教材提供

動画で学び、自分を、社会を変えていく。障がい者理解教育に込めた思い

2021年05月28日

動画で学び、自分を、社会を変えていく。障がい者理解教育に込めた思い

株式会社リクルート サステナビリティ推進室
細貝智博(写真左)
鎌内由維(写真左2番目)
株式会社リクルートオフィスサポート
湊美和(写真右)
村上慶太(写真右2番目)

リクルートでは2018年から「パラリング」と名付けた活動を行っている。これは、障がいの有無にかかわらずそれぞれが活躍できる社会の実現を目指すものだ。パラリング活動の一環である「障がい者理解教育」の取り組みによる、多様性と調和についてうかがった。

コロナ禍で変わった障がい者理解教育のあり方

障がいを通して他者について考え、一人ひとりが自らの壁を乗り越えようとすることが、多様性を尊重する共生社会の実現に向けた一つのきっかけとなるのではないだろうか。障がいの有無にかかわらず、自分らしく働いて生きることが大切であるということを伝えたいという想いを形にしたものが、障がい者理解教育の動画コンテンツである。

リクルートは、一人ひとりが輝く豊かな社会の実現を目指しており、そのためのテーマを挙げている。「多様性の尊重」は、その一つだ。 多様性には、障がい者も含まれる。障がいの有無にかかわらず活躍できる社会が多様性の尊重につながるということで、障がい者への理解を広げていこうとパラリングの活動が始まった。パラリングはパラダイムシフト(考え方の変化)とリング(つながりの輪)をイメージした造語だ。

もともと、リクルートオフィスサポートに勤務するリクルート所属アスリートたちは、全国の小中学校で講演し、生徒たちに車いすバスケットボールやシッティングバレーボールなどのパラスポーツを体験してもらう出張授業を行っていた。2019年度は受講した生徒たちが年間5500名にも上るという。

ところが、新型コロナウイルスが広がったことによって、こうした出張授業が難しくなってしまった。そこで、パラリングプロジェクトに参加していたリクルートオフィスサポートの湊美和さんと村上慶太さんは、一緒にパラリング活動を進めてきたリクルートサステナビリティ推進室の細貝智博さんと鎌内由維さんに提案を行い、四人で新たな形を模索し始めた。コロナ禍でも障がい者理解への学びを止めたくないという気持ちから、これまでの出張授業に代わる新たな形を考えたのだ。

そして生まれたのが、障がい者理解のための動画コンテンツだ。障がいは多種多様であるが、今回の動画コンテンツでは、肢体不自由で車いすユーザーである村上さん自身の日常生活を撮影し、制作を行った。現在この動画を用いた障がい者理解教育の授業が、群馬県館林市の小学校5校で行われている。

新しい出張授業の様子

動画に登場する村上さんは、19歳のときに交通事故に遭い、車椅子生活となった。現在は会社員として働きながら、車いすバスケットボールにも取り組んでいる。
動画は3部構成になっており、1部が村上さんの通勤の様子、2部が勤務中の様子と同僚たちのインタビュー、3部が村上さんからのメッセージという内容だ。

「動画コンテンツを制作するに当たって小学校の先生たちにヒアリングをし、村上さんとも話し合った結果、車いすバスケットボールと仕事を両立している村上さんにフォーカスを当てて、障がいの有無にかかわらず自分らしく働いて生きることが大切だと伝えることを、動画の目的にしました」と、鎌内さんは話す。

障がいを自分のことに置き換えて考える小学生たち

この動画で、村上さんは車いすで歩道を移動し、バスの運転手に出してもらったスロープを車いすで上ってバスに乗車し、出勤する。ここまでは障がい者としての面がクローズアップされるが、ひとたびオフィスに到着すればほかの社員たちと同じように仕事をしている光景が映し出される。 村上さんとともに仕事をしている湊さんは、「村上さんを障がい者だと意識したことはなく、移動手段が違うだけだと思っています。」と動画内で語る。最後に村上さんが、「障がいは自分にとって大きな壁だが、皆さんにも大きな壁や小さな壁はある。それを乗り越える勇気を持てば、自分らしい人生が歩めると思います」と、エールを送っている。

