リクルートの「よもやま」ミーティングとは? フラットなコミュニケーションが個性を活かす

リクルートの「よもやま」ミーティングとは? フラットなコミュニケーションが個性を活かす

オフィスへの出社を前提としないリクルート。そう聞くと、職場で働く仲間とつながりを作れるか不安になりますか? リクルートにはコミュニケーションの場として「よもやま」というミーティングがあり、一人ひとりのオンボーディングや成長の助けになっています。実は管理職がメンバーの育成にかける年間約300時間のうち約7割が「よもやま」という事実もあるほど。同僚や先輩とのよもやまがオンボーディングや成長に寄与したふたつのエピソードを紹介しながら、リクルートの創業メンバーのひとり大沢武志さん著の『心理学的経営 個をあるがままに生かす』に詳しいリクルートワークス研究所 所長の奥本英宏が、コミュニケーションの背景にあるリクルートの文化について考えます。

リクルートで使われる「よもやま」の意味とは?

「よもやま」とは?

「四方山(よもやま)話」に由来しています。ざっくばらんにいろいろ話そうという趣旨のミーティングで、公私含めたトピックで雑談する場です。ノーアジェンダで設定してOKかつ、参加人数もさまざまですが、1on1の相談の場として利用する人が多いようです。雑談を通して相手の人となりを多角的に知ることで関係性が良くなる他、仕事の些細な疑問解消や相談などを、業務から少し離れた感覚で、肩ひじ張らずに実施できる場でもあります。マネジャーがメンバーの状態を知り理解を深める場として機能しているケースもあります。

「よもやま」を活用したオンボーディングの効果的な事例

社会人1年目、議事録とよもやまで事業を知り、組織に馴染むエンジニア・金子翔麻さん

リクルート従業員・金子翔麻
2020年のコロナ禍、リクルートに入社した金子翔麻

―入社当時はどういう状況でしたか?

金子:大学卒業後の2020年4月、リクルートに入社した矢先、コロナ禍に突入しました。それにより研修もミーティングも全てがオンラインに変更になり、リモートワークで働くことになりました。そんな状況でしたが、さまざまな人と関わる足掛かりが大きくふたつありました。ひとつが所属する部門のプロダクト開発に関する決裁会議の「議事録まとめ」をすること、もうひとつがそれに関連した「よもやま」を設定することでした。

―ひと工夫ありそうですね。どのようにコミュニケーションをしたのですか?

金子:まず、プロダクトの決裁会議はだいたい週に1回開催されており、議事録は全メンバーに公開されています。議事録を読んでその要約を所属するグループに共有することにしました。技術やツールがどういう経緯で採択されたか理解する助けになりますし、分からない点について先輩たちが補足説明を加えてくれるなどして会話が増え、グループに慣れる助けになりました。また議事録のなかでそれでもよく分からないことがあると、知見のある他組織の先輩を紹介してもらい、「よもやま」を依頼。自分が直接携わるプロダクト以外の知見がもう一段深まり、他領域の先輩エンジニアと話す時も、興味を持って質問ができるようになりました。

―それは知見も深まるし、誰が何に詳しいかも分かるしで一石二鳥ですね。よもやまは実際どんな風に依頼するのですか?

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金子:実は私は人見知りで、コミュニケーションを取るのが苦手なタイプなので、よもやまを依頼するだけでも緊張します。でも、よもやまの度に新しい多くの学びがあるので、勇気を振り絞ってお願いしています。「1日目に依頼メールを書く」「2日目に内容を見直しメッセージを送る」で緊張を分散しています。
リクルートでインターンシップを経験した時から変わらず、よもやまに協力してくださる上司や先輩の皆さんには感謝しかありません。もし、このような「知る」機会がなかったら、自分の思考のなかに閉じこもっていたと思います。

―よもやまで業務知識だけでなく、仕事のスタンスも学ばれたとか。

金子:機能開発に携わっているのですが、ある部署の先輩からよもやまでこう言われたんです。「新規プロダクトの開発は、挑戦して失敗しても、その経験が他のプロダクトに必ず活きてくるよ」と。失敗を恐れず、どんどん挑戦していきたいです。

金子さんが所属しているグループのコミュニケーションの工夫
「ライトニングトーク」:毎週グループで実施している5分間プレゼン。最新技術から美味しい回鍋肉の作り方まで、各メンバーが今興味のあることを自由に発表します。一人ひとりの得意分野や人柄を知る良い機会になっているそう。

入社後の自己開示はよもやまで。成長課題も対話から言語化した営業・川村航太さん

リクルート従業員・川村航太
2020年のコロナ禍、リクルートに入社した川村航太

―入社当時、どのような状況でしたか?

川村:2020年4月のコロナ禍、リクルートに入社しました。入社後はたくさんの方に会えることを何より楽しみにしていたので、研修も全てオンラインになり、当初はとても残念な気持ちでした。実は私は業務そのものよりも“会社組織でのコミュニケーションの温度感”がイメージしにくく、初めて顔を合わせた上司や同僚にどこまで自分を開示していいのか、オンラインだと特に線引きが分からず心配になっていました。

―確かに会社の先輩にどんなノリで話して良いのか、最初は分かりにくいですよね。

川村:そんなコミュニケーションに対する不安や、初めての業務への戸惑いを解消してくれたのがグループマネジャーをはじめとする先輩方とのよもやまでした。最初は距離の近いフラットなコミュニケーションにとても驚きました。だんだんマネジャーや先輩には「自由に何でも相談できるんだ」と分かり、安心につながりました。次第に私も気負わず相談できるようになり、本当に感謝しています。

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―他にもWill-Can-Mustシートの設定も苦労されたと伺いました。

