復職から活躍まで導き、店舗の人手不足も解消。休眠美容師への復職支援の取り組みが2025年度グッドデザイン賞を受賞

深刻化する美容業界の人手不足。一方で、資格を持ちながら美容師として働いていない“休眠美容師”が全国に約84万人(※1)存在する点に着目し、休眠美容師の復職と人手不足解消の双方を実現した、リクルートのクラウド型予約管理システム『サロンボード』とヘアサロン・リラク&ビューティーサロンの検索・予約サービス『ホットペッパービューティーワーク』の取り組みが、2025年度グッドデザイン賞を受賞しました。本レポートでは、受賞に至った背景と具体的な取り組み内容を紹介します。

※1「理容師・美容師制度の概要等について」(厚生労働省)、「衛生行政報告例」(厚生労働省)、「新規免許登録件数」((公財)理容師美容師試験研修センター)をもとにホットペッパービューティーアカデミーで推計(2024年)

目次

働きたくても働けない“休眠美容師”の現状を、膨大なデータから分析。見えてきた雇用創出の糸口

美容業界は深刻な人手不足に直面しており、美容資材の高騰なども影響し、事業成長が鈍化する企業が増えています。倒産件数は過去最多を記録し(※2)、人材確保は急務となっています。しかし、求人倍率は6倍前後と高水準が続き、従来の求人改善だけでは採用が難しい状況にあります。

※2 東京商工リサーチ「美容業の倒産、過去20年で最多~ 問われる経営効率化と対応力 ~」(2026年1月31日)より

そこで注目したのが、美容師免許を持つ全国約142万人のうち、推計約84万人も存在する美容師として就業していない“休眠美容師”です(※1)。しかし、これほど多くの有資格者がなぜ現場を離れてしまうのでしょうか。その理由のひとつに、結婚や出産といったライフイベントの変化があります。

出産後育児と両立しながらの復職を考えたとき、「子どもを迎えに行く時間までに終われるだろうか」「土日に働く勤務形態で、家庭と両立できるか」「ブランクがあるから、最新のトレンドや技術についていけるか」といった、働き方とスキルに対する不安が大きな壁となり、復職に一歩を踏み出せない状況がありました。

約142万人の有資格者のうち、働いていない休眠美容師が約84万人、そのうち復職を希望している人が約38万人存在することを表すグラフ

リクルートの美容に関する調査研究機関『ホットペッパービューティーアカデミー』の調査でも、働ける時間帯の制約が大きな要因として示されています。とくに平日10:00〜16:00の勤務を希望する声が多いものの、その時間帯は業界慣習からすると、人員が増えても稼げない時間とされているため、積極的な採用が進まないという課題がありました。

しかし、それは本当なのでしょうか。『サロンボード』に蓄積された膨大なデータを分析したところ、多くのサロンで「平日の昼間」が、実は売上の伸びしろとなる可能性が高い時間帯であることが分かりました。

『サロンボード』の画面『サロンボード』の分析機能画面

休眠美容師の復帰から活躍までを伴走。店舗売上・既存スタッフの負担も軽減する“三方よし”の成果を実現

データ分析で得たインサイトをもとに、美容業界の求人・転職・採用情報サイト『ホットペッパービューティーワーク』では、「平日16時までの短時間勤務」や「週3日からOK」といった、柔軟な働き方を提案する求人を作成しました。これにより、それまで主流だったフルタイムではない、新しい雇用機会を創出し、復職をあきらめていた多くの方が美容師として再び活躍できるチャンスを得られるようになりました。

また、ブランクによる「技術への不安」を解消するために、美容業界に昔からある「アシスタント業務」を、「再オンボーディングプログラム」として再定義。まずはアシスタント業務から段階的にスタートし、徐々にブランクを取り戻す。その過程で、サロンの既存スタッフから最新の技術やトレンドを学び直すことで、最短1カ月でスタイリストに復帰することも可能にしました。この仕組みは、復職する方々が自信を持って現場に戻れるだけでなく、アシスタントが入ることで既存スタッフの業務負担が減り、より多くのお客様に対応できるようになるという、双方にとって良い循環を生み出しました。

その結果、人材確保が進みサロンの経営改善にも寄与するなど、求職者・美容室・既存スタッフの三者にメリットをもたらす“三方よし”の取り組みが実現しました。

実際に掲載された『ホットペッパービューティーワーク』の求人情報の画面実際に掲載された『ホットペッパービューティーワーク』の求人情報

イノベーションは必ずしも新しい技術やプロダクトから生まれるわけではない

本取り組みの特筆すべき点は、『サロンボード』と『ホットペッパービューティーワーク』という既存のふたつのプロダクトを連携し、社会課題解決のために最も効果的な使い方を再定義したことです。これにより業界の構造的な課題を解決しうる「持続可能なエコシステム」が構築されました。この事例は、「イノベーションは必ずしも新しい技術やプロダクトから生まれるわけではない」ということを示しています。今回の取り組みのナレッジは美容業界にとどまらず、他業界が抱える構造課題の解決にも応用できる可能性があります。

■グッドデザイン賞 審査員のコメント

休眠美容師の復職を支援しながら、人手不足に悩む美容業界の課題を同時に解決する仕組みを実現した点が高く評価された。予約管理システムを活用し、平日昼間の空き時間を可視化して求人設計に反映させることで、家庭と両立しながら働きたい層に新たな就業機会を提供している。さらに、アシスタント業務から段階的に復帰できる仕組みを整えることで、ブランクを抱える人材も安心して再スタートを切れる。美容室にとっても収益やサービス向上につながり、顧客・店舗・美容師の三者に利益をもたらす設計は持続性が高い。データに基づく再現性あるモデルとして、業界全体への波及が期待される取り組みである。

リクルートはこれからも、事業を中心とした企業活動を通じ、誰もが自分の可能性を生かせる社会の実現を目指して機会格差の解消に取り組むとともに、業界全体の成長に貢献できるよう努めてまいります。

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