SaaS事業「Air ビジネスツールズ」はどう社会に役立つ? 担当役員に聞く

SaaS事業「Air ビジネスツールズ」はどう社会に役立つ? 担当役員に聞く

現在、リクルートではSaaS(※)による企業クライアントの業務支援・経営支援が重要テーマのひとつになっています。一見すると、リクルートが創業以来展開してきた、企業クライアントと個人カスタマーのマッチング事業(『リクナビ』『SUUMO』『ゼクシィ』『じゃらん』など)とは全く異なるものに感じられる方もいるのではないでしょうか。
特に就職先としてさまざまな企業を検討している学生の皆さんから、そのような意見をよくいただきます。

そこで今回は、実際に学生の皆さんから届いた質問に答えようと、SaaS事業担当の執行役員・牛田圭一に、新卒採用担当がインタビュー。SaaS事業の中心となるサービス「Air ビジネスツールズ」のこれまでとこれから、そこに牛田はどんなやりがいを感じているのかを聞きました。

※SaaS:「Software as a Service」の略。クラウド上にあるソフトウェアをインターネット経由で利用できるサービスのこと

「Air ビジネスツールズ」は、どんな社会課題を解決するのか

― 牛田さんが担当する「Air ビジネスツールズ」とは、どんなサービスですか?

牛田圭一(以下牛田):「Air ビジネスツールズ」とは、商いを行う上で発生しているさまざまな業務の手間やコストを軽減する業務・経営支援サービスの総称です。2013年に、最初のサービスであるPOSレジアプリ『Airレジ』に始まり、この10年で16サービスにまで拡大をしています。

― 『Airレジ』は、学生時代のアルバイト先のカフェにあったので、身近に感じます。

牛田:他にも飲食店向けのサービスは多数展開していて、例えばお店の決済サービス『Airペイ』は全国で45.0万アカウントが導入されています(※)。1店舗に1アカウント導入いただくことを考えると、日本の店舗系の中小事業者の約10%、つまり10店舗中1店舗で導入いただいている状況です。

※2023年12月末時点

実際に店舗で『Airペイ』が使われる様子
実際に店舗で『Airペイ』が使われる様子

― かなり導入されているんですね。その『Airレジ』で業務支援をするとは、どういうことでしょう?

牛田:POSレジアプリ『Airレジ』は、2010年当時『ホットペッパーグルメ』の担当者が、飲食店の事業者にとって、レジ締めの作業や、売上の集計・分析にかかる膨大な手間と時間が負担となっている事実に課題感を持ったことをきっかけに、企画したサービスです。

もしこの時間を短縮できたら、レジ締めを担当しているスタッフや店長・オーナーは本来やりたい別のことにもっと集中できる時間を創れるのではないか。また、レジまわりの業務をIT化すればそこに蓄積される売上データを店舗運営に役立てられるのではないか。

『Airレジ』はそうした業務支援の発想から誕生しました。実際に『Air レジ』がこれまでの10年間で「煩わしさを削減できた時間」の1年あたりの平均は2172万時間、「人件費」に換算すると230億円のインパクトがあります。

『Airレジ』を通じて1年あたりで「煩わしさを削減できた時間」は2172万時間、「削減した人件費」は230億円に及ぶ

― 桁が大きすぎてすぐにはピンときませんが…疲れた閉店後、早く業務を終わらせて帰ることができるのはいいことだなって思います。翌日もお仕事頑張れそうです。

牛田:実際に、飲食店、小売店舗など中小事業の方々が、自分が思い描いていた店舗づくりだったり、商売に集中できる時間を作ることに貢献できて、嬉しいです。

同じようなアプローチで、事業者の方々が抱えるさまざまな業務の課題に注目した結果、予約管理の『Airリザーブ』、受付管理の『Airウェイト』、シフト管理の『Airシフト』…というようにサービスが広がっています。

「Air ビジネスツールズ」では16ものサービスが展開されている
「Air ビジネスツールズ」では16ものサービスが展開されている

― 業務支援を目的に開発したら「Air ビジネスツールズ」というシリーズが増えていった、ということなんですね。一方で、長年メディアを軸に集客や採用といったマッチングビジネスを続けてきたリクルートにとって、SaaSへの違和感はなかったのでしょうか?