川村:はい、リクルートでは目標管理シート「Will-Can-Mustシート」を使いながら半期に一度、目標設定をします。自分の成長課題を具体的に言葉にして目標を書くことが難しく、最初は戸惑いました。ですが、先輩方が何度も時間を割いてくれ、私自身が上手く言語化できない課題感を整理し、考えるヒントと宿題を出してくれました。その宿題への回答を次のよもやまに持ち込んで、ディスカッションすることを繰り返し、自身の意見や目標がシャープになり、納得のいく目標設定や業務遂行ができるようになっていきました。

私は就活中から“主体的に自分の人生を歩んでいる人を増やしたい”という思いがあり、自らも“自分の人生を歩むこと”を肌で感じたいとリクルートに入社しました。その志を大切に、入社から昨年度まで営業職として目の前のクライアントの皆さまに向き合ってきました。今年度からは企画職として営業組織全体の最適化に挑戦しています。『リクルートエージェント』をご利用いただくクライアントやカスタマーの皆さまへの価値を最大化できるように貢献していきたいと考えています。

川村さんが所属しているグループのコミュニケーションの工夫
チーム会議での「チェックイン」:チームではオンライン上で毎日「朝会」「夕会」を開催。朝会は全員が今の気持ちを話すチェックインがあり、率直な気持ちから趣味の話まで、自由に盛り上がる時間がとても楽しいそう。
チャット「いつでも聞ける! お困りごと相談部屋」:チームのリーダーが業務ツール上でチームメンバー向けの相談部屋を開設。業務中いつでも話ができ、システムの操作方法ひとつでも、困ったらすぐ聞ける環境に助けられた。

ではリクルートでは、なぜ「よもやま」のような雑談が頻繁に行わるのでしょうか? 根底にある考え方のヒントを知るべく、リクルートの創業メンバーの著書『心理学的経営 個をあるがままに生かす』に詳しい奥本英宏さん(リクルートワークス研究所 所長)に話を聞きました。

リクルートのコミュニケーション文化の解説

リクルートワークス研究所 所長・奥本英宏
リクルートワークス研究所 所長・奥本英宏

相手を受け止める土壌を創り、個を生かしあう

奥本:“雑談文化”と表現されることもありますが、「よもやま」と呼ばれるアジェンダのない会議があったり、会議前の「チェックイン」と称される、気になることを軽く吐き出して、気持ちを切り替え会議に集中するためのステップが盛り上がりすぎるのはリクルートらしいコミュニケーションのひとつです。

これらは、相手の思いや意見を受け止めるための、とても大切な土壌となるものです。お互いをよく知り、違いを面白がるスタンス。これはある意味、仕事の経験や知識、スキルといったビジネス人格だけでなく、その背景にある興味関心やこだわり、喜怒哀楽も含めて受け入れるということ。そうした全人格的な理解が、苦手なことを補完しあうチームワークにも通じると思います。このスタンスがあるからこそ、「自分らしくいられる、受け入れ合えている安心感」を生み、個の発露につながるのでしょう。表現される互いの個性が違うほど、ディスカッションをした時に新しい価値を生む力になる。違いは歓迎すべきことなのだ、という特徴的な考え方だと感じます。

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これからも大切にしたいコミュニケーションのヒント

奥本:リモートワークが世の中に普及してきたことにより、出社の機会が減ったり、リアル会議や飲み会なども少なくなってきたかと思います。そのままにしていると、雑談の機会が減り、互いを知り合う機会や、ちょっとした変化や困っていることなどに気付かないまま信頼感が損なわれてしまうことも増えるかもしれません。先ほど触れたように、適度な雑談はリクルートではコミュニケーションのベースとなる関係性を育むもの。オンライン化のなかで、どのようにこの要素を発展させていくかも今後の肝になるかもしれません。オンラインでの「よもやま」などの場は工夫次第では、従来以上の信頼関係を育んでいけると思います。例えば、上司・部下の1on1ミーティングも、時には1on3くらいのほうが、アイデアを引き出し合うことができ、場の力を引き出せるかもしれません。オンラインだからこそ可能になる工夫とアイデアを生み出していくことが、コミュニケーションの強さにつながっていくのではないかと考えます。

プロフィール/敬称略

※プロフィールは取材当時のものです

金子翔麻(かねこ・しょうま)
株式会社リクルート プロダクト開発統括室 プロダクトディベロップメント室 販促領域エンジニアリングユニット 飲食・ビューティー領域エンジニアリング部 飲食プロダクト開発3グループ

大学院の先端数理科学研究科で、人間の心理や人が使いやすいコンピュータのあり方などを研究。エンジニアとしてサービス開発力をつけたいと思い、2020年4月リクルートに入社。飲食プロダクト開発グループに配属され、現在、『Airレジ ハンディ』セルフオーダー機能の開発に携わる

川村航太(かわむら・こうた)
株式会社リクルート Division統括本部 HR本部 HRエージェントDivision Division企画統括部 クライアントオペレーションデザイン部 クライアントナビゲーション企画グループ

大学卒業後、2020年4月RCAに入社。非対面でクライアントへの営業活動を行うグループに配属。現在は営業企画・営業推進組織にて新しい営業モデルの企画開発や計画実行などを担っている

奥本英宏(おくもと・ひでひろ)
株式会社リクルート 専門役員 兼 リクルートワークス研究所所長

1992年株式会社リクルートマネジメントソリューションズ(旧社名:人事測定研究所)入社。2011年10月株式会社リクルート ソリューションカンパニー カンパニー長、株式会社リクルートマネジメントソリューションズ代表取締役社長に就任。企業の人事制度、人材評価、人材開発、組織開発全般のソリューションに従事。2018年4月リクルートワークス研究所に参画。2020年より現職

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