築古物件の再生、シニア人材の活用、ビレッジハウスが挑む社会課題と事業の直結

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文:森田 大理 写真:須古 恵

全国約10万戸の築古物件を再生し、低賃料で高齢者、外国人、生活困窮者等の多様な入居者を受け入れているビレッジハウス。「築古物件の活用」「住居のセーフティネット」「シニアの雇用」など、社会課題解決に通じる事業の秘訣を探る

総務省の平成30年住宅・土地統計調査によると、日本の住宅のうち13.6%が空き家。実に8軒に1軒が活用されておらず、地域の治安悪化等につながる恐れも指摘されている。その一方、年齢や国籍など様々な事情で住まいを見つけることが困難な人たちもおり、「空室はあるのに借りたい人が借りられない」という矛盾が社会に生じているのも事実だ。

こうした社会課題解決に通じる事業を展開するのが、ビレッジハウス・マネジメント株式会社。同社は、築古の公営住宅を取得しリノベーションを行う。さらに、低賃料で貸し出すなど独自の入居基準で運営することで、安心して長く住み続けられる住環境を提供している。また、全国の物件管理を行う管理人としてシニア人材を直接雇用するなど、高齢化社会における雇用創出にも一役買っている。今回、共同最高経営責任者の岩元龍彦さんに事業展開の背景を伺い、ビジネス起点で社会課題の解消を進めていくためのヒントを探った。

今ある不動産を長く有効活用した方が、借り手の裾野を広げやすい

ビレッジハウス・マネジメントが運営する賃貸物件は、全国47都道府県で1,066物件、総住戸数は10万超にもなる。これは、もともと厚生労働省が管轄していた「雇用促進住宅」を、ソフトバンクグループ傘下のフォートレス・インベストメント・グループが取得し、「ビレッジハウス」として再生したものだ。

雇用促進住宅とは、住宅を必要とする労働者に暫定的な住まいとして提供されていた公営住宅で、2007年に制度の廃止が決定。物件は民間に払い下げる方針を打ち出した。しかし、最も古い物件では1960年代に立てられた団地もあり、2017年の取得当時の入居率が33%ほどしかなかったという。そのような物件を敢えて買い取ったのはなぜなのだろうか。

「日本の不動産マーケットを俯瞰してみたときに、今存在する不動産を再生し長く活用していく方向に可能性を感じたからです。日本はこれから高齢者や単身者の割合が増え、住居にあまりお金をかけられない世帯が増加していく。一方で、低所得者層のセーフティネットだった公営住宅は2000年代初期から減少傾向にあり、需要と供給のバランスが崩れはじめていた。新たな受け皿が必要だと考えたのです」

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リノベーション後の部屋(画像提供:ビレッジハウス・マネジメント)

全国各地の団地を一括取得しリノベーションするという手法でコストを抑え、家賃は主に月額3万円台からと低賃料を実現。加えて、原則、敷金・礼金などがかからない(契約内容や審査結果によって一部例外あり)特徴も広く受け入れられ、従来は住まいを借りづらかった人たちも含め、単身者、ファミリー、高齢者や外国人と様々な方が多く入居している。

ビレッジハウスへリブランドしてから、かつて33%ほどしかなかった入居率は65%にまで上昇。新規入居申し込み者のうち、48%が年収250万円未満の世帯で、65歳以上の高齢者は10%、外国人は21%を占める。しかし、不動産賃貸マーケットでこのような人々は家賃滞納などの不安があるとされ、入居審査が通りにくいのが実態だ。ビレッジハウスはこうしたリスクをどう捉えているのだろうか。

「例えば、シニアの入居者は若い世代に比べて就職・結婚・出産といった“住まいを変えるきっかけ”が少なく、長期間入居いただける可能性が高いという特徴があります。年金という安定的な収入源があり月々の家賃を滞納するリスクも低い。それに、今の高齢者は年齢の印象よりも元気な方が多いですよね。初期費用の問題などをクリアにすれば安心して長く入居いただける。私たちとしては、ビジネス上も敬遠する理由はないと考えています。

また外国人については、一般論として生活習慣や言葉の違いがトラブルに発展しやすい側面もありますが、英語やポルトガル語に対応した専用の問い合わせ窓口を設けたり、契約書や生活ルールをまとめた冊子を多言語対応したりと、仕組みでカバーできます。このように、一般的には敬遠されがちな方々でも、視点を変え、仕組みを整えればリスクを抑えながら住まいを提供できると考えました」

業界の慣習に縛られないスキームを構築するために内製化を推進

他社で入居審査に落ちてしまいかねない状況の人々にも幅広く住まいを提供していくために、ビレッジハウスは外部の保証会社を使わず自社で独自の入居基準を設けている。審査だけでなく、物件の管理業務や問い合わせ窓口など、ほとんどの機能を内製化。不動産業界では各業務を専門の会社に委託することが珍しくないが、敢えて自前主義を選択したのは、業界の慣習を気にすることなく、ビレッジハウス流を追求するためだ。

「事業がスタートした当初は、管理業務を外部に委託していたのですが、実際に業務をおこなっているのは、委託先の更に先にいる提携会社のスタッフという構造。どうしても意思疎通に時間がかり、意図を正しく伝えることに苦労しました。そこで2020年の4月に全国の管理人を直接雇用に切り替え、500人規模の管理サービス体制を社内に構築。本部・支社と現地管理人とのスピーディーできめ細やかな連携を強化し、入居者満足度の向上を目指しています」

