焼酎プロデューサー 黒瀬暢子さんの「仕掛けの種の拡げ方」~働く人たちにエールを

焼酎プロデューサー 黒瀬暢子さんの「仕掛けの種の拡げ方」~働く人たちにエールを

各界のプロフェッショナルに聞きました。“仕掛ける仕事”って面白いですか?

リクルートグループでは創業より「起業家精神」を大切に企業経営をしてきました。日々の多忙さに追われていたり、さまざまな制約条件のなかで、時には、新しいことへのチャレンジに億劫になってしまう時もあるかもしれません。
でも、日々の仕事のなかに、いつでも新しいチャレンジの芽は転がっています。今回、「仕掛ける」=「新しいことにチャレンジすること」と定義し、各界の学識者やプロフェッショナルの方々の「仕掛けの種を見つけ、育て、大きく拡げていく」ための、モノの見方や考え方、心掛けていることをお話しいただきました。日々の仕事の捉え方のヒントを見つけてみませんか?

※リクルートグループ報『かもめ』2022年10月号からの転載記事です

自分の内側に目を向けてみることも一歩。見つけた種は人が育てて拡げてくれる

つい数年前まで焼酎を飲んだことすらなかったと言う、焼酎プロデューサーの黒瀬暢子さん。100回を超える『焼酎女子会enjoy!』の開催をはじめ、「焼酎」を生業にした黒瀬さんに、小さなきっかけを大事に拡げて、今につないでいったストーリーを伺いました。

きっかけは1本のSNS投稿。自分のなかに拡がる世界に気づく

皆さんは焼酎を飲んだことがあるでしょうか? 匂いや度数がきついと敬遠する方も多いかもしれません。私は「幸せだな・楽しいなと思える瞬間に焼酎があるような場を多くの皆さんに提供したい」と、焼酎ファンを生み出す活動を行う「焼酎プロデューサー」を生業としています。

こう言うと私が根っからの焼酎好きだったと思うかもしれませんが、2018年まではほとんど飲んだこともありませんでした。

東京にある焼酎バー「黒瀬」を訪れ、自分と同じ名前のお店に行ったとSNSに投稿したことに始まります。知人から「黒瀬さんは黒瀬杜氏の家系なんですか?」とのコメントがあり、どういう意味かと尋ねたところ、自分が鹿児島の焼酎造りのプロフェッショナルである「黒瀬杜氏」の末裔の可能性があることを知ったのです。

そこからは父親に事実確認をし、仕事の合間を縫って鹿児島の黒瀬地区を初訪問し、親戚だと思われる家々を巡り、自ら家系図を作成。徐々に黒瀬杜氏としてのルーツが明らかになり、先人たちが作り上げてきた焼酎文化を継承していきたいという、何か使命感に駆り立てられるようになりました。

そのことを知人に話してみると、「毎日焼酎に関するコラム投稿でもしてみたら?」というアドバイスをもらいました。まめにSNSを更新するようなタイプではありませんでしたが、焼酎の勉強にもなるし良い案だと、日々違う銘柄の焼酎を飲み、日記のように投稿し始めた私。

最初は味の違いもよく分かりませんでしたが、毎日欠かさず飲むうちにすっかり魅力に取りつかれ、毎日の投稿を始めてから半年後、普段あまり焼酎に触れていない女性に対して美味しさを伝えたいと、初めて焼酎女子会enjoy!を開催しました。初回は3名の参加者でしたが、徐々に参加してくださる方も増え、コロナ禍でもゲストを招いてオンライン開催するなど、3年半で重ねた回数は100回超。

初対面の参加者同士が、焼酎が作り出す場の雰囲気もあって意気投合し、最後には肩を組んで歩いている姿を見て、もっと人と人を焼酎でつなぎたいと強く思うようになりました。

思い切って長年勤めていた会社を辞め、「焼酎プロデューサー」として活動していくことにしました。もちろん周囲からは会社を辞めるなんて何を考えているんだと猛反対されました。

ですが、もともと人と人をつなぐことが好きだったこと、海外を相手に仕事をしていたことで感じた日本人の手仕事の素晴らしさや、自分の祖先が連綿とつないできたものを私もつなぎたいと強く思っていたことなどから、自分が後悔しない道を選択。ありがたいことに、SNSへの毎日投稿やイベント開催を知った酒造メーカーやラジオ局、新聞社などから徐々に焼酎に関する仕事が舞い込むようになりました。

焼酎プロデューサー 黒瀬暢子さんが焼酎にかかわる講演をしている様子
一般企業や新聞社から依頼を受け、焼酎の歴史、焼酎と料理の美味しい組み合わせなど、「焼酎」に関わるさまざまな講演を行うのも焼酎プロデューサーの仕事

自分の内側にだってヒントはある。仕掛けの種は一緒に育てて

今、私が「焼酎プロデューサー」として独立できているのも、SNSでの小さな仕掛けの種を見逃さなかったからだと思っています。何かを成そうとする時、何かヒントが欲しい時、どうしても外へ外へと目を向けてしまいがちですが、私は内に内にと目を向けることで道が開けていきました。まさか祖先を辿ることで自分の生きたい道が見つかるとは思っていませんでしたが、意外なところに人生激変の種はありました。

また、私の場合は、自分で動くだけでなく、周囲の力を借りることで種がどんどん育っていったように感じています。自分の気づきを周囲に報告・相談をしてみることで、毎日のSNS投稿のアドバイスをもらえたり、焼酎に関する仕事依頼につながったり、コロナ禍で焼酎女子会enjoy!が開催できずに困っていた時にオンライン実施を提案してもらったり…。

周囲の意見を取り入れ、こまめに情報発信していくことも、種を育て、拡げていく上で大事なことなのではないかと思います。これからも焼酎ファンを増やすべく、機会の種を拡げ続けるプロデューサーでありたいと思っています。

プロフィール/敬称略

※プロフィールは取材当時のものです

黒瀬暢子(くろせ・のぶこ)

大学卒業後、株式会社サンリオを経て、子ども向け玩具などものづくりを行う会社に勤務。2018年にふと訪れた焼酎バーについてSNSに書き込んだことがきっかけで、自身が「黒瀬杜氏」という有名な杜氏の末裔であることを知り、焼酎にのめり込む。『焼酎女子会enjoy!』を主催するなど、焼酎と人をつなぐ場の提供に力を入れるうちに、起業を決意し、会社を退職。21年より東京から福岡に拠点を移し、焼酎プロデューサー(商標登録)として、焼酎のプロデュースや講演など、焼酎にまつわるさまざまな業務に携わっている

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