
日本の労働人口の高齢化や人手不足が進むなか、警備業界では、2025年の警備法改正を機に働き方改革が動き始めています。リクルートでは2021年に「警備員の働き方改革」プロジェクトを始動し、九段下オフィスに警備員の「座哨(座って警備すること)」を導入しました。当時、「立哨(立って警備すること)」が当たり前だった警備業界では新たな試みとして注目。現在では九段下オフィスの日常の風景になっています。導入当時、実証実験に参加した警備員は座哨についてどのように感じたのでしょうか。九段下オフィスでの取り組みとその現在地とともに紹介します。
「警備員=立つ仕事」の常識を変える。新たな視点の働き方改革
警備業は「長時間の立哨」「厳しい環境」「離職の多さ」といった慢性的課題を抱えてきました。こうした状況の下、2025年の警備業法改正は、現場の安全性と労働環境の改善を同時に高めていく大きな転機となります。現場の目的やリスクに即して配置や運用を柔軟化し、健康確保とパフォーマンスの両立を図ることが一層求められます。
リクルートでは、2021年に全国警備業協会と連携し「警備員の働き方改革」プロジェクトを開始。プロジェクトの象徴的な取り組みとなったのが「座哨」の導入です。立哨が当たり前とされてきた警備業界において、座って警備を行う座哨の可能性について調査・研究を行い、実際に研究を重ねていくと、立哨と比べて血圧や心拍数の上昇を抑え、身体的負担と精神的ストレスが軽減し、運動能力が向上することがデータで分かってきました。
そして、働く場所にまつわる各種施策を推進しているリクルートのワークプレイス統括室を中心にビル管理会社に掛け合い、 ビル貸主、警備会社と調整の上、2021年から九段下オフィスでの座哨の導入が実現しました。
九段下オフィスでは座哨が「日常」に。来訪者にも好意的な声
導入初期は、「警備員=立つ仕事」というイメージから、「サボっているように見えないか」という警備員の不安もありました。しかし、座哨7:動哨(動いて警備すること)3のようにメリハリのある運用を行ったことで、全体のパフォーマンスはむしろ向上。肉体的な負担が減り、体力を保ちながら最後まで集中して業務に取り組めるようになりました。
さらに、目線の高さや挨拶動作の工夫、定期巡回で死角を補う設計により、抑止力や監視品質も維持。結果として、「立っていようと座っていようと、本質は“よく見て、速く、正しく動く”に尽きる」という現場の確信が共有されました。
座哨の取り組みは現在、リクルート九段下オフィスで日常の運用として根づいています。受付動線の見直しや挨拶の所作、視線・姿勢など、細かな改善を重ねた結果、“落ち着きがありながら機敏”なフロント警備の振る舞いがオフィスの顔として評価されるようになりました。
とくに猛暑期・厳寒期においては、体力の温存や集中力の維持に大きな効果があり、夕方以降の対応品質のばらつきも縮小しています。来訪者からは「安心感がある」「説明が丁寧」といった声が寄せられ、座哨の定着がサービス体験の向上にもつながっています。警備員からも足腰の負担軽減や翌日の心身の軽さを実感する声が多く、定着率やモチベーションの向上にも寄与する兆しが見られます。こうした効果が相まって、九段下オフィスでは“座って守る”ことが当たり前の運用形態として根づき、来訪者にも好評いただいています。
最後に、九段下オフィスでの座哨の取り組みに携わったリクルートのワークプレイス統括室のコメントを紹介します。
<ワークプレイス統括室のコメント>
九段下オフィスの構築プロジェクトは、「NEWオフィススタンダードへの提言~ファシリティの常識を疑い新しい仕掛けを展開~」を掲げて始動しました。ちょうどその時期、営業担当から警備業界が抱える「不」の実態を聞く機会があり、「立哨でなければならないのか」という当たり前を疑う視点に深く共感するとともに、本プロジェクトとの高い親和性を感じました。
実際に導入した結果、警備員の皆さんの定着率が高まり、他のビルではあまり見られない「従業員と警備員が顔なじみになる」という現象が起き、そこから明るいコミュニケーションが生まれています。そして、体力を温存し、必要な瞬間に最大限のパフォーマンスを発揮するための合理的な選択であることも実感できました。
座哨による働き方は、現在、警備業界で少しずつ広がりを見せています。そして今後はテクノロジー活用や配置設計の見直しと組み合わせながら、警備員の負担を減らしつつ警備の質を高める持続可能な働き方として浸透していくことが期待されています。
リクルートは今後も多岐にわたる事業活動を通じ、現場の声を反映しながら、働く人のウェルビーイング向上と社会課題の解決に貢献する取り組みを進めてまいります。