この動画は、小学4・5・6年生の総合の授業で流され、動画を見た小学生たちが意見を出し合って、アンケートに感想を書く時間も設けられている。

「いろいろな感想が出ますが、その内容に驚いています。村上さん自身の頑張り、周りの人の支えと、バリアフリーなどの社会の環境が揃っていたから村上さんは壁を乗り越えられたんだとか、自分には障がいはないけど、自分にとっての壁を乗り越えて頑張っていこうと思ったとか。生徒たちは自分のことに置き換えて考えているんです。この授業が、生徒たちが自分の壁に向き合うことを考えるきっかけになればいいと思います」と、鎌内さんは生徒たちの反応に驚きと手応えを感じている。
動画をきっかけに考えるのは生徒たちだけではない。先生たちからは「街なかの段差をなくすなどのバリアフリーの実現には時間もコストもかかるが、生徒たちの心のバリアフリーは今日から始められると思った」という声が出たそうだ。

動画を見た生徒たちが、障がいを通して他者について考え、自らの壁を乗り越えようとすることが、多様性を尊重する共生社会につながっていくのではないだろうか。

国際スポーツ大会から多様性を認め合う社会へ

パラスポーツが注目される国際スポーツ大会は、社会が障がいについて向き合う大きなチャンスだ。
「国際スポーツ大会をきっかけに、障がい者がパラスポーツだけじゃなく、仕事でも活躍しやすい社会になっていったらうれしい。そして、障がいの有無にかかわらず一人ひとりが輝きながら働ける社会になってほしいです。また、障がいを持っている人には、障がいを理由にやりたい事を諦める必要なく、むしろやりたい事を口に出すことで、周りは協力してくれるし、自分自身が活躍し易い社会の実現に繋がるはず、と伝えたい」と村上さんは言う。

湊さんも「パラスポーツに触れる機会は少ないと思うので、国際スポーツ大会でぜひ知ってほしいです。そして、その先の他者理解につながってほしいと思っています。障がいの有無だけでなく、人はそれぞれ違っています。お互いの強みや弱みを理解することが重要だと思います」と話す。

リクルートでは、動画を用いた障がい者理解教育プログラムのほかにも、パラリング活動としてパラスポーツを疑似体験できるVR動画の制作や、社内向け講演会を実施している。

パラリングを進める細貝さんは「障がい者理解動画もパラスポーツVR動画も、一人でも多くの人に届いてほしいという想いから動画コンテンツという形にしています。今回の館林市の授業ではリクルートからの出張授業という形をとっていますが、指導用のガイドラインおよび投影スライドと生徒用のワークシートも準備しています。 是非、『総合的な学習の時間』や『道徳の時間』などの授業にご活用いただき、教師の方がご自身で動画コンテンツとスライドを投影しながら授業を進めていただけたらと考えています。ご興味がある方はパラリング事務局へ、お気軽にお問い合わせいただければ」と、今後の展望を描いている。

パラスポーツの面白さを知り、障がいを含めた多様性を認め合うやさしい社会へ。国際スポーツ大会を機に、私たちはその一歩を踏み出せるのではないだろうか。

※掲載記事内容は、2021年5月時点のものです。


子どもたちに、障がいについて考えるきっかけを提供できればという想いから、学校の授業で活用いただける、障がい者理解を目的とした教材を製作し、無償提供しています。
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障がい者理解授業<パラスポーツVR動画編・パラアスリートの生き方編>小・中学校向け

障がい者理解授業<障がいの社会モデルを学ぼう!>高校向け


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パラスポーツVRコンテンツ活用のご案内

パラスポーツVRコンテンツ活用事例

パラスポーツVR一覧


『考え方を変える=パラダイムシフト』で『つながりの輪を広げる』パラリングは、これからも障がい者理解のための プログラムを通して誰もが自分らしく生きる社会づくりに貢献します。

<お問い合わせ先>
パラリング事務局よりご連絡させていただきます。

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パラリングとは?

「パラリング」とは「パラダイムシフト(考え方の変化)」と「リング(輪)」の造語で、障がい者理解を広めていくリクルートの活動です。リクルートは障がいの有無に関わらずそれぞれが活躍できる社会の実現を目指して活動をしています。

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