Z世代が切り取る地域の魅力。リクルートと学生が映像を創る9日間

Z世代が切り取る地域の魅力。リクルートと学生が映像を創る9日間

WOW! BASEは、リクルート人材開発室が主催する社会課題解決型プロジェクト。毎回、多様な社会課題をテーマに、Z世代である学生とともに、そのアイデアや感覚を活かした課題解決方法を模索している。今回は、内閣府でクールジャパン戦略を担当する知的財産戦略推進事務局と協働して、学生たちが日本の地域の魅力を世界に発信する動画制作を行うプログラム。

企画から現地取材、動画編集までの期間は9日間。24名の学生たちが6チームに分かれて、全国3地域で実施。2023年9月5日、リクルート本社内のアカデミーホールにて、内閣府の方々や動画編集のプロ、学識者、起業家などの講評者に向けて、最終プレゼンテーションと動画上映会を行った。

この一連のプログラムを担当したリクルート人事 人材開発室 企画開発グループ 小幡珠里に話を聞いた。

『クールジャパン動画制作プログラム~地域の魅力を海外に発信せよ』を担当したリクルート人事 人材開発室 企画開発グループ 小幡珠里が語る

『クールジャパン動画制作プログラム~地域の魅力を海外に発信せよ』の企画背景とは

―9日間のプログラム終了お疲れさまでした! 今回の企画のきっかけについて教えてください。

小幡:WOW! BASEは、学生や若い世代の方々のアイデアや視点をさまざまな社会課題解決に活かしていただくためのプログラムです。幅広い方にご参加いただき、リクルートとしても新しい視座を学ぶためにプログラムを企画運営しています。昨年度は、様々なテーマ・形式のプログラムを10件近く企画運営し、400名近くの高校生から大学生まで、バックグラウンドも幅広い学生にご参加いただきました。

今回の『クールジャパン動画制作プログラム~地域の魅力を海外に発信せよ』プログラムは、国としてクールジャパン戦略を推進されている内閣府知的財産戦略推進事務局の方々とのコラボレーションで実現しました。

日本には多様な魅力を持つ地域があります。観光としての魅力はもちろん伝統文化や食、工芸品など海外の方々にもPRしたい宝ともいえるものがたくさんがあります。

一方、若い世代を中心にSNSを通じて世界中と情報交換を行う時流のなか、「クールジャパンといえば、アニメ・漫画・キャラクター」という側面だけではなく多様な日本の魅力をうまく海外に発信できる方法を模索されているというお話を内閣府の方から伺いました。リクルートのWOW! BASEの枠組みで「Z世代との共創」をテーマにプログラムを企画できないかと丁寧に議論を重ねて、今回の企画実現に至りました。

―小幡さんは、入社以来一貫して人事領域で学生の方々と接してきたと伺っています。こうした、学生向け社会課題解決型プログラムを企画・運営するなかで、今回の企画の難易度はどうでしたか?

小幡:これまでインターンシッププログラムやWOW! BASEのプログラムを担当してきましたが、特に今回は「クールジャパン戦略の一環として行うこと」、「短期間での動画制作」、この条件のなかで幅広いステークホルダーを巻き込み、地域ならではの魅力を引き出していくことが難しかったですね。北海道・東川町、石川県・金沢/加賀市、宮城県・南三陸町の方々をはじめ社外講評者の方々など関係者がとても多いプロジェクトでした。参加者の学生の方々とは「中長期目線でどういう共創の形を理想とし、ビジョンを描いていくのか?」から一緒にすり合わせをし、「学生×地域・事業者の共創モデル」として挑戦させていただきました。また、「制作して終わりではなく発信までやってこそ意味がある」と目指すゴールを設定し、クールジャパン官民連携プラットフォームやWOW! BASEのサイト/YouTubeで世界に向けて発信するところまで挑戦しようという壮大なテーマに落とし込んだことは、私にとっても未知のスケールだったのでプレッシャーはありました。なので、先ほど、6チームのプレゼンテーションと制作していただいた素晴らしい動画上映会を終えて、本当にホッとしています。

事前レクチャ~最終プレゼンまでたった9日間! 参加者の学生と地域の関係構築がカギ

『クールジャパン動画制作プログラム~地域の魅力を海外に発信せよ』の9日間のプログラム内容と、現地入りして動画撮影をする参加者の学生たち(上:宮城県・南三陸町、下:石川県・金沢/加賀市にて)
『クールジャパン動画制作プログラム~地域の魅力を海外に発信せよ』の9日間のプログラム内容と、現地入りして動画撮影をする参加者の学生たち(上:宮城県・南三陸町、下:石川県・金沢/加賀市にて)

―先ほど動画を拝見しましたが、すごく面白かったです。そして感性に訴えかけるとても美しい映像ばかりでしたね。たった9日間で、しかもこのプログラムを通じて初めて出会った仲間とチームになって動画を作り上げるのは本当に大変だったと思います。事務局として、苦労した点や工夫した点はありましたか?

