
2020年以降、コロナ禍で大きな打撃を受けた観光産業は、規制緩和を契機に回復基調となり、2024年には訪日外国人旅行者数が年間3600万人(※1)を突破し、過去最多を記録しました。しかし、急速な需要回復に対しコロナ禍で縮小していた事業者の体制が追いつかず、混雑や渋滞の発生により、観光客の利便性、さらには地域社会や環境に新たな課題をもたらしています。
そこで、箱根町全体の観光促進を担う一般財団法人 箱根町観光協会(以下、箱根DMO)が混雑解消の一手として取り組んでいるのが、「Air ビジネスツールズ」を組み合わせた観光DXです。業務の効率化とともに、混雑状況を可視化するデジタルマップの導入などを推進し、町全体の周遊性を高めることが狙いです。現地での体験価値を大切にする観光事業において、「Air ビジネスツールズ」がどのように活用されているのでしょうか。事例を交えてご紹介します。
※1 出所:日本政府観光局「訪日外客数(2024年12月及び年間推移値)」
交通インフラが限られる箱根町。「混雑」「渋滞」が積年の課題
人口約1万1,000人の箱根町には年間約2000万人(※2)もの観光客が訪れています。しかし、山間の温泉地という特性から交通インフラが制約され、慢性的な混雑が続いてきました。箱根DMOの専務理事である佐藤 守さんは「混雑を解消しないと観光客の満足度は上がらず、ひいては観光消費額も上がらない。主要産業が観光である箱根町にとっては、地域経済にも直結する問題」と指摘しています。
しかし、町のほぼ全域が国立公園に含まれている箱根町では道路拡張などのハード面の強化は簡単にはいきません。そこで箱根DMOは、観光DXによるソフト面の強化を推進。「Air ビジネスツールズ」を組み合わせて交通状況やお店の混雑状況を観光客に情報発信することで人流を分散させ、地域全体の周遊性を高めることを目指しました。
※2 2024年時点

箱根町観光協会(DMO) 専務理事 佐藤 守さん
観光客・事業者・地域住民の“ 不満足”の要因を『Airウェイト』『Airペイ』『Airレジ』で解決
箱根DMOが混雑解消の直接的な対策として事業者に働きかけたのが、受付管理アプリ『Airウェイト』を導入した待ち時間の可視化です。Web上で待機組数や待ち時間の目安が分かるため、観光客は空き時間に別の観光を楽しむことができ、順番待ちによる人だまりが減少。箱根町のデジタルマップと連携することで効率的に周遊する動きも広がっています。
併せて、決済サービス『Airペイ』や、POSレジアプリ『Airレジ』によるキャッシュレス対応可能なお店も増やしています。直接的には「現金しか使えないお店が多い」という不満を解消するための策なのですが、クレジットカードなどのキャッシュレス決済をするつもりだったお客様に毎回事情を説明して現金での支払いをお願いするスタッフの手間が減り、業務効率が向上。お店が本来お客様に届けたいサービスに集中できるようになり、会計がスマートになることで混雑解消にもつながっています。
さらに、「Air ビジネスツールズ」の活用は従業員満足度の向上にも寄与しています。
「インバウンドのお客様も増加しているなかで、手書きの受付表では外国のお客様の名前を正しく認識できなかったり、クレジットカードが使えないことを慣れない英語で説明したりといった対応がスタッフを疲弊させています。ただでさえ人手不足の今、スタッフがイキイキと働ける支援をしないと観光業は成り立ちません。だからこそスタッフが難しいことを覚えなくても簡単に使い始められる『Air ビジネスツールズ』の操作性は導入促進の決め手にもなりました」と佐藤さんは語っています。

※3 QR=QRコードは(株)デンソーウェーブの登録商標です。
導入事例:順番待ちのお客様対応でスタッフにのしかかる「プレッシャー」
箱根町の宮城野と箱根湯本で展開する「BOX BURGER」は、2019年の開店後すぐにコロナ禍に直面しましたが、厳しい状況を乗り越えて観光客が戻り始めると、お店のうわさを聞きつけた人たちが続々と訪れるようになりました。しかし、客数が伸びる一方で、スタッフの採用は大苦戦。人手不足の状況が続くうちに、「順番待ち対応」に追われるようになりました。スタッフは、お待たせする申し訳なさで「お客様を早く案内したい」という気持ちの焦りから、店内のお客様へのサービス提供がおろそかになったり、対応できる人数を超えて店内に案内。スタッフがプレッシャーから解放されないと満足いくサービスが提供できないと感じたオーナーの竹内さや香さんは、『Airウェイト』の導入を決めました。

「BOX BURGER」オーナー 竹内さや香さん
『Airウェイト』導入でサービスクオリティーが向上。定休日を増やしながらも前年比売上増を実現
「BOX BURGER」では『Airウェイト』を店先に設置。店の外で受付対応をする仕組みにしたことで、スタッフが店内サービスに集中できるようになりました。また、多言語対応機能があるため、7割を占める訪日外国人客にもスムーズな受付が可能に。
「以前は、入口の扉が開く音がするたびにお待たせする申し訳なさで胸が苦しくなっていましたが、『Airウェイト』導入後は、気持ちに余裕を持ってお客様をお迎えできるようになりました」と、精神的なプレッシャーから解放されたことを竹内さんは喜んでいます。
お客様にとっても、列に並んで待機する必要がなくなり、その時間を使ってもっと箱根を楽しめるようになったり、行列がなくなったことで入口付近の混雑が解消されたりなど、副次的効果も生まれました。

店先に設置された『Airウェイト』でスタッフの手間なくスムーズな受付が可能に
そして『Airウェイト』導入後、顕著に変化したのはオンラインレビューです。「料理のおいしさ」に加え「接客の丁寧さ」が評価されるようになり、満点評価が増加しました。「人生で一番おいしいハンバーガー」といった海外からのコメントも寄せられています。
「自分たちの納得いくクオリティーを提供してこそ、自信を持って価格設定ができる」と、サービスに見合った価格へ見直したことも影響し、客単価は以前の2割ほどアップ。定休日を増やしているのにもかかわらず、前年を上回る売上を達成することができました。
今後について竹内さんは、訪日外国人客が増加している箱根町の現状を踏まえ、「ビーガン、グルテンフリーなどの対応ができるお店や宿はまだまだ少ないからこそ、世界中の人々になじみのあるハンバーガーで多様なお客様のニーズに対応したい」とインバウンド対応で町をリードすることを目標として語っています。

今後もリクルート「Air ビジネスツールズ」では、事業者の負担をテクノロジーの力で少しでも軽くすることで、さまざまな事業課題の解決、社会問題の解決に貢献していけるよう努めてまいります。