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2026.03.18
REPORT

正解のない問いに挑戦する体験を。
『高校生Ring AWARD 2025』開催
正解のない問いに挑戦する体験を。
『高校生Ring AWARD 2025』開催

リクルート主催の『高校生Ring』は、高校生が自分自身の「半径5m」にある気づきからビジネスプランを創り出すアントレプレナーシップ・プログラムです。

身近なところから「問い」を発見し、1年近くの時間をかけてアイデアを磨き上げ、ビジネスプランを練り上げる。そんな本プログラムの集大成となる最終審査会『高校生Ring AWARD 2025』が2026年2月7日(土)、リクルート本社(グラントウキョウサウスタワー)にて開催されました。

2021年度にスタートし、5回目の開催となる今年度は、過去最多の167校、3万4,206名が参加。一次、二次、三次審査を経て、ファイナリストとして、愛知県立木曽川高等学校、西武台高等学校(埼玉県)、長崎県立佐世保北高等学校、兵庫県立神戸商業高等学校、四日市メリノール学院高等学校(三重県)(五十音順)の5組が選ばれました。「半径5mの問い」から、どのような未来の種が生まれたのか。当日の様子を振り返ります。

今年は、お笑いコンビ・ラバーガールの飛永 翼さんと、スタディサプリR&Dグループマネジャーの赤土豪一の2人がMCを担当しました。
審査員席には、リクルートからスタディサプリプロダクト責任者の池田脩太郎と、常務執行役員の柏村美生に加えて、社外から2名のゲスト審査員をお迎えしました。
公共経営や社会的起業を専門に研究し、社会をより良く変える「チェンジメーカー」の育成に尽力されている、島岡未来子さん(早稲田大学研究戦略センター教授/神奈川県立保健福祉大学ヘルスイノベーション研究科教授)と、クリエイティブの力で社会課題の解決を目指す「arca」を設立し、数々のプロジェクトや発信を牽引する辻 愛沙子さん(株式会社arca代表取締役/クリエイティブディレクター)です。

舞台

イベントの冒頭、審査委員長の池田が、参加した高校生たちに向けてエールを送りました。

「私はリクルートに入社して以来、一貫して『学び』の領域に携わってきました。実は『スタディサプリ』も、このプログラムと同じく『半径5mの気づき』と『当事者意識』から生まれたサービスなんです。

なぜ、リクルートがこの活動を行うのか。それは、社会に出れば『正解のない問い』に向き合い続ける必要があるからです。教科書や授業ももちろん大切ですが、社会では『答え』、さらにはその手前にある『問い』すら、自分たちで考えなければなりません。高校生活という限られた時間のなかで『正解のない問い』に向き合う経験を、この『高校生Ring』をきっかけに体感してほしい。そんな思いで私たちは運営しています。

今日、この場に来るまでのプロセスそのものが、皆さんにとって最大の価値であり、これからの人生を大きく変えるきっかけになると信じています。この体験自体を誇りに思い、ぜひ大きな自信に変えていってほしいと思っています」

審査員

会場には二次審査、さらには三次審査へと挑んだセミファイナリストの高校生たちも多数来場。緊張と期待が高まるなか、ファイナリストのプレゼンテーションが始まりました。

【ファイナリスト1組目】

学校名 愛知県立木曽川高等学校
プラン名 異国で「分からない」を減らす言語学習翻訳アプリ「ラーンスレーション」

〈ラーンスレーション〉は「翻訳(translation)」機能に「学習(learn)」を掛け合わせたアプリケーションサービスです。日本語での会話はできても文章が読めない──フィリピン出身の母が行政や学校から書類が届くたびに、内容が理解できずに困っている姿を見て、アイデアが生まれました。日本で暮らす外国人の多くが直面する「言語の壁」は、単なるコミュニケーション上の不便さに留まらず、行政サービスの享受や生活の安心を妨げる深刻な課題です。

本サービスの特徴は、翻訳して終わりではない「4つのステップ(遭遇・翻訳・解説・復習)」にあります。AIが文脈に応じた文法解説を行い、4時間後に復習問題を出題することで、一時的な理解で終わらせることなく、日本語能力の定着を支援します。対応言語は愛知県の在留外国人データに基づき、まずは使用率上位の4言語から展開します。

ビジネスモデルとしては、外国人利用者からは料金を取らず、外国人を支援する自治体(BtoG)や、労働環境を改善したい企業(BtoB)から収益を得る「三方良し」の持続可能なモデルを提示。将来的には多言語・多地域へと拡げ、日本で暮らす外国人が『分からない』という不安から解放される社会を実現します。

「ラーンスレーション」最終プレゼンテーションの視聴はこちら

愛知県立木曽川高等学校「ラーンスレーション」

【ファイナリスト2組目】

学校名 兵庫県立神戸商業高等学校
プラン名 お留守でも安心! まるでそばにいるぬいぐるみ

「家を出るときに『ごめんね』と思いながら外出したことはありますか?」──そんな問いかけから始まったのが、犬の留守番の分離不安症に対応する〈まるでそばにいるぬいぐるみ〉です。自身が犬を飼うなかで感じた罪悪感から着想しました。分離不安症とは、飼い主と離れることでペットが強い不安を感じ、吠え続けたり、物を壊したり、不適切な排泄などを起こしてしまう症状のことです。