牛田:実は、企業ミッションとして掲げている、目指したい世界観「まだ、ここにない、出会い。」に立ち返ると全く違和感がなかったんです。

中小事業者は日本の企業の99.7%(※)を占めているにも関わらず、大企業に比べてDX化が進んでいません。アナログな業務に追われて生産性は上がらず、利益の圧迫や人手不足といった事業リスクになっていると考えられます。これらのアナログ業務をITの力を使って圧縮することができれば、結果的に日本の労働生産性も上がるし、個性豊かなお店や事業が持続的に商いを続けられるはず。結果的に、世の中に多様な選択肢がある状態を作ることができ、誰もが自分にぴったりの商品・サービスを自由に選べるようになる。まさに「まだ、ここにない、出会い。」の実現につながる、というわけです。

※出典:中小企業庁「中小企業の企業数・事業所数(令和5年12月13日更新)

― 多様な選択肢のなかから自由に選べる。これって何が良いんですかね?

牛田:日本のユーザーの生活に馴染んだ「幸せの感覚」につながることではないでしょうか。
個人的な話ですが、学生時代にバックパッカーで旅した際、日本ほど多様な国の料理店がある国は珍しいと気づいた時があって。カレーも中華もイタリアンも、毎日の食生活のなかでこれほど多種多様な食文化を受け入れている国って珍しいものなんだなと。

食は一例ですが、日本はこうした多様な文化を楽しむ土壌がある国だからこそ、数ある選択肢のなかから自分にぴったりなものをチョイスできること自体が、日々の幸せにつながっているのではないか、と思っているんです。

リクルートのオフィスでインタビューに応える執行役員・牛田圭一

今後の人口減少社会で、「Air ビジネスツールズ」にできること

― 今後「Air ビジネスツールズ」は、社会のなかでどんな役割、存在になっていくと思いますか?

牛田:人口が減少する日本において、生活を豊かにする、豊かに保つ、その一助になり得ると思っています。

私は2015年にマタニティ・ベビー・子供用品の通販サイト『赤すぐ』(現『ゼクシィBaby』)を担当していたので、出生数の減少、それに伴う産業の縮小を体感してきました。当時でも年間100万人ほどだった出生数は、2023年では75.8万人にまで減っていますよね。どうすればこの少ない人口でもっと労働生産性を上げ、生活を豊かにできるか、ということは本質的な課題になってきていると思います。

「Air ビジネスツールズ」が直接的に解決できるかは、分かりません。ただ、現在全国で45.0万アカウント使っていただいている『Airペイ』が、今後50万、100万アカウントと、今よりさらに多くの店舗に使っていただくことになれば、ITの知識がない方でも、ITを業務に活用できるのではないか。そうすれば、間接的には労働生産性の解決につながるのではないか、と考えています。

例えば、『Airペイ』や『Airレジ』に蓄積される日々の売上データを活用すれば、今の経営状態が可視化されますが、今後はそれに加えて、これまで経営者の勘や経験に頼るしかなかったさまざまな意思決定をAIがアシストできるかもしれない。そうなれば、まだ事業を立ち上げて日が浅いオーナーでも熟練の経営者のような確からしい判断に近付くことができるようになる。それって私たちとしても望ましい未来だよね、とよく話しています。

リクルートのオフィスでインタビューに応える執行役員・牛田圭一

牛田さんがリクルートで働く理由

― 牛田さんは2013年からリクルートの事業のIT部門をリードし、2020年からSaaS事業の役員に就任しています。ずっとIT一筋でやってきたのですか?

牛田:いえ、全く違います。学生時代から料理が好きで、コックさんになろうかとも考えていたくらいで。大学卒業後は水産会社に入社し、「えび部むきえび課」で海外からえびを輸入・販売する仕事をしていました。

― そうなんですか!? そんなバックグラウンドを持つ牛田さんが、ITに関わったきっかけは? どんなモチベーションで働いてきたのですか?

