
2024年の訪日外客数が年間 3687 万人と過去最多を記録(出典:日本政府観光局(JNTO)「訪日外客数」)。インバウンドを中心に観光産業が大きな盛り上がりを見せているなか、急激な変化に観光地の事業者の受け入れ態勢が追い付いていないという課題があります。この課題解決のため、山梨県富士吉田市は市内の事業者に「Air ビジネスツールズ」を組み合わせた観光DXを推進。業務効率化と需要予測精度の向上を達成し、国内外からの多様なニーズを捉えたサービスの提供を実現しています。「Air ビジネスツールズ」をどのように活用し、成果を生み出したのでしょうか。事例を交えてご紹介します。
富士山の絶景スポットに観光客が一極集中。混雑対策の一手として「Air ビジネスツールズ」で業務効率化、売上分析・需要予測を支援
富士吉田市では、SNSなどを通じて富士山の絶景スポットが海外の人にも広く知れ渡った結果、周辺の飲食店や商店街に観光客が集中。多くの人に来訪してもらえるのは喜ばしい半面、予想以上の来訪により、事業者の受け入れ態勢が追い付かず、行列や混雑が発生し、観光客の満足度低下や、渋滞やゴミの問題など地域住民の生活への影響が懸念されていました。
そこで、以前よりリクルートと協働で『Airペイ』による地域内事業者のキャッシュレス化促進などを行ってきたことを踏まえ、さらに一段踏み込んだDX推進をすることで混雑問題の解決を図るべく、「新しいサービスやメニュー開発に取り組みたいものの、人手不足や経費の高騰などでなかなか手が回っていない」と悩んでいた飲食事業者に声をかけ、『Airレジ』『Airレジ オーダー』『Airペイ』を組み合わせたDX活用による業務効率化、売上分析・需要予測支援を始めました。

市内飲食店の観光客受け入れ態勢をDX で強化。一極集中を緩和し、地域全体を周遊してもらえる形を目指す
導入後、まず顕著に効果が表れたのは、オーダーシステム『Airレジ オーダー』による注文業務の効率化です。「注文をお客様に行っていただく分、調理に集中できるようになり、提供スピードが上がった」「伝達ミスによる料理の作り忘れや作り間違いがなくなった」「多言語対応しているので、外国のお客様にも分かりやすい」といった声が事業者から寄せられ、また、お客様がスマートフォン上で気軽にオーダーできることから追加注文が入りやすく、客単価も向上。スムーズな料理の提供、幅広い決済手段への対応、混雑の解消といった側面で顧客満足度にもつながりました。さらに『Airレジ』に蓄積されるPOSデータを参考にすることで需要予測の精度が向上。食材の発注量の適正化や、外国人観光客のニーズを踏まえたメニュー開発などに取り組む事業者も。
「現在は富士山のビュースポットとして有名になった本町二丁目商店街周辺に外国人観光客は集中していますが、より富士山に近い上吉田や他の地域にも国内外の観光客にとって便利で魅力的な事業者が増えれば市全体を広く周遊してもらえ、混雑緩和につながるのでは」と語るのは、富士吉田市経済環境部富士山課主幹の小沢智成さん。「市内に魅力的な事業者が増えて滞在時間が延びれば、宿泊ニーズに対応することにもつながる。そうやって富士吉田市と長くたくさん接点を持つなかで、ゆくゆくは移住に興味を持つ人がひとりでも増えてくれたら嬉しい」と観光を軸にした地域活性への想いも語っていました。

