リクルートに再入社したのには訳がある。いち営業が地元愛から挑む地方創生

リクルートに再入社したのには訳がある。いち営業が地元愛から挑む地方創生

リクルートでやれることはやった! 退職して新天地へ

HRエージェントDiv.の営業、松本貴樹は、リクルートを2010年に退職した。

「戦略的思考に磨きをかけたいと思ってリクルートを一度卒業し、専門商社に入社しました。自分のスキル向上を求めての転職です。新しい職場では営業として成果も出すことができ、実績が認められて入社の翌年にはマネジャーに任用いただきました。新規事業やグローバルなプロジェクトに携わり、忙しく過ごしていたんです。そんなある日、仕事で通りかかった場所から、ふとリクルートの本社ビルが見えました。一緒に苦楽をともにした仲間のこと、背中を押してくれた上司のこと、成功を分かち合えたお客様のこと。リクルート時代の思い出がこみあげてきて、忙しさも相まって少し泣けてきました。自分の人生を改めて見つめ直そうと思った瞬間でした」。

再入社したのは、社会の“不”の解消に向けて全力で挑戦できるのはリクルートしかないと思ったから

「振り返ると、社会に出てからずっと『日本経済に影響を与えるような大きな仕事をしたい』と思っていました。日本経済に影響を与えるには、社会の“不”を解消するような新しい価値を創造する必要があります。であれば、創業以来ダイナミックな価値創造に挑戦し続けているリクルートに戻るしかない。他社を経験してみて、従業員に社会の“不”の解消を推奨するような企業はなかなかないと分かったこともあり、再びリクルートという環境で挑戦しようと、意を決し古巣に戻ることにしました」。

2012年、32歳の時に松本はリクルートに再入社した。リクルートのいわゆる“出戻り社員”は2021年度実績では20名だ。珍しいケースだが、会社に所属しているか否かに関係なく、人とつながりを推奨する企業文化もある。松本も元上司や同僚から「おかえり! またともに世の中に価値提供しよう!」や「前職で学んだことを活かして、組織に新たな刺激をもたらして欲しい」「良く戻って来てくれた。ありがとう。一緒に頑張ろう」と声を掛けられ、温かく迎えられた。

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素晴らしい中小企業が数多あるのに、関西経済圏が盛り上がらないのはなぜだろう?

再入社した後は、今まで以上に仕事に力を入れた。人材斡旋事業の営業として日々企業の採用課題に向き合い、1日何件もの求人に対して、求職者とのベストマッチを追求する。その合間にさまざまな産業情報をインプットし、自分にできることを探していった。そのなかで見つけたのは自分が担当するマーケットでもあり、出身地でもある関西の課題だ。「関西の経済をどうにかして活性化したいと思っていました。高度経済成長期以降、関西経済のGDPと人口は横ばい。1位の首都圏に続く2位の経済圏でありながら、大きく水をあけられていました」。

ここに風穴を開けるべく突破口を探るなかで、偶然出会ったのがAさんだった。人材採用のアポイントメントで伺った某社で、CFOを務めていらっしゃる方だ。

「関西でIPOの経験が豊富なAさんにお話を伺った時、上場企業数を増やすことで関西経済を活性化するという手法があることに気がつきました。その時、脳裏によぎったのは父の言葉。父はもう引退しましたが経営者で『チャンスはチャンスの顔をしていない。準備をした者だけにそれがチャンスと分かる』とよく言っていたんです。私にはAさんこそ、関西経済活性化のカギを握っているチャンスそのものに見えました」。

ビジョンでつながったIPO専門チームを組成。日本経済は地域から盛り上げる!

Aさんとの出会いをきっかけに、松本は60名以上のIPO関係者に話を聞いたという。監査法人、証券会社、会計事務所、ベンチャーキャピタル。多種多様なステークホルダーの役割を理解し、整理した。「自分にはIPOの経験も、実務でできることもありません。なので、各ステークホルダーの皆さんに協働を呼びかけ、Aさんを中心としたコンサルチームを組成しました。クライアントとなる中小企業はコンサルチームの支援を受けながら、低リスクでIPOを推進できるというスキームを創り上げたんです」。

株式会社YFAF 代表取締役 好永尚平さん(最左)、ブリッジコンサルティンググループ株式会社 執行役員 関西統轄事業部部長 中山博之さん(最右)ら、中小企業のIPOを支援するコンサルチーム
中小企業のIPOを支援するコンサルチームの皆さんと打ち合わせ。株式会社YFAF 代表取締役 好永尚平さん(最左)、ブリッジコンサルティンググループ株式会社 執行役員 関西統轄事業部部長 中山博行さん(最右)、東証プライム上場企業 取締役の皆さんら、そうそうたる面々と協働中

協働を呼びかけるにあたって大切にしたのは“ビジョン”だという。

「金銭のやりとりだけで協力し合ったり、一方的にこちらがお願いしたりする関係は長続きしません。関西経済を活性化するという同じビジョンを目指すパートナーとして、長くお付き合いしたかったんです。だから、関係者全員にとってのメリットだけでなく、揺るぎない自分の思いとビジョンを共有し、旗を振り続けました。そのおかげで、今、数社のお客様で上場に向けたプロジェクトが始まっています。IPOを通じた関西経済活性化に向けた大きな一歩を踏み出すことができ、とても嬉しいです。いずれ、関西から日本の各地に広げていき、各地で新たな事業が生まれる一助となれるよう、頑張っていきたいです」。日本経済に影響を与えたい、そのひとりの思いがさまざまな地域に活気を送り込もうとしている。

プロフィール/敬称略

※プロフィールは取材当時のものです

松本貴樹(まつもと・たかき)
株式会社リクルート HRエージェントDiv. エリア統括部 関西営業2部

ITベンチャーを経て、2003年10月リクルートに入社。住宅領域の営業や版元長などを経験。さらに戦略思考力を磨きたいと思い、10年、専門商社に転職。1年で営業として成果を残し、マネジャーに。新規事業やグローバルプロジェクトに携わるも多忙を極め、改めて自分の人生を見直し、12年リクルートに再入社。以来、エージェント事業の営業として活躍。リクルートグループのナレッジ共有イベントFORUMに20年、22年に登壇。現在はプロフェッショナル職として地域経済活性を目指したミッションに取り組む

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