(筋肉のけいれんを抑える薬)を使用することがあります。漢方薬(芍薬甘草湯、当帰芍薬散、加味逍遙散、桂枝茯苓丸、桃核承気湯、当帰建中湯など)は体質や症状に合わせて、その人に合った薬が処方されます。また抗けいれん剤としては、市販されている生理痛専用薬の「エルペイン」には、鎮痛効果の他に筋肉のけいれんを抑える効果もあります。

これらの治療で症状が治まらない場合は、低用量経口避妊薬(EP配合剤=エストロゲン・プロゲスチン配合剤)というホルモン治療を行います。生理の出血量を減らし、痛みを軽くすることができます。また、生理の周期の調節や避妊効果もあり、連続投与することも可能です。

また、症状が起こることへの不安は痛みに影響しますので、不安を取り除くためにも正しい知識に基づいてケアすることが大切です。


器質性月経困難症の特徴と治療方法

器質性月経困難症は、子宮や卵巣、骨盤内に痛みの原因となる疾患が認められるものを指します。20~40代に多く、生理中だけでなく生理以外の時期にも症状が見られます。また子宮内膜症や子宮筋腫、子宮腺筋症などの病気が原因で症状が起こっているため、治療しないでいると、原因となっている病気が進行してしまいます。そのため、原因となっている病気に合った治療を行うことが必要です。

(図表3) 「器質性月経困難症」の治療法 「器質性月経困難症」の治療法


治療方法としては、原因となる病気の種類に関係なく、まずは鎮痛薬や漢方薬などで痛みなどの症状を和らげます。

症状が十分に改善されない場合は、低用量経口避妊薬(EP配合剤)や黄体ホルモン製剤(ジェノゲストやミレーナ)を使います。より重症でこれらの薬が効かない場合は、生理を止める働きがあるGnRHアゴニストまたはアンタゴニストを使うことを検討する場合もあります。これらの薬自体が、原因となっている病気の進行を抑える治療にもなります。また、進行具合によっては、それぞれの病気に合った手術を検討することもあります。手術を検討する場合は、将来の妊娠や出産を考慮し、慎重に選択する必要があります。

このように、月経困難症の症状は、薬で改善することができます。痛みをガマンするのではなく、婦人科を受診し症状に合った治療を行ってください。それにより将来の病気を防ぐこともできます。


ひどい生理痛(月経困難症)の原因となる代表的な婦人科系の病気

ここからは、生理痛や月経困難症の原因となる病気の中でも、多く見られるものについて解説します。子宮筋腫などは30~40代で増えつつある病気ですので、この機会に知っていただければと思います。


子宮筋腫(しきゅうきんしゅ)

良性の平滑筋(筋肉)の腫瘍(こぶ)で、40歳以上の女性の20~30%に見られる珍しくない病気です。生理痛や出血量が多くなる、生理が長引くといった症状の原因となり、筋腫のできる場所(粘膜下、筋層内、漿膜下)や大きさによって、症状が違ってきます。また、腫瘍は、女性ホルモンの影響で、生理があるうちは大きくなったり数が増えたりします。


子宮内膜症(しきゅうないまくしょう)

子宮の内膜(生理の時に剥がれ落ちてくる部分)が、子宮の外側や卵管、肺や腸といった本来の場所以外で増殖し、生理の度に出血を繰り返す病気です。卵巣にできたものは「チョコレートのう胞」と呼ばれます。症状としては、初期は生理時の下腹部の痛みだったものが、子宮の外にできた子宮内膜と周囲の組織との癒着(ゆちゃく)により、生理痛が悪化するだけでなく、生理時以外にも慢性的な腰痛や下腹部の痛みなどの症状を引き起こします。さらに、卵巣や卵管などに癒着を引き起こすこともあるため、不妊症の原因となることもあります。


子宮腺筋症(しきゅうせんきんしょう)

子宮の筋肉の中に、子宮の内膜が増殖する病気です。女性ホルモンの影響を受け、正常な子宮内膜と同じように子宮筋層内で増殖と剥離を繰り返すため、病気が進行すると子宮筋層が厚くなり、子宮が大きくなります。それにより、下腹部痛、性交痛、子宮の増大による圧迫症状を起こします。

(図表4) 子宮の構造 子宮の構造


最後に:生理の悩みは社会全体の課題

「働く女性の健康に関する実態調査」(2004年女性労働協会)によると生理痛があると答えた女性は76.5%。そのうちの2.8%が、生理痛がかなりひどい(薬を飲んで会社を休む)と回答し、ひどい(薬を飲めば仕事ができる)と回答した女性は25.8%いると報告されています。また、生理に伴う症状による労働損失を年間6828億円と算出する報告(2013年)※もあります。
生理痛のような体調不良は、つい症状のある人の問題として捉えがちですが、こういった数字を考慮すると「女性特有の体調不良」は、その影響の大きさを考えれば社会全体で取り組むべき課題だと言えるのではないでしょうか。
こういうと難しく考えてしまうかもしれませんが、課題解決の第一歩として、まずは誰もが「女性特有の体調不調」について、正しい知識を持つことが大切だと思います。それにより少しでも皆さんの意識が変われば、お互いへの理解や思いやりが生まれ、働きやすい職場環境ににつながっていくはず。体調不調は誰にでも起こることですから、皆が健康で働き続けられる社会に向けて、この課題に向き合っていただけたら嬉しいです。
※出典:Burden of menstrual symptoms in Japanese women: results from a survey-based study


関口 真紀さん産婦人科専門医

産婦人科専門医/医学博士
関口 真紀さん

公立病院で研修後、大学病院でがん患者さんの治療を担当。出産後は健診クリニックに勤務し、年間6,000人以上の子宮頸がん検診を担当。産婦人科医としての26年のキャリアを生かし、SNSなどで、生理痛・生理前のイライラ・更年期症状について、その仕組みやセルフケア、治療法について発信中。女性のさまざまな悩みを聞き、その対処法を伝えている。婦人科お悩みトリセツ主宰。
instagram @sekiguchi_fujinkatorisetsu


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