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先天性の障がいがあっても馬術で活躍できることを見てもらいたい

2020年09月14日

先天性の障がいがあっても馬術で活躍できることを見てもらいたい

日本パラ馬術界初のメダルを狙い結果を残すことで、一日でも長く選手でいられたら

稲葉 将 <INABA SHO>
出身地:神奈川県横浜市
生年月日:1995/5/23
障がいの種類:脳性麻痺による両下肢麻痺
競技名:パラ馬術

【競技実績】
 ●日本ランキング2位
 ●FEI世界ランキング(グレードⅢ) 26位
 ●強化指定選手

小学生の時は少年野球のチームに所属。リハビリを兼ねて始めた乗馬

─ 稲葉さんは、どんな経緯で馬術を始めたのですか?

稲葉さん(以下、稲葉):小学生の頃は少年野球のチームに入っていました。中学に入るころ、一緒にやっていた仲間の体格が大きくなり同じように練習ができなくなってきたので、新しいスポーツを始めてみようと思っていたら、母が家から通える乗馬クラブの記事を見つけてくれたんです。馬に乗ることは股関節のリハビリになるし、動物と触れあう事でリラックス効果もあるので、「行ってみない?」と誘われたのがきっかけです。 身体を動かすことが好きだったので、中学も高校も体育の授業はできる範囲で皆と一緒にやっていました。野球をやめた後も、土日に友達を集めて野球したりもしていました。

─ 最初から馬や馬術に興味を持っていたのですか?

稲葉:いえ、実はそうではないんです(笑)馬は普段関わる機会のない動物だし、大きいし、乗ってみたら目線が高くて怖かったので、正直に言うと「じゃあ来週からやってみよう!」という気持ちにはなりませんでした。本格的に始めた、"ここ"というタイミングははっきり覚えていないのですが、月に1度通っていたのが週1回になり、それが週2回(土日)になって、長期休みに一日おきに通うようになって、、、自然にという感じでした。

─ 競技として"馬術"を始めたきっかけは何だったのでしょうか?

稲葉:ここに来てからは、最初から変わらずほぼ週5(水~日まで)で練習させてもらっています。16時が馬たちの夜のエサの時間なので、9時前から15時ぐらいまでクラブにいます。1日に多ければ4頭ぐらい乗っていますね。動物相手であまり長い時間は乗れないから、1頭につき30~40分ぐらいでしょうか。僕は自分で動けるので、馬に乗るだけではなく乗る前の準備や乗った後の手入れも自分でしています。馬と一緒に過ごす時間をできる限り多くしたいと思って気を付けています。 僕は先天性の脳性麻痺で、両下肢障がいを持っており、競技はグレード3になります。持っている障害の度合いによっても、どれぐらい練習できるか異なるのですが、今は僕自身しっかり練習できていると思います。振り返ってみると、練習量の多さが短期間でここまで成績を出せている所以かなと思っています。

週5日、9時~15時まで、みっちり練習。できるだけ多くの時間を馬と一緒の時間を過ごすため、準備や手入れも自分でやる

─ 毎日、どんな練習をしているのですか?

稲葉:ここに来てからは、最初から変わらずほぼ週5(水~日まで)で練習させてもらっています。16時が馬たちの夜のエサの時間なので、9時前から15時ぐらいまでクラブにいます。1日に多ければ4頭ぐらい乗っていますね。動物相手であまり長い時間は乗れないから、1頭につき30~40分ぐらいでしょうか。僕は自分で動けるので、馬に乗るだけではなく乗る前の準備や乗った後の手入れも自分でしています。馬と一緒に過ごす時間をできる限り多くしたいと思って気を付けています。 僕は先天性の脳性麻痺で、両下肢障がいを持っており、競技はグレード3になります。持っている障害の度合いによっても、どれぐらい練習できるか異なるのですが、今は僕自身しっかり練習できていると思います。振り返ってみると、練習量の多さが短期間でここまで成績を出せている所以かなと思っています。

─ お休みの日はどう過ごしていますか?

稲葉:自宅がある神奈川県に戻っていますが、最近は自由な時間が全然ないんです(笑)休みという休みがなくて・・・月に1回は、会社へ活動報告をしにいったり、後援会の方と一緒に競技や僕自身を知ってもらうための広報活動をしたりしています。

─ 馬術は、選手だけでなく馬も出場権を取る必要があるんですよね。

稲葉:はい。馬と乗る人とセットで規定を超えなければいけないんです。 先日、強化指定選手5人でオランダに試合に行ったのですが、その際は協会がリースして下さった馬に乗りました。その馬とは初出場だったので、決まった点数を超えて出場権をとらなければならないんです。その馬でも無事に出場権が取れました。 今僕は、4頭で出場権を持っています。最終的には一人一頭としか出られませんが、その時一番体調がよく成績が取れそうな馬を選びます。生き物相手なので、体調やケガもありますし、選択肢が多い方が良いんです。

─ 日本と海外のパラ馬術に違いはありますか?

稲葉:馬術はヨーロッパが主流で、イギリスやオランダ、ドイツが競合と言われています。海外の方が馬が生活に身近で、特にヨーロッパは競技人口も多く、馬のチョイスも多いです。

─ 競技を行う上で、どんな難しさを感じますか?

