本件の根本問題と今後のガバナンス強化に向けた取組み

2019年12月4日  本ページを新規追加いたしました

当社は、「学生と企業の対話の機会を増やすことは、学生と企業の双方に価値がある」という考えのもと、『リクナビDMPフォロー』の開発・提供を推進してまいりました。

しかしながら、学生の皆さまの「不安」「怖い」といった懸念の声が生まれる可能性に対して十分に目を向けることができず、学生の皆さまのご心情やご状況を十分に踏まえたサービス設計・経営判断ができていませんでした。こうした「学生視点の欠如」こそが、本件の根本的な問題であると認識するに至っております。

また、『リクナビDMPフォロー』は、個別企業の課題解決に向けて、新規事業の研究開発として位置付けられたサービスとして検討をはじめました。その後、開発過程で都度発生する検討事項について、責任者不在の状態で検討を進めた結果、必要十分な検討がなされない状態で、サービス提供が推進されてしまいました。本件のように「データの利活用」という慎重なリスク分析を必要とするテーマを取扱う際には、その時点における法規制の内容だけではなく、広く社会の動向や時流を踏まえて検討を進めていくべきところ、結果的に一部のサービス提供が法の趣旨に沿わず、不適切であると指摘されたことについて、重く受け止めております。このような「ガバナンス不全」が、もう一つの根本的な問題と認識するに至っております。

本ページでは、「ガバナンス不全」の具体的な内容と今後の取組みについてご説明させていただきます。「学生視点の欠如」の詳細については、「今後の新卒事業に関する取組み」のページでお伝えしております。
今後の新卒事業に関する取組み

「ガバナンス不全」の具体的な内容

『リクナビDMPフォロー』というサービスは、前述のとおり慎重な検討を要するサービスであったにも関わらず、当社が本来持つチェックフローや決裁プロセスを踏むことなく、サービスが検討・提供されてしまいました。本件につながる「ガバナンス不全」とは、当社においてこのような研究開発的な商品開発に対するガバナンスの空白地帯が存在しており、その体制を当社の経営システムとしてカバーできていなかったことに、その真因があったと考えております。

(1) 商品の企画・開発の体制およびチェックプロセスの問題

(1)-1.研究開発として位置付けられた商品開発における、責任者不在の検討体制
『リクナビDMPフォロー』は、個別企業の課題解決を目的としたソリューションサービスとして、通常任命されるべき商品責任者が不在の状態で検討が開始されました。その後、営業・商品企画・システム開発・法務等のバックオフィスといった部門横断で、担当者が局所的に連携を繰り返す形で検討が進み、徐々に提供企業数を広げてまいりました。この過程において、通常であれば商品の全容を把握し判断を下す役割である責任者が『リクナビDMPフォロー』には設置されないまま検討が進む状態になってしまっていた当社の経営体制に問題があったと認識するに至っています。

(1)-2.研究開発的な商品開発における、チェックプロセスの脆弱性
当社の通常の商品開発においては、ビジネス観点のみならず、関係者の皆さまにどう受け止められるかといった視点や、リスク観点も含めた複眼チェックプロセスが存在します。当該プロセスの中で決裁がおりない場合は商品化されることはありません。一方で、『リクナビDMPフォロー』は、前述のとおり研究開発として開発が進んでいたため、こうした商品開発に対して必要な観点から複眼で網羅的にチェックを及ぼすためのプロセスが十分に整っていませんでした。また、当初の投資規模や事業規模が小さかったがゆえに、当社が内規として定める投資決裁権限に則った決裁プロセスなど、本来存在する複層的なチェックプロセスを通ることなく進んでしまっていました。

(2) 専門的知見を事業に装着する際の、事業-スタッフ間および親会社との連携不全

(2)-1. プライバシー観点で商品を横断的にチェックし情報管理の運用徹底を図る機能の不全
当社からの8月26日付のプレスリリースに記載させていただいた「一部画面へのプライバシーポリシーの反映漏れ」に象徴されますが、プライバシー観点で『リクナビ』関連サービスを網羅的にチェックする機能に問題があったと認識しています。『リクナビ』は就職活動という特徴から、当該年度の商品がリリースされた後は、基本的にはそのままの規格で提供する商品形態となっております。そのため、『リクナビDMPフォロー』のスキームを2019年3月に変更するにあたり、『リクナビ』のプライバシーポリシーに改定を加えるという行為はイレギュラーな運用でした。このイレギュラーな運用について、必要な作業や踏むべき工程について整備・明文化されておらず、関係者の認識が統一されていないまま対応が進行しておりました。その結果、一部画面へのプライバシーポリシーの反映が漏れてしまう結果につながっていました。

