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災害時は、近所で助け合う力がカギ 「共助力」が高い“街”と“人”の特徴を発表! あなたの共助力スコアは?

株式会社リクルート

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株式会社リクルート(本社:東京都千代田区 代表取締役社長:北村 吉弘)の住まい領域の調査研究機関であるSUUMOリサーチセンターは、すべての人にとって、自分らしい人生を応援するための「住まいの価値」を提言・実証する研究を進めております。昨今多発する自然災害から身を守り、自分らしく安心な生活をおくるためには、住まいの防災など“自助”の対策を進めるだけではなく、近所の人などと助けあう“共助”の意識を高めることが大切と考え、“共助力”に関する実態調査を実施しました。結果を分析することで見えてきた、共助力の得点が高かった方々の“特徴“や、その方々が暮らす“街の魅力”をまとめましたのでご報告いたします。

地域に知人が全くいない!? 4割が「共助力スコア」1未満

本調査では、災害発生時に人を“助ける力”と、人から“助けられる力”を「共助力」と定義。 地域に「知人がいるか」をベースにした複数の質問から、個人の共助力を5点満点で算出しました。結果、全体の平均スコアはわずか1.46。5点は、近所と徒歩園それぞれに知人がおり、災害時にその知人と互いに助け合えること、2点は、知人の家もしくは連絡先を互いに知っている状態を表します。スコア別の内訳では1未満が4割を占めており、そのほとんどが地域に知人が全くいないという回答でした。地域コミュニティの課題が浮き彫りになったといえます。
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共助力を育む街には「顔見知りができるスポット」がある

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共助力スコア4以上の高得点者は7% 公園、公共施設、運動施設などが地域をつなぐ?

そこで、共助力スコアが4以上の7%、約3000人に着目し、共助力の高い人が暮らす街の特徴を分析。「お住まいの街のいいところはどこですか?」という設問で、共助力スコア4以上の高得点者が評価した「街の魅力」計35項目を、回答者全体と比べてより評価が高い順にランキングしました。1位は「地域に顔見知りや知り合いができやすい」という結果に。2位以下には、「散歩・ジョギングしやすい」のほか、公共施設、公園、運動施設など地域の人々が集まるスポットの充実や、子育て、教育環境の充実がランクインしています。 4位に「街の住民がその街のことを好きそう」が入っており、住民が日々の散歩や施設利用、子育て等を通して自然と顔見知りになることで、街や近所の人への愛着が湧くという循環がうかがえました。

高年齢、女性、子育てファミリー、「ママ経験者」で高い共助力

共助力スコア4以上の高得点者出現率は、60代以上の女性で最も高い

性別では男性より女性、年代別では若年層より年配層で、共助力スコア4以上の高得点者(以下、高得点者と称する)の出現率が高いという結果になりました。男性は、一般的に現役世代といえる20代~50代の高得点者率が3~4%と極めて低く、60代以上でも全体(7%)を下回ります。一方、女性は年代が増すほど高得点者が増えており、60代以上では15%を占め、全体(7%)を大きく上回りました。 60代以上になると、仕事や子育てに使う時間が減る代わりに、地域活動に使える時間や、地域の公共施設、運動施設などの活用機会が増え、顔見知りができやすいことが想定されます。また、現在60代以上の女性は主婦層が過半数を占めており、地域交流を担ってきた世代であることも、共助力が高い理由の一つだと考えられます。
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子育てを通した地域とのつながりが、共助力を育むきっかけになっている

ライフステージ別では、シングルより夫婦、女性に関しては夫婦のみより子どものいる夫婦の方が、共助力スコア4以上の高得点者率が高くなっています。子育て層は、地域の子ども会やお祭り、PTA活動などへの参加、子どもの友人家族との付き合いなどで、近所に自然と顔見知りが増えることが想定されます。また、どの年代、ライフステージでも男性より女性の方が高得点者率が高いことを考えると、地域コミュニティの中心が女性であることが見受けられ、男性の参加が期待されます。
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地域コミュニティを「共助力」に発展させる街の事例を紹介

若者、男性シングルが、自身の共助力を高める方法は?

