『スタディサプリ』×『リクルートエージェント』で協働開発。「就職希望の高校生向けキャリア教育」で実現したい世界

リクルートのまなび事業とHRエージェント事業は、就職を希望する高校生向けのキャリア教育コンテンツ(授業動画)を協働開発。2023年5月のリリース後、9月までに約80校でキャリア教育に活用されています。従来、まなび事業では『スタディサプリ for SCHOOL』を通して高校生に向けた進路選択支援を行ってきましたが、新たにコンテンツを開発したのはどのような意図があるのでしょうか。動画の企画・製作を担当した、まなび事業の松尾 明莉、HRエージェント事業の清水 俊佑、元 美紀に聞きました。

就職を希望する高校生に向けた支援が、社会全体で不足しているのではないか

― 今回の授業動画を製作したのはどのような背景があるのですか。

松尾: リクルートのまなび進路事業には、進学を希望する高校生向けのメディアを提供してきた歴史があるので、主に大学・短大・専門学校と高校生のマッチングを行ってきました。一方で、『スタディサプリ』のリリース以降、私たちは高校の教育現場とこれまで以上の接点を持つようになりました。すると見えてきたのは、就職を希望する高校生向けの支援が手薄になっていること。これまで私たちが高校に提供していたキャリア教育コンテンツも「自分に合った学校選びをするには?」といった進学希望者向けの内容がほとんどで、「授業の中でこの教材を使おうとすると、一部の就職希望者にフィットしない」といった声をいただいていました。

― 従来担ってきた「進学情報の提供」から、「授業の支援」に乗り出したことで、就職希望者に価値を提供できていないことに気づかされたわけですね。

松尾: 現在、高校卒業後に就職する人の割合は高校生全体の15%程度といわれています。しかし、せっかく就職しても早期に離職する人の割合が非常に高いともいわれており、高校の先生たちも、本当は就職希望者一人ひとりの進路指導に力を入れたい気持ちはありながら、受験の指導もせねばならず十分に手が回っていないという声もいただいていました。そのため、就職希望者に必要な支援をもっと提供できるのではないかと思いました。私たちリクルートとしても、後悔のない進路選択をしてほしいことに進学も就職も違いはありません。それなら就職希望者向けのキャリア教育も提供することで、全ての生徒に分け隔てなく進路を考える機会を提供したかったんです。

― では、HRエージェント事業との協働はなぜ始まったのでしょうか。

松尾: まなび事業には進学に対するノウハウはあっても、就職に対するノウハウが豊富なわけではありませんでした。でも、同じリクルートの中には就職支援を行ってきたHRエージェント事業がある。彼らの知見を借りることで、実際の就職に即したリアルな教材が作れるのではないかと思い相談したところ、HRエージェント事業で活動する営業やキャリアアドバイザーの方々が協力してくれることになりました。

(左より)動画の企画・製作を担当した、HRエージェント事業の元 美紀、清水 俊佑、まなび事業の松尾 明莉

(左より)動画の企画・製作を担当した、まなび事業の松尾 明莉、HRエージェント事業の清水 俊佑、元 美紀

就職支援の実績が豊富な『リクルートエージェント』と協働で、生きたノウハウを注入

― 清水さん、元さんは有志でこの企画に参加されたそうですね。なぜ手を挙げたのですか。

清水: 私は元々中学校の教員。以前からキャリア教育の必要性を感じて、学校に出向いた出張授業などを行っていました。今回は動画教材の開発ということで、よりたくさんの高校生に届けられる手段だと思ったのが参加理由のひとつです。また、私は転職希望者を支援するキャリアアドバイザーを務めていますが、高卒で就職した方の中にはキャリア観が曖昧なまま1社目を選択し、やっぱり違うと転職相談に来る人が少なくないと感じます。自分が本当にやりたいことを見つけて後悔のない就職をしてほしいという思いもあって、このプロジェクトに参加しました。

元: 私も清水さんと近いですね。普段接している高卒で就職した方に最初の就活時の話を聞いてみると、大学生の就活ほど業界研究や自己分析をせずに就職先を決めている人がほとんどですし、高校生の場合は同時期に複数の企業を受験できない「1人1社制」や、学校に届いた求人票の中から選ぶ形式など独特のルールが存在し、そもそも選択肢が少ないようです。そのため、周囲に勧められるまま何となく就職し、実際に働き始めてから「これは私のやりたい仕事じゃない」と気づいて後悔している人が多い。社会に出る一歩目でつまずいてしまったことで、働くこと自体に絶望している人や、大人が信用できなくなったと話す人もおり、人材事業に携わる者として悔しい気持ちもあったんです。

ゲーム感覚で楽しく学ぶ【スタディサプリ for SCHOOL】就職者向け動画の概要編

ゲーム感覚で楽しく学ぶ【スタディサプリ for SCHOOL】就職者向け動画の概要編

― まなび事業×HRエージェント事業で協働したことは、動画コンテンツにどう影響したのでしょうか。

松尾: 先ほど清水さん元さんが話してくれたような、高卒で就職した後に実際に起きている事実を踏まえて製作できたのが良かったです。私たちまなび事業や先生たちは、高校生活の中で起きる出来事には知見がありますが、生徒が卒業した後のことまでリアルに知っているわけではない。社会に出てどんな悩みを抱えているのかを具体的に知っている人が教材作りに参加してくれたことで、伝えるべき内容がクリアになったと感じました。