校内で実施したアンケートで得られた216名の回答から、飼い主の約3人に1人がこの問題に悩んでいることを突き止めました。既存のカメラや知育玩具では補えない「本質的な安心感」に着目。飼い主の気配を五感で再現するぬいぐるみには、犬の報酬系を活性化させる「匂い」、副交感神経を優位にする「加圧(ハグ)」、安心感を与える「飼い主の心音」と「体温に近いぬくもり」の要素を盛り込んで、留守番時の不安を軽減します。タイマー設定や遠隔操作機能も想定し、留守時間に合わせた作動が可能です。

国内で犬の分離不安症に悩む約350万世帯をターゲットに据え、その5%の家庭が購入する仮説のもと、高い利益率を見込める緻密な試算も掲示しました。今後は犬だけでなく猫などへの展開も視野に入れ、飼い主とペット双方の心を支える新たなケア市場の創出を目指します。

「お留守でも安心! まるでそばにいるぬいぐるみ」最終プレゼンテーションの視聴はこちら

兵庫県立神戸商業高等学校「お留守でも安心! まるでそばにいるぬいぐるみ」

【ファイナリスト3組目】

学校名 長崎県立佐世保北高等学校
プラン名 NaviBase

〈NaviBase〉は、課外活動の成果を公式に証明し、進学や将来選択につなげるプラットフォームです。自身の世界大会出場経験が調査書にはわずか1行しか反映されなかった悔しさから、「努力が可視化されない構造」を変えたいと考えました。

本サービスは課外活動の主催団体による公式認証、先輩レビュー、AIマッチングの3機能で「評価の不在・選択の不安・情報の分断」という壁を壊します。参加実績や成果をデジタルバッジとして可視化し、“第2の通信簿”として蓄積。偏差値では測れない可能性を社会に示します。

収益構造は大学側からの成果報酬型モデル。近年大学は半数以上が推薦入試であるため大学側は〈NaviBase〉を使えば、学生集めに要していた労力と入学後のミスマッチを減らせるメリットがあります。大学からの宣伝メッセージ送信や入学が決定した際の報酬など、成果に応じた料金体系を設定し、全国の私立大学への導入により、高い収益が見込めることも提示しました。
このプラットフォームにより、挑戦する若者が正当に評価される社会の構築を目指します。

「NaviBase」の最終プレゼンテーションの視聴はこちら

長崎県立佐世保北高等学校「NaviBase」

【ファイナリスト4組目】

学校名 四日市メリノール学院高等学校
プラン名 「やさしい日本語へ変換」

コンビニや工場で働く外国人労働者が直面する「言語の壁」。彼らが言葉の壁ゆえに厳しい労働環境に置かれている現状を知り、このプランが生まれました。〈やさしい日本語へ変換〉は、外国人の日本語学習者にとって難しい語彙や表現を瞬時に理解しやすい言葉へ変換するアプリです。「読書」は難しくても、「本を読む」なら理解できる──そんな学習者のリアルな声に向き合うことで、翻訳ではなく日本語のなかで難易度を調整するという点に着目しました。

日本語能力試験(JLPT)のレベルに合わせ、難度の高い言葉を「やさしい日本語」へ変換し、カメラ検索や復習機能も搭載。見返したい言葉をおさらいボタンで登録すれば、自分だけの学習ツールにもなります。

ターゲットとなる日本語学習中の外国人は世界全体では約400万人、日本国内では約30万人。広告モデルを採用しアプリは無料で提供します。月間10万人の利用者が日常的に活用すれば、事業として十分な収益化が可能であることを示しました。無料で提供することで利用のハードルを下げ、たくさんの人がアプリを使えるようになり、変換精度が向上する循環を構築し、災害弱者の支援になると考えました。国籍に関わらず仕事も生活もみんなで支え合える社会を目指します。

「やさしい日本語へ変換」最終プレゼンテーションの視聴はこちら

四日市メリノール学院高等学校「やさしい日本語へ変換」

【ファイナリスト5組目】

学校名 西武台高等学校
プラン名 「みまも湯」

〈みまも湯〉は、高齢者が一人でも安心して入浴できる見守りサービスです。 家庭内事故のなかでも、浴室は特に重大な事故が起こりやすい場所です。お風呂の事故は発見の遅れが最大の問題であり、転倒後、いかに早く気付き、処置につなげるかが重要になります。

祖父が浴室内で転倒し、その異変に気付けなかった経験から「発見の遅れ」という本質課題に向き合いました。カメラはプライバシーの問題があり、緊急ボタンを押す機能では動けないと使えません。その両方を補完する仕組みを考案しました。

