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ボストン コンサルティング グループ 日本代表 杉田浩章さんのリクルート考

Recruit , オープンイノベーション , ビジネススキル , 事業推進

リクルートグループは社会からどう見えているのか。
私たちへの期待や要望をありのままに語っていただきました。

リクルートグループ報『かもめ』2017年9月号からの転載記事です

未来への使命感こそ最大の強み 次の進化へ向けてさらなる脱皮を

リクルートさんとの最初のプロジェクトは2001年。かつて所有しておられた岩手県の安比高原リゾートで行われた役員合宿のサポートから始まりました。ネット時代におけるリクルートにとっての脅威と戦略がメインのアジェンダで、我々はファシリテーションを担当させてもらいました。その後も、リクルートエイブリック(現リクルートエージェント)のビジネスモデルを抜本的に変えていくプロジェクトや、『じゃらんnet』初期におけるポジショニングと成長戦略、住宅領域のカウンタービジネスの立ち上げなど、本当にさまざまなプロジェクトのお手伝いをさせてもらいました。

長らくリクルートを見てきたなかで感じる強みはいくつかあります。まずは、使命感に近い思い切りのよさ。世の中の変化を捉え、将来の脅威に対して自分達が作ってきたものを守るのではなく、時に自分達自身をディスラプトすることも厭わない。放っておくと誰かがやるのであれば、自分達がリードしていくんだという使命感です。じゃらんnetにおける紙からネットへのシフトがまさにそうですよね。当時の紙媒体の広告単価の高さと比較すると、ネットの手数料は、収支計算すると会社がつぶれてしまうほど劇的にデフレを起こすものでした。それをロングテールの顧客×カスタマーのマッチング総量を上げることで収益を維持しながら構造転換するという方法を取り、10年でやり切った。

目の前に大きな「不」があり、カスタマーが本来あるべき本質的な機会提供を得られていないのであれば、それを提供することが世の中を進化させ、良くする。それを真剣にやり続けることがリクルートの介在価値であり、世の中における存在意義である。そして、結果として収益が出るようになっている。使命感だけでなく、収益を生み出す仕組みをセットで考えている。この突き詰め方がとてもユニークで面白い企業だと思います。

こうしたトランスフォーメーションを他の領域にも展開した訳ですが、その時、新しいものに対して、自分達を進化させる何かだとハラオチした瞬間にうまく取り入れていきますよね。たとえ、ほんの数日前から始めたことでも、まるで10年前からやっているかのような、いい意味での変わり身の早さがあります。あとは、圧倒的に「しつこい」。思考のしつこさ、問い詰め、追い込むしつこさ、成果が出るまでピポッドし続けるしつこさ、やり切れるまで継続するしつこさ。そして、このしつこさは、現場やマーケット、お客様に紐づいている。今でもこうした強みが維持され、むしろ強化されているといいなと思います。

今、日本企業の多くは従来のビジネスモデルから転換し、イノベーションを起こしていくことが求められていますが、これまでの物の考え方やビジネスモデルから脱却できずに苦しんでいます。今回書籍執筆のお話をいただいた時、リクルートの物の考え方や価値観を体系的にまとめて世に出すことは、こうした状況をブレイクスルーするヒントになるのではないかと思いました。つまり、これまで申し上げたリクルートの使命感や強みは、ごくひと握りの天才的な個人が持っているものではなく、明らかに仕組みや手法を通じて、誰もが価値創造することを動機づけられている。結果としてそれがカルチャーとなり、リクルートの成長につながっているということ。その背後には、一体どんなエレメントが関わり合い、循環し価値創造につながっているのか、これまでの事業創造の仕組みを整理し言語化することは社会にとっても、リクルートにとっても意義があると考えました。

これから国内、ひいては海外でさらなる成長を志向する時、重要なのはオープンイノベーションの捉え方です。昔からやってきた手法だとは思いますが、今改めて他力をどう活用しながら、向こうの土俵で何を作れるのか、相手の持っているアセットや強みを最大限に花開かせ、相手の土壌で新しいものを作るというオープンイノベーションの能力をもう一段高める必要があると思います。特に国内においては、ある程度型も豊富で、あらゆる領域においてガリバーなので、どうしても自分達の流儀や手法に引き込もうとする傾向があると思います。そうではなく、相手のアセットを最大限レバレッジするためにリクルートは何ができるのかを考える時に来ているのかもしれません。

日本社会を見ると、さまざまなアセット、特に人が持っている知恵や技術は大企業セクターのなかに埋もれていることが多いんです。そのなかには不活性化しているものがあるはずですから、それに対してリクルートが持つ手法や人を使って相手のポテンシャルを開花させ、活性化し再生できないか、そんな視点で新たなビジネスを作れないでしょうか。大企業の中に埋もれたアセットの稼働率を高めるという、リクルート流のシェアリングエコノミーとも言えますし、そうした考え方はグローバルに通じる可能性もありますよね。実際、Indeedやグローバル派遣におけるユニット経営のような成功事例もあるのですから、国内から次の新しい事業創造のモデルが出てくることを期待しています。

プロフィール/敬称略

杉田浩章

ボストン コンサルティング グループ 日本代表
東京工業大学工学部卒業。慶応義塾大学経営学修士)MBA)。株式会社日本交通公社(JTB)を経て現在に至る。消費財、自動車、メディア、ハイテク、産業財等の業界を中心に、トランスフォーメーション、グローバル化戦略、営業改革、マーケティング戦略、組織・人事改革、グループマネジメント等のコンサルティングを数多く手掛けている。著書に『BCG流 戦略営業』(日経ビジネス人文庫)、『リクルートのすごい構"創"力』(日本経済新聞出版社)、監訳書に『なぜ高くても買ってしまうのか』『なぜ安くしても売れないのか』(以上、ダイヤモンド社)などがある。

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