経営戦略とマネジメントの未来を創造するMartin Reevesさんのリクルート考

シリーズ

リクルート考

経営戦略とマネジメントの未来を創造するMartin Reevesさんのリクルート考

テクノロジーがもたらす新たな競争環境 2020年代を牽引するグローバル企業へ

リクルートグループは社会からどう見えているのか。私たちへの期待や要望をありのままに語っていただきました。

リクルートグループ報『かもめ』2020年3月号からの転載記事です

"Hybrid Ecosystems"研究とリクルート

私は、ボストンコンサルティンググループにおけるシンクタンク「BCGヘンダーソン研究所」のチェアマンを務めています。そこで、戦略とマネジメントの新たなアプローチを研究し、次世代のビジネスモデルを見出そうとしている企業におけるリーダーたちが、次の戦略を見極めるためのアイデアとインスピレーションを生み出す支援をしています。

リクルートと最初にコンタクトしたのは、私が"Hybrid Ecosystems"(リアルとデジタルの双方を取り入れたビジネスにおける複合型生態系)をテーマに研究している際に意見交換をしたのがきっかけでした。

リアルな顧客接点におけるアセットとデジタル・プラットフォームを保有する企業であるリクルートは、この領域を牽引する企業だと考えていました。経営陣と会話し、私はリクルートの成功の背景にある方法論についてより多くを学ぶことができました。これはGetting Physical:The Rise of Hybrid Ecosystems という記事にまとめています。

このなかで私はリクルートが紙媒体を中心とした広告ビジネスからデジタルビジネスモデルへトランジションするプロセスを描きました。こうしたトランジションは一握りの企業しか成功できておらず、このプロセスは他企業の学びになると感じています。

世界をリードする企業 Winning the'20s

直近では、Winning the '20s(経営リーダーにとっての今後10年のAgenda について)をテーマに研究をしています。2019年の世界をリードする主要企業リストは、2009年のそれとは全く異なっています。そして技術的、社会的、地政学的な変化により、2029年には世界をリードする主要企業リストは再び全く異なるものになっていくでしょう。

2020年代に成功するために企業はどのように競争し、組織化し、変化するか。またその能力を発揮して社会に根差していく必要があるのかについて、テクノロジーと競争環境におけるトレンドを調査し、我々は以下のような見解を出しました。

◆企業は、エコシステム・機械学習・自動化された意思決定を活用して、学習率について競い合っていく。急速に変化する世界で、リーダーシップの維持に必要とされる連続的な革新のため、イマジネーションの領域に関しても競争していくだろう。

◆ビジネスは組織化の方法について根本的に見直す必要がある。個々のテクノロジーを、統合化された自律的な学習システムにつなげて、高速学習を可能にしていく。その一方で、想像力、ガバナンス、感知力、組織設計といった、機械学習より人間が優れている高度な認知機能にも重点を置く。

◆企業は、進化し続けるテクノロジーと競争に対応するために、単発の変化の取り組みに頼るのではなく、大規模な変化を起こす継続的な機能を構築する必要がある。

◆主要企業は今後、多様性を倫理的な必要条件としてだけでなく、ビジネス的にも必須の対応事項とみなす。Diversity and inclusion (多様性と包括)は革新と反発力をドライブするため、リーダーは多様性に対する目標に向き合い、認知的多様性が発揮される環境を創ることに責任を持つと考える必要がある。

◆最後に、企業は社会的責任を超えて動く必要がある。持続性を戦略プロセスに取り込み、一定の社会的目的に沿って事業集中させ、そして、社会的で生態学的な制約を優位性に変える持続可能なビジネス・モデル革新を用いることで、企業が社会に根差した存在になる。

2020年代を生き抜く企業カルチャーとは

2020年代を生き抜く企業のカルチャーの特徴は、常に外界へのアンテナを高く張り、異質を評価し、起業家的でありながら過去の成功にしがみつかず謙虚であること。そして変化対応が早く、シンプル。複雑さは機敏さと革新を阻止するのです。

2020年代を勝ち抜くために、リクルートはどれくらいそれらの適性を備えているでしょうか? 私は、リクルートがキーとなる特徴の多くを備えていると考えています。

まず、非常に起業家的であること。過去のレシピに頼る代わりに、常に成熟した事業を再構築している。まさにHybrid Ecosystems(複合型生態系)におけるSerial Innovator(継続的な革新者)と言えるでしょう。デジタル・プラットフォームの力を活用し、伝統的なサービスを活性化している。

そして、成長、創造力と起業家精神を称賛する力強い社風を持ち続けていること。これらの特性を武器にリクルートは将来も、より良いポジションを確保していくと思います。

しかし、成功とは決して保証されているものではなく、積極的に手に入れるものです。過去10年の最大の成長要因は、グローバル化、中国経済、移動通信とデジタル技術の発展がもたらしました。

来たるべき10年間は、AI、IOT、Sustainability が成長をドライブするでしょう。これらのメガトレンドに向き合い、いち早く市場を開拓し、ビジネスを構築していく企業こそ大きく成長するでしょう。

多くの大企業と同様に、リクルートも過剰な複雑さ、固さ(柔軟でない)と独善(自己満足)に目を光らせている必要があります。最も可能性を秘めた世代のアイデアにアクセスするためには、多様性の拡大に向けて活発に動かなければなりません。

より幅広い社会貢献に関しても素晴らしい物語を創っていく必要があります。そのポテンシャルを発揮し切るためには、日本での成功をベースにさらにグローバルでの競争をしていく必要があるのです。

多くの成熟した大企業は成功の罠に陥ります。未来に向けた活力の源泉を足元のパフォーマンスを最適化することに使いつぶしてしまうのです。しかし、リクルートは、次の10年間の挑戦によって、2020年代の競争に対して効果的な装備を十分に保持していると私は確信しています。

プロフィール/敬称略

※プロフィールは取材当時のものです

Martin Reeves
Senior Partner & Managing Director;
Chairman of the BCG
Henderson Institute New York

ケンブリッジ大学修士(自然科学)、クランフィールド大学MBA(経営学修士)。ゼネカ(現アストラゼネカ)を経て、1989年にBCGロンドン・オフィスに入社。世界各地の企業や業界団体に対して戦略、組織両面で数多くのコンサルティングを行っている。東京オフィスにも8年間在籍し、ヘルスケアを中心とする多国籍企業に対してさまざまな戦略策定・実行を支援。現在は、BCGブルース・ヘンダーソン研究所チェアマン。BCGフェロー。共著に『Your Strategy Needs a S trategy』(Harvard Business Review Press)。

この記事をシェアする

シェアする

この記事のURLとタイトルをコピーする

コピーする