PEOPLE テクノロジー職社員インタビュー
エンジニア・データ組織の人材育成担当者が語る。
一人ひとりの成長を最大化させるための、リクルート流エンジニア育成戦略
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テクノロジー職
データ推進室
データテクノロジーユニット
Vice President
阿部 直之
Naoyuki Abe
テクノロジー職
プロダクトディベロップメント室
HR領域プロダクトディブロップメントユニット
アプリケーションソリューション部 エンジニアリンググループ
高橋 陽太郎
Yotaro Takahashi
本記事は、2025年2月に開催されたリクルートの開発事例・ナレッジを共有する技術カンファレンス 「RECRUIT TECH CONFERENCE 2025」 内のセッション「エンジニアの人材育成戦略~一人ひとりの成長の最大化のために~」で語られた内容をお届けします。
RECRUIT TECH CONFERENCE 2025 -技術を活かす現場力-
本セッションでは、リクルートのデータ推進室でVice Presidentを務める阿部と、プロダクトディベロップメント室の高橋が登壇。プロダクト開発に関わる社員が所属するふたつの組織(データ推進室、プロダクトディブロップメント室)で、それぞれどのような成長機会を提供しているのかをご紹介しています。セッションのファシリテーターは、新卒2年目のエンジニアである村上が務めました。

「理想の組織図」をつくり、提供可能な成長機会を可視化。
メンバーの挑戦が新たな機会を生みだす好循環をつくる。
村上:皆さま、こんにちは。こちらのセッションでは、リクルートでエンジニア・データ職種の社員が所属するふたつの組織の人材開発の取り組みについてご紹介いたします。それでは早速ですが、データ推進室の取り組みについて、阿部さん発表をお願いします。
阿部:私からは、リクルートのデータ組織における、“技術組織としての人材開発”についてお話しいたします。はじめに整理しておきたいのは、「私たち技術組織が人材開発および人材戦略をどう位置づけているか」です。私たちは、人材戦略を「事業戦略」やそれに紐づく「技術戦略」を実現するための重要な戦略であると位置付けています。
また、育成や配置など、人材戦略の要素の一つである人材開発においては、「一人ひとりが思い描く将来像にあわせた成長機会を提供すること(配置転換やミッションアサイン)による育成」を主軸に据えています。
では、具体的にはどのように一人ひとりにあわせた成長機会を提供しているのでしょうか。まずは事業戦略や技術戦略を実現するために必要な「理想の組織図」を作成します。これを現状の組織図と比較すると、少なからず差分が存在します。例えば、「プロジェクトチームがもう一つ必要だが、リーダーが足りない」、「このチームには、〇〇ができるメンバーが必要」といった具合です。それこそが、メンバーに提供できる新たな成長機会。「理想の組織図」と現状の組織図の差分提供できる機会とし、メンバーを配置していくことで育成を促進しています。
また、このようにしてメンバーを新たな役割に促せば、当然これまでその方が担っていた役割は他のメンバーにとっての新たな成長機会にもなる。このように、「理想の組織図」に近づくことを目指し一人ひとりの成長促進を行っていくことは、すなわち事業戦略の推進スピードが上がることにつながり、「理想の組織図」が変化していくため、さらなる成長機会を生み出していく…といった循環が生まれています。

個人の成長を加速させるための「タテ・ヨコ・ナナメの複眼議論」と「共通言語の整備」。
オンボーディングまで含めて育成を設計していく。
阿部:適切な機会提供によって、個人の成長を加速させるために意識しているのが、「タテ・ヨコ・ナナメの人材開発」です。リクルートでは半期ごとに「人材開発委員会」という場を設定し、一人ひとりの短期的な評価と中長期的な育成方針について議論しています。メンバーの直属の組織の上司からの「タテ」の視点だけでなく、プロジェクトで協働している「ヨコ」の組織のマネージャーや、事業横断で技術専門性を統括している「ナナメ」のマネージャーの視点も取り入れ、“複眼”で一人のメンバーの成長を支援しています。
ただ、複眼で議論する上で気を付けたいのは、異なる組織の目線によって、異なる尺度でメンバーを評価してしまい、議論が噛み合わないこと。そのため、前提となる「コンテキストを揃えること」、例えば「成長のためのスキル差分を共通言語化すること」等がタテ・ヨコ・ナナメで行う人材開発には欠かせません。これらの取り組みにより人材開発のフレームが組織全体で統一されるため、メンバーのスキル評価を共通のものさしで行うことができるだけではなく、事業領域や職種横断で機会提供を実現しています。リクルートには住まい・結婚・まなび・飲食・美容……と多数の事業領域があるため、結果的により多くの成長機会を提供することができると考えられます。
最後に、人材開発のプロセスの一部として、採用後のオンボーディングも非常に重視しています。機会を通して成長していくためにはカルチャーフィットや事業理解も大切で、「技術面以外の情報をどう早期にキャッチアップしていくか?」と入社者が悩むこともあるかと思います。そうした入社後初期の悩みに寄り添いながら、早期の立ち上がりを支援することに注力しています。