牛田:本当に偶然です。リクルートのビジネスに興味を持って、2007年に旅行サービス『じゃらん』の営業として入社した後、事業企画を経て、IT事業の部署に異動になったのがきっかけです。ただ、自分が創ったものを世の中に出して、人に喜んでもらえたら、という気持ちはどの仕事においてもずっと持っているんです。

「えび部むきえび課」にいた頃は、ファミリーレストランで他のお客様が頼んだドリアに、自分が輸入担当をしたえびがトッピングされていたり、美味しそうに食べている家族の姿を見ると、「それ、僕が輸入したんですよ!」と話しかけたくなるくらい愛おしい気持ちになっていました(笑)。

ITサービスを創ることも、それと同じような感覚なんです。普段の生活のなかで、「Air ビジネスツールズ」を使っている場面に出会うと、やっぱりお店の方や利用しているお客さまを抱きしめたくなるくらい嬉しいです。さすがに「僕らが創りました!」なんて声はかけていませんが…(笑)。

やっぱり自分が創ったものを世の中に出して、何かしらの良い影響を生み出せるということ自体が好きなんだなという気がします。

― リクルートで創るからこその面白さがあれば教えてください。

牛田:5年後、10年後にリクルートが「こうあるべき」ということを、誰も制約しないんですよね。だから、自分が考え抜き「やるべき」と提案したことが、会社の事業経営の理に適っていれば、何でも実現できるという感覚があります。

リクルートの事業経営で大事にしていること

― そんななかで、リクルートの事業経営の責任者として大事にしていることは何ですか?

牛田:「事業として健全に成長できるのか」と「それを通じてどう社会の役に立つのか」を両立することですね。

やっぱりボランティア活動をしているわけではないので、企業として売上や利益を上げて、継続的に成長していかなきゃいけない宿命はあります。ただそれは、事業継続の条件の半分くらい。社会が抱えている課題や個人が感じている不(不満や不便、不安)を、事業を通じて解決できて初めて、事業が継続するなという感覚があります。

― 創ったものを人に喜んでもらってこそ、ですね。最後に就職活動中の学生の方を意識した質問です。もし牛田さんがもう一度新卒に戻って、今のリクルートに入社するとしたら何をしたいですか?

牛田:何だろう…、日々の生活から着想した事業のアイデアをどんどんぶつけていって、たくさん失敗をしたい、かな。

― 失敗?

牛田:結局、自分からチャレンジして、失敗したり、否定されたり、「上手くいかないこと」を繰り返しながら、少しずつ乗り越えることでしか、成長ってできないと思うんです。自分のキャリアや出会った人たちを思い返してみても、社会人生活の最初の3年でどれだけ失敗体験をしたかが後に効いている気がするので。

「Air ビジネスツールズ」に限らず、事業経営は想定通りにいかないことの連続です。その時に、自分たちがまだ気づいていない問題点について議論できるかどうかが肝になります。成功体験に縛られることなく、変なプライドに固執することもなく、いろんな感性や経験を持った人たちが集い、知恵を出し合う。そんなチームの一員になるためにも失敗体験は有効だと思うし、そんなチームで一人ひとりが挑戦を続けていった先に、世の中を変えられるようなインパクトを生み出していけると信じているんです。

リクルートのオフィスでインタビューに応える執行役員・牛田圭一

プロフィール/敬称略

※プロフィールは取材当時のものです

牛田圭一(うしだ・けいいち)
株式会社リクルート 執行役員 プロダクト統括本部 SaaS事業領域担当

大手水産会社を経て、2007年リクルートに入社。『じゃらんnet』『ホットペッパーグルメ』『ホットペッパービューティー』のプロダクトマネジャー、『ポンパレ』プロデューサー、『ポンパレモール』『Recruit Card』などの立ち上げを担当。2016年よりリクルートライフスタイル ネットビジネス本部 本部長を務め、2020年4月より現職で「Air ビジネスツールズ」の責任者を務める

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