【Will-Can-Mustシート】リクルートの活用事例~メンバーの本当に実現したいことを対話する方法

【Will-Can-Mustシート】リクルートの活用事例~メンバーの本当に実現したいことを対話する方法

リクルートオリジナルの目標管理シートであり、自身の主体的な意志(Will)を目標に結び付ける、「Will-Can-Mustシート」。従業員一人ひとりがそのシートにどのように向き合い、どのような効果があるのかをインタビューする。第一回目となる本記事に登場するのは、2022年10月HRエージェント領域に新設された新潟拠点の責任者を務める、安井智起。Will-Can-Mustシートを活用し、コロナ禍の逆風にあっても業績を伸ばす組織づくりを実施。社内表彰に選出されたメンバーも多い。マネジャーとしてWill-Can-Mustシートをどのように活かしているのかを聞いた。

そもそも、Will-Can-Mustシートとは?

「一番上に」仕事で実現したい“Will”を書く

リクルートの目標管理シート「Will-Can-Mustシート」
リクルートの目標管理シート「Will-Can-Mustシート」

Will-Can-Mustシートは、リクルート独自の目標管理シートです。従業員は半期に一度Will-Can-Mustシートを記入し、上長との目標設定・振り返りに使用しています。

シートはおおまかに、本人が実現したいこと(Will)、活かしたい強みや克服したい課題(Can)、能力開発につながるミッション(Must)の3項目で構成されています。創業以来、暗黙知的に行われていた上長とメンバー間のコミュニケーションを形式知化し、現在の形になりました。

従業員一人ひとりが仕事を通じて実現したいこと(Will)を明らかにし、マネジャーとすり合わせ、その実現のために何ができるか、どのようなことができるようになる必要があるか(Can)を確認した上で、何をすべきか(Must)を考えるサイクルを半期ごとに行っています。

マネジャーの役割は「メンバーの成長支援」。メンバーの目が輝く瞬間がやりがい

―Will-Can-Mustシート活用の話に移る前に、安井さんがマネジャーの役割のなかで特に重視されていることを聞いてみたいです。

安井:自分の場合はメンバーの成長支援が一番大切な役割だと考えます。新潟の拠点に異動してもうすぐ1年が経つのですが、お客様理解や営業活動では、そのエリアを熟知しているメンバーには自分は逆立ちしても敵いません(笑)。

スキルフルなメンバーたちが各々の強みを活かしながら、ワクワクして働ける状態を作ることこそ、自分がマネジャーとしてやるべきこと。メンバー一人ひとりの仕事の動機付けを支援し、圧倒的な速さで成長し続けられる環境整備をすることが役割だと思っています。それが社会にとってもプラスになるし、結果として会社としての成果にも結び付くと考えます。

「その人らしい仕事との関わり方や、その人らしい成長の仕方を一緒に模索するのって、本当に面白いんですよ」と話すリクルート従業員・安井智起
「その人らしい仕事との関わり方や、その人らしい成長の仕方を一緒に模索するのって、本当に面白いんですよ」と話すリクルート従業員・安井智起

―ワクワクしながら働く動機付けと成長の関係について、もうちょっと突っ込んで聞いても良いですか?

安井:人にはそれぞれ、ワクワクする未来像があると思うんですよね。仕事を通してそれが実現したらと思うと心が躍り、頑張れることってありませんか? それがWillです。Willは100人100通りで、例えば「将来起業したい」といった自分のキャリアの達成だったり、あるセグメントで働くお客様が喜ぶ状態だったり、自分たちの住む地域のポジティブな状態だったりとさまざまです。Willというと少し難しく聞こえるかもしれませんが、自分が大事にしている価値観が表れていればどんな内容でもいいと私は考えます。共通していることは、その実現に向かう時には皆、エネルギーが出ること。今までにない挑戦をしたり、徹底的にこだわった仕事をしたりすることが自然とできます。そういった経験を積むことで、新しい価値観やスキルを身に着けるような成長が起きやすいと考えています。つまり、自分が何を成し遂げたくて仕事をするのか、働く理由の確立が成長の起点です。それが分かると皆、目が輝くんですよね。Will-Can-Mustシートを書くことは、その起点となるWill(仕事で成し遂げたいこと)を具体的に文章化する機会のひとつだと捉えています。

書き方で迷ってもいい。「仕事で成し遂げたいこと」を起点にキャリアと成長を描く

―なるほど~。でも、メンバーにはWill-Can-Mustシートをぽんと渡されても、仕事で成し遂げたいことをまだ書けない人もいますよね。そういう時はどうするんですか?