目指すは「ビジネス課題をエンジニアリングで解決できる人材」。
手間も時間も惜しまず、組織一体となって育成に情熱を注ぐ。
村上:では続いて、プロダクトディベロップメント室で取り組んでいる人材開発について、高橋さんから発表をお願いします。
高橋:先ほど阿部さんからは、中長期のスパンで技術者を育成していく取り組みが紹介されました。ここからの私のパートでは入社直後の話、特に新卒1年目のエンジニアに対する成長支援がどのように行われているかをご紹介いたします。
まずは取り組みの背景にある前提として、リクルートで求めているエンジニア像の話をしたいと思います。コーディングスキルだけでなく「エンジニアリングを通じて事業へ価値貢献ができる人材」というのが私たちの求めるエンジニア像で、入社後はテクニカルスキルと事業価値観点の両方を磨いていくことを重視した育成方針を取っています。
特に1年目のエンジニア研修で求めるキーワードは「成長」。1年後に大きく成長している姿を実現できるように、私たちも年間で多様なコンテンツを用意して成長を支援しています。
では、具体的な施策を紹介していきましょう。施策の方向性は大きく2つで、知識やスキルを獲得するための「ティーチング系」のコンテンツと、エンジニアの主体的な成長に伴走していく「メンタリング系」のコンテンツです。
ティーチング系コンテンツの一つである「BootCamp研修」は、新卒入社者それぞれの状況に応じた成長支援をすることにこだわり、社内外の第一線で活躍するエンジニアにも協力してもらいながら運営しています。技術スキルはもちろん、技術を活かすために必要な「学び方」「事業価値との関係性」など、様々なコンテンツを展開しています。
具体的な中身については「株式会社リクルート エンジニアコース新人研修の内容を公開します!(2024年度版)」の記事でも詳しく紹介しているので、気になった方はぜひご覧ください。
髙橋:そしてここからは、メンタリング系コンテンツについて、大きく3つの施策をご紹介します。
1点目の施策は、「メンター制度」。これは先ほど阿部さんのパートでも話していたように、一人ひとりの新人に対して“複眼”で成長を支援するスタイルをとっており、役割の異なるメンターを複数配置するようにしています。一般的にメンターとして想起されるような、日々の困りごとをサポートし、会社・組織へのエンゲージを支援する「業務・生活メンター」以外にも、「キャリアメンター」も置いています。
エンジニアならではの特徴かもしれませんが、できることが増えれば増えるほど、逆にできないことも見えてくることが多く、自分の将来について多様な可能性があるからこそ迷ってしまうことも多いですよね。そのような時に、経験豊富なキャリアメンターに相談することで、共感してもらえたりアドバイスをもらえたりすることで自分が目指したいキャリアを見出すサポートを行っています。
さらに「業務・生活メンター」と「キャリアメンター」のそれぞれの担当者は定期的に気になる点の共有などを行っており、多角的に成長を促していく体制をとっています。
他にも360度サーベイを取って「自分の行動が周囲からどう見えているか」を可視化した上で一緒に働く同僚が本人の内省や育成を支援する「Junior Development Program(JDP)」や、1年間の成長を振り返る発表会などの施策を行っています。
発表会の仕立てについてもこだわっていて、「成果」ではなく「成長」そのものを発表してもらうことで、自分が成長するための「勝ちパターン」に気づいてくれたり、2年目以降更に成長するために自分がこだわるべきことを見つけてくれたりすることを狙いに置いています。

組織の垣根を超えて学び合い、活かし合う。
次世代に受け継がれていくような育成を。
高橋:こうした施策をなぜ私たちがやるのかについてもお伝えしたいと思います。これらのコンテンツを実施するには、かなりの時間と手間がかかります。ただ、それでもやるのだという強い意志で続けているのがこの育成スタイル。これは私の個人的な気持ちですが、この方法で育成されたエンジニアが、自分たちも次の代に向けて実施したいと受け継ぎたくなるような「伝統」にしていきたい。育成というのはそれくらい情熱をかけて取り組むべきものだと、私たちは位置づけています。
特にキャリアのスタート地点で学んだことは自身を形成する大切な礎になるし、そこで思い切り愛情を注がれたならば、次の世代にも同じように接してくれるはず。そうやって育成の熱意が伝播していくような組織にすることが、私たちの人材開発戦略だと思ってもらえたら嬉しいです。
村上:本日は、リクルートがエンジニア育成にかける、「熱い思い」と「理論・仕組み」の両方をお話しできたと思います。発表者のお二人はどうでしたか。
阿部:こうやって2組織の取り組みを並べてみると、目的や目指す方向性は同じでも、それぞれで異なる手法を使っているのが大変興味深かったです。お互いの違いを取り入れ、学び合うことで、エンジニアのみなさんにもっと良い機会を提供できるかもしれない。今、まさに育成施策の組織を越えた連携を進めているところですが、今以上に知見やコンテンツを上手く活用し合うことで、共に強化していけたらと思いました。
高橋:リクルートは事業領域も広く、様々な専門性を持ったエンジニアが集っている環境です。一人ひとりが異なる知見や専門性を有しているし、個性や考え方も人それぞれ。だからこそ多様な仲間とのコラボレーションを加速していくことも大切ですよね。育成の面でも組織を超えた交わりを加速させ、皆さんに提供できる機会の幅を広げていきたいです。本日はありがとうございました。
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記載内容は取材当時のものです。