グローバルマーケター 射場 瞬さんのリクルート考

グローバルマーケター 射場 瞬さんのリクルート考

米国も“Man and Machine”へ回帰。本質的な問いを面白がり、データと人で心を動かし続けて欲しい

リクルートグループは社会からどう見えているのか。私たちへの期待や要望をありのままに語っていただきました。

リクルートグループ報『かもめ』2022年3月号からの転載記事です

日米に数年のタイムラグ、ラグのないリクルート

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米国に渡って、新規事業開発、マーケティング、データ活用を専門に、米国企業の本社で働いてきました。日本コカ・コーラ副社長として帰国した頃、当時リクルートにいらした須藤憲司さん(現 株式会社Kaizen Platform代表取締役)と知り合いました。

その後、IBAカンパニーを創業し、2013年頃に須藤さんからリクルートのデータ分析部門の方や、新規事業開発部門の方をご紹介いただき、米国でのIT企業の実情やスタートアップの情報を提供させていただいていたのが皆さんとの出会いでした。

米国の技術、ビジネスやサービスモデルが日本に上陸して浸透するのは数年遅い。米国での成功をみて、この時差を活かしたタイムマシン経営をすることが日本企業の一般的な考え方のように思います。

ところが、リクルートの皆さんはアンテナが鋭く、米国でトレンドになる前に着目。兆しや先端企業で試されていることについて、Why(なぜそれが起きているか)・How(具体的にどう実行できるか)という本質的な問いを投げかけてきます。それは私にとってもワクワク、ドキドキする問いでした。

こうした“深く具体的な情報”を依頼される際に備え、米国の専門家たちとの関係を築き、情報収集力を伸ばすことに注力してきました。振り返ると、リクルートの「問い」によってIBAは育てていただいたと感じています。

世界は“AIのみに頼る”から“Man and Machine”へ

世界の動向をみていると、データ活用の規制が厳しくなり、自社データ(First Party Data)がますます重要になっている。これは、リクルートにとって追い風。Indeedをはじめ、最先端のデータ分析技術やAI活用を追い続けていることや、現場の洞察力とデータがより強く結びついていることも大きな強みでしょう。

3年ほど前の米国では「今後のデータ活用は、AIが解決する」「PDCAを回して検証していれば、ユーザーや顧客に関する仮説も必要なくなる」という定説が根強かった。しかし、この2年くらい、“Man and Machine”を重視する方向に回帰しています。

つまり、ビジネス、ユーザー、顧客や自社ビジネスを深く理解する“人”と、データ分析を助けるAIやDeep Learningなどの“技術”の両輪で、Why(データの結果が生み出された理由)の仮説の精度を上げることが求められているのです。リクルートが一体となり、人の気持ちやぬくもりを理解できるデータを活用する時、さらなる成長が生まれると期待しています。

心を動かすことが、収益に。ブランドが価値を生み出す

データと人と向き合い、潜在的な望みであるインサイトにアプローチしていく重要性は、ブランドの世界でも同じです。大切なのは、誰にファンになって欲しいかを決めることだと思います。次に、その人たちを理解し、どうしたらもっと喜んでくれるかを突き詰めて考える。そうしたブランドの姿勢が、ファンたちの心を強く動かし続ける。

昨年6月に出版した著書『「嵐」に学ぶマーケティングの本質』にもあるように、「嵐」は国民的アイドルと言われていましたが、ファンクラブ会員は約300万人で、日本人口のわずか2%程度。米国で変革の成功事例に挙げられる、Tesla、Nike、Appleなども同様で、熱量の高いコアなファンを創ることに注力してきました。そうした熱量の高いファンが、ブランドのストーリーの語り部となり、ファンを介してブランドを成長させ、企業評価である株価も上げることになります。

本質的な問いから逃げず、軽やかにトランスフォーム

リクルートの方々と関わって約10年。その間、広告事業を軸に、グローバル、中小事業者の業務支援事業、金融事業などへと、変化・拡張する姿を見てきました。

一般的に、企業がトランスフォームする際には、“失敗したらどうしよう”という、リスクを先に考える重々しさが伴うのですが、私が一緒にお仕事をさせていただいたリクルートの方々は、リスクを理解していても明るく、変化に対して軽やか。ともすると自己否定になってしまうような「本質的な問い」からも逃げずに未来を議論し、100%の確信や情報がなくても、変化する方に向かう勇気と勢いをみせてくれました。

これからも、変化の速い世界のスピードを超える速さで、軽やかに変化し続けていって欲しいと思っています。

プロフィール/敬称略

※プロフィールは取材当時のものです

射場 瞬(いば・ひとみ)
株式会社IBAカンパニー 代表取締役社長

マサチューセッツ州立大学大学院でMA、ニューヨーク大学スターン経営大学院にてMBA取得。その後、約20年間一貫して、グローバルマーケットでの新規事業開発、およびマーケティング職を歴任。日本コカ・コーラ社(副社長、イノベーションヘッド)、FILAジャパン(日本代表)、アメリカン・エキスプレス(ディレクター)をはじめ、グローバル会社のアメリカ本社、アジア地域にて、戦略、新規マーケット参入、商品開発、及びブランドマーケティングのプロジェクトをリード。2010年にIBAカンパニーを設立。USの最先端技術と情報を活用して、日本企業のDXをサポート。技術分野で注力/注目しているのは、データ(分析と活用)、売る(D2C/流通/Retail Tech)、金融(仕組み、決済、Fintech)の3領域。

『「嵐」に学ぶマーケティングの本質』(日経BP)

『「嵐」に学ぶマーケティングの本質』(日経BP)

射場 瞬
定価:1,870円(税込)

2020年に活動を休止したグループ「嵐」を事例に用い、今必要とされる最新かつ実践的なマーケティングについて書かれた、著者の初の著書。ブランディングやマーケティングの本質を理解した「嵐」の細部までこだわった実例から、人の心を動かせるマーケティングについて学べる。

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