
物流業界では人手不足が深刻化し、ドライバーの長時間労働が常態化していました。こうした状況を受け、国はドライバーの安全や健康を守るための措置として、2024年4月から自動車運転業務における時間外労働の上限規制を適用。トラックドライバーの時間外労働を年960時間以内と定めました。
労働時間の適正化により、従来通りのサービスを維持するには物流の仕組みそのものを変える必要があります。今回は、予約管理システム『Airウェイト』を導入することで、自社業務の効率化とドライバーの働き方改革を同時に実現した企業の事例をご紹介します。
「荷待ち時間」の短縮が働き方改革のカギ。DX導入による業務効率化に期待
ドライバーの業務効率化において課題とされているのが、荷物の積み下ろし順を待つ「荷待ち時間」です。国土交通省も、この荷待ち時間が長時間労働の大きな要因であると指摘しており、荷待ち時間の短縮が働き方改革の要となっています。
「スペースや人員の関係上、一度に荷下ろしができる台数には限りがあるため、同じ時間帯にトラックが集中すると、長いときには3~4時間、あるいはそれ以上待たされるケースも発生しています。ただ、運送会社やドライバーの努力や工夫だけでは大幅に時間短縮をするのは難しく、荷主との協力・連携が欠かせません」と語るのは、公益社団法人 全日本トラック協会 企画部部長の金子貴史さん。
そこで進められているのが、荷主と運送会社が連携して予約受付システムを導入し、スムーズな積み下ろしを実現しようという取り組みです。「電話やFAXによる受発注も行われている中、DXによる改善の余地は大きく、非常に期待できる打ち手のひとつ」とDX導入による業務効率化に期待感を寄せています。
一方で、ドライバーの働き方改革を成功させるには、単なるシステム導入にとどまらないことも指摘。「ただ単に紙ベースのものをデジタル化するだけでなく、システムの使いやすさやデータ活用までを見据えて、場合によっては荷主企業や協力会社とも連携していく必要があります」とも語っています。

導入事例:『Airウェイト』で受付管理をデジタル化。来社前のオンライン受付も可能に
建設用軽仮設機材の卸レンタル事業を全国で展開する株式会社アクトワンヤマイチでも、この「荷待ち問題」に直面していました。特に出入りの多い大正機材センターでは、毎日100台以上のトラックが訪れ、敷地内に入り切らない場合、ドライバーは離れた場所で待機。順番が来たドライバーを都度電話で呼び出す方式を取っていました。
そのため、状況確認の問い合わせが頻繁に入り、受付担当が電話対応に追われて他の業務に手が回らないこともしばしば。また、手書きの受付用紙をもとにしたアナログ運用だったため、「電話番号が読めない」「受け付けた順番の間違い」といったトラブルも少なくありませんでした。
同社は2021年頃から受付業務の効率化と品質向上の検討を開始。その業務改革の一環として導入したのが、受付管理システム『Airウェイト』です。
『Airウェイト』の導入により、順番が来る目安を手元のスマートフォンなどでリアルタイムに確認できるようになったため、ドライバーからの問い合わせ電話が減少。呼び出しもシステム上で行えるため、都度電話する必要がなくなり、受付担当もこれまで後回しになっていた業務に対応しやすくなりました。
また、システムに随時状況が反映されるため、受付担当以外の社員でも管理画面を見ればリアルタイムで状況を把握可能に。万一問い合わせが入った場合でもスムーズに回答でき、待機組数が多い場合はトラック対応のフォローに入るなど柔軟な対応がしやすくなりました。
さらに、『Airウェイト』に慣れてきた常連の運送会社やドライバーは、センターを訪れる前に「オンライン受付」をする動きが加速。事前に順番待ちの組数を把握できるため、「少し待ちそうだから、どこかで休憩を取ってから行こう」「ルートを変更して先に別の積み下ろしを済ませよう」と、従来は無駄になりがちだった時間を有効活用できるようになりました。現在では、受付の約7割がオンラインで行われています。
また、システム操作に慣れていないドライバーも多いと想定し、受付画面にすぐアクセスできるQRコード(※)を用意するなど、使いやすさの工夫も行っています。
※ QRコードは(株)デンソーウェーブの登録商標です。

荷待ち時間が2時間から1時間程度に短縮。近隣道路の渋滞解消など副次的効果も
オンライン受付が浸透するにつれ、ドライバー側では混雑を回避する行動が増えてきました。これまでは最大2時間程度の待ち時間が発生することもありましたが、『Airウェイト』導入後は最大でも1時間程度に短縮。
効率的なトラックの往来は近隣の交通量抑制にもつながり、荷待ちトラックが原因で起きていた近隣からのクレームも解消しました。ドライバーからは「受付と順番待ちで何度もセンターを行き来する手間が省けた」「効率的に集配先を回れるようになった」といった声も寄せられています。
「さらなるご要望も含め、当社の事業で欠かせない存在であるドライバーさんからの率直な意見が届きやすくなったのも大きな収穫です」と語るのは、関西営業所業務チーム主任の礒谷 篤さん。

さらに、『Airウェイト』に蓄積されるデータにも注目。例えば積み下ろしにかかる時間など、これまで把握できていなかった実態も可視化が可能に。このデータは社内の別プロジェクトにも寄与し、『Airウェイト』をきっかけに、社内でのデータ活用も進んでいます。
アクトワンヤマイチではこの実績を踏まえ、全国の拠点ごとのニーズに応じて『Airウェイト』の導入を検討中とのことです。
『Airウェイト』の導入は、ドライバーの負担軽減や業務効率化だけでなく、近隣の渋滞解消や社内のデータ活用促進といった副次的効果ももたらしました。物流業界が直面する「働き方改革」という社会課題に対し、現実的かつ持続可能な解決に寄与した一例といえるのではないでしょうか。
リクルートでは今後も、『Airウェイト』をはじめとするサービスを通じて、社会課題に正面から向き合い、その解決の一助となる取り組みを進めてまいります。
※本文中の肩書・所属は、取材当時のものです