また、面接の仕方や求人票の見方などのノウハウ動画に『リクルートエージェント』のキャリアアドバイザーが登場してくれたことには大きな意味があると思っています。実は以前より「人材サービスの歴史が深いリクルートならば」と、キャリア教育に関する期待を学校からいただくことも多かったんです。今回、就職支援のプロの視点が入ったことで、リクルートならではのコンテンツにできたと思います。

― 具体的には、HRエージェント事業のどのような知見が反映されたのでしょうか。

元: 私は「求人票の見方」動画を担当したのですが、普段接している社会人の方の「転職を考えたきっかけ」を参考に解説動画を作っていきました。というのも、「給与や休日が自分の認識と違った」といった理由も多く、求人票(採用条件)の内容を正確に理解していなかったことも要因のひとつだと見えていたからです。実際の動画では、「求人票に記載されている給与額は実際に支給される手取り額ではない(社会保険料などが控除される)」といった、高校生にはまだなじみがなく勘違いしやすい点を丁寧に解説するように工夫しました。

清水: 私は、自分に合った仕事探しをするための動画を担当。普段から自分のやりたいこと・得意なことが分からないと悩んで相談されるカスタマーにも接しているので、そうした人たちと面談するときのノウハウを高校生向けの動画でも活用しました。具体的には、自分の好きなことにフォーカスしながら自己理解を進めるアプローチ。HRエージェント事業で社会人向けに実践している王道の手法を高校生向けに分かりやすくかみ砕き、ゲームをモチーフにした動画に仕立てていきました。

【スタディサプリ for SCHOOL】就職者向け動画のノウハウ編で求人票の見方をわかりやすく解説

【スタディサプリ for SCHOOL】就職者向け動画のノウハウ編で求人票の見方をわかりやすく解説

進学も就職も。自分の意思で後悔のない選択ができる世界をつくりたい

― 動画は2023年5月にリリースしています。その後の反響はどうですか。

松尾: 同年9月までの約4ヶ月で約80校の授業で採用され、動画で学んだ高校生からは、「もっと仕事のことを知ろうと思った」「私も好きなことや得意なことを軸に仕事選びがしたい」といった感想をいただいており、自分らしい就職の実現に向けて前向きに準備を始めた人もいる様子。先生たちからも、「HR領域のノウハウを活かしたリクルートらしい動画」だとご評価いただいています。

― HRエージェント事業のふたりは、まなび事業と一緒にキャリア教育の教材を開発した今回の経験を、どう受け止めていますか。

元: 高校生の就活に正面から向き合ったことで、普段の業務で接する高卒で就職した方に対する理解度も一段上がった気がします。彼らが転職をしたい動機には、高校生の時点で将来のキャリアを真剣に考えられていないことや、自分のキャリアを見据えた仕事選びができていないことが少なからず影響している。そうした背景を理解したことは、キャリアアドバイザーとして求職者一人ひとりの気持ちに寄り添い共感していくためのヒントになった感覚があります。

清水: 高校現場でのキャリア教育は、職業を知ったり、進路を選択したりすることに偏りがちな状況があるようにも思いますが、本来キャリア教育は、職業選択や進路選択に限ったものではなく、社会人になるために必要な基礎力の装着も含まれたもののはず。高校生活をどう過ごし何を学ぶのかを、生徒一人ひとりが見つけられること。そういった、社会人になるための基礎力の装着に向けた啓発や授業づくりといったことも、いつか手掛けてみたいです。

― 最後に、高卒就職という領域で社会に貢献したいことを教えてください。

松尾: 高卒の就職は、大学・専門学校への進学や、大卒者の就職よりもミスマッチが多い領域だと私は捉えています。長年続いている就活ルールが時代にマッチしているのかといった点も含め、実は検討すべきことが多い領域。今回HRエージェント事業と協働する中で、参加してくれたHRエージェント事業の営業からは、「高卒者を新卒で採用したい企業ありますよ」という声も聞こえてきており、新たな仕事探しの選択肢の提供など、私たちができることはまだまだありそうです。

一方、本質的に向き合うべきことは、高卒就職に閉じた問題ではないとも思います。今は転職も当たり前ですし、誰もが自分の意思で自分の人生を決めてよいし、何度でも挑戦してよい時代。前向きに自分らしく人生の決断をしていくことの素晴らしさは、リクルートが事業領域を超えて世の中に伝えたいことでもあるので、これからもリクルートのいろんな組織との掛け算で、高校生に多様な価値を届けていきたいです。

※本動画は、『スタディサプリ for SCHOOL』を導入頂いている学校限定で視聴が可能です。
スタディサプリ学校向けサービス | Studysapuri

(c) Recruit Co., Ltd.