本調査で共助力の低さが目立ったのは、男性20~30代の若年層とシングル層でした。仕事が生活の中心で、子育て等を通じた地域交流の機会が少ないため、災害時の共助について意識しづらいのは仕方がない部分もあります。しかし、本来はすべての人に、自身の共助力を高める機会が必要です。そこで、地域全体で共助力を高めるヒントを探るべく、首都圏におけるさまざまな地域コミュニティや防災訓練から4事例を紹介します。

CASE1. 共助力の高さをデータで証明した60代以上の年配層が主役の事例
CASE2. 日中街にいる確率の高い女性の力を防災に活かそうと動き始めた事例
CASE3. 学生が地域コミュニティ活性化に奮闘する事例
CASE4. コロナ禍でも非対面で防災訓練を行う大規模マンションの事例

CASE1
リタイヤ世代が挑む“地域づくり” あいさつが多世代をつなぐ~東千葉~

一戸建て約600戸、マンション400戸
地域の自治会が合同防災訓練を実施

1978年、1000世帯近くを擁する東千葉住宅地が千葉県千葉市中央区に誕生。それから40年、住民の高齢化による負担を軽減するため、2018年から年に一度、5つの自治会合同で防災訓練を実施しています。テーマは「顔見知りになろう」。安否確認や炊き出し、起震車による地震体験、煙体験、救命救助などの訓練には、老若男女が約500名参加。区や学校、病院、警察、消防、民間企業、ボランティアなどが共催・協力するビッグイベントです。その立役者は、70代を中心とする運営メンバーの皆さん。「退職を機に地域交流をはじめ、会社人間から社会人間に変化した。防災、防犯、健康、介護など、中長期的な地域課題を解決するには、互いに支え合うことが必要だと感じた」と語ります。
20210827_housing_0520210827_housing_06写真提供/東千葉地区自治会連絡協議会

仲間づくりから“地域づくり”に発展 「あいさつロード」が世代を超えたつながりを育む

地域交流は、“仲間づくりの会”という名の飲み会からスタートしました。日本各地から集まった住民が出身地や趣味を通してつながり、複数の活動が発足。その延長線上で、地区の防災井戸を管理する「くるま座の会」も生まれました。近所の農家に使っていない井戸があると聞きつけ、住民から行政に働きかけたことで正式な防災井戸として指定。合同防災訓練では、中学生に井戸水の汲み方・運び方を実践的に教え、その水を炊き出しに使用しています。他にも、見守りやあいさつ運動、多世代との交流、高齢者の健康づくりなど、地域課題に住民自ら取り組む「東千葉 和・輪・環(わわわ)の会」が活動中。今年、地区を縦断する約800mの道路が、千葉市制100周年記念事業の一環として「東千葉あいさつロード」と命名されました。「子どもたちが元気な声であいさつをしてくれるようになった。地域コミュニティの礎として、次代へ引き継げるよう活動していきたい」と元気に語る皆さん。顔見知りができる工夫が街中で加速しています。

CASE2
町民約3000人が参加する避難訓練 近所の“絆”で災害を減らす~大磯町~

住民と行政が協働サイクルを回し
街全体の防災力を高めていく

3月発表の「街の共助力調査(※)」で2位にランクインした神奈川県の大磯では、町民約3000人が参加する津波土砂避難訓練、黄色い旗を掲げて無事を確認し合う安否確認訓練など、さまざまな訓練を町全体で行っています。その基となるのが、町が主催する年3回実施の「大磯防災ミーティング」。自治会や学校、病院、ボランティア、消防、警察など70以上の組織から毎回約100名が参加し、訓練の計画・実行・振り返りを通して意見を出し合い、各組織に持ち帰ります。 「土砂避難訓練を開始したのも、町民からの意見があったから。防災意識の高まりを感じる」と、危機管理課の竹内さん。町内では、自治会と母体の異なる自主防災会が増えており、要支援者の避難訓練など、活動内容も進化しています。
20210827_housing_0720210827_housing_08写真提供/大磯町、伊藤さん

祭り、盆踊り、文化祭etc. 地域イベントで“防災”を発信 女性や子どもの共助力を強化

大磯町は祭り文化が根付いており、もともと住民同士の交流が盛んな地域です。その祭り会場に大きく掲示された「わが身、わが命は自分で守る…」というメッセージ。約1300世帯が暮らす馬場地区の自主防災会では、防災・救命救急の知識、訓練告知などを全イベントで掲示し、文化祭で販売するお餅のパッケージにも防災の心構えを印刷して、啓蒙活動を徹底しています。「もし昼間に災害が起きたら、町内に居る確率の高い女性や子ども、高齢者自身が共助の主役になる。特に、避難生活での女性視点は重要。訓練に加えて普段から“楽しく”防災に触れてもらうことで、近所で助け合う“絆”を強めていきたい」。そう話すのは、大磯町災害救援ボランティアの会・会長でもある伊藤さん。小中学校関係者や生徒、老人会などを中心に、防災講演を行っています。また、その意見を受け止めた大磯町では、今年の災害救援ボランティア養成講座助成事業を、女性向けに実施。住民と行政それぞれが考え、連携して行動する好循環が生まれています。

