Menu

シェアする

保存する

創業からわずか10年弱。新素材LIMEXが、国内外で圧倒的な成果を上げ続ける理由

ものづくり , アイデア , イノベーション , サステナビリティ , スタートアップ , 事業推進 , 新規事業 , 企業とイノベーション

文:葛原信太郎 写真:須古恵

時代と熱意を一致させる力、世代を超え協働する組織、圧倒的速度意識——わずか10年弱で急成長を挙げた新素材メーカーは、単なるスタートアップでは無かった。

株式会社TBMは、2011年の夏に創業した新素材メーカーだ。石灰石を原料とする紙とプラスチックの代替素材「LIMEX」を武器に、ビジネスとサステナビリティを両立し、日本だけでなく世界でも加速度的に成長を遂げている。全国の「吉野家」のメニュー表や東京マラソンのマップ、NTTコミュニケーションズ・住友生命・スノーピークなど2,500社以上の名刺などに採用され、私たちに身近で活躍している。2018年には、伊藤忠商事、凸版印刷、大日本印刷などとも資本業務提供を発表した。

TBMはどのように成長を成し遂げているのか、COOの坂本考治氏に話を聞いた。

世界で求められるサステナビリティ。LIMEXは時代とマッチした

TBMの主力商品「LIMEX(ライメックス)」の原材料となる石灰石は、世界各地で埋蔵量が豊富で、日本でも100%自給自足できる。TBMでは、2014年に国内特許を取得し、現在は世界40か国以上で出願、日中欧米を含む30か国以上で登録が完了。日本発の技術として、輸出し、世界で当たり前に使われる素材をめざしている。

同社取締役COOの坂本孝治氏は、前職のヤフージャパン時代にアメリカの子会社設立に従事。シリコンバレーのスタートアップ企業の発掘に取り組んだ経験を持つ。2016年からTBMの社外取締役として海外進出を支援し、2018年6月からはTBMに専念しているという。

坂本氏は、シリコンバレーで世界最先端のスタートアップを数多く目にしてきた。その経験の中で、企業が圧倒的なスピードで成長するためには一定の条件があることに気づいたという。

「僕が重要だと思ったのは、運と経験と創業者の熱量の対象がマッチするかです。いくら創業者の熱意が高くても、思いつきでスタートしタイミングが合わず失敗するケースは多い。逆に、時代に合わせてサービスを設計したものの、創業者の気持ちが高まらず失敗するケースも多く見てきました。様々な試行錯誤の中で自分が高い情熱を注げるサービスや製品を探し当て、それが時代にピッタリと合ったとき、そのビジネスは圧倒的な成長を成し遂げるのではないかと考えています。TBMはそれに近い状態にあります」

坂本孝治さん

LIMEXが挑むのは環境に対する課題だ。社会的にもこの潮流は大きくなりつつある。

2018年6月、ヨーロッパでも有数な機関投資家リーガル・アンド・ジェネラル・グループは、環境保護策の甘さを巡る懸念を理由に、日本郵政や、SUBARUなどの全保有株を売却したことが報道された。欧州委員会は2030年までに使い捨てのプラスチック包装を域内で無くし、すべてを再利用または素材としてリサイクルすることを目指す目標を打ち出している。

「10年前であれば、LIMEXのニーズはそれほど高くなかったかもしれません。サステナビリティが求められる現在だからこそ、石油樹脂を減らし、開発に水を使わないLIMEXの特性が活きています」

LIMEXは、シート状に加工することで紙のように印刷や書くことができ、ペレット状に成形することでプラスチックのように様々な立体物をつくることもできる。それらを回収しまたペレットにすることで、再加工できるという特徴を有す。

「LIMEXはリサイクルして、継続的につかえるものを生み出せる"素材"です。例えば、飲食店ではメニュー表をLIMEXでつくっていただくとしましょう。メニューは定期的に変更されますから、そのたびに変更が必要です。一時的にしか使われなかったメニュー表は、トレイや什器としてアップサイクルできる。これはLIMEXの強みです」

アップサイクルとは、従来から行なわれてきたリサイクル(再循環)とは異なり、単なる素材の原料化、再利用ではなく、元の製品よりも価値の高いモノを生み出すことだ。紙の場合、汚れや衝撃に弱く、使い捨てか再生紙としてリサイクルが限界だ。一方、LIMEXは紙と比べると長期間の使用に耐えうる。LIMEXは、紙の代替品として使われた後、アップサイクルし、プラスチックの代替品へと作り替えられる。