管理人を直接雇用に切り替える上では、定年制を設けない継続的な雇用契約に。平均年齢67歳とシニアが多く活躍していた状況を踏まえ、「元気なうちは長く働き続けたい」という想いに応えた形だ。また、シニア管理人がスマートフォンなどのデジタルデバイスを駆使して管理業務をおこなっており、これが一般社団法人at Will Work主催の「Work Story Award2020」で「テクノロジー・ツールの活用、DXの推進」のテーマ部門賞を受賞。これも、内製化によって自社で柔軟に業務変革を進められたからだろう。

「シニア×ITに取り組んだ一番の理由は、非効率な業務を改善し、サービス品質を上げること。管理人は地域の物件を巡回して業務をおこなうのですが、以前のやり方は、朝事務所を出発して一日外をまわり事務所に戻ってから報告書を手書きで記入してFAXするという業務プロセスでした。これでは報告に時間がかかって対応が遅れてしまう。たとえば現地で修繕が必要な箇所を見つけたら写真を撮って、その場で報告や相談をするようなタイムリーな動き方を実現するには、紙ベースのコミュニケーションをなくしてデジタル化する必要があると考えました。また、シニアが大半を占める管理人の業務負荷を下げることは、長く働き続けてもらえる業務体制にするうえでも重要なことなのです」

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管理人を直接雇用し、デジタルツールを駆使しながら、社内の各スタッフと密に連携を取って業務を進めていく。この体制は、住宅困窮者が住みやすい家賃設定を実現する上でも意味がある。なぜなら、ビレッジハウスは全国47都道府県の物件を7つの支社でカバーする体制だからだ。

営業所や店舗を置かず、契約事務業務は名古屋で一括対応するなど、機能集約によってコストを徹底的にスリム化。こうした体制によって価格を抑えている分、サービス品質の側面では実際の物件や入居者に直接対応できる管理人が、“会社の顔”としてきめ細かく対応してくれていることが大きい。

「ビレッジハウスの物件は、水回りなどのインフラをリニューアルしたり、和室を洋室にしたりと、現代の生活スタイルにあわせてリノベーションをしていますが、築年数が古いのは事実ですし、最新設備の新築物件に比べれば見劣りする部分もあります。しかし、いくら安いからといって品質も悪かろうではいけない。物件は古くてもサービスは一流でありたいからこそ、管理人の方々や距離の離れたスタッフ同士でもタイムリーにコミュニケーションしながら入居者のニーズに向き合う姿にこだわってきました」

団地に人が戻ってくれば、地域が息を吹き返す

ビレッジハウスが運営する物件は、1棟あたり40戸前後で複数棟の団地が中心であることもポイントだ。単身者向けのワンルーム・2Kから、ファミリー向けの2LDK・3DKなど、幅広いニーズに対応。法人の社宅利用などまとまった住宅ニーズに応えられることも、入居者の安心に繋がっている。

「例えば外国から日本にやってくる技能実習生の寮として法人に活用いただいているケースもあります。3DKの部屋で共同生活をしたり、同じ棟に母国語が話せる人がいたりすれば、見知らぬ国で生活する彼らの安心材料にもなるし、新しい生活や仕事にも馴染みやすい。また、地方自治体との連携により市営住宅建て替え時の借り住まいとして活用いただくケースや、2018年の西日本豪雨では被災者の受け入れ先として活用いただいたこともあります」

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このように、様々なニーズに柔軟に対応できることが団地のメリット。年齢も国籍も家族構成も異なる人たちがビレッジハウスに集いはじめると、地域の雰囲気も変わっていくのだという。

「新しい入居者が少なく、少しさみしくなってしまった団地が、ビレッジハウスに変わってからは子育て世代が入居し活気づいた例もあります。以前から住んでいるお年寄りが『昔の団地に時間が戻ったみたい』と喜んで下さいましたね。また、入居率が上がることは、地域の人口が増え経済活動が活発になるということ。目の前にあった商店が繁盛しはじめるなど、物件周辺の地域活性にも貢献できていると感じています」

もちろん、多種多様な人が同じ建物に暮らせば、ときには習慣や価値観の違いから衝突が起きることもある。しかし、話し合いの場を設けたり、入居者同士の親睦を深めたりすることで解消できることも多いそう。例えばブラジル人が多く住む地域の物件では、ブラジル郷土料理のシュラスコなどを振る舞うBBQイベントを開催。日本人入居者と外国人入居者の接点を増やすことで、国籍や文化を越えた新しいコミュニティが形成されていったという。

社会全体を踏まえても、高齢化や労働人口の減少などの問題は避けられず、シニアや外国人にどうやって社会参加してもらうかは重要なテーマだろう。住まいは生活の基盤。誰もが安心して住み続けられる環境を手に入れられることは、安定的な就業にもつながり、ひいては社会全体の活性にも通じていくのではないだろうか。だからこそ、岩元さんはインタビューの最後をこう締めくくった。

「ビレッジハウスでは一般の賃貸物件と異なり更新料をいただいていません。これは、月々の家賃だけで安心して長く住み続けていただきたいからです。そのためには、住み心地を上げる努力は必要です。ただ、“華美な投資”をすればいたずらに入居のハードルを上げてしまい、住宅困窮者を排除することにもなりかねない。だからこそ、今の物件を最大限有効活用し、できるだけ多くの人に住んでいただくことに私たちは全力を注ぎたいです」

プロフィール/敬称略

※プロフィールは取材当時のものです

岩元龍彦(いわもと・たつひこ)

ビレッジハウス・マネジメント株式会社 共同最高経営責任者/フォートレス・インベストメント・グループ・ジャパン合同会社 マネージング・ディレクター
1974年生まれ。大学卒業後、コンサルティング会社、リーマン・ブラザーズ証券などを経て2009年フォートレス・インベストメント・グループ・ジャパン合同会社にディレクターとして入社。2012年同社マネージング・ディレクター。ビレッジハウス・マネジメント株式会社共同最高経営責任者も兼務。

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