(2)-2. 「データの利活用」というテーマにおける専門的知見のグループ企業間の分散
個人情報保護委員会からの勧告内容に含まれる2019年2月以前に実施していたアンケートスキームに象徴されるように、「データの利活用」という慎重なリスク分析を必要とするテーマにおいて、社内外含めた専門的知見を導入するための適切な事業―スタッフ間の連携とそれによるリクルートグループのもつ知見を総動員する形での連携に向けた土壌が整っておりませんでした。

今後のガバナンス強化に向けた取組み

前述の問題への対応策として、当社と当社親会社である株式会社リクルートが連携して、以下のような再発防止策を検討・実施してまいります。

1. 【(1)-1に対して】 新卒領域の商品開発に関わる組織の一本化

『リクナビDMPフォロー』のような研究開発として位置づけられた商品に対するガバナンスの空白地帯を生じさせないために、新卒領域の商品開発に関わる組織体制を再編いたします。商品企画組織と商品開発組織を統合し、商品開発におけるすべてのプロセスを一つの部署が一貫して管掌し、管理する体制へ変更します。これにより、研究開発的な商品開発に関わる複数部署間で役割分担と責任が不明瞭なまま検討が進むことのないよう、再発防止に努めます。また、当該組織においてシステム開発に関する購買の中央モニタリングによる監視体制を構築し、すべての発注および支払いを管理監査する機能を持たせます。これにより、商品開発にともなう発注および支払いについても、その内容を複眼的にチェックが行われる体制とし、検討が不十分なまま商品開発が進んでしまう事態の防止に努めます。

2. 【(1)-2に対して】 商品開発フロー・チェックプロセスの標準化と複眼的チェックの実施

株式会社リクルートにおいて、商品開発における適切な検討が均一に実施される状態を担保するため、新商品の企画からリリース・運用に至るまでのステップをグループ横断で統一化し、標準化する取組みを進めています。標準化が完了したのちには、速やかに当社を含むグループ会社の商品開発に導入することが、2019年11月5日開催の株式会社リクルートの取締役会議で決議されています。また、当社における導入までの暫定対応として、経営統括室長を座長とし内部統制・法務・システム責任者で編成する「新サービスチェック強化のためのタスクフォース」を組成し、案件規模や内容に関わらず、新規の案件について一括で内容を確認する体制を設置しています。

3. 【(2)-1に対して】 株式会社リクルート配下会社横断での個人情報保護・データ利活用の体制強化

株式会社リクルートにおいて、グループ会社の全事業を対象に、プライバシー観点のチェック、およびデータマネジメントの在り方を横断的に統括する体制を検討いたします。

また、当社においては、2019年10月1日付で、『リクナビ』全体を個人情報保護の観点から総合的にチェックするプライバシー責任者を設置いたしました。商品・サービスの変更が個人情報保護の観点において、どのように影響するかを統合的に判断し、プライバシーポリシー改定の際の更新反映の最終責任を担います。

4. 【(2)-2に対して】 リクルート全体での法務機能の統合と強化

株式会社リクルートの法務部門において、2019年10月1日付で当社の法務部門組織長を兼務とし、2020年4月を目途とした法務機能の統合に向けて検討を進めております。また、同社法務部門において、2019年10月1日付でデータマネジメント専属の組織が設置され、当社におけるデータ利活用の検討部門とも連携してまいります。

5. 社内啓発プログラムの検討・実施

株式会社リクルートにおいて、グループ会社における個人情報を取扱う従業員を対象とした社内啓発施策を検討・実施いたします。当社においては、それらに加え、本件全容の振返りを含めた以下3点の意識醸成・浸透にむけて、当社取締役・執行役員および従業員の啓発活動を順次進めております。

  1. 個人情報の適正な取扱いについて重大な責務を負っていることをより一層自覚し、データの利活用に関して法令のみならず社会通念に照らした判断を徹底していくこと
  2. 就職・転職を支援する事業の社会的責任と影響力をより強く認識すること
  3. 上記1と2を踏まえ、研究開発として位置付けられる商品・サービスに対しても、そのほかの商品・サービス同様、適正にチェック・管理し、抑止力が働くような標準プロセスを運用する仕組みへと強化を図っていくこと