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14歳で会社を設立したZ世代起業家が目指すのは、教育の選択肢が豊かな社会

アイデア , イノベーション , サステナビリティ , ビジネススキル , マネジメント , 人材育成 , 多様性 , 教育 , 新規事業 , 社会貢献 , 起業

文:森田 大理 写真:須古 恵

デジタルネイティブ。モノよりコト。社会問題への関心が高い。起業家精神が旺盛…。激変する社会のなかで育ったZ世代の生き方から、現代のビジネスパーソンに求められるスタンスを学ぶ

1990年中盤以降生まれの「Z世代」が、いよいよ社会で活躍をはじめている。彼らは、「スマートフォンが当たり前」「大災害による社会の混乱」「SNSで世界中と交流できる」など、まったく新しい環境で育っており、「社会課題への意識が高い」「学校・会社以外のコミュニティを持つ」「慣習に縛られず一直線に目的を目指す」といった傾向が強いそうだ。

そんなZ世代を象徴する一人が仁禮彩香(にれい・あやか)さん。中学2年で会社を設立して教育事業をスタートし、現在は22歳にして2社目となる株式会社TimeLeapの代表取締役を務めている。彼女のチャレンジングな生き方にはZ世代の特色が表れているのではないか。Y世代インタビュアーの視点でZ世代の価値観を探った。

「なぜ?どうして?」を幼少期から問われ続けて拓けた、起業の道

――仁禮さんは14歳のときに1社目の会社を設立し、教育関連の事業をはじめています。なぜ中学2年生で起業を志したのですか。

私が起業を選択したのは、お金を稼ぐ手段としてではなく、社会について学びたかったからなんです。当時の私は、中学校での教育が社会に出てどう役に立つか分からないことにモヤモヤしていました。このまま漠然と高校・大学に進んでも、私には勉強をする意味が見出せないんじゃないか。それなら社会と接点を持てる機会をつくろうと思ったんです。

また、私は幼稚園と小学2年~6年までをインターナショナルスクールに通っていたので、中学生になって改めて日本の学校教育に触れると「もっとこうしたら良いのに」と客観的な視点で感じることも多かったんです。であれば、いっそのこと自分が良いと思う教育を社会に提供してみたいと考えました。

こんな風に、「社会接点がほしい」+「教育をより良くしたい」の二つの軸で考えた結果、ベストな選択肢として起業を決断した感覚です。

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本取材は新型コロナウイルス感染拡大防止の観点からオンラインで実施。仁禮さんも自宅からインタビューを対応いただいている。

――とはいえ、中学生が起業するのはかなり珍しいですよね。部活や習い事ならまだしも、どうして決断できたのですか。親や周囲の方々の反応も気になります。

今考えると、当時の私は世の中の常識から見てどれくらい珍しいのかも知らなかったんです。それが逆に良かったんでしょうね。「子どもだから」といった制約を設けず、自由な発想で考えて出した答えでした。

また、両親は昔から私が本気で考え抜いたことなら応援してくれるスタンスでした。特に母は子どもに対して「こうしなさい」とは言わず、「どうしたい?」「なぜそう思う?」と質問でコミュニケーションを取る人。公立の小学校に通っていた小1の時、決められた答えに沿って同じスピードで進まなければいけない教育スタイルが合わなかったときも、義務教育だからと我慢させるのではなく、「なぜ合わないのか?」「どうしたいのか?」を私に問いかけてくれました。

そうやって考えた時に私が一番学びたいと思えたのが子どもたちが自主的に自分の学びを作っていける場所であった母校の幼稚園(インターナショナルスクール)でした。当時の校長先生に自分の想いを伝え、小学校をつくってほしいとお願いしたところ、一年で新設してくださり、小2の時に転入しました。

――ご両親も先生方も仁禮さんを子ども扱いせず、しっかりと耳を傾けてくれる環境だったから、仁禮さんも起業を口にできたのかもしれませんね。

そうですね。周囲の大人には恵まれていたと思います。転入した小学校での教育も、「これはなぜ起きたのか」「どうしたら解決できるか」と議論するようなスタイルが中心で、「常に問題の本質を捉えなさい」と教わりました。そうやって考える力が身に付いたから、中学で感じた教育への違和感に対してもただ漫然と「学校が嫌」と不満を言うのではなく、問題を解決するために私が何をすればいいのか考えられたのだと思います。

一人ひとりにあった教育が選べる社会に変えていきたい

――既存の教育のあり方へ疑問を持ったことが起業のきっかけになった仁禮さんには、今の日本の教育がどう見えているのですか。

分かりやすいところから話すと、ICT等の学習を便利にするためのツール活用がもっと進んでほしいですよね。今、新型コロナウィルスの影響でオンライン授業の必要性が叫ばれていますが、オンライン化はコロナに対応するだけの話ではないと思うんです。

というのも、私が感じた教育への違和感はどこから来るものなのか、その本質を考えてたどり着いたのは、「先生の役割」でした。多くの子どもにとって、家族以外の身近な大人は学校の先生くらいです。だからこそ、先生にはただ勉強を教えるだけじゃなく、子ども一人ひとりとしっかり向き合って社会で生きる力を教えてほしい。けれど、今の先生たちは授業や部活で手一杯。この状態で先生の負担を増やすのは現実的に難しいでしょう。