時代は、環境への貢献を求めている。LIMEXは、その世界的なニーズに応えているのだ。

提供:TBM

提供:TBM

若手とシニアの協働、スピード感で経験を促進し、事業と時代をマッチングする

TBMが、LIMEXという素材を生み出し、工場を立て、製品化し、日本だけでなく世界で販路を広げるまで、わずか4年。

環境問題の解決が世界的な課題となり、企業にも積極的な姿勢が求められるという時代背景や、紙とプラスチックの代替品としてユニークさがあるとはいえ、素材メーカーとして4年でここまで成長できるのはかなりの特殊ケースだ。

シリコンバレーで数多くのスタートアップを目にしてきた坂本氏の経験も十分に活きているはずではあるが、その成長速度の背景には何があるのか。

坂本孝治さん

坂本氏へのインタビューを進める中で、TBMの圧倒的な成長につながる2つの特徴を見出すことができた。

1つは、一般的なスタートアップと比べて社員の年齢層が幅広いことだ。若い層だけでなく、40代、50代のビジネス経験の豊富なベテラン層が目立つ。同社のウェブサイトにも「年齢も20代~80代と幅広く、若手とシニアが協働して会社を創り上げています」と記載されている。

「インターンの大学生から90歳の会長まで、とてもフラットにコミュニケーションをとりながら常に挑戦を続けています。お互いに敬う気持ちは持ちつつ、意見や発言権、チャンスは平等にある。ものづくりにはシニア・ベテラン層の経験や技術、若手の新しいアイデアや時代の最先端の知識、両方が必要不可欠です。特に、シニア・ベテラン層の長年の経験や勘は、若手が持ちえない。若手からシニアまで揃った幅広いスタッフが、貪欲に仕事に没頭する。これが私たちの強みです」

もうひとつはスピードへ非常に強い意識を持つ文化だ。「GoogleやFacebookなど、シリコンバレーで見てきた圧倒的な成長を遂げるスタートアップは、他の強豪と比べて決して技術的なアドバンテージがあったわけではない。彼らが持っていたものは、スピードだ」と坂本氏は語る。

「LIMEXもものすごくずばぬけた技術ではないという評価をいただくこともあります。それに怯むことなく、どんどん使ってもらい、改善していく。そのサイクルを加速させることで、事業の成長を速めます」

同社のスピードへの意識は、その営業手法にも表れている。多くの提案において、100%のものを時間をかけて出すのではなく、80%の仕上がりでもいいからすぐに出すことを大切にしているという。

「クライアントへ提案する際、多くの人は提案が完璧になってからクライアントに会いに行きます。でも、我々はそれでは遅い。まずクライアントの元に赴き、僕たちが今できることを全部出す。そして『こんなこともできます』『あんなこともできそうですね』と、クライアントの将来像のなかで役に立てる様々な場面をプレゼンする。最終的には、具体的に今すぐ作れる製品に落とし込みつつ、その後の展開や発展のイメージを共有する。手元は押さえつつも、共に未来を描くスタンスを取っています」

問い合わせへの返答にも、即レスポンスできるように社内の仕組みを整備している。

「国内からの問い合わせに関しては、原則として1時間以内に連絡をして、ご要望を伺う仕組みをつくっています。問い合わせいただいた瞬間が、製品に一番興味があるタイミングです。1日過ぎれば忘れられる可能性もありますし、問い合わせを送信したタイミングなら、席についている可能性も高い。100%の答えでなくても、まずはお問い合わせに対して感謝を伝えて、コミュニケーションを深めていけばよいのです」

坂本孝治さん

事業と時代のマッチングが背景にありつつ、圧倒的な速度を意識するカルチャーを持つ。創業者が思い描く未来を、トライアンドエラーを膨大に繰り返すことで時代との整合性が取れていくのではないだろうか。

プロフィール/敬称略

※プロフィールは取材当時のものです

坂本孝治(さかもと・こうじ)

株式会社 TBM 取締役 COO
貿易を中心とした従来の商社ビジネスに憧れ、伊藤忠商事に勤務したが、インターネットの誕生により、事業やサービスを産み出す業務を経験。その後、エキサイト株式会社に転籍し、新規事業の立ち上げを中心に上場を経験した後、代表取締役に就任。
前職のヤフージャパン株式会社では、ECや課金サービスの責任者を担った後、ヤフージャパン株式会社の100%子会社をアメリカに設立し、社長に就任しシリコンバレーで活動。シリコンバレーでは世界中の企業がシリコンバレーに集まり切磋琢磨しながら、そこから世界中の市場に挑戦し、成長していく案件を数多く見た中で、日本企業、日本のベンチャーが世界に挑戦し、世界市場で活躍する事に、自身も挑戦したいと考え、TBMに入社。2016年から社外取締役として海外進出を支援していたが、2018年6月からはTBMに専念。

関連リンク

あなたにおすすめの記事

最新記事