※ 2021年3月10日発表「住民の共助力」に関する実態調査より
https://www.recruit.co.jp/newsroom/recruit-sumai/press/upload/3e05bf0b8c92c71a45e3a074f7471844.pdf
※事例の活動内容はコロナ禍では中止または変更しているものがあります

CASE3
“エリアマネジメント組織”を形成 若い力を共助に活かす~神田淡路町~

学生用住戸を含む商住複合施設は
帰宅困難者受け入れ施設としても機能

2013 年、東京都千代田区神田淡路町の小学校跡地を含む一帯が再開発され、区立公園に隣接する2棟構成の「ワテラス(WATERRAS)」が完成。テナント20店舗、オフィス入居約40社、分譲住宅333戸に加えて、コミュニティ施設と学生用住戸が36戸あるのが特徴です。ワテラスは通常の防災訓練だけでなく、災害時の共助の拠点として、千代田区の帰宅困難者対応訓練にも秋葉原協力会の一員として参加。それらの防災活動では、書類審査と面接を経てスチューデントハウスに入居する学生たちの姿が目をひきます。トイレ設置訓練や消防訓練を楽しそうに行う学生たちは、再開発組合から活動拠出金を得て地域コミュニティを育むために発足した組織「淡路エリアマネジメント」の会員でもあります。
20210827_housing_0920210827_housing_10写真提供/安田不動産

街を知ることで愛着を持てた 36名の学生が得意を活かして地域をつなぐ

「淡路エリアマネジメント」では、地域に学生が根差すことを目指し、周辺相場より手頃な賃料で入居できる仕組みを構築しています。学生は、ワテラス内にあるコミュニティ施設や広場、区立公園を利用したマルシェや音楽祭、防災フェアまで多種多様なイベントの運営を手伝いながら、時に企画者として、子どもたちに向けたイベントなどを開催。地域住民の一員としてコミュニティを支えています。「一人暮らしだと、どの街に誰と暮らしているという意識が持ちづらい。活動を通じて街を知ることで、地域や人に対して愛着を持てた」と話す学生の赤尾さん。「災害時、自ら動くのは勇気がいる。でも、仲間がいれば一緒に助けにいける」と同じく長谷さん。その言葉通り、コロナ禍でコミュニティ活動が休止した昨年、街のために何かしたいと企画したのが、リレームービーです。撮影から編集まで学生が得意を持ち寄って製作。ワテラスに入居する企業やテナントのワーカー、周辺の自治会長や住民など総勢60名が出演し、地域をつなぎました。

CASE4
コロナ禍でも諦めない “リモート防災訓練”にチャレンジ~新子安~

マンション総戸数497戸の“街”
訓練参加率89.5%の高い防災意識

2020年9月、コロナ禍で多くの地域コミュニティ活動が休止を余儀なくされるなか、“リモート防災訓練”にチャレンジしたマンション事例。それが、神奈川県横浜市神奈川区に立つ、総戸数497戸、3棟構成の「ザ・パークハウス 横浜新子安ガーデン」です。午前9時半、安否確認マグネットシートを玄関扉に貼り付け、住民専用サイトで安否を記録。その後、防災知識を学ぶツールを利用したワークショップに約100名が参加し、避難訓練は棟ごとに時間を分けて実施しました。リモートにもかかわらず、いずれかの訓練に約9割、445世帯が参加。「当初は参加率がどうなるか不安だった。掲示板やサイネージ、2度の投函や訓練直前の放送で、周知徹底して挑んだ」(管理組合理事長・前防災担当)
20210827_housing_1120210827_housing_12写真提供/ザ・パークハウス 横浜新子安ガーデン管理組合法人

親子で参加できる交流イベントやサークル活動が、マンション内の顔見知りを増やす

2015年の竣工以降、年1回の防災訓練に約8割の住民が参加。消防や警察の協力による水消火器の噴射訓練、バルコニーにある隣戸との仕切り板を蹴破る体験など、参加型の訓練を行ってきました。高い参加率の背景には、七夕、ハロウィン、クリスマスなど親子で楽しめる交流イベントや、マンション内サークル活動の成果を発表し合うステージなど、住民同士が顔見知りになる工夫が満載。また、災害時に対策本部となる防災組織を立ち上げ、情報班・救援救護班・避難誘導班など5つの班の班員を住民が輪番制で担当することで、スムーズな共助体制を築いています。管理組合理事の多くは、仕事をもつ多忙な現役世代。それでも「理事を経験して良かった。自分の住まいを理解できるし、知り合いができ、愛着が湧いた」と話します。

