【だから、私はきょうも働く】 ~躊躇している人、諦めている人が≪一歩踏み出す≫きっかけを創り出したい~
今、コンビニ経営のスタートは65歳までチャレンジできる。しかし、ほんの数年前までは、≪55歳までしか始められない≫という暗黙のルールがあった。ある大手コンビニチェーンとともにルールの打破に挑み、現在の状況を生み出すきっかけをつくったのが、リクルートキャリアの田中翔だ。「一人でも多くの人の≪一歩踏み出す≫を創り出したい」と語る田中に、その想いに至るルーツを聞いた。
自分が≪一歩踏み出す≫を続けた結果、人の≪一歩踏み出す≫を創り出せた
「私は昔から、これだ!」と自分の中で腹に落ちたことはすぐに行動するタイプで、躊躇せずに物事を進める性格でした。新卒でリクルートに入社したときも、漠然と地方から世の中を変えたいと考えて、敢えて地方配属を希望したり。希望が叶って、香川県配属になり、まったく営業実績のなかった小豆島を開拓することを上司に直談判したり。本当に自分の思うがままに行動して、その結果を楽しんできたんです。でも、誰もがみんなすぐに行動できるわけではないことも分かっていました。だからもし、やりたいことがあるのに躊躇したり、どうせできないと諦めている人がいるなら、一歩を踏み出す手伝いをしたいと考えるようになりました。
思えば、仕事ではじめてその想いを実現できたのが、小豆島で営業をしていた頃でした。転職情報サイト『リクナビNEXT』の営業担当として、まったく実績のなかった小豆島の企業の求人ニーズを担当者様と共に掘り起こし、採用成功に繋げることができたんです。島の人口減少が課題になっているなか、『リクナビNEXT』に求人広告を出して頂いたことで島外から複数名の入社が決まり、さらにその家族も含めた移住による人口増に貢献できました。求人広告を出すという企業側の一歩、小豆島で働く・小豆島で暮らすという応募者側の一歩を踏み出すお手伝いができたことは、今に続く大きな成功体験になっています」
年齢のせいで、働きたい人が働けないなんておかしい
「今回の、コンビニ業界の暗黙の年齢制限を覆した取り組みも、原動力となったのはやはり働く意欲のあるシニア層の≪一歩を踏み出す≫力になりたいという想いでした。≪2020年には、65歳以上で働きたいのに働けない人が151万人に上る≫。そんな予測データを目にして、何とかしなければと思ったんです。そのとき担当していたのが、独立・起業・フランチャイズ(FC)募集などの情報を提供する『アントレ』の営業で、定年のない働き方を提唱する『アントレ』でなら、シニアの働く意欲に応えられるのではないかと考えました。ところが私が担当していた大手コンビニチェーンをはじめコンビニ各社のFC募集は、他の業界よりも厳しい開業時年齢55歳までという制限が暗黙のルールになっていました。立ち仕事や、若いアルバイトの管理がシニアには難しいという理由でしたが、実際に55歳で開業して5年経つという60歳の女性オーナーさんにインタビューすると、まだまだ元気。2人の息子さんと3人で7店舗を経営していて、溢れるエネルギーにこちらが圧倒されるほどでした。他にも≪年齢なんて関係ない≫と断言する65歳のベテランオーナーさんなどにお会いして、≪このルールは絶対に変えるべきだ。変えることができれば、働く意欲のあるシニア層が活躍でき、世の中が変わる≫と確信しました。コンビニチェーンの担当者様も、私の提案に共感してくださり、FC契約の内容など社内制度の変革に向けて経営層の説得に尽力してくださいました」
≪情報+α≫で一歩を踏み出すきっかけを創り出したい
「実際、65歳まで開業できるようになってからの周囲の反響は、想像以上でした。開業希望者が増えたことはもちろん、身近な先輩のご親族が≪65歳までチャレンジできるようになったのが嬉しい。ぜひやってみたい≫と仰っていたという話を聞いたときは、本当に嬉しかったです。そして今、他の大手コンビニチェーンも追随し、業界全体の暗黙のルールを覆すことができたと実感しています。
実は、私の祖父は93歳の今も現役で、お酢の醸造蔵を経営しています。本人にやる気があって一歩を踏み出す力がある限り、年齢は関係ないんだと思います。問題は、世の中や、一人ひとりの心の中にある、一歩を踏み出す妨げになるモノの存在です。既成概念で凝り固まったルールを変えること、躊躇や諦めで狭まった視界を広げる≪情報+α≫を提供すること。そうした取り組みで、一人でも多くの人が自分の望む一歩を踏み出せる世の中を創っていきたいです」
私のワークライフバランス
興味を持ったとき、やろうと思ったときに、すぐに動く。そうすると爆発的に仕事が進みます。例えば休日でも、何かアイディアを思いついたらすぐに書き留めたりまとめたりするようにしています。