小幡:今回、実際の現地取材も含めての9日間。学生の皆様の貴重な時間を多くはいただけませんので、事務局側で支援することで短縮したり効率化できる部分は徹底的に支援する覚悟でプログラム設計をしました。

例えばチームビルディング。このプログラムで初めて会う方同士だからこそ、自分自身の「強み」やチームに貢献できること、目指す姿などを共有できるようリクルートのWill-Can-Mustシートをベースにアレンジして相互理解の時間を多めに取りました。また、事前課題のリサーチ、初日のインプット(クールジャパン戦略とは?、地域の魅力を言語化する方法論、動画制作のための構成原案や撮影マニュアルなど)、実質約3日の編集期間にサポートすべきことまで。とにかく考えるべきことが多く、プログラム実施前はドキドキでした。

でも、今回ご参加いただいた学生さんたちに集まっていただいた初日に、一人ひとりのお話を伺いながらそのみずみずしい感性に触れ、改めてコミュニケーション力やアイデアに動画制作を委ねたらきっと素敵なものができると確信できました。現地取材後に、構成案を話し合うミーティングでは、Z世代ならではの言葉で地域や取材協力いただいた事業者の方々の魅力が言語化されていてとてもワクワクしました。「海外のどのようなターゲットに、何を、どう伝えたいか」という軸を持って、熱心に語るその姿に頼もしさも感じました。

また、最終発表前日の分科会での試写会では、「さらにコンセプトを伝えるためには、こういう表現はどう?」などと、別のチームからの意見も活発にでて参加者同士の共創も体感できて、感無量でした。

『クールジャパン動画制作プログラム~地域の魅力を海外に発信せよ』の学生参加者の方々

―事務局側の工夫もいろいろとあったと思いますが、そのなかで一番大切にしたことはどんなことでしたか?

小幡:やはり動画撮影にご協力いただいた3地域、約20事業者の方々との連携でした。限られた現地取材の時間のなかで、それぞれの地域が持つ魅力をより深く理解し、それらを伝えるための撮影をスムーズにするために、事務局も事前に各地域にお邪魔してご協力いただく事業者様と丁寧にお話をさせていただきました。どの事業者様にも、参加者からの質問に対して飾らない地域の暮らしをベースにした素敵なお話をいただくことができ、温かく参加者をお迎えいただけたことが何よりも嬉しかったです。

参加者の学生の方々にも、事前に地域について調べていただき、動画のコンセプトや何を撮影するか、現地でどのようなインタビューをするかの計画を立てて現地取材に臨んでいただくようにプログラムのなかで準備していきました。ただ、事務局としては、やはり実際に現地で見たもの、感じたこと、地域の方々に直接お話を聞いて自分自身が伝えたいと感じたこと…を見つけて欲しいと思っていました。事前の計画とギャップがあればあるほど良い動画になるような気がしていて…。地域と参加者の共創のなかで生まれた熱い思いが、今回発表された1本1本の動画に命を吹き込むことができたのではないかと思っています。

最終発表会でのプレゼン&上映会を終えて気づいたこと

2023年9月5日リクルート本社内アカデミーホールにて、社外講評者の方々をお迎えして最終プレゼンテーションと上映会が行われた(写真右 講評者:株式会社Oyraa代表取締役社長 コチュ・オヤ様)
2023年9月5日リクルート本社内アカデミーホールにて、社外講評者の方々をお迎えして最終プレゼンテーションと上映会が行われた(写真右 講評者:株式会社Oyraa代表取締役社長 コチュ・オヤ様)
参加者の学生が制作した地域の魅力を映像にまとめた作品。内閣府クールジャパン官民連携プラットフォームのサイト上でも公開予定
参加者の学生が制作した地域の魅力を映像にまとめた作品。内閣府クールジャパン官民連携プラットフォームのサイト上でも公開予定

―実際に最終プレゼンテーションと上映会を終えて、どうでしたか?

