今の時代に不可欠。手間と努力で「情報を誠実に伝える」 JAXAの姿勢に学ぶこと
宇宙に関する理解を深めるJAXAの広報が一番大切にしているのは情報を誠実に伝えることだった。SNS時代のビジネスマンには不可欠な誠実さを読み解く。
宇宙航空研究開発機構、通称JAXA(Japan Aerospace Exploration Agency)。映画や漫画とのタイアップのイメージも強く、JAXAの広報部は宇宙のロマンを掲げた華やかさがあるように思えるだろう。しかし、その実は限られた資金の中でいかに効果を出すかという堅実なコスト管理と、国費を使う故の説明責任を果たす実直さを兼ね備えていた。広報部長の庄司 義和さんにJAXAの広報が目指すミッションや思いを伺った。
はやぶさの小惑星探査成功、東日本大地震時の地球観測衛星の災害対策貢献を経て、知名度・役立ち度は23%から89%へ。
JAXAは独立行政法人だ。民間企業と異なり売上を上げて規模を拡大するのではなく、国の予算を活用し、宇宙開発分野における日本の存在価値を高める必要がある。
現在のロケットや人工衛星は50年前から続けてきた研究や開発の成果だ。今現在も今後40年、50年先の未来に向け研究開発が進んでいるという。JAXA広報のミッションはこのように短期的な結果が出にくい事業への説明を丁寧に行い、国民の理解を得ることにあるという。
庄司 義和(以下、庄司) 「JAXAを『認知』し、事業内容を『理解』し、『支持』をいただく。この順番でステップアップしていくように施策を行っています。1,500億円もの国費を使い得られた価値を、国民の皆さんに伝えていくことがJAXAの広報の役目です。現在、JAXAの知名度は89%。JAXAが『社会や国民生活の役に立っている』と考えていただける役立ち度も89%まで達しました。この数値は米国航空宇宙局NASAとほぼ同じ水準で、ここ十数年の努力の結果です」
JAXAにとって、NASAは1つのベンチマークだ。いち早く宇宙開発に乗り出し民間も含め認知を得られていると思われがちなNASAだが、その実は地道な努力の積み重ねだったという。
庄司 「NASA長官を10年務めたダニエル・ゴールディンさんは『NASAの長官の仕事というのは、1年間に全米50州を回って、皆さんに語りかけ理解を得ることだ』とおっしゃいました。この言葉は私の原点です。NASAは年間約2兆円の予算を使っていますが、その費用に対する実績と信頼は世界も認めるところでしょう。NASAですら、地道に活動しているわけですから、我々も地道に真面目にやっていかなくてはなりません」
JAXA発足の翌年の2004年から認知度を含めた調査を行っているが、当時の知名度はわずか、23%ほどしかなかったという。やらなければいけないことは膨大にあったはずだ。年々さまざまな施策を打ち、数値は徐々に向上していった。なかでも結果に寄与したのは小惑星探査機『はやぶさ』と東日本大震災での対応だった。