安井:まずは時間をかけて問いかけながら対話していきます。自分も中途入社してWill-Can-Mustシートを初めて書くタイミングがやってきた時、「そもそも何書いたらいいんやろ?」とフリーズしたんで、気持ちがよく分かるんです。Willの具体化にはかなり時間をかけます。

リクルート従業員の安井智起も中途入社した時にWill-Can-Mustシートの記入に苦戦したと話す
リクルート従業員の安井智起も中途入社した時にWill-Can-Mustシートの記入に苦戦したそう

安井:自分を一例にすると、日本の就業環境に問題意識があり、漠然と入社時点で「キャリア形成をもっと自由にしたい」という志はありました。ですが、働く一人ひとりの人がどうなると良いのかまでは具体的にイメージがついていなかった。そこをWill-Can-Must面談でマネジャーに問われて「人が仕事に自信や誇りを持って語っている時」が嬉しかった経験を思い出し、関わる相手のその表情のためなら頑張れると自覚しました。「働く人が思わず話したくなる仕事を増やしたい」とWillが定まっていったんです。

Tipsと言えるか分かりませんが、これからWillを言語化していくメンバーには「今まで仕事のなかで嬉しかった瞬間は何だった?」というテーマを起点に生い立ちまで深掘っていく対話をよくします。

―では、仕事で成し遂げたいこと(Will)が既に言語化できているメンバーには、どういう会話をするんですか?

安井:初対面の場合は徹底的になぜそのWillに至ったのかを理解しにいきます。まずメンバー全員分、過去全てのWill-Can-Mustシートは読みますし、経年で記載内容に変化があればその理由を聞きます。Willを設定するに至った経験を具体的に「何があったの? その時どう思ったの?」と掘り下げて、相手と同じ視界になるまで話を聞かせてもらっています。

~現メンバー・松成良洋より~

安井智起の現メンバー・リクルート従業員・松成良洋
安井智起の現メンバーのリクルート従業員・松成良洋

私はリクルートでの社歴もそれなりに長く、安井さんより一回り以上年上のキャリアアドバイザーです。安井さん着任後、Will Can Must面談は1時間×3回は開催した記憶です。「おじさんの半生を聞いて面白いんか…?」と半信半疑ながら話を始めましたが、しまいには中学校時代にまで遡り話をしました。自分の人生を追体験してもらったことで新たな意味づけを発見し、自分の人生の価値が変わったように思います。こちらを深く理解しようという熱意には驚くばかりです。一般的にベテランの成長支援は難しいものだと思うのですが、過去の経験が有機的に未来につながり、Willが確立されたことで、仕事がしんどい局面になった時も、実現したいことに立ち返り、もうひと踏ん張りできるようになりました。(松成良洋・リクルート HRエージェントDivision 新潟CAグループ Will「“地域で働く”を活性化させることで、顧客、事業、地域社会でなくてはならない存在となる」)

―そうやってメンバーが書いたWillへの理解を深めていくと、何が分かってくるのでしょうか?

安井:Willは2種類に分かれると思っています。本気でワクワクしているその人らしいWillか、周囲の期待で決めてしまったあまりその人らしくないWillです。前者なら次のステップであるCan(活かしたい強みや克服したい課題)の設定に進むのですが、後者の場合は、メンバーに本当はどう思っているのか確認しに行きます。「その人らしくいられる」ことは、これ以上ない価値だと思うからです。

~元メンバー・内山尋美より~

安井智起の元メンバー・リクルート従業員・内山尋美
安井智起の元メンバーのリクルート従業員・内山尋美

やっすん(安井さん)とは、1年ほど一緒に仕事をしました。私がチームのリーダーをしていた時に、マネジャーである安井さんとメンバーのWill Can Must面談に陪席したことがあります。Willが定まっていないメンバーに対して「何が実現できたら嬉しいのか? どういう自分だったら自分を誇れるのか?」を対話しながら引き出していました。個性あふれるWillが見つかると「それって〇〇さんらしさだね!」と誰より嬉しそうでした。一方、「1年後にリーダー、3年後にマネジャーを目指すと書いてあるけど本当かな? 日々の行動からは自分はそう感じられないシーンが多いよ」と、何となく決めてしまったWillに対しては、厳しく本気度を問う側面があるのも事実。やっすんの前ではメッキははがされ、熱意を受けて自分にまっすぐ向き合わざるを得ないんです。(内山尋美・リクルート HRエージェントDivision EMCCA1グループ・Will「(1)リクルートだから提供できるサービスを顧客へ届けたい、(2)それぞれの強みを活かし、不得手は補完し合い、組織全体で顧客への提供価値を最大化、仲間がいきいきと働く喜びを味わっているマネジメントを体現したい」)