小幡:まず、参加者の学生の方々から「個人制作と異なり、届けたい人がいて、テーマがあって、チームで動画制作をすることは初めて。試行錯誤をするなかで、成長を実感できた」「今後もプロジェクト型での制作に挑戦していきたいと思った」という声があり、本プログラムの経験からそれぞれが成長を感じていただけたことが何より嬉しかったですね。

動画について内閣府知的財産戦略推進事務局の方や講評者の方々からは、「どれも美しい映像で、それぞれの個性が出た切り口・表現。9日間で作ったとは思えない完成度だった」という感激の声をいただきました。また、「我々世代では理解できないような動画になるのかもしれないと思って覚悟していたが、Z世代が切り出した日本の魅力は、とても共感ができる普遍的なものだと再認識した。海外の方にもこの普遍的な魅力が伝わると思う」といった気づきの声もありました。その他にも「どの映像も、一番印象的だったのは、人の笑顔。地域の方々の魅力こそが、その地を訪れてみたいと感じる一番の魅力なのかもしれない」といったコメントも多くいただきました。

全体を通して、一番印象的だったことは現地の方との触れ合い。地域の魅力とは、景色や食、工芸品などのそのもの自体だけでなく、そのなかに息づいている伝統文化やそこに生活する人たちの息遣いなのかもしれません。そういう意味では、今回動画制作を通して、まさに地域の魅力の根幹に触れる機会となり、動画制作者だけでなくそれを見た方々にもその息遣いがダイレクトに伝わったことで心が動かされたのだと思います。

Z世代の視点やアイデアで社会課題解決を目指すことの意義とは

2023年9月5日リクルート本社内アカデミーホールにて、社外講評者、内閣府の方々をお迎えして最終プレゼンテーションと上映会を終え集合写真を撮影
2023年9月5日リクルート本社内アカデミーホールにて、社外講評者、内閣府の方々をお迎えして最終プレゼンテーションと上映会を終え集合写真を撮影

―WOW! BASEのように、学生やZ世代の視点やアイデアを活かしていこうとする社会課題解決型プロジェクトの意義はどんなことだと考えていますか。

小幡:社会が大きく変化していくなかで、社会課題はより複雑化していきます。リクルートとして、常に若い世代の感性や視点を学び続ける必要があると考えています。リクルートは、さまざまな分野で個人と事業者をつなぐマッチングプラットフォームを展開していますが、時には学生の方々やZ世代の方々に率直なご意見やサービス改善の提案をいただきます。社会課題解決のためにプロジェクトを通じて、ともに考える機会を持つということが、私たちのサービスや企業としてのスタンスを見直すためにもとても貴重な機会だと考えています。

そして同時に、多忙な学生の方々からアイデアやヒントをいただくだけでなく、私たちからも新たな出会いや、経験を提供できないかと考えています。
社会課題解決型プロジェクトを通して自分自身を知る機会や新たな経験、時には問題解決のためのツールやモデルをオープンにして、参加者の学生の方々の成長支援につながるように共創の輪を広げていくことも、企業としての大事な役割だと考えています。

―小幡さん自身にとっては、どんな意味があると考えていますか?

私自身、さまざまな学生の方々と接するなかで一番嬉しいのは、学生の方自身の強みや挑戦したいテーマを見つけて次のステップに歩み出す瞬間に立ち会えること。このWOW! BASEを通じて、年齢やキャリア選択などの枠にとらわれず、幅広く個性的な学生の方々に出会えるのが、私自身もとても刺激になっています。

また、プログラムに関わっていただいたステークホルダーの方から「自分たち大人が成長させてもらいました。私たちも負けていられないですね」とお声がけいただけたり、実際に学生の方々のアイデアが実現している事例に触れ、そのきっかけとなる場づくりをさせていただけることが楽しくて仕方ありません。入社当時から「人生に誇りを持つ人が増える社会を創りたい」と考えていたので、今後もさまざまな人の魅力・可能性を引き出すサポートをしていきたいと考えています。

『クールジャパン動画制作プログラム~地域の魅力を海外に発信せよ』を担当したリクルート人事 人材開発室 企画開発グループ 小幡珠里がインタビューを終えて

プロフィール/敬称略

※プロフィールは取材当時のものです

小幡珠里(おばた・じゅり)
リクルート スタッフ統括本部 人材開発室 企画開発グループ

2018年に大学卒業後、リクルートに入社して人事配属に。国内・海外でのインターンシッププログラムの設計・運営を担当し、学生向けキャリアサイトのコンテンツ(インタビュー・コンセプトムービー)企画等に携わる。21年よりWOW! BASEのプログラム企画を担当し、リクルートの各事業と学生との共同研究・地域課題解決に向けたプログラム企画・運営を手掛けている

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