『Airシフト』による柔軟な人員配置で、繁忙期の人手不足と働き方を改善。野沢温泉村の老舗旅館の取り組み 

インバウンドを中心に観光需要の急拡大が続く一方、地域によっては供給側の受け入れ体制が追い付いていない状況が見られます。特にスキー場の周辺や避暑地、有名なお祭りがある地域などは1年のうち特定の時期にだけ観光客が集中するため、シーズンによって人員不足と人員余剰が起きることがあり、人員の調整がネックとなっています。社会全体での労働力人口の減少が見込まれるなかで、需要の波に合わせた柔軟な人員の確保は難しく、さらに外国語対応が可能なスタッフの確保も新たな悩みの種に。

そのような社会課題に対し、需要の増減に合わせた健全な人員体制を確立するためには、現状の業務プロセスを正確に把握し、業務の見直しやデジタル化を図ることが有効な一手となり得ます。今回はシフト管理サービス『Airシフト』の導入によって柔軟な人員配置を実現した、長野県の野沢温泉村の老舗旅館「旅館さかや」の事例をご紹介します。

コロナ禍を契機に新たなサービスのあり方を模索。少人数でも効率的に運営できる部門の垣根を越えた人員配置へ

全国でも有数の温泉地として知られる長野県野沢温泉村。1~ 3月のハイシーズンにはスキー客でにぎわい、ここ10年ほどは海外からの宿泊客も増加しています。老舗旅館「旅館さかや」でも繁忙期は満室が続くほどの盛況で、夏の閑散期に比べると、客数は2倍近くになります。従来は、年間通して勤務するスタッフに加え、繁忙期には期間限定のパートや派遣スタッフを迎えて人員調整を行ってきましたが、人手不足が進むなかでの採用は徐々に困難になっていました。

さらに採用・定着の面で課題となっていたのが旅館特有の働き方です。「昔ながらの“係制”では、お客様のお迎えからお見送りまでひとりの仲居が専任で担当するため、午後から翌日の午前まで働く『たすき掛け勤務』がスタッフの負担になっていました」と、女将の森 雪さんは振り返ります。

転機となったのはコロナ禍でした。感染防止対策として客室内での接客を控えたことで、仲居の“係制”に改善の余地が生まれ、スタッフ間で分業・連携しながらサービスを提供する体制づくりができないかと検討を開始。ひとりのスタッフが仲居とフロントを柔軟に兼務するなど、部門の垣根を越えたフレキシブルな人員配置によって、少ない人員でも効率的に運営できる体制の構築を目指しました。

旅館さかやの女将の森 雪さん「旅館さかや」女将の森 雪さん

『Airシフト』による人員配置の最適化で「たすき掛け勤務」や残業時間が減少し、働き方が改善

部門を越えた柔軟な人員配置を進める上で課題となっていたのが、スタッフの勤務状況が把握しづらい点でした。「従来、スタッフのシフトは部門ごとに紙のシフト表で管理していたため、今どこが忙しく、誰の手が空いているのかが分かりませんでした」と森さんがアナログシフト管理の弱点を指摘します。

そこで導入したのが、リクルートが提供するシフト管理サービス『Airシフト』です。全スタッフのシフトがクラウド上で一元管理され、手元のスマートフォンで勤務状況が共有できるため、部門間の応援要請がスムーズになりました。その結果、チェックインが集中する時間帯に仲居がフロントを手伝ったり、板場が忙しい時間帯に他部門のスタッフが食事の盛り付けを補助したりと、自然な助け合いが生まれ、さらに、英語対応が可能なスタッフを各時間帯に配置するなど、抜け漏れのないシフト作成も簡単にできるようになりました。

業務の効率化を実現したことで、板場や清掃部門の残業時間は大幅に削減。人件費の抑制に加え、従業員が健康的に働ける環境づくりにもつながりました。

やりとりも作成もラクになるシフト管理サービス『Airシフト』の各画面(パソコン、タブレット、携帯電話)

こうした『Airシフト』の活用による柔軟な人員配置が実現できたことで業務の偏りが解消され、スタッフ間の協力・連携も進み、負荷が大きかった「たすき掛け勤務」の割合を減らすことにも成功しました。日をまたがずに勤務する「通し勤務」が標準的な働き方に変わったことで、定時で帰れることや休みが取りやすくなり、スタッフが働きやすいシフトを実現。採用や人材定着にも好影響を与えています。

各部門の責任者からは「手書き管理に比べて、シフト作成・管理が便利になった」と好評の声も。導入当初はデジタルツールの操作に難しさを感じる人もいましたが、若手スタッフがフォローする形で活用が進んでいます。

「老舗は常に新しい」。人の温かみとデジタルの力を掛け合わせ、さらなるサービスの進化を目指す

『Airシフト』の活用により従業員の働き方が変化したことで、「旅館さかや」では新たなサービスの提供が始まりました。仲居がお部屋付きでおもてなしをする機会が減った分、客室にコーヒーマシンを設置し、飲み物のバリエーションを充実させるなど、滞在の満足度を高める工夫を進めています。さらに、業務効率化によって生まれた時間を活用し、旅館周辺の神社やお寺、自然湧出する温泉「麻釜(おがま)」などを巡る無料の散策ツアーを毎日夕方に実施。従来の体制では難しかった体験型サービスが実現し、多くの宿泊客から高い評価を得ています。

左から、旅館さかやの温泉施設、館名入りの作務衣を着用したスタッフ、玄関でスリッパを並べて整えるスタッフの様子

また、『Airシフト』でシフト作成・管理の自由度が上がったことは、インバウンド需要に対応した新たな働き方やサービスの検討にもつながりました。海外からの宿泊客は連泊が多く、夕食は外で楽しみたいというニーズがあることから、週に1度夕食を提供しない日を設定。板場スタッフが早く帰れる日を設けることで、働きやすさの向上にも寄与しています。

森さんは「老舗は常に新しい」という言葉を大切にし、「時代に合わせて変化する気持ちがないと商売は長く続かない。老舗が老舗であり続けるには、最新のアイデアを取り入れてどんどん挑戦していかないといけない」と語ります。そんな「旅館さかや」のチャレンジのひとつは、人ならではの温かみのあるおもてなしと、デジタルの力を掛け合わせること。『Airシフト』に加え、POSレジアプリ『Airレジ』も活用し、売上データを分析しながら新たなサービスのあり方を模索しています。「インバウンドによる盛り上がりをきっかけに『1泊2食付き』という旅館業の当たり前を見直し、地域の飲食店やほかの宿と連携して野沢温泉村全体を楽しめる滞在スタイルを構想中です。環境変化の激しい旅館業だからこそ、デジタル化やデータ活用も重視しながら、幅広いお客様に選ばれ続ける旅館になっていきたい」と展望を語っています。

リクルートでは今後も『Airシフト』をはじめとするサービスを通じて、事業者の負担を少しでも軽くすることで、さまざまな事業課題の解決、社会問題の解決に貢献していけるよう努めてまいります。

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