稲葉:先天性の障がいがあると、正しい体の動かし方がわからない中で競技をしなければなりません。後天的に障がいを持った選手は、元々馬に乗っていれば正しい体の動きを知っていて、どうしたら馬が動くか熟知されている方もいます。競技の成功のイメージがある選手とない選手ではスタートが違うと感じます。なので、どの競技でも当てはまることかもしれませんが、「先天性の障がいがあってもできる」という事をみてもらえたらなと思っています。

高価な用具たち。練習量が多いと、どうしても消耗が速くなる

─ 今、受けているサポートはありますか?

稲葉:協会からは強化選手費を頂き、障がい者アスリートとして企業にも雇用されているのでお給料も頂いています。ですが、馬術は今クラブに預けている2頭の馬のエサ代やケア代、試合に出る際のエントリー代や馬を運ぶ費用などとてもお金がかかります。自費で試合に出た月は、馬を預ける費用とでその月のお給料はなくなってしまいます。これまで2年半、なぜやってこられたのか不思議なぐらいです(笑)

─ 障がい者スポーツへの支援は行き届いていないと感じますか?

稲葉:馬術は、決してメジャーなスポーツではないですし、仕方ないのかなと思う部分もあります。アスリートは、最終的には絶対に結果を見られます。自分が先頭に立って、世界で通用する結果を残せれば、環境を変えるチャンスも増えるんじゃないかなという思いでやっています。まずは競技を知ってもらいたいですね。

僕の場合は、馬術にこれだけお金がかかるという事を知らずに始めました。馬を購入するのにかかる金額さえも・・・知らなかったんです。知らないからこそ突っ込めた部分だったのかなって。知っていたら、ここまで来られなかったと思います。僕はいつも、入り口は流れに身に任せています。純粋にやってみたい、やったら面白そうだな、という想いを第一にやってきました。入ってみて、どうするかは後で考えています。

─ 今後さらなる成長のために、どんな支援が必要でしょうか?

稲葉:用具は消耗品で一つひとつが高価なので、少しでも購入に充てられる費用があると嬉しいです。例えば、練習用のズボンは1着3~4万円、長靴(ちょうか)もオーダーになるので10万円ぐらいします。僕は歩くときにどうしても足を引きずってしまうので、なるべく長靴を履いて歩かないようにしているのですが、それでも消耗が速いです。他にも競技用のジャケットや手袋、ヘルメットなども、練習量が多いとすぐに消耗してしまうんです。

─ リクルートキャリアのアスリート応援プロジェクトからの支援も決まりましたね

稲葉:チャンスが確実に拡がる、選択肢が拡がる取り組みなので、僕も含めて選手にとってすごく良いことだと、ありがたいことだと思っています。

自己ベストの演技で、メダルを狙えたら

─ 今後の目標を聞かせてください。

稲葉:まずは次の大きな世界大会で、フリーに出るための8名に残りたいです。それには自己ベストの点数が必要なので、それに向けて準備しています。東京での開催なので、メダルも狙えたらって思っています。今後の試合で少しずつ点数をあげて、少しずつ自己ベストを更新し、本番で一番良い演技ができればと思います。

その後は、できる限り選手として長くやっていきたいというのが一番にあります。そのために、どうしたらいいか考えて動いています。辞めた後のことは全く考えたことがないですね。馬術は現役の選手で60歳を過ぎた方もいますし、同じ障がいの方もいます。元JRAの騎手さんがいたり、大学生もいたり、色々な方がいるんです。やれる環境があれば、ずっとやっていきたいと思っています。

※インタビューは2020年2月に行われました。 

パラ馬術をVR(360°)映像で体感してみよう!

障がい者スポーツの体験会は、毎回、体験する人たちが熱を帯びる瞬間に立ち会えるイベントです。ですが、場所も、器具も、アスリートも、時間も、さまざまな制約があり、体験するチャンスは限られています。

もっと、多くの方がアスリートの想いに触れることで 障がい者スポーツのワクワク感に出会ってほしい。

唯一、動物とともにする競技。 互いにコンディションを合わせる難しさを楽しみ、最高の演技を。 馬と人が競演するパラ馬術。その魅力をVR(360°)映像にしました。 お手元のスマホから、ぜひ体感してみてください。

アスリートの想いを知り、障がいの有無にかかわらず一人ひとりが活躍する社会を。 リクルートでは障がい者理解を広げる活動「パラリング」を推進しています。

※スマートフォンのYoutubeアプリで再生すると、専用ゴーグルを使わずにVR(360°)映像が閲覧できます

「アスリート応援プロジェクト」の活動

アスリート応援プロジェクトの概要

 アスリート応援プロジェクト -挑戦への壁を壊せ- こちら

アスリートインタビュー

●黒川 真菜:ボート
 障がいがある人もスポーツができることを自分自身が証明したい こちら

●成嶋 徹:パラローイング
 「超多様性」の実現に向けてパラローイング選手、成嶋徹の挑戦 こちら

支援レポート

●一般社団法人スポーツ能力発見協会(DOSA)理事長インタビュー
 障がいを持った方々がスポーツに取り組める"きっかけ"づくりをしています こちら

●障がい者アスリート支援実施のご報告 こちら

●支援企業からのエール こちら

パラリングとは?

「パラリング」とは「パラダイムシフト(考え方の変化)」と「リング(輪)」の造語で、障がい者理解を広めていくリクルートの活動です。リクルートは障がいの有無に関わらずそれぞれが活躍できる社会の実現を目指して活動をしています。

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