授業のオンライン化は負荷を減らす意味でも必要だと考えているんです。知識を学ぶタイプの授業は比較的オンラインで代替しやすい。生身の先生はその分の時間を生徒の個別フォローや、「正解のない問題を考える力」など社会で求められる力を養う授業に注いでほしい。先生は子ども一人ひとりに本気で向き合えるプロフェッショナルだと私は思っているので、その力が発揮できる部分に集中してもらうためにも、新たな仕組みは必要だと思います。

――そうした考えは、仁禮さんの事業にどう反映されているのですか。

これまで私が手掛けてきたのは、小中高生向けの教育プログラムや企業向けの研修など。母校のインターナショナルスクールの経営にも携わりました。それらに共通する私の想いは、「一人ひとりが自分自身の才能に気づける場所を提供する」こと。既存の学校教育の中でも自分の才能を発見して伸ばせる人はもちろんいます。けれど全員がそうではないからこそ、新たな仕組みや選択肢があった方がいいと思うんです。

たとえば、スポーツや芸能の才能がある子どもは、早くからスポーツクラブや芸能事務所といった学校以外の場所で能力を磨き、成熟していきますよね。他の才能を持つ子どもたちのためにも、そうした場所を増やしていきたいです。

――だから子どもたち向けの起業家プログラムをはじめられたんですね。

起業家を本気で目指す子どものためであることはもちろん、小さいうちからビジネスにチャレンジしてみることには、大きな意味があります。社会と接点を持つことで視野が広がり、ビジネスの中で自分の得意なこと・やりたいことを見つけられる。今は初期投資0円でスモールビジネスもはじめられますし、起業のハードルは年々下がってきているように感じています。

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――Z世代以降の子どもたちにとって、ビジネスは意外と手に届く範囲にあるものなのかもしれません。

そうですね。ただその一方で、学びの選択肢を増やすだけでは足りないことも分かっています。理想は「社会に豊富な選択肢があり、その中から自分に合ったものを選び取れる」状態。でも自由度が高まるほど、人はどれが良いか迷い不安になります。

その意味でも、子どもたちが自ら選び取る力を養う支援や、一緒により良い方向性を考えてくれる存在も必要でしょう。だからこそ、未来の学校の先生には子ども一人ひとりの個性にしっかり向き合い、それぞれの道に導くことへ全力を注げる状態になってほしいと願っています。

自分の不完全さを潔く認めることで、仲間と協力しあえる

――14歳から仕事をしてきた仁禮さんにとって、働きながら学ぶことに苦しさはなかったのでしょうか。上の世代からすると、ここまで続けてこられたことに驚かされます。

もちろん大変でした。高校までは朝から夕方まで学校の授業があって、そのあとから仕事をする生活。体力的にもきつく、もうあの頃には戻りたくないです(笑)。でも、それでも続けてこられたのは二つ理由があって。一つは、私にはこれまでお話したような仕事をしたい明確な目的があったこと。もう一つは、周囲の人たちに応援してもらえたことです。

私の場合、国語のように読解力や思考力を問われる教科は得意なんですけど、世界史の年表を覚えるような暗記ものは苦手で...。なかなか勉強する時間が取れないなか、友達がノートを貸してくれて助けられたことが何度もありますね。また、アルバイト禁止の高校だったので校則違反だと言われてもおかしくなかったのですが、「仁禮がやっているのは"事業"だから"バイト"じゃないよ」と先生に言ってもらえたことも有り難かったです。そんなみなさんへの感謝を常に忘れないようにしてきたからこそ、これまで続けられています。

――「中学生で起業」と聞いて、仁禮さんのことを何でも完璧にできる天才のように思っていましたが、その素顔は他の同世代と変わらない、等身大の10代20代を生きてきた人なんですね。

私、全然完璧じゃないですし、人に完璧を求めてもしょうがないと思います。これは同世代の起業家同士で話をしていても感じるんですけど、不完全さに対して寛容な人が多いですね。何かできないことがあったとしても、他に得意なことがあればいいよねという感覚。完璧な人であろうとすることをポジティブに諦めている人が多い気がします。

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――それは子どもの頃からあった価値観ですか。

いえ、どちらかと言えば経営をするなかでたどり着いたものですね。始めたばかりのころは自分を良く見せたい気持ちもありました。でも、いろんな困難に立ち向かうなかで、それは大事なことではないと気づいた。むしろ自分の苦手なことや弱点を認めて周囲と協力しあえる方が、より事業が広がっていくことを知りました。

――なるほど。それは上の世代だと30代くらいでやっと気づく人が多い印象です。若くして起業を選びやすい世代だからこそ、早い段階でいろんな経験をして学んでいるのでしょうね。そういう意味では、仁禮さんが30代~40代になったときは、さらに新しい価値観を持たれていらっしゃるのかもしれません。ありがとうございました。

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プロフィール/敬称略

※プロフィールは取材当時のものです

仁禮彩香(にれい・あやか)

株式会社TimeLeap 代表取締役/ERRORs株式会社 取締役/慶應義塾大学総合政策学部所属中学2年生の時に一社目の会社を設立し教育関連事業・学生/企業向け研修などを展開。高1の時に自身の母校である湘南インターナショナルスクールを発展支援の目的で買収し経営を開始。2016年に株式会社TimeLeap(旧Hand-C)を設立し、代表取締役に就任。同年 DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビューが選ぶ未来を作るU-40経営者20人に選出。慶應義塾大学総合政策学部所属。

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