 他事例のご参照
※引用の際にはお問合せください
※事例の活動内容はコロナ禍では中止または変更しているものがあります

SUUMOリサーチセンター担当者コメント:江原さん

住民が共助力を育むために
行政や民間企業の支援は欠かせない

ご紹介した4事例に共通していたのは、行政や大学、民間企業と協力体制を築き、地域の公園やコミュニティ施設、助成事業やワークショップツールなどをフル活用していたことです。1事例目の東千葉では、千葉大学協力のもと住み心地に関する住民アンケートを実施し、活動の方針を決定しました。4事例目のリモート防災訓練は、マンションの売主である不動産会社と管理会社の提案がきっかけで実現したものです。共助力を育む主役はあくまで住民自身ですが、その機会を提供する役割として、行政や民間企業によるハード・ソフト両面での支援は欠かせないものだということが分かりました。
20210827_housing_13 調査担当/江原  亜弥美
 SUUMO副編集長 兼「都心に住む」編集長

モチベーションの源泉は“街への愛着” ご近所における“仲間づくり”のススメ

もうひとつ共通していたのは、どの事例も現時点での共助力にまだ満足していないことです。「もっと防災訓練への参加率を上げたい」、「もっとリアリティのある防災訓練を実施したい」と、試行錯誤されています。そのモチベーションの源泉は意外にも、献身や奉仕の精神だけでなく、“街への愛着”や“日々の充実感”だといいます。ご本人たちが地域活動を楽しむことで、周囲の人々を巻き込み、近所に“仲間”が増えていく様子がうかがえました。「街に出てきてほしい」と大磯町の伊藤さんが話すように、自身の共助力を高める第一歩は、自分の街を知ることです。近所にどんな人が暮らしていて、どんなイベントや活動があるかを知り、お祭りや防災訓練があれば参加してみる、イベントがなければ、日々のあいさつから始めてみるのも手だと思います。そうやって踏み出した一歩が、災害時にご自身を救うかもしれません。

共助力チェック

ご自身の共助力について知ることができます

ご自身の現時点での共助力について、計10問の簡単な診断テストで判定することができます。詳しくはSUUMO内の特設サイト『社会が変われば、住まいも変わる。』より、「09 ご近所さんとの助け合いが重要!?地域の防災」をご覧ください。
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「住民の共助力」調査概要

  • 調査目的
    関東圏(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県、茨城県)の街(駅)について、街の「共助力」を明らかにすること
  • 調査対象
    関東圏にある各駅に在住していると回答し、各駅から7km以内もしくは駅と同一の市区町村に在住の20歳以上の男女
  • 調査方法
    インターネットによるアンケート調査1次調査にて、住んでいる街が好きかを調査。2次調査にて1次調査回答者の一部に対して、「共助力」などについて調査した
  • 調査期間
    1次調査(スクリーニング調査):2021年1月14日(木)~2021年1月25日(月)
    2次調査(本調査):2021年1月27日(水)~2021年2月1日(月)
  • 有効回答数
    ●1次調査対象数:1,619,998人 1次調査回答数:388,145人
    (うち各調査会社のパネル構成比を前回(2020年)調査にそろえた結果327,004人を分析対象とした)
    ●2次調査対象数:57,185人  2次調査有効回答数:42,947人​
  • 調査実施機関
    株式会社インテージ

<「共助力スコア」の算出方法>
「ご近所」(自宅から半径400m圏内)と「徒歩圏」(自宅から半径400m〜4km圏内)のそれぞれの距離圏で当てはまる項目を選択方式で回答してもらい、各項目(①助ける力✕ご近所 ②助ける力✕徒歩圏 ③助けられる力✕ご近所 ④助けられる力✕徒歩圏)の合計の平均値でスコアを算出。20210827_housing_16

<共助力スコア4以上の高得点者に聞いた「自身が暮らす街の魅力」の算出方法>
街の魅力を示す以下35項目に対して当てはまるかどうかを5段階の選択方式で回答してもらい、「共助力総合スコア」4以上の高得点者の平均値と、全体の平均値の差分が大きい項目から順に、上位10項目をランキングで掲出。
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