床に設置した圧力センサーが、転倒時の接地面積の変化を検知。AIが異常を判断し家族へ通知、一定時間反応がなければ消防へ自動通報します。メーカーの協力を仰いで実際にプロトタイプを作り、水滴による誤作動を防ぐ改良や、介護施設での実証実験も重ね、精度を高めてきました。

販売は自治体を主軸に、補助金活用による貸与モデルを構想し、誰もが安心して湯船に浸かれる世の中を提言。600万世帯ともいわれる高齢者のひとり暮らし世帯という市場を見据え、家庭・施設双方へ展開可能なインフラとして普及を目指します。さらには、この技術を応用して電車のリアルタイムな乗車率や美術館の混雑度合いの把握など、圧力の解析マットの仕組み自体を広く応用できる可能性も示しました。

「みまも湯」最終プレゼンテーションの視聴はこちら

西武台高等学校「みまも湯」

温かいエールと、ロビーにあふれた全国の参加校の「問い」

会場を彩ったのは、ステージに立つ5組だけではありません。客席で見守る高校生たちからは、ファイナリストの熱いプレゼンテーションに対して感想や応援コメントが寄せられました。

「同じ高校生として、企業や行政など多角的な視点で考え抜かれたプランに圧倒された」
「自分も犬を飼っているので、当事者として本当に欲しいと感じた」
「自分たちの『当たり前』が、誰かにとっては大きな壁になっている事実にハッとさせられた」

自分たちの進路や日常、あるいは誰かへの優しさに照らし合わせながらファイナリストの背中を後押しする声が集まり、会場全体が「未来をともに創る仲間」としてつながり合う、象徴的なシーンでした。

ロビーでは、来場したセミファイナリストのプランのパネルや『“半径5mの問い”100選』の特別展示が並びました。独創的な着眼点を持っている問いを「100選」として選出し、ユニークなアイデアを称えています。
ボードの前には自然と人だかりができ、自身のアイデアの前で記念撮影をするチームの姿も見られました。多くの来場者を惹きつけた展示には、共感のメッセージシールが次々と寄せられ、高校生にとって新たな探究の輪が広がるきっかけとなることが期待されます。

壁展示
壁展示

結果発表
審査の結果、今回は甲乙つけがたい接戦となり、史上初となる2組のグランプリが決定しました。
1組目のグランプリは、四日市メリノール学院高等学校(三重県)の〈やさしい日本語へ変換〉です。審査員からは「『日本語が読めない』という表層的な課題を、学習者のレベルに合わせた『やさしい日本語なら分かる』という視点へ再定義した、鮮やかな発想の転換が素晴らしかったです。障がい者支援や行政サービスのあり方まで変えうる、インフラとしての大きな可能性を感じました」という講評がありました。

受賞者コメント:「グランプリをいただけて本当にうれしいです。ありがとうございました!」

グランプリコメント

2組目のグランプリは、西武台高等学校(埼玉県)の〈みまも湯〉です。審査員からは「『あったらいいな』で終わらせず、自ら企業を巻き込み、実証実験と改善を繰り返した『トライアンドアップデート』の軌跡が圧巻でした。圧倒的な当事者意識が、プランに強いリアリティを与えていました」と称えられました。

受賞者コメント:「ものすごく嬉しいです。慣れないパソコン作業に悪戦苦闘しながら向き合ってきた甲斐がありました。本当にありがとうございました!」

準グランプリ

受賞者を含め、大舞台を終えた5組全てのファイナリストたちに向け、会場は大きな拍手に包まれました。

最後に、審査員から高校生へメッセージが送られました。

辻さん:「このようなコンペで審査員をさせていただくことはありますが、こんなに感動する会はなかなかありません。皆さんのクオリティがとても高く、日本の未来に強い希望を感じました。それぞれのプランに独自の推しポイントがあり、刺激をいただきました。ここまでかけてきた時間と熱量を誇りに思ってください」

島岡さん:「ここにいる皆さんは、アントレプレナーシップの観点からすると競争相手ではなく、ともに夢を叶えていく『仲間』です。今日という日を境に、この出会いを大事にしてネットワークを広げ、未来に向かって進んでほしいと思います。素晴らしい時間をありがとうございました」

柏村:「大人になると『できない理由』を探しがちですが、高校生の皆さんの『絶対にできる』と信じて突き進む無敵の姿勢に、私たち大人が勇気をもらいました。「半径5mの問い」を大切にする姿勢を、これからも持ち続けてください」

来年度の『高校生Ring 2026』も、もうすぐ始まります。自らの手で未来を切り拓こうとする皆さんの挑戦を、これからも全力で応援し続けます。

集合写真

『高校生Ring AWARD 2025』当日の様子は、下記からご視聴いただけます。ぜひご覧ください!

※プログラム参加にあたり提出したエントリーシートの著作権その他一切の権利は、生徒に帰属します。
※名称・内容等はあくまでもアントレプレナーシップ教育プログラムにおけるプラン名・アイデアです。