安井:Willを言語化出来たら、その実現に向けたリクルートでの中長期的なキャリアステップを考えるのですが、自分とメンバーがお互いいくつかプランを考えて持ち寄ってすり合わせ、メンバー本人が納得のいくキャリアステップを具体化するようにしています。その後、Willが実現した状態から逆算して、活かしたい強みと克服したい課題の2点に関して能力開発テーマを決めます。その能力開発につながる仕事(ミッション)の認識をすり合わせながら設定し、日々の仕事が自分の目指したい状態につながる一歩になると実感するまでが私のWCM面談のやり方です。

―Willと、日常で意識する能力開発や任される仕事(Can・Must)がつながるように会話しながら設計していくんですね。確かに自分もマネジャーと当たり前のようにそういう会話をしていますが、よく考えると面白い仕組みですよね。

Will-Can-Mustシートはチームを強くする。仲間の強みを活かし、弱みをチームで補う関係性の土台を築く

—Will-Can-Mustシートをチーミングにも活かしていると聞きました。

安井:はい、Will-Can-Mustシートは相手の人となりが分かるのはもちろん、どんな原体験があり、その上で何を目指していて、今どんな成長課題があるのかを知ることができます。自分自身がメンバーの時、仲間と関わる時に「Will-Can-Mustシート見せて」と気軽に聞いて見せてもらっていました。

リクルート従業員・安井はマネジャーになって以降、メンバー同士でWill-Can-Mustシートを見せながらWillのストーリーを語る会を開催している。名前の部分は隠して、誰のシートか当てるクイズにすることも。
マネジャーになって以降、メンバー同士でWill-Can-Mustシートを見せながらWillのストーリーを語る会を開催したことも。名前の部分は隠して、誰のシートか当てるクイズにした。

—なるほど! マネジャーとはすり合わせるけど、一緒に働く仲間と見せ合うメンバーと見せ合う機会はそういえばなかなかありませんね。

安井:メンバー同士で見せ合うことは制度上必須ではありませんし、もちろん共有しなくてもOK。リクルートには他にも相互理解のためのさまざまな施策がありますから。価値観の理解を深めるための効果的なアプローチとして、仕事上のふるまいに直結するWill-Can-Mustシートをお互い見せ合うことは有効ではないかと思っています。

そして、強みや弱みをマネジャーだけが理解し支援するのではなく、メンバーで相互に理解し、支援し合うほうが当人の成長機会も増えると思います。自分の強みは頼られる機会も増えて伸ばせるし、弱みは逆に仲間がカバーしてくれる。そうやってチームとしての生み出す価値を最大化する環境を整えていきたいと考えます。

―最後に安井さんのWillを聞かせてください。

安井:自分自身のWillは実は入社した頃から大きくは変わっていません。「働く人が思わず話したくなる仕事を増やしたい」は自分が生涯をかけて向き合うテーマだと思うからです。ただ、年を重ねるに従いその範囲が広がり「日本を元気にしたい」という気持ちがより強くなってきました。自分がWill-Can-Mustシートを通じてメンバーに向き合うことで「毎日の仕事が楽しい!」と感じ、自律的に成長していける仲間をひとりでも増やす。その元気が、接点を持つお客様や日本中に広がっていけば、この上なく嬉しいです。

リクルート従業員・安井智起

プロフィール/敬称略

※プロフィールは取材当時のものです

安井智起(やすい・ともき)
リクルート HRエージェントDivision カスタマーサービス統括部 地域活性カスタマーサービス部 新潟CAグループ/クライアントサービス統括部 地域活性営業部 新潟RAグループ

2014年リクルートキャリアに中途入社。『リクルートエージェント』のキャリアアドバイザー、第二新卒領域やハイキャリア領域の転職支援組織のマネジメントを経験し、22年10月より現部署にてマネジャーを務める

最新記事

この記事をシェアする

シェアする

この記事のURLとタイトルをコピーする

コピーする

(c) Recruit Co., Ltd.