
リクルートの新規事業提案制度「Ring」で培われたノウハウをもとに、現役高校生がアントレプレナーシップを育む機会を提供している教育プログラム『高校生Ring』。2025年度は、全国167校3万4,206名の生徒が参加。学校内審査で1クラス1案件を選出し、534件のビジネスアイデアをエントリーいただきました。また、例年開催している「高校生Ring AWARD」でグランプリや準グランプリを選出するだけでなく、「“半径5mの問い”100選(以下、100選)」と題して、優れた着眼点やユニークなアイデアを100組選出。よりさまざまな人・アイデアにスポットを当てる機会を設けています。こうした取り組みは高校生たちにとってどのような機会になっているのでしょうか。100選に選出された浦和麗明高等学校の生徒さんと、総合の授業を担当する先生にお話を伺いました。
“好奇心”が出発点だったからこそ、最後まであきらめずにやりきれた
― まずは100選に選ばれたビジネスアイデアについて教えてください。
生徒: 私が考えたのは、『みつけ旅』という旅行先を提案してくれるアプリです。私たち家族は旅行が大好き。そこで、旅に関するサービスで課題解決をしてみたいと思ったのが出発点です。
周りの友人にヒアリングしてみると、「旅には興味があるけど、どこに行ってよいか分からない」という課題を発見しました。私たちはコロナ禍に小中学生だった世代。私は小学校の修学旅行も中止でした。今の若い世代は旅をあまり経験しておらず、自分に合った行き先を決められないのではないか。迷っている人たちの助けになりたいと思ったのです。

サービスを企画する上で私がこだわったのが、直感や偶然で購買する「ジャケ買い」の発想。私は普段から書店やCDショップで、ジャケットや表紙が気に入ったら中身を見ずに買ってみて、新しい作家やミュージシャンとの出会いを楽しんでいます。この楽しみ方を旅にも取り入れたら面白いんじゃないかと考えました。
― 『高校生Ring』はどのような形で取り組んだのですか。
生徒: 2年生の1学期に総合の授業の題材として取り組みました。以前からこの科目は好きだったものの、全くのゼロから自分のアイデアを形にしていくのは今回が初めて。少し難しさも感じていたからこそ、『高校生Ring』が提供してくれたプランシートや「高校生Ringノート」がアイデアを磨くための大きなヒントにもなっています。
― 『みつけ旅』が100選に選ばれたことをどう感じていますか。

生徒: 大変驚きました。自分がゼロから考えたアイデアを皆に伝えた経験もなかったですし、自信があったわけではないんです。学内審査(1次審査)でも、まさか自分のアイデアが選ばれるなんて思っていなかった。だから、2次審査で社会人であるリクルート社員の皆さんの目に留まったことは、自分の考えを認めてもらえたようで少し自信になりました。
― 『高校生Ring』を通して学んだこと、身に付けたことがあれば教えてください。
生徒: 『高校生Ring』を通して私が学んだことは、ゼロからイチをつくるための方法だけでなく、粘り強くやりきる力。誰も答えを知らないし時間もかかるからこそ、最後まであきらめずにやり遂げることが大切なのだと感じました。そのためには、何ごとも楽しむこと。今回は自分が心から好きで熱中できるテーマだったからこそ、やりきれたのだと思います。
また、このチャレンジを通じて職業の視野も広がりました。これまでは「自分はアイデアを形にする仕事って小説家やイラストレーターくらい?」なんて思っていたんですけど、ビジネスをつくる仕事もたしかに自分のアイデアを形にする仕事だなって。もっと世の中にはいろいろな職業の選択肢がありそうだと気付けたのも、私にとっての発見。サービス企画やプロダクトデザインなどの仕事も面白そうだなと、興味を持つようになりました。
“半径5mの問い”による当事者意識の芽生え。学びの強い動機付けに
― ここからは先生に伺います。担当教員として、総合(探究)学習にはどのような思いをお持ちですか。
先生: 私は教員1年目から「総合的な探究の時間」を担当し、今年度で4年目になります。授業のやり方は学校全体で少しずつ進化していますが、まだまだ模索中なのが正直なところ。特に、生徒によっては総合の授業がなかなか自分事にならず、モチベーションに波があると感じていました。
― その課題に対して『高校生Ring』は貢献できているでしょうか。

先生: 『高校生Ring』は“半径5mの問い”から取り組む仕立てになっているのが良かったですね。日常の身近な不満や不便をアイデアの出発点にしているため、生徒たちが自分事として考えやすく、学びの動機付けになっていたと感じました。
一方で、多くの生徒が苦労していたのは“半径5m”から社会へと視野を外に向けさせること。「個人的な想い」から「多くの人が価値を感じるアイデア」へとジャンプさせることがなかなか難しかったようです。ただ、教師の私たちにもビジネスの経験はありませんから指導が難しい。だからこそ「“半径5mの問い”100選」のように同世代の優れたアイデアがたくさん表出されることは、身近なお手本を知るという意味でありがたいですね。
― 全国534件の応募の中から浦和麗明高校の案件が100選に選ばれたことは、先生としてどう受け止めていますか。

先生: 今回100選に選んでいただいた『みつけ旅』は、校内審査でも「自分の身近な興味を出発点に、社会へ新たな価値を提案している点」を評価していました。また、「ジャケ買い」×「旅」という2つの要素を組み合わせることで新たな価値を生み出しているのも秀逸だった。そういった点をリクルート社員の皆さんにも評価していただいたことは生徒にとって大きな学びになっていると思いますし、イノベーションのつくり方のヒントとして私にも学びがあり、総合学習の指導のヒントになっています。
― 最後に、『高校生Ring』のような機会が学校教育に貢献するあり方について、先生のご意見を教えてください。
先生: 当校では、次年度以降も引き続き『高校生Ring』を教材として活用予定。細かなやり方はまだ検討中ですが、より生徒間の協働や連携を促進するような仕立てにしたいと思っています。なぜなら、実社会において1人でできることは限られているから。何かを成し遂げようとすれば、たくさんの人を巻き込み、協力してもらわなければいけません。時には対立や衝突をすることもあるでしょう。正解のない道を進むなかで、さまざまな意見にどう耳を傾け、摩擦を恐れず対話をしていくのか。生徒たちにはそんな力を学んでほしいと思っていますし、これこそが、高校や大学を卒業した後の社会で真に求められる力だと私は思っていますので、そうした力を磨く機会を『高校生Ring』にも期待したいです。
浦和麗明高等学校