導入事例:地元住民の寄り合いの場から、昼間のお客様の98%が外国人観光客に。多様な顧客ニーズに向き合うためDX導入を決意
富士吉田市で60年以上の歴史を持つ海鮮料理の店「魚重」では、地元住民の宴会・寄り合いの場として長年親しまれてきましたが、お店の近くにある富士山の絶景ポイントが海外でも話題になった影響で、急に外国人観光客が来店するようになり、今では昼間のお客様の98%が外国人観光客に。
そのため、言葉の問題はもちろん、料理一つひとつについて細かく聞かれることも多く、オーダーの手間がかかることが増えました。キャッシュレス決済のニーズも高く、来店時に希望の決済手段が使えないことを告げると帰ってしまうことも。また、地元のお客様と外国のお客様では、来店時期の傾向や食の好みが異なるため、何がいつどれくらい売れるのか、これまでの経験と勘が通用しない部分も増加。さらに、近年の物価高の影響により、食材を無駄にしてしまうと余計に利益を圧迫するため、需要の波に合わせて仕入れの品目と量を適切にコントロールする重要性も高まっていました。
「デジタルは苦手であまり乗り気ではなかったが、アナログなやり方にも限界を感じていた」と語る魚重 二代目店主の渡邊重幸さんは、現状の課題解決のため「Air ビジネスツールズ」の導入を決意。POS レジアプリ『Airレジ』、オーダーシステム『Airレジ オーダー』、お店の決済サービス『Airペイ』の活用を始めました。

『Airレジ オーダー』のモバイルオーダー機能では、お客様自身がスマートフォンでメニューを見て注文できるため、スタッフがオーダーを取る時間が減り、料理の提供や接客に集中できるようになりました。また、『Airペイ』によってクレジットカードや各種電子決済が利用可能になり、『Airレジ オーダー』にもオンライン決済機能があるので、会計時の手間も少なくなりました。
そして、渡邊さんが予想以上に効果を感じているのが、『Airレジ』に蓄積される売上データを基にした分析機能です。以前は、売上帳の数字を別途計算して読み解く必要があり、時間がかかるため手が回っていませんでしたが、『Airレジ』なら簡単な操作で日別・商品別に細かな傾向を確認できるため需要予測の精度が上がり、食材の仕入れ・調理の仕込みも適正化できるように。日々『Airレジ』のデータを見るなかで、地域やシーズンによる外国のお客様の好みの違いも分かってきたと言います。
2 階席を開放して、よりたくさんのお客様を受け入れられるように。需要予測の精度を上げ、より良い商品とサービスをお客様に提供
なかでも「Air ビジネスツールズ」導入による一番のお店の変化は、店舗 2 階の宴会席も使えるようになったこと。以前はお客様が増え過ぎると対応し切れず、1階席のみの営業で精いっぱいでしたが、注文業務が効率化されたことにより席数を増やすことが可能に。席数の増加で団体の予約客も受け入れやすくなり、団体客については来店前に『Airレジ オーダー』から予約注文をしてもらうという工夫もするなど、そうした積み重ねによる回転率の向上で売上アップにもつながっています。
「注文や会計はオンラインでも、対面でのおもてなしを大切にしたい。時間が増えた分は、お客様にさらに喜んでもらえるための工夫をし、海外からのお客様にも『ありがとう』を伝えたい」と渡邊さん。業務効率化によって、より良い食材を手に入れるために豊洲市場に顔を出すといった仕入れ先との関係性づくりもしやすくなったそうです。

また、効率良くお店を運営できるようになったことで、営業時間に料理の仕込みもできるようになりました。営業中は調理と接客にかかりっきりだった頃は、仕込んだ分が途中でなくなればそのまま売り切れにするしかありませんでしたが、今は状況を見ながら再仕込みをする余裕もあり、売り逃しも防げ、営業時間後に行っていた翌日の仕込みを前倒しで行えば、早く仕事を終えることも可能になりました。
一方で、渡邊さんは昨今の物価高騰への危機感も持っており、「原価を抑える努力も、価格への反映も両方が必要。その意味で、これまで以上に需要予測は大事だし、各国のお客様の好みや購買力に合わせてメニューや仕入れを検討していきたい。『Airレジ』のデータはそのヒントになるはず」と「Air ビジネスツールズ」にさらなる期待を寄せています。
今後もリクルート「Air ビジネスツールズ」では、事業者の負担をテクノロジーの力で少しでも軽くすることで、事業を営む皆様が、本来やりたかったことや思い描いていたことを実現できる世界をつくり、事業課題の解決、社会問題の解決に貢